
朝食はバターチョコレートサンドとミントティーにする。姉と電話で喋りながら食べる。「あのさ、淑美、もしかして未だ戻りたいなんて思ってないよね?」
夜、渋谷で後藤さんと会った。もし運命とか縁というものがあるなら、彼女との出会いはそういうものな気がする。大学生の時にバイトしてた、渋谷の桜ヶ丘にあったWIRED CAFFEの先輩。APCのデニムに白のコンバースが後藤さんのスタイルだった。数年前に近所の居酒屋で遠くのテーブルに白のコンバースを履いてる女性がいる。見上げると17年ぶりの後藤さんがいた。
偶然の再会から1年後くらい。当時よく一緒に仕事をしてたミオちゃんの上司だって事を知る。嘘でしょ?って、あまりに偶然が重なった。こんな再会ってあるもんだ。
「困った事があったらいつでもいいから連絡して。」
私が一番大変だった時、直ぐに家に駆けつけてくれた。私達の間にあった十数年の年月は、あっという間になくなった。「考えたって仕方ないんだから。考えない。進むしか無いんだから。」後藤さんは離婚を控えてる。長い決断を一人で乗り越えた。きっと大変だっただろう。だけど大人な対応だった。もう結婚はしないって。
こういう人と家庭を持ったら、男は幸せに生きれると思う。前向きで過去を振り返らない。淡々と今日を笑って過ごす。「だって、悩んでる時間勿体無いじゃん!」今夜も大きな笑顔で笑ってる。ほっとする笑顔。
何かに宙ぶらりんとなった私は、行ったり来たりを繰り返してる。わかってる、わかってるのに、この現実を受け止められない。私の心には未だ、夫がいる。