
“人生とは、何かを手放すとまた新しい物がすっと入ってくるもんだ。”と、よく言うけれど、半ば諦めてたベッドルームの照明問題。前のライトが失くなってから二日。ハイパーにパワーアップした素敵なライトがやってきた。夜な夜なネットであちこちを探し回っている中で、急にふっと思い出した。「あ、そういえば、春にブルペンで素敵なライトを見たな。」直ぐにネットで調べて、ブルペンに電話。「テーブルライトありますか?」「ありますよ。」「あの、なんとか熊みたいな名前の。」「稲熊ですね。有りますよ。」工場にもネットにも、一点物で作ってるライトの在庫は生産自体もしばらくお休みだと書いてあったけど、店にはあるとの事。編集の野村さんがブルペンで素敵なフロアライトを買ったという話を思い出して直ぐにLINEして値段を聞いてみる。むちゃくちゃ素敵な藤のフロアライト の写真が送られてきた。テンションは、だだ上がっていく。「ブルペンとの別注のライトが可愛いですよ。」「そうなんですね!今から行って来ます!!」何だかいい予感しか無い。ずっとずっと探してきたライト。ようやく今日こそ出会えるかもしれない。長い長い旅だった。
「テーブルライトを見に来たんです。」「こちらのか、別注のはこちら。しばらく作らないので、これが最後の一つです。」「別注の方で!」迷いもせずに別注で決まった。すっごくバッチリな風貌だった。他のライトの事も色々とお話を聞いた。ビンテージの16万のも欲しかったけど、さよなら。今日は無理。もう二度と会えない素敵なライトにお別れをしてウキウキで重いライトを持って青山へ向かう。こんな事ってあるもんだ。まさかのラストワン。こんな近くにあったなんて!
「マックスマーラ前にいるよ」と後藤さんからLINE。行きつけの古着屋へ連れて行ってくれた。私の今年の冬の目標は素敵なユーズドデニムに出会う事。古着先輩の後藤さんと一緒にビルの一室にあるショップへ入った。まるでプレスみたいなショップ。デニムが沢山。中にはガラスケースにも入ったデニムも。「女らしいデニムが欲しいんです。」幾つかデニムを試着して、8万のビンテージデニムもちゃっかり履いて、お気に入りの一本を見つけた。古着先輩と仲良く店員さんがお喋りしてる。そして凄い話を聞いてしまった。「デニムは一生物だからね。」ライトを買ったばかりで今日はお買い物はなぁと思っていたけど、一生物なら仕方ない。母もよく、一生物と良い物に関しては買うべき時に買いなさいと言ってたし、それに今日後藤さんに会えるのが楽しみで仕方無かった。だから、きっと今日は特別。嬉しい日だから買ってしまおう。
大荷物で歩いて数分の居酒屋さんへ。古着先輩が直ぐに予約を取ってくれた。そして、後藤さんの新しい恋の話をたっぷりと聞いて、最高にハッピーな夜を過ごした。こんなに幸せな事ってあるだろうか。嘘みたいな毎日の話を、嘘みたいな現実の光景を、ニンマリしながら話してたと思う。だけど、きちんと過去の苦しみも持ってる。だから今が楽しくて仕方ない。そんな気もした。過去のあの時はそれに必死で通り過ぎてしまった事も、今だから思い返せたりする。過去は過去だからってバイバイじゃない。過去は今に繋がってるし、それが今を作ってる。最悪だった事も最高だった事も今を作ってる。
勉強してる心理学のコンパッションで近しい考えがある。最悪とバイバイしないほうが幸福になれるという人間の心理について。私達人間には苦しみを優しさや愛情で癒す力を持っている。自分の苦しみにその力を向けられるのは他人ではなくて自分。だから、過去とバイバイしたら、癒せなくなってしまう。先生の考え方で色々な言い方があるけれど、チャンスだと云う人もいた。自分を癒せるチャンスだって。そんなチャンスは要らないよとも思ったけれど、誰しもが人生に置いて必ず出会える物。それをどうかよく受け取ってって云う意味なんだろう。
帰宅してお風呂に湯をはってる間に、パンツ一丁で脚立に乗って仮でつけてたIKEAのシーリングライトの撤去と、新しいテーブルライトの設置をした。いつだったか姉が言ってたな。「家の色々な事、男手が欲しい時は特に、ニコが死んで居ない事を辛く思うよ。」って。私はいつも一人でやってきたと思う。ダブルベッドも一人で担いだし、家のDIYも全て一人でやった。3度くらい一緒にした引越しも全て一人でやった。どうしてかな。大変な時にいつも俺は忙しいと出かける元夫が作ったのは犬小屋くらい。梃子は全く見向きもしなかったし、何度も板のささくれで指を傷をつけて、本当に悪魔な代物だと思ったのを覚えてる。だから、パンツ一丁でライトを別の部屋に綺麗にバッチリな感じで取り付ける事も、明日やろうじゃなくってささっとやれる。男仕事を出来る。これが私の特技かもしれない。
お風呂から出て、ベッドルームの最高な塩梅の調光を眺めた。調光は二段階。二段階目の暗い感じも素晴らしい。ぼーっと見つめていたらそのまま朝が来た。ハッピーすぎる夜だった。