朝一番で納品を終えてベッドに入る。外はずっと雨。昨日、友人に送ったメールがずっと胸にある。もう苦しみたくない。大事な友達だから伝えたかった。私はただ、私の味方になって欲しかった。もう私を責めたくないから。
みんな誰だって自分の人生を生きてる。想いやるにも体力がいるし、相手の事に踏み入るのは簡単じゃない。友人は、私の事で沢山、沢山、傷ついた筈だ。だけど、私の気持ちは私にしかわからない。話せるうちは元気だって言うけど、話せない事だって沢山ある。人前では明るく振る舞うから元気だって思われても、誰にも見せられない顔だってある。みんなそう。私だけじゃない。苦しみはいつだって自分のもの。
段々と痛みや恐怖が薄れていって、意識が世界へと少しずつ、少しずつ向けられるようになってきた。視界だけじゃない、感情もだ。前へ進むと、何かにつまずく。そうやって私の中に疑問が生まれてゆくのを感じる。
姉に電話した。話し出したら止まらない、少し私は怒ってる。声を荒げて話す私に、姉は言った。
「 誰にもわからないから。」
「親だって家族だって友達でも。あなたが受けてきた苦しみは誰にもわからない。私は沢山の話を聞いたけど、私が知ってる痛みは一部に過ぎない事だってわかる。わかってるから。もう誰かの声に耳を傾けないでいい。肝に命じて、自分を守って。わかった。自分を守れるのは自分だからね。」言葉の全てが綺麗に聞こえた。
この苦しみは今も私の腹の中。
友人にわかって欲しいと思うのは間違ってたんだと思った。
「あなたも悪いんだからさ、彼にもあなたにも良い相手が出来るから。」今まで献身的に支えてくれた友人が急に突拍子も無い事を言い出した。そして、離婚が決まってから彼女とはパタリと会わなくなった。理由は仕事が忙しいと言ってたけど、本当の所はわからない。離婚を選択すれば、必然的に彼を公に非難する事となる。それは、病気の事も暴力やお酒の色々も全て明るみとなるっていう意味だ。優しくて面倒見のいい彼女がいつも言う言葉。「病だから仕方ないんだよ。すごく彼も辛いんだよ。」真っ直ぐな瞳だった。私はあの言葉を裏切った事になったのかもしれない。