夜の22時。デスクにいる。
健康診断で引っかかった胃ガン再検査が気になってる。父は胃ガンだった。まさこおばちゃんは乳ガンで40歳を過ぎた頃に亡くなった。今夜ははキッチンじゃなくってミントティーを持ってここに座ってる。外は雨。音楽はStevie WonderのOverjoyedがリビングから。 明日、料理王国の副編集長浅井さんと、ライスプレスの成田さんに、パドラーズで作品を見てくださいってお願いしていて、準備してる。eat LOVEっていう作品。男と男のカップルの食卓。料理は彼氏の伊藤通洋さん。それを私が撮る。そして彼氏の野村浩平さんの文章を書く。
プリントはずっとまとめていたんだけど、文章は久しぶりに読んだ。読んでなかった文章も読んだ。ごめんなさい。文章読むのが苦手だから読んでるようで読んでなかった。思ったよりも自分の事が書いてあってびっくりする。それにしたって野村さんの文章は素直で可愛くて、ぎゅっと胸を掴まれる。ぎゅって。とっても柔らかく、ぎゅっと。冷えた身体が温まってくような。
2年前の夫の酒乱の時期、彼らが私を救ってくれたんだった。彼らの食卓で温かい食事を食べ、ほっと安堵して家路に着く。それを何度も何度も繰り返した。作品を撮るプロジェクトで通っていたのだけど、彼らの食卓に私は愛を食べに通った。eat LOVEのタイトルの通り、私はあの場所へ愛を食べに行った。そんな事をふいに思い出したら、何だか気づいた。
さっきまで泣いていた。そのちょっと前も泣いた。哀しくて哀しくて仕方ない。急にそれがやってきて、家でも街でもスーパーでも写真を撮っていても人と話していても急に来て急に去っていく。eat LOVEをまとめていたら、私が今やる事は悲しむ事じゃないかもしれないって思った。
生きていると辛い事が結構ある。小さい事から大きい事まで。時にはあまりに大きすぎて前へ進めなかったりして、だけど、そんな事に構っていたら前へは進めない。私にはあの時にたっぷり補充した愛がある。大好きなふたり。大好きな作品、eat LOVE。作品が私を助けてくれる。作品をまとめながら思う。私を救ってくれたように、誰かの事を助ける作品になって欲しい。