キムチチャーハン

中華 09.10,2020

朝一番で納品を終えてベッドに入る。外はずっと雨。昨日、友達に送ったメールがずっと胸にある。もう苦しみたくない。大事な友達だから伝えたかった。私はただ、私の味方になって欲しかった。もう私を責めたくないから。

みんな誰だって自分の人生を生きてる。想いやるにも体力がいるし、相手の事に踏み入るのは簡単じゃない。私の事で沢山、沢山、傷ついた筈だ。だけど、私の気持ちは私にしかわからない。話せるうちは元気だって言うけど、話せない事だって沢山ある。人前では明るく振る舞うから元気だって思われても、誰にも見せられない顔だってある。みんなそう。私だけじゃない。苦しみはいつだって自分のもの。

段々と痛みや恐怖が薄れていって、意識が世界へと少しずつ、少しずつ向けられるようになってきた。視界だけじゃない、感情もだ。前へ進むと、何かにつまずく。そうやって私の中に疑問が生まれてゆくのを感じる。

ねーちゃんに電話した。話し出したら止まらない、少し私は怒ってる。声を荒げて話す私に、ねーちゃんは言った。

「 誰にもわからないから。」

「親だって家族だって友達でも。あなたが受けてきた苦しみは誰にもわからない。私は沢山の話を聞いたけど、私が知ってる痛みは一部に過ぎない事だってわかる。わかってるから。もう誰かの声に耳を傾けないでいい。肝に命じて、自分を守って。わかった。自分を守れるのは自分だからね。」映画のセリフみたいに、ねーちゃんはぴしゃりと言い切った。

苦しみは私のものなんだ。ちょっと舐めたり、ちょっと噛み砕いた位じゃわからない。舌の上で悲鳴をあげる程に苦くて、拒む身体の中へと落ちてゆく。喉は真っ赤に腫れてる。胃袋の中で散々と喚きちらしたって、未だ身体の中から出て行ってくれない。この苦しみは今も私の腹の中にある。

ねーちゃんの旦那は3年前に亡くなった。今も遺産相続で裁判を続けてる。初めてあの時の話を聞いた。「お金なんて要らなかった。ただ私を、家族を守るしかなかった。」裁判を始めたねーちゃんを少しだって非難した自分の小ささに虚しくなる。

ねーちゃんの旦那は、世界中のステージを飛び回り音楽で沢山の人々を幸せにした。だけど、沢山の女性を作ったり、薬が出てきたり、C型肝炎になって、皮膚一枚みたいになる最後の最後まで、ねーちゃんに苦労をかけた。葬儀に会った叔父さんは真っ黒だった。教会を出るとL.Aらしい爽快な空。綺麗な色の空だった。

今なら、ねーちゃんの痛みが少しわかる。もう馬鹿には戻れない。私を守れないような馬鹿には戻らない。