鍋のシメに山椒饂飩

Journal 19.10,2020

また人が亡くなった。
師匠のアシスタントで一度現場で立ち会った事がある。四人組の女の子達。普通の女の子、高校生みたいにずっとおしゃべりしたり、悪ふざけしてた。可愛らしいなって思った。変わった名前のバンド名だったから覚えてる。赤い公園。何年前だろう。ずっと前。

何だか思った。
夫の様に弱いと言われる人は絶対に死なない。死ぬのは私みたいな方なんじゃないか。皆が言う。「彼は弱いからって。」夫は言う。「俺が弱いからって。」何度、夫は私に泣きついてきただろう。その度に私は私の声を飲み込んだ。私は強いからって。強い方が強くなればいいって。夫が失態を犯したのに、私が強くなる。そうやって私は、女というものは強くなるもんだと勘違いをしていった。

誰一人として私を弱いねって言わなかったし、あの朝、りょーこちゃんからのメッセージを読んで初めて私っていう人が弱い事を知った。

姉が言う。
「じゃあさ、彼は毎日胃が痛いの?彼は身体壊した?彼は仕事出来なくなった?苦しんでる?毎日泣いてる??食事が喉を通らない?あなたは彼に傷つけられて、こんなに酷い事になってしまった。じゃあ、彼は今何してる??女と遊んでたよね。また酒呑んでたよね。ライブとか出来てんでしょ。普通にご飯食べてるよね??いい加減にしなよ。」

夫が病気だからって未だに庇い続ける私に姉が怒った。あれって、怒られてる事よりも、言ってる言葉の意味に違和感を感じた。そうだ、確かに。

夫はコロナが始まってから毎朝、ツイキャスっていうのをやってる。酒で散々喚いた朝だって平気な顔をしてやってた。夫のそういう姿に毎朝傷ついた。今、どういう心境で笑って喋ってるんだろう。家族が隣で苦しんでるのに、そんなに楽しそうに笑えるの?夫が母親を邪険にするのを思い出す。何度も止めてとお願いした。ああいう関係にはなりたくないって心のどこかで思って見た。私なら絶対にあんな事出来ない。お母さんに絶対にあんな酷い事したくない。夫にとって家族って何なんだろう。

人が死ぬのは哀しい。
わかる。彼女の気持ちはわからないけれど、わかる。あの時の感覚を一生忘れない。頑張りたいのに、頑張れるのに、どこにも答えが見つからなくて途方にくれる時間。数分とか数時間じゃない、計れなくて見えない時間。後ろから押されるようにやってくるそれに追い立てたれて、前に潰れてゆく。私は強いから大丈夫だった筈なんだけど、卵が床に落ちた時みたいに、ぐしゃりと形あるものが一瞬で違うものに壊れてゆく、あの感じ。もうあそこには行かないって決めてる。

さぁ、食事をしよう。もう大丈夫。哀しい事の次には、希望のある事をしよう。寒い日は鍋。独りだってシメまでやる。最後は饂飩と山椒。鶏の出汁や野菜の旨味がたっぷり。白菜なんて1/4個くらい、とろとろにしちゃえばあっという間に食べれる。温かい。温かくて美味しい鍋。ぴりっとした山椒がお腹いっぱいでも食べれちゃう。美味しいものは誰かと食べたい。いつかそんな日がまた来るだろう!!

白菜と鶏肉の鍋
鳥手羽元
白菜
禰宜
豆腐
醤油
みりん
昆布
山椒