晩酌

夕飯 09.1,2022

今日は周ちゃんが隔離されてるホテルへ差し入れを持って行った。もう隔離は終わるのだけど、何だか日に日に顔から元気が少しずつ少しずつ無くなっていくのが気になった。うちから電車で1時間くらい。場所は幕張の方。テレビ電話の向こうに青い空と川の様なものが見えたけれど、あれは東京湾だったらしい。私が到着した時、今日隔離が終わった人達がバスに乗り込んでる所だった。その後にもシャトルバスが3台待機。中年の男性が声を荒げて怒っていたけど警備員さんは慣れた感じで誘導していた。「差し入れですか?すみませんね。もう少しお待ち下さい。」しばらく待つ事となった。ホテルの入り口は白いテントの様なもので覆われてる。周ちゃんに電話してホテルの下に着いた事と中年の男性が怒ってる事を伝えた。殺伐とした様子に少し不安になる。「今日は他の部屋で女性が発狂してたよ。」電話の向こうで周ちゃんが言った。

いく先々の空港の様子を写真で送ってくれたり、PCRをまた受けたとか、アメリカの街での状況だとかを逐一聞いていたけど、実際に自分が少しでも触れると怖く感じた。今日は来て良かった。知れて良かった。携帯から見える景色はつるっとしたままで空気の色だとか温度まで感じられないから。荷物を係の人に渡して、周ちゃんの部屋が見える場所へ移動した。9階を見上げてみる。「見えるはずないよね!」って話してたけど、笑ってる表情が見える。お互いに手を振りあった。3週間もの間ずっとテレビ電話の中にいた周ちゃん。生の周ちゃんを捉えた目から全身に血が巡るみたいに充足感で満たされていく。いつもなら電話を切っても直ぐにまた電話したいと思うのに、今夜はこのまま静かに寝れそうだなと思った。人間って面白い。色々を感じるように出来てるんだな。

ホテルの横に寿司屋があるのを見て、今夜は寿司にしようと決めたのに、イカリングが無性に食べたくなったのでイカリングの惣菜をサミットで買って帰る。後はスナップエンドウを湯がいて冷蔵庫に余ってるおかずを並べて晩酌を始めた。22時過ぎ、いつもの様に周ちゃんに電話すると差し入れしたミカンを嬉しそうに食べてる。「沁みる〜。」満面の笑み。さっき見たばかりの周ちゃんがテレビ電話の中にいる。私じゃなくて身体のどこかが言った。目で見れたのだから、次は触れたい。何だか無性に会いたくなってきてる。私の欲望、怖い。