カレー

菊地食堂へようこそ 18.8,2020

昨日は友達が家に遊びに来てくれて皆んなで餃子を巻いて食べた。
食べる音、食器の音、話す音、笑う音、人の動く音、色々な音が絶え間なく聞こえる。テーブルの上の食べ物がどんどん人の中に入ってく。新しい食べ物や飲物がテーブルの上に入れ替わり立ち代わり、食卓が活き活きしていた。嬉しくて仕方なかった。夫が帰らない食卓を、友人達は一瞬で華やかにしてくれた。

堂々と声を大にして言える。売れない音楽をやってる夫を精一杯支えてきた。8年間、決して短く無い。本当に苦労した。夫が悪い事ばかりして沢山の人が離れた時も、全くお金がない時期も、仕事はたいがいよくわからない。だから、とにかく頑張った。人づたいに飲み友達に出資して貰って会社を作ったと聞いた時はもう遅かった。その頃にはやめていたお酒を始め自分をコントロール出来なくなってた。今日は帰ると言って、今日も朝方まで帰らない。悪魔みたいなのが帰る朝は地獄。作った食事は毎日、毎日、冷蔵庫の隅に溜まってゆく。夫の好物たちは静かにゴミ箱へ向かって行った。爆発事故みたいに私達の平穏が一瞬で飛び散る。一つ一つの大事なピースを私ひとりで探し求めるような日々がもうすぐ半年。もう何がどんな形だったのかもわからないくらい。きっと今日もどこかで楽しくしているんだろう。外に出て、地方で音楽をやったり酒を飲んだり隠れて女と遊んでも、俺が楽しければいい。そういう人だった。嘘も上手だった。それは私にも私以外にも。世界を平和にする為の嘘なんだと思うけれど、あまり好きじゃない。

土曜日の昼を過ぎた頃、キッチンで煮卵を作ってると、ドアがちゃんとなり急に夫が帰宅した。何も言わずに家中をばたばたと漁ってる。一ヶ月ぶりで会った夫に言いたい事は山ほどある。だけど、口が閉じたまま。「ねぇ、何やってるの?」ようやく出たのがそれだった。「今、作ってる渋谷の店に置きたいから。」新婚旅行で買った置物だとか、思い出の何かとか、私達の生活の色々を持ってあっという間に出て行った。大切なもの達が一瞬でなくなっていく。呆然と立ち尽くす、煮卵のタイマーがずっと鳴ってる。涙は一粒だって出ない。いつもそうだ、俺が楽しければいい。

皆んなで食べた冬瓜と手羽元のスープの余りにカレールーを入れて、カレーライスにした。とろとろのカレー。すっごく美味しい。幸せを独り占めするのって、私は楽しくない。

友達が遊びにきてくれて作った菊地食堂の献立
餃子 三種の皮の食べ比べ
冬瓜と手羽元のエスニックスープ
オイキムチ
タコと青柚子のセビーチェ
カレーピクルス
煮卵
トムヤムクンサラダ