鰤とカボスの味噌汁

Journal 31.10,2020

夕方にふと、7月22日、夫の誕生日の夜の事を思い出す。彼の本心がどこにあろうが、あの夜はやっぱり帰るべきだった。私の夫である前に、ひとりの男として、ひとりの人として、自分の家に帰って欲しかった。

「今夜は少し遅くなる、だから朝に話そう。」夜中になっても帰らない彼に連絡を入れるのは止めた。私が幾ら信じても、それは無力だから。

ずっとずっと前から私は彼の事を知ってたように思う。出会った時、この人はいつか私を捨てるかもしれないって感じた。あれは予感じゃない。彼の仕草に、その言葉の端々に見えてたのかもしれない。私の事だけは捨てない、そうは思えなかった。沢山の人を裏切って、沢山の人が離れていくのを見た。あまり気持ちの良い光景じゃなかった。

彼の通う中目黒の酒場が、どうしても好きになれなくて、馴染めなかった理由はわかってる。昼間とのギャップのある彼を人間らしくて、弱くて、面白い、可愛い、と言う男や女が気持ち悪かったから。一度でいいから、家に来て、彼に殴られてから、同じ言葉を吐いて欲しいと、何度も、何度も心で願った。

彼がまたお酒に溺れていくには、あまりに全てが簡単過ぎたんだ。

酒場が自分の居場所じゃない。そこには楽しい事があるかもしれないけど、そこに答えは無いのに。後悔しても遅いけど、私が後悔してもどうにも出来ないけれど、どうか、帰って欲しかった。