鮭ごはん

和食 16.6,2021

朝から雨。気持ちがいい。昼頃に藤原さんと下北沢でロケハンと打ち合わせ。撮影は来週。なんて穏やかな日なんだろう。待ち合わせより20分早くお店に入って紅茶を飲む。穏やか。この生活に慣れたようで慣れない。まだまだ新鮮さを感じてる。いちいち感動や関心がやってくる。化粧を丁寧にして、今日の気分で服を選ぶ。テコと朝から遊んで、ゆっくりと朝食を取る。本当にこんなに穏やかな生活を、あの人も、あの人も、その人も、こんなに平和な世界を毎日暮らしてるの?こんなに毎日って自由なの?嘘でしょ。最高じゃん。

「あれやって、これやって。今からあれ持ってきて、amazonでこれ買っておいて。ねぇ。ねぇ、お腹すいたからご飯作って。」夫の声がしない毎日。我儘を言ってるのはテコくらい。本当にこんなに毎日は時間は有り余ってるの?歩きながら笑いたくなる。いや、多分最近の私はマスクの下でひとりで笑ってる。今日は多分笑ってた。

東北沢駅から降りて直ぐのところにあるカフェ。新しいコーヒーのお店。嗚呼、幸せ。イかれてるって思うけど、普通の事がいちいち嬉しい。今日のアイシャドウが気に入ってる。そんな事でも嬉しい。ひっきり無しにならない電話。何でもかんでもお願いされない私。椅子に座っても嬉しい。しばらくして藤原さんがやってきた。それだけで嬉しい。打ち合わせするのも楽しい。頼んだベーグルも美味しくて嬉しい。

どうかしちゃってると思うけど、普通の事が8年ぶりにやってきて平和で安全で単調な毎日に驚いてる。嬉しくて仕方ない。私っていう人の事が少しわかった。大いに馬鹿な女だった。夫だった男は私の事を愛してくれたけど、大切に扱わなかった。私も私を大事にしなかった。ああ、可哀想。私っていう人。

こないだ姉が「私達さ、地獄から這い上がったでしょ。」って。アメリカ生活が長いから日本語が時々変な姉だけど、上手い例えに関心。うん。這い上がった。必死に登ったな。そして何度も落ちた。ここはもう地獄じゃない。私には時間があるし、これから昨晩見逃した大豆田を見ようと思ってる。毎日洗濯機を回さなくていいし、家計簿をしっかりつけて頑張って貯金しなくてもいい。帰ってこない人を待たなくていいし、冷める食事を作らなくていい。嘘をもう見破らなくてもいい。堂々と愛さないでいい。

穏やかな時間をじっと覗き込んでしまう。今日も私は浮足立って歩いてた。

鮭ごはん
甘じゃけの切り身 2枚
昆布 1枚
米 3合
お酒 大さじ1