
やっぱり耳が聞こえない。何だか昨日よりも聞こえなくなってる。左耳を塞ぐと耳栓状態。耳の周りもじんわりと麻痺してる。完全にストレスだ。心身共にピンピン何だけどな。だけど、どこかが頑張り過ぎてるって事だよね。今日は仕事するのをやめよう。
「耳の周りの血流がストレスとかで滞ってるのよ。温めてマッサージ!」母からメールが入った。プロジェクトのやり取りでメールをしてたフミエさんからも「自然に触れたりするといいかも!」と、教えてくれた。ベッドでしばらくマッサージして、ゴロゴロして、午後は駒沢公園へ行く事にした。ポストを開くとマユミちゃんからの手紙があった。黄色の封筒にスラスラと書かれたフランス語。ポストに手紙が入っていると、一気に気分が上がる。公園で珈琲でも飲みながら読もう。
珈琲を買って、ベンチに腰掛けゆっくりと時間をかけて手紙を読んだ。二周して、封筒にしまった。手紙は9月26日の事が書いてある。一ヶ月前に、パリの部屋で彼女が手紙をしたためてるのを想像するだけで幸せな気分になる。
夕方に一本だけ堀江さんと電話で打ち合わせ。もう7、8年の付き合い。当時はクリエイティブディレクターアシスタントとして、今はフォトグラファーとしてお仕事を請けてる。
先週の撮影の帰り、恵比寿のスタジオから三茶まで送って貰って、何となく離婚の話になった。私がミュージュシャンと結婚する事が決まって、昔バンドマンだった堀江さんはすごく喜んでたけど、離婚の話を打ち合わせの時に話して目を丸くして驚いてた。それで、簡単に離婚の理由を説明すると、自分の離婚の話をしてくれた。当時の私なら全然聞こえてこなかった話でも、今の私なら全く違う感覚で堀江さんの話が聞こえる。それも、何だか鮮やかに聞こえる。堀江さんは今も昔も変わってないのに不思議な気分だった。私が知れなかった堀江さんは、沢山の苦労を乗り越えてきた人だった。どうしていつも、どんな時も、面倒見がいいとか、嘘をつかないとか、嫌な事が起きてもきちんと向き合ってくれるとか、色々な背景に納得した。出来る事なら、離婚する前に相談したかった。そしたら、もっと傷つかずに傷つけずに離婚が出来たかも知れない。
当時は、大概の人が離婚した方がいいとアドバイスしてくれたし、夫の音楽友達でさえ、離婚も有りだと思うって遠回しに離婚を勧めてきたけど、結局のところ、誰もが離婚未経験者で、離婚がどれだけ苦しいかなんて、離婚後にどうやって生きていけばいいのかなんてアドバイスをしてくれる人は誰一人いなかった。想像と実際に経験するのは全く違う。だから、離婚を選ばない友人達を見て、勇気がないだけ!なんて今は言わない。99%離婚しない方を勧める。苦しむ覚悟が無いなら、やめた方がいい。そもそも今の問題を解決できていないのに、離婚したからって解決できるわけでも無い。もっともっと大きな溝に堕ちる。人生そんなに甘くない。ただ、逆に言えば、覚悟が決められる。
「この仕事が終わったら、こないだの話の続きをしましょうね!」電話を切った。何だか、すごく嬉しい。人生って面白いものだと思った。