
夕方に緊急事態宣言が出た。
その頃、私は宗政君の家でプリントを刷ってた。
「もうくっついたり、離れたりは嫌だから、結婚しませんか?って、言ったの。」宗政君の奥さんが言った。付き合うっていうか、直ぐに結婚したんだそう。宗政君はお酒が回ってるからなのか、終始嬉しそうにはしゃいでる。こんな風に誰かと所帯を持つなんて想像もつかなかった。結婚って本当に不思議だなって思った。
家には明日パリに帰国する奥さんの大学時代の先輩がいて、パリに長いこと住んでたナオちゃんと友達だってわかった。「ナオちゃん、広尾においでよ!」。一時間もしないうちに、銀座にいたナオちゃんと皆んなですき焼きを囲んだ。何だかとっても面白い夜。
もう、くっついたり、離れたりは嫌だからって。なんかいいな。
恋愛が面倒だと思わないけど、面倒な人とは付き合いたく無い。友達でもそう。誰とでもそう。それに、一緒にいたらさよならする日がくる。大切な人とのさよならだけは二度と厭だ。
最近、私はちょっと人より早く、さよなら体験をしちゃったのかな。そう想う事にしてる。私と同じようにさよなら体験をしてる人は世の中には沢山いて、だけど、そういう人の事を知らなかった。年老いたら、そうなるのかなって、何となく、薄々は気づいていたけど、怖くて知らないふりをしてた。
ちょっとだけ想像してたさよならは、現実とは全然違かった。「いつか死んじゃうと思ったら、大切にしなきゃね。」そんな程度の問題じゃない。さよならは身体がちぎれる位に痛かった。いやちぎれてる。完全にちぎれた。だけど、仕方ない。ちぎれちゃってるものは、どうにもこうにもならない。
もし、私を好きになってくれる人が現れたら、聞いてみよう。「もうくっついたり、離れたりは嫌だって。」
ジャンクな明太パスタが好き。病み付きな味。私は美味しいくらいしかわかんない人になった。これは決していい事じゃない。人として見てはいけないものを見てしまったからだと思う。いいも悪いもわからない。もう、美味しいとしか、言わない。