10月30日

Journal 30.10,2020

東京の我が家に帰ると、ポストに少し前に撮影した雑誌の献本が入ってた。
ぺらぺらとめくる。付箋の貼ってあるページにポストカードが挟んである。編集の成田さんからだ。ミミズみたいな文字が愛らしい。

夫のお酒が大変だった時期、すがる想いで西原理恵子さんの本を手に取った。西原さんの夫はアルコール依存症で亡くなった。そういう事が書いてある自伝。本の中で依存症の夫との結婚生活の事を “地獄だった” と表現する言葉にすごく救われた。地獄の事を知ってる人がこの世にいるんだ。

東京に帰った今日は3週間ぶりの心療内科の通院日。
先生には旅行の事は秘密にしたけど、人と時々お酒を始めた事と、今は辛く無い話と、3kg太った事を報告した。先生は嬉しそうに聞いてくれる。「お酒は一杯目はいいんだけどね。」って。その言葉が身に沁みてわかる。そう、一杯目まではいい。

カメラの話だとか関係の無い話を談笑する。「他に何かありますか?」先生が最後に言った。夫の双極性障害の事が頭を過ぎる。多分、彼はこれから鬱になると思う。暴れて沢山の人を傷つけて我儘やりたい放題した後に、誰か側に一人だけ置いて、ようやく自分の時間に入る。

いや、やっぱりやめよう。もう心配しない。考えてもいけない。「大丈夫です!有難うございました。」気持ちよく挨拶して診察室を出た。

私は妻をやめる。夫がした事は現実になってゆく。お互いに死ぬまで持つ事になる現実。大切だった時間よりも苦しかった時間の方が今も強烈に私の中に残ってる。だけど、もう明日も明後日も、明々後日も地獄は来ない。夕飯はピェンロー鍋にした。鍋をよそう度にテーブルに置いてあるミミズ文字が何度か目に入る。人間ってなんて愛らしい生き物だろう。ここは大丈夫。目の前に広がるこの世界は愛に富んでる。