昨日、やっちゃんがバスの中で言ってた。「秋は果物が美味しいからね。毎日、本当に幸せなの。今日は梨、今日はぶどうって食べてるんだよ。」うちに泊まって、すっぴんのまま出てきたやっちゃんの満面の笑み。やっちゃんって、時々、子供みたいだなって思う。「うん。私も果物食べてみる。」やっちゃんとバイバイしてから、スーパーに寄って梨を探したけど、高いのしか無くて林檎を買った。ぺろっと一個食べた。林檎、久しぶりだな。美味しい。
朝の10時、玄関がガチャガチャとなった。鍵を開けようとする音がする。姉に急いでメールを打とうとするけど手が震えてる。心臓が飛び出しそうだ。身体が夫を怖がってる。鍵は2つしてるから入っては来ない。だけど、もし、大家さんにもう一本の鍵を借りて入って来たら。聞こえなかったと言い訳出来るようにヘッドホンを手に持つ。数分してガチャガチャは消えた。
弁護士さんのところに行った帰りに、林檎を一つ買って帰る。弁護士さんいい人だった。「まずは家を出ましょう。安心出来ると思う所に引っ越しましょう。」他人に話せば話すほど、何かが見えてくる。私達夫婦に起こった事はただの酒乱でも、ただの喧嘩でも無かったんだ。すごく怖くなった。私が頑張れば頑張るほどに夫を庇う事になってたんだ。
何だかやっちゃんの笑顔が忘れられなくてまた林檎が食べたくなった。もう抗うつ剤止めよう。今日でまだ3日目だけど、もう要らない。だって今、1ミリも哀しくない。大丈夫。林檎すごく美味しかったから大丈夫。