
10時から料理家の中島さんのアトリエの撮影。今日は調味料についてのレッスンを撮る事となってる。AM 5時に起きて、かかんの映像の構成を考える。この仕事はフジモンが紹介してくれた。フジモンは現代精神病について大学で学んでる。たまたまだけど、パリのマユミちゃんとフジモンと9年くらい前に山口君家の飲み会で出会ったのが今と必然的に繋がってる。彼女の学びは昨年の私をしっかりと支えてくれた。
そういえば、初めて二人と出会った日の翌朝にあの男は初めて私に暴力を振るったんだ。凄く久しぶりに思い出した。朝の9時くらい。男が店長をしてた店に来てと呼ばれて行くと、酷く酔っ払った男が店のドアに私の頭を叩きつけた。飲み会の事を怒ってた感じだったけど、よくわからない怒りだった。怖くて逃げるように店を飛び出して、ぶるぶると震える心と一緒にバスに乗った。家に着いた頃、別人となった男が甘えた声で何度も何度も電話の向こうで謝ってる。「御免なさい。もう二度としない。本当にごめんなさい。スーちゃん行かないで。」。
よく何も知らない人が「される側にも問題がある。」って言うけど、そんなに見たまんまの事はそこでは行われてない。世界って場所は、絵本の中の様に簡単で狭くて小さくない。ヒーローも悪役も同じ人間が演じる事となるし、死ぬまでストーリーは終わらない。説明が出来るような事は、氷山の一角。殆どが光に照らされてないって思う。思うっていうか、色々があってから知った。
こんな経験が私の人生において何の意味を持つのかわからないけど、失った事や人がクレーターの様な大きさでも、それとは別に驚くくらいに好きな人が増えたことも事実。映像を撮ったり、今日みたいに、その映像の構成を考えたり、新しい事も単純に増えていく。午後は撮影が終わって、中島さんとのプロジェクトの打ち合わせ。二十四節気の話になった。夏至とか、大寒とか、耳にしたことがある言葉は幾つかあるけれど、それが食べる事と結びついてるなんて知らなかった。新しい何かに出会えば出会う程に、要らない記憶は胃袋みたいに収縮していく。帰って素麺を茹でて、横になったらそのまま寝てた。お風呂にさっと入ってまた寝た。そして夜中に起きて電気を消してまた寝た。驚く位に寝た。多分、10時間くらい。ここ数日、背中にあの男のじんわりとした温もりを思い出してる。