
週末に大好きなNYのジュエリー作家のオーダ会を青山やってると知ったのは数日前。年に数回のオーダ会がこのタイミングだなんて何とも言えない。「見に行ってみる?」と、周ちゃん。結婚が初めての周ちゃん。2回目の私。指輪の前に立って、結婚がどんなものなのかを一緒に話が出来たらいいなって。目の前の景色を彼はどう感じるのかが知りたかった。
1回目の結婚の時は、私は恵比寿のジュエリーショップで指輪を、元夫はギターを結婚指輪の代わりに買った。その数ヶ月後にギターは家から姿を消し、1年後に二つ目の結婚指輪を買う事となった。お酒の色々や結婚を隠す元夫への怒りが爆発した時だった。新宿伊勢丹でSHIHARAの指輪を購入。結局、指輪は1週間で何処かに放置されて、私はその指輪を救済。右手に元夫の指輪を。左手に私の指輪を2つつけた。これが私達の愛の形。全て私が受容れたらいい。そう信じきっていた。
周ちゃんは薬指に色々なデザインの指輪をつけては外してを繰り返してる。学芸員という仕事だし、派手なのは避けたいとの事。黙々と選んでた。「周ちゃん、とりあえず一回ブレイクしない?」ジャイルの最上階のカフェで、私は抹茶ラテを周ちゃんはジンジャーエールを頼んだ。テラス席から見える秋の夕方の空は淡い青とサーモンピンクのグラデーションが重なって、ただのビルでさえ切なく見える。程良く賑わったテラスでは、ワインを傾けるカップルだとか、買い物帰りの女性とか、赤ちゃんを連れた女性が東京の空を見ながら気持ちよさそうにCOREDOビールを飲んでいた。
「周ちゃん、本当にいいの?」
「いいよ。だから買いに来たんじゃない。」
「周ちゃんは死なないよね?」
周ちゃんは私の変な質問にずっと笑ってた。そして、「今日の夕飯は手巻き寿司はどう?」と言った。誕生日に食べたいのは手巻き寿司がいいと聞いた事があった。彼にとって今日は特別な日なのかもな。だけど、そういうの、私は要らない。毎日が普通で、ただただ平凡で安全なだけでいい。今日が特別にならないで欲しい。もう大切なものを失うのは嫌。
「周ちゃん、お店に戻ろう。」指輪は2月半ばに出来上がる。