
昨日のワインが少し残ってる。そんなに飲んでないのにな。ちょっと朝から辛い。何だかクリスマスが終わったくらいから少しだけ気持ちが滅入ってる。今年最後の撮影を終えて帰宅。明日後藤さんにあげるキムチを漬けて、残ってる仕事をただひたすら終わらせていった。だけど、結局年内に終わらないものが沢山ある。正月で間に合いそうなものはもう諦めよう。大掃除と年賀状を優先させよう。
周ちゃんとの事もモヤモヤしてる。プリマリタルカウンセリングの本で家族に関する話を読んで、一昨日の夜に周ちゃんにLINEで聞いた。本当に良かったんだろうか。やっぱり会って話すべきだったかもしれない。気軽に聞いたり話す内容じゃなかった。ちょっと後悔してる。内容は元の家族と新しい家族への心の切り替えについて。結婚をする上で大前提にある問題らしく、家族想いな人によく見られる問題なのだそう。それは、悪く言えば元の家族への執着で新しい家族へしっかりと自分を移行する決意や覚悟を持てない人に起こる。自分を形成するのに大きな影響を与えてくれた元の家族を卒業し、新しい家族をパートナーと作る。これが結婚っていうもの。何十年と心の拠り所としていた場所から二度と帰らないよと出掛けるようなもの。そりゃ簡単なわけがない。だけど、そこで自分の居場所を間違えると大きな問題に発展するケースが多いという話だった。周ちゃんは家族が仲良しで、特に妹とはよく連絡を取ってる。それはずっといい事だと思ってたけど、少し距離も近い様な気もしていた。”大切なものを三つあげて下さい。” この質問に対して、”元の家族”と言った場合、この問題に該当している場合が多いとの事。不意に質問した周ちゃんのLINEには “元の家族” と書いてあった。そして、やっぱりと思ってしまった。
すごく迷った。お互いに傷つくのが分かってて言うなんて嫌だ。だけど、これからを恐れて大切なものを犠牲にしたくない。私の結婚や離婚をケースに家族を作るという事がどういう事なのかと、私が経験した上で感じた家族という考えをしっかりと伝えた。周ちゃんの今の考えを否定したくないし、そのままでいいと思ってる。それは今の周ちゃんを好きになったから。だけど、周ちゃんが元の家族の場所に居続けたいのなら、私は周ちゃんとは結婚したくない。それなら私達はパートナーっていう形でいい。自分でも何を言ってんだろうと思ったけれど、この結婚はやめた方がいいかもしれないと小さく覚悟した。LINEが既読になってからしばらくして周ちゃんから返答があった。怒るかなって思ったけれど、怒ってなかった。未だ経験の無い事だけど、初めから家族になりたいと思ってたって。少しほっとした。だけど心にわだかまりが残ったままに今日を終えようとしてる。
“今日はロッキー山脈を越えてモアブに到着したよ。” 夕方に入ったLINE。”電話出来る?” 夜の23時くらい、モアブが朝の7時過ぎに寝起きの周ちゃんから電話があった。周ちゃんはどうだったかわからないけど、私はずっとぎこちないままに2時間くらい話てたと思う。いつもみたいにどうでもいい言葉も笑顔もあまり出てこない。頭の隅に考えている事とビデオに映る周ちゃんが同時進行で今にある。どうしていいのかわからないままに時間が過ぎた。「朝ごはん作らなきゃ。もう切るよ。」こっちは夜中の1時を過ぎていた。「周ちゃん!一つ伝えたい事がある。5分だけいい?」「うん。なあに。」周ちゃんのなあにって声がいつもすごく好きだなって思う。今も本当に大好きだなって思った。
「周ちゃんが行ってから最初はすごく楽しかったんだけど、行ってらっしゃーいって気分だったんだけど、未だ1週間しか経ってないのにすごく寂しい。どうしてなのか、もう大人だし色々と恋愛も経験してきたし、周ちゃんとはもっと上手に距離を縮めていこうと思ってたんだけど、頭で考えている事と気持ちが想う事が全然コントロール出来ないみたいで。何だかすごく困ってる。私、寂しいみたい。」私は一体何を言ってるんだろう。LINEでの事も話したかったけれど、口が勝手に今の気持ちを、寂しいって想いを伝えていた。これってなんなんだろう。いいとか悪いとか頭で考えることはもう完全に無視してる。
電話を始めてからの2時間くらい、私の心が閉じていたのを周ちゃんも気づいていたかもしれない。周ちゃんの顔からいつもの笑顔がどんどん溢れてきた。気づけば顔がくちゃくちゃになって笑ってる。「あのね、よしみは電話で話す時は好きだって言わないのに、電話切ってからメールで伝えてくるんだよ。」「私、友達とか誰でも好きって堂々と言えるよ。周ちゃんには恥ずかしいだけだよ。」「だけど、素直に伝えてくれたら嬉しいよ。」元夫にも、昔付き合っていた恋人達にも同じ様な事を言われた事がある。一番に大切な気持ちに限って上手に表現出来ないよね。どうして後から言うの?ってよく怒られた。ずっとその理由が分からなかったけどようやく分かった。どうして私は電話を切ってから周ちゃんに好きだと伝えてしまうんだろう。「それは個性なのだから!」とさっきは咄嗟に反論したけど、本当はきっと、怖い。それが私だから。今やってる表現もそう。写真を撮るとか文章を書くっていう間接的に気持ちを乗せてしまう癖は私の色々に繋がってる。もし、それをやめたら私が欠けてしまうんじゃないか。私は色々が下手くそなのはわかってる。だけど変えるのは怖いんだ。「周ちゃん。分かった。練習しよう。」夜中の2時、面と向かって好きだと言う練習をした。私達ってバカだなって思ったけど、何だかいい。周ちゃんは楽しんで付き合ってくれてる。私はどんどん私を捨てちゃえばいいし、私はどんどんまた別の私になればいい。離婚して名前や家族を失ってアイデンティティの崩壊が起きて、気付いたら半分の私が死んでた、その時に生きるのは守る事じゃなくて変化していく事なのかもしれないってわかった。だから、私は私に居座る必要はきっとない。
電話を切って今日はLINEしようと思わなかった。だってさっき好きだと散々言ったから。もう好きだと言う気持ちが何処かに消えてしまうくらいに練習した気がする。だけど、大好きならきっとまた勝手に湧いてくるよね。今日はもう寝よう。周ちゃん、ありがとう。
周ちゃんが帰国したらあの事を話そう。会ってからその時の気持ちで話したい。