
「月曜日は振替休日にしようかな。」結局、周三君は火曜日まで泊まる事になった。「午後に三本打ち合わせがあるから、終わったらスーパーへ行こう。」周三君は、振替休日だと言ってたのにダイニングテーブルでずっと打ち合わせをしてる。私は自分のデスクで納品作業を進めた。少し離れた所に彼が見える。いつもよりもディスプレイにずっと近づいて彼の顔が見えないようにした。
「夕飯に餃子はどう?」満面の笑みで承諾する周三君。彼がよくする子供みたいな素直な反応にいちいち心が踊る。可愛いな。お風呂に入ってビールを飲みながら一緒に餃子を巻いた。何の話をしてたんだろう。よく覚えてないけどずっと楽しかった。周三君は学芸員という仕事をしてる。だけど、そんな話は殆どなくて、22、23才の頃に二丁目のゲイに世の中の酸いも甘いもを教えてもらったとか、アイヌのウポポイの研究での刺青の話だとか、沢山の話を子供を寝かしつける親みたいに優しく話してくれる。だから、いつどこでどんな話をしたか覚えてないくらいに、いつもとにかく楽しい。そうして、何だか覚えてないけど沢山笑った話の中で、私が不意に「そう言えばさ、何か言う事なかったっけ?」って意冗談混じりで聞くと、餃子を手に持ったまま真剣な顔でプロポーズをしてきた。「これは歴史に残るね!」嬉しそうに笑ってる。何だか色々が目まぐるしくてよくわからなかったし、数日前のLINEでのプロポーズの事も話半分にしておこうと思ったけど、この人となら何だか幸せになれそうな気がした。