夕飯

Journal 14.8,2021

午前11時。今日も30分のカウンセリング。外はずっと雨が降ってる。涼しくて気持ちがいい日。始まって直ぐにカウンセラーさんが言った。

「前のような無力感、後悔、悔しい感情、前回が10として、今はどれくらいに感じますか?」

質問を聞いて少し驚いた。前回のカウンセリングから2週間。たったの2週間で私の感情が大きく変わっていた。2週間前に苦しんでいた何かが今は無い。

「今は違う感覚です。そういう表現では無いかもしれません。」

アドバイスと共に心理学の本でコンパッションを学ぶようになった事も大きくあった。その事も伝えると、カウンセラーさんはとても驚き、喜んでいた。

「今の事を例えるなら、水の深さがわかったら怖くなくなった。そんな感じです。」

今でも十分に哀しみは全身に浸透してる。皮膚の全てに張り付いてるみたいに、もうここからは居なくならないんだろうなぁとも思う。だけど、水の深さがわかったら泳ぐのが怖くなくなった。足元に広がる見えなかった不安や恐怖がなくなると、例え皮膚に纏わりつく哀しみがあったとしても、この身体は十分に健康であり、私は思いっきりに腕を伸ばして泳げる事がわかった。「なんだ、私、すいすいと泳げるじゃん。」その、すいすいが、伸ばした腕に当たる水が、私がどうゆう形だったのかを気づかせてくれる。内側から破壊された色々があっても、クッキーの型取りみたいにポンって。そうこうしているうちに、毎日が温かい何かで満ちていた。

思い出のあるジュエリーを全て処分したら、私からはアクセサリーが殆ど消えた。大好きだったゴールドのジュエリー。思い出が沢山詰まった大切なジュエリー。本当はゴールドが好きだけど、この1年で何となく買ったシルバーのジュエリーが幾つかあった。先日に母からゴールドのネックレスが送られてきた。ペンダントヘッドには、母が昔から大事にしていた向日葵の絵柄のコインをあげるからと連絡が来た。洗面所で歯を磨く度に、クローゼットの前で洋服を着替える度に、鏡の中の私の首にかかったゴールドのネックレスが見える。失った何かがまた戻ってきたみたいに感じる。それは元夫ではなく、私自身の何か。

あの男は、悪い人だから返って来なくていい。私の中の気持ちが少しずつ輪郭をなしてきた。「返って来て。」叶うことの無い願いはいつしか消えていった。

夜の19時、編集の成田さんと、リリさんがやってきた。今日はリリさんの就職祝いを兼ねたご飯会。成田さんはお花を、私はスパークリングを準備。ご飯も色々と準備した。

他愛もない話から、真面目な話や恋の話、今日も沢山話した。二人との会話は尽きないし、心地がいい。安心してずっと一緒にいたくなる。12時を過ぎた頃、リリさんが発作を起こした様に泣き出して、あっという間に終電も終わった。何か言おうかなと思ったけれど、やめた。泣きたい時はいっぱい泣いた方がいい。そこにはきっと答えなんてものは無くて、哀しいから泣いてるだけ。それで十分だと思う。ああ、今夜も楽しくて飲みすぎた。肌寒い夜。とても気持ちがいい夜。

夕飯
春巻き二種、ツナと紫蘇ジェノベーゼ、エビと禰宜
茄子のナンプラー揚げ浸し
よだれ鶏
新生姜と味噌
鶏出汁の炊き込みごはん
胡瓜とニラの塩麹漬
ニラの大蒜醤油漬
山椒の塩漬
鰹節の甘めに炊いたふりかけ
お土産の蔵王チーズ

ワイン沢山