
「私は覚えてるよ。彼が向き合うことから逃げたんだよ。」
何だか毎日の中に埋もれてしまって、離婚を後悔してるみたいって事をメッセージすると春名さんが教えてくれた。私の記憶は断りもなく勝手に色々を忘れようとしてるみたい。そしてストーリーを上書きし始めてる。あの日々の事を彼女は覚えてる。全てじゃないけど、殆どを知ってる。口には出せない様な事も。春名さんの言葉がずんと身体に響いた。そうだった。彼は逃げた。通り魔みたいに人を刺して逃げた。顔を隠して、私しか知らない顔を隠して逃げて行った。
夜中に姉から電話が来る。ポールさんのアビュースについて苦しんでた。今、結構ダウンしてる。ずっと私に同意を求めてくる。「わかるよ。」何度もそう返した。
何だかどっと暗い気持ちでベッドに潜った。よくわかるから聞きたく無いって思ったけど、姉と話して良かった。それに、友達に感謝してる。私の不幸を覚えていてくれて、ありがとう。
気持ちの良い朝。過去を思い出したら、何だか強くなれる気がした。昨日買ったアネモネが朝陽の中で気持ち良さそうに開き始めた。強く生きるっていうのはこういう事な気がする。