青柚子のセビーチェ

エスニック 11.7,2020

午後すぎに心療内科へ行った。
「まずは状況を保健士さんに相談して、それから先生とお話となります。」受付の方に部屋へ通される。保健士さんに、淡々と数年記録してきたお酒の事を伝えた。先生との診察を待つ間に目に涙が溢れてくるのをぐっと堪える。先生に会ったら絶対に泣いてしまう。だけど、今日は夫のアルコールの事を聞きに来た。私の話をしている場合じゃない。落ち着いて何が聞きたいのか頭で考える。冷静に。冷静に。

5分も経たないうちに診察室へ呼ばれる。先生は想像していた感じの先生じゃなくって、何だか浪人生みたいで、ぼさぼさの頭で、静かな目で私に言った。「菊地さんはどうしたいの?」きょとんとしてしまった。「依存症は本人の意思がなきゃ治らないから。家族が病んで離れて、色々を失って失敗して、生活保護を受けて孤独死する。よくある事。」家族がここに来ても意味ないから。そんな風に聞こえた。待合室で私は何を想像してたんだろう。「だけど、先生、わたし寝ずに仕事行ったり、夫のアルコールのことで精神的にも本当に辛くて。暴れたり喚いたりもあるし、この生活は異常なんですけど。」「短期間で高ストレスが急激に溜まったら辛いのは当たり前です。」せっかくここまで来たんだから、何か私が出来る事を知りたい。頭の中をあちこち探し回るがいい質問が出てこない。

今日のは一体なんだったんだろう。
「もう十分色々な手を尽くされて今日ここにいらっしゃったんですね。大変でしたね。」保健士さんから優しい言葉をかけてもらって嬉しかった。病院を後にすればするほどに、心が軽くなる。夫はただの依存症。それは家族の事だけど、夫にしか治せない夫の問題なんだ。私が大事に抱えていた大きな問題は、私の問題じゃない。何だか不思議な気持ちだった。

夜、渋谷で友人の展示を見に行った後、そのまま食事をした。
人が悲しむ話はしないようにと決めているんだけど、口から言葉がぽろぽろと出てきた。「今日、夫の事で心療内科行ってきてさ。」お酒がそんなに入ってるわけじゃないのに、ぽろぽろと話した。全部話し終わると、「もっと話していいんだよ。ひとりにならないで。そんなに辛い想いをしなくていいんだから。」想像してたのとは全然違う声が返ってきて、そっかって。何だか、友人のいる目の前にあるこの世界に安堵した。胸のキリキリが静かに薄れていった。家への帰り道は長くて真っ直ぐで、高台にあるから晴れた日は富士山が、夜は東京の街や首都高が見える。ここ数ヶ月はこの道に入ると一人になれるからか、いつも涙がでたのだけど、そういえば今夜は泣くことを忘れてた。

青柚子のセビーチェ
ボウルに青柚子胡椒、塩、青柚子の絞り汁、たこ、玉葱、セロリを入れる。
フライパンにオリーブオイルひいてニンニクを軽く色づくまで火を通して、ボウルに入れて混ぜ合わせる。
▽ 材料 ▽
青柚子胡椒 [青柚子の皮をすりおろし、青唐辛子のミンチと塩と混ぜ合わせる。青柚子2:青唐辛子1:塩小さじ1くらい]
青柚子の絞り汁 1個

たこ
玉葱 1/4個ー微塵切り
セロリ 1本ー微塵切り
ニンニク 1片ー微塵切り