塩鱈のポトフ

和食 30.1,2021

「『わたしを選んでくれる人』企画のタイトル、よしみさん、日記が面白いから企画の日記も書いて。」編集の山若くんからメッセンジャーが入る。変なタイトルに思わず声を出して笑った。山若くんが編集長を務めてる雑誌の企画で始める事となったマッチングアプリ。これは誰かを騙すわけじゃなくて、自分の持つ世界を失くして生きてみるっていう企画らしい。多分。

「とりあえずKWに会ってきて。」「わかった。」仕事柄、知らない人に会うのは慣れてるから全然問題なし。会うくらい朝飯前。KWさんはいい人そう。ラクダに乗ってる写真をプロフィールに選ぶセンスがいい。それに蓮沼くんの音楽が好きな所もちょっといい。あと、離婚も経験してる。私が一番知りたいのはそこ。さよならを選んだ男の気持ちが知りたい。だけど、今回の企画の趣旨とズレちゃうから私はそういう事を詮索しちゃいけない。詮索したら私探しみたいになってしまうから。

昨晩にパリのまゆみちゃんとメッセンジャーでお喋りした。結婚って何?みたいな話。一度くらい子供を産んでみたいし、いいパートナーとフェアな結婚生活を送ってみたい。だから、自立しよっていう所で話は片付いたけど、そもそもフェアな夫婦関係ってなんだろう。よくわからない。私が大変だった時期に一番側で支えてくれた友人は、私が離婚届を出す前夜に電話があったきり話をしてない。毎日の様に連絡をくれてたけど、朝から晩まで側にいてくれたけど、もう何ヶ月も連絡は無い。友人は私の夫の事をいつも可哀想って言った。「病気ですごく辛いんだよ、だからあなたは耐えて。」って。友人の夫も病を持っていた。

最近、一つだけ希望を見つけたかも。私は離婚を後悔してる事に気づいた。もっともっと早くに逃げれば良かったんだ。私が逃げたら私達はフェアになれたんじゃないかって。私が逃げたら辛いから逃げたら彼は気づけたかもしれない。彼は病気だったからこそ、私は耐えちゃいけなかった。私を助けようとしてくれた友人の事が大好きだったし、心優しい子でとても感謝してるけれど、耐える選択が彼女にとっての未来でも私にとっての希望にはなれなかった。私はきっとフェアになりたかったんだと思う。誰が可哀想かなんて事はどうでもいい。妻や夫の役割なんてものも要らない。ただ、一人の人間として、悲しいとか辛いって、彼に言いたかったんだと思う。

わたしを選んでくれる人はどういうつもりで私を選ぶんだろう。嘘は書かないようにしてるけど、プロフィールは殆ど載せてない。少しの情報を妄想して私に興味を抱く誰か。まるでおみくじ。夫の持っていた双極性障害は500人に1人と言われてる。もし500人とマッチングしたら、その中の一人はアレになる。その確率にどこかで怯えてる自分がいる。どうかどうか来ないで。それに、企画を受け入れたものの、恋愛を全身が拒否してる。星の王子様と恋に落ちるみたいに一生来ないその日を待望してるみたい。だって、本の世界の人だから。同じベッドで肌が触れる日は永遠に来ない。まず、私の頭をトンカチで割って中身を全部だして、そこに甘い綿飴でも詰めたらいいのかも。

この企画、きっと適任。流石、山若くん。
だって、私は甘い夢だけを見たいから。

塩鱈のポトフ
美味しい鱈を塩漬けしたもの
昆布
キャベツ
人参
きのこ
玉ねぎ