
11月2日、私の誕生日。
今日は時効の日。何ヶ月も前からずっと決めてた。今日という日がきたら、時効にしようって。私が飲み込んでしまった全ては、私の血や肉となってしまうのだろうけれど、もう知らない。トラウマが私を襲い続ける毎日を毎時間を隣に置いたままで、今を生きよう。今を生きなきゃ。
誕生日の前日に警察に被害届けを出しに行った。9月に出すようにと人に言われてたけれど行けなかった。今日の小さな勇気を捨てたら、あっという間に来年の今日になる、その日に後悔する私が見える。私を守るのは私しかいない。だけど、本当にこれが正しい決断だったのかわからない。もう全てがとにかく怖い。何ひとつ整理も出来なければ、答えも出ない。ただ、これ以上に傷つきたく無い。
震える口から出てくる言葉が変だった。女性の警察官に何度も強く言われた。「あなたのことを聞いてるから、あなたの話をして下さい。」私は私じゃなくて、彼だとか、誰かがとかばかりで、上手に話せなくて、時間をかけてゆっくりと話した。過剰に話さない。大丈夫です。とも言わない。他人事みたいに私が見た出来事を淡々と話した。
「それって、おかしいよ。DV受けてる人みたいだよ?」沢山の人に言われたんだけど、全く何を言ってるのか聞こえてこなかった。「実際には叩かれない事だって沢山あって、叩くふりをよくするんだよ。だから暴力じゃないよ。まるで酔拳なんだよ。」っておチャラけて返した。彼は私を傷つけたいわけじゃない。怒りを上手に爆発出来いみたいなんだよねって。だから殴ろうとした拳は私の顔の直前でピタっと止まる。親友みたいに仲良くしてた子もその話に同意してくれてたから、私の意見は正しいと信じてた。彼女の夫も病気持ち。「本人達はね、辛いんだよ。」って彼女は言ってた。私達よりもずっと辛いんだよって。
後になって知ったけれど、病院の先生と話してて、そうなんだって呆然としちゃったけど、拳を目の前で止めるのも、大声で喚いたり、壁や机を叩きわるような音を出すのも、暴力の1つで、それを世界ではモラスハラスメントって言うんだそう。本当に殴ったり、蹴ったり、首を絞めてくるのはドメスティックバイオレンス。どちらの事もよく知らなかった。だから、うちはモラハラとDVのセットみたい。
良い悪いじゃない。許す許さないじゃない。
今日で時効。どこかで決めたかった。思考ばっかりが回って回って、辛いしもう何が何だかわからないから。時効にしたい。
夜は友人と下北沢で食事をした。
外はずっと雨。全てが流れて無くなってくれたらいいのに。