もやしご飯

エスニック 16.3,2021

編集の山若くんが打ち合わせとランチをしに家に来た。残り物のチキンカレーと、豆もやしご飯、先週に漬けたキムチ、スペアリブと大根の花椒煮、ぬか漬け、大根の皮と人参の金平。家にあるもので準備した。山若くんはヴィロンのパンを買ってきてくれて、偶然にも私の好物、パンオショコラが入ってた。嬉しい。

ご飯を食べて珈琲を入れた。本の話や、今進めてるマッチングアプリの話をする。出版の事をちゃんと知った方がいいと思って流通の話を教えてもらった。出版社に就職すると、新入社員は本屋での研修があるんだそう。そこで、本がどう売られていくかっていうのを現場で見る。その時に感じた事を教えてくれた。取次っていう役目の人から本が本屋に送られてきて、そのダンボールを開けて、コーナーに置いていく。どさっと来て、本棚に置いていく。とにかく忙しいから、その本の中身を見る時間も無いし、その本がどんな人が書いてるのかもわからない。どさっと来て、どんどん置かれてゆく本は、本当にその場所でお客さんに出会えるかわからない。残念な事だと思うって。面白いな。初めて知った。

それから、どんな本にしようって本棚にある本を触りながら、紙の事や、お互いに思ってる事を話す。私はここ数日に考えてた事を言った。アートな本にしたくない、今まで話してた様な写真の間に文があるような本は何だか違くて、もしかしたらエッセーの様な形でいいんじゃないかって、写真を見せたいし、写真集が作りたかったけど、この本には合わない気がしてる。写真はそんなに要らないかも。それくらいの気持ちでいいのかもって。うーん、難しいって言った。とは言ったって、やっぱり写真を見せたい気持ちがどこかにあるから。

「エッセーいいじゃん!!!」ニヤニヤして嬉しそうに山若くんが言った。実はエッセーがいいんじゃないかって思ってたんだよ、って。写真は数枚だけ、本の最初か最後とかにまとめて。裁ち落としじゃなくって、ちゃんとエッセーと同じテンションになるよう余白を入れて見せる感じがいいと思う。イメージが湧いたみたいで、メモ帳とペンを取って、スラスラ何かを描き始めた。楽しそうだな。こういう時間がいいなって思う。やっぱり、楽しい時間が好き。

次にマッチングの話をする。もうどうにもこうにも、自分の素性を明かさずに誰かと知り合うって難しい。それに、もう一つのアプリで素性を明かして始めた事を話した。「そもそも、出会えないよ。いい人には。」山若くんが言った言葉に驚く。だって、私が自分の世界を失くして、私を知らない誰かと出会って、自分の持ってる世界じゃない場所で短くてもいいから恋に落ちて欲しいっていうのが企画の希望なのに、出会えない?何だか、わかった気がした。自分を隠して装って誰かと会っても、お互いにそんな事をやっても出会えるわけが無い。それをどんどん壊していってとの事。どうせ一生会わないんだしさ、気持ち悪い事言われたり、変な人がいたらどんどん、嫌だって言っていこう。たいがい、いい人なんてそこにはいないんだから。アプリへの偏見じゃなくって、自分にとってのいい人っていう意味だと思う。自分をよく見せたいより、相手を知りたい、そういう勇気が新しい世界を作る。そういう事を言ってる気がした。それにしたって、私の携帯を渡してからもう2時間は経ってる。ソファーに座って、何の駄菓子が好き?とか、おすすめのつまみを教えて!とかメッセージのネタを聞きながら、楽しそうに沢山の男とやりとりしてた。山若くんが帰ったのは18時過ぎ。疲れたー!って言ってた。そりゃそうだよ。ビールを飲みながら、バトンタッチしたメッセージを続けたけど、ビールを飲み終わる頃には面倒になって止めた。

明るい毎日が続いてる。友達が楽しい事を運んで来てくれる様に思う。私が明るくなるだけじゃない。恋が始まりそうでワクワクしてる友達がいたり、ずっと音楽を頑張ってた子がビッグカンパニーの仕事をゲットしたり、嬉しいニュースも入ってくる。心の裏側に黒い物がまだ隠れてるけど、私は明るく行こうと思う。

もやしご飯

豆もやし
鶏ガラスープの元

もやしご飯のタレ
にんにく 1片
醤油 大さじ2
砂糖 大さじ1
すりごま 小さじ1
ごま油 小さじ1