
周ちゃんと会って沢山の話をした。久しぶりに形のある周ちゃん。当たり前だけど肌が温かかったし、声は呼吸と一緒になって聞こえてくる事に少しドキドキとした。3週間ぶりの周ちゃん。色々を知ってるのに、知らないような感じもした。
帰国したら話したい事が沢山あった。その1つが結婚の形について。確か周ちゃんがデンバー辺りに滞在していた時だと思う。結婚についての事を色々と調べて、私の人生ならどうしたいのか、心の事も過去の事も、これかの事も色々と考えて周ちゃんに今の気持ちを電話で伝えた。「事実婚が良かったけれど、法的がいいって思ったの。」法的結婚には色々な問題がある。それに、アレは私のアイデンティティが崩壊した最低なもの。
だけど、よくよく調べていくうちにわかった事は、結婚制度というのは税金の恩恵を受けられるように定められているものであり、それに対し事実婚は想像していたよりずっと社会的には未だ認められていなかった。婚姻関係を証明する方法についても、公正証書を作ったり、住民票の記載を夫婦としてみたり、他にも色々と面倒そうに見えた。それに同性婚の様に事実婚を選ぶしか無い場合を除いて、法的結婚を否定したいというネガティブで且つ強い意思が必要に思えた。
アメリカの場合、フランスの場合、そんな話もした。周ちゃんの家族はアメリカにいる。私もそう。心のオアシスとも言えるような友人がパリにいる。私達はそれぞれに色々な結婚の形を知ってるし、それが結構いいとも聞いてる。それはとても希望的な話で自由そうで新しくて、なんなら魅力すら感じてた。だけど、私達が今を生きている場所は日本。色々な形は知ってるけど、私達はこの国の法や社会の中に身を置いてる。だから、希望ではなくて、私たちの今の話をしようって。周ちゃんは、私が結婚について調べてきた事や想いを綴った大学ノートを眺めながら、じっと静かに考えてる。時々、何かを書き込んでる。家で分厚くて難しそうなタイトルの本を読んでる時の顔と一緒だ。何だか少し緊張した。顔を上げて私の目を見て言った。「うん。つまり、法的結婚ということでは!」
事実婚でもなく、パートナーでもなく家族になろう。法的、社会的に血縁関係を結ぶことが私達にとっての結婚という形となった。たぶん、色々なメリットデメリット以上にきっとその想いが強かったように思う。子供の有無は関係ない。結婚というよりも、未来にしたい事の話をしていた。愛し合ってる。それとは別の個人的で二人だけの未来の話。
「買った指輪はいつにつける?」私の質問に「え、直ぐにつけるでしょ。」と周ちゃん。2ヶ月前の話。結婚の日取りも決まってない時だった。本当に結婚するかも半信半疑のまだ出会って2週間くらいの金曜日。「指輪を取りに行った日に結婚したらいいんじゃない?」「え?!」周ちゃんは突拍子の無い様な事を平然と言う事がある。その思考回路がどうなってるのかさっぱり検討もつかないけれど、いい風に連れ去られた時みたいに、そっかってなる。結婚しようと言い出した時も迷う事なく返事をした。結婚は怖いし嫌いだったけど、いい予感だけがした。というわけで、青山に指輪を取りに行った日に渋谷区役所で婚姻届を出す事となった。本籍の場所を引っ越し先にするかどうか考えたけど、この先ずっとそこに住むかわからないし、何の思い入れも無いから明治神宮にした。あの場所は気持ちがいいし縁起が良さそうだし、青山から区役所に行く途中にあるし、参拝した時に住所借りますって伝えたらいい。それに、戸籍謄本が必要になった時とかも便利そうだねって。不思議なもので、1つが決まるとあとはスイスイと5分くらいであっという間に色々が決まった。それに、周ちゃんには言わなかったけれど、離婚してから時々明治神宮に行くようになった。もしかしたら直ぐ側の脱毛サロンに通い出した事も理由の一つかもしれない。神様は信じていないけど、祈りたかった。明日を好きになるために祈ろうと思った。
今日はオオゼキでレバーが安かった。鮪が食べたかったから、夕飯は酢飯を作って鮪丼とお味噌汁。レバーはパテにして、心臓の部分はカレー粉とソースで炒めてみる。思いの外最高な塩梅。ああ、美味しい。どうしようってくらいに美味しい。周ちゃんに食べさせてあげたいな。