
今日はスッキリと目が覚めた。やっぱり早寝早起きはいい。昨晩は周ちゃんと電話しなかった。周ちゃんとの時間も楽しいけれど、やっぱり私の時間が好き。外は未だ暗いままで朝はしばらく来なそう。白湯を飲みながら色々を進めた。気づいたら9時過ぎ。慌てて支度をして駒沢公園へ映像の編集で使う為に空を撮りに出かけた。公園に着く頃には白い雲が辺り一面に広がってる。あーあ、なんだよ。帰ろう。
帰り道に松陰神社の商店街にあるお花屋さんへ寄った。店番をしてるお爺ちゃんを見る度に近所のフォトグラファーの渉さんがお爺ちゃんの話し方のマネするのを思い出してちょっとおかしくなる。「チューリップ下さい。すみません、一本でもいいですか?」「いいよ〜。150円ね。」チューリップの札には200円と書かれてるけど、いつものように少しまけてくれた。「この花、ちょっと短いの。いる?三本あげるよ〜。チューリップにはちょっと合わないけどね〜。」結局、4本の束のお花を抱えて家路に着いた。紫色の綺麗なお花。名前を聞いたけど忘れちゃった。何だか可笑しいな。
帰り道はインド人がやってる肉屋の通りを入って小さな公園の裏を通るのがお馴染みのコース。そして真っ直ぐと通りを家の方へと向かう。この道も何回歩いたんだろう。少しでも家が華やぐようにとお花を買い始めたけど、寂しいとか怖いとか不安だとか、私が1年の間に落としてきた色々がまだこの通りに残ってるみたいで少し頬が冷たく感じた。
帰宅して昼食を食べながら姉と電話をした。兄の事だとか、結婚とか夫婦とか、色々な話をした。最近姉がハマってる後ろ歩きについての話もした。「後ろ歩きで坂を登るのが超難しいんだけどさ、頑張って登り切るでしょ。最近は登れるようになってね。それで前へ向いて歩くと、すっごく楽に歩けるんだよ!」「あっちゃん。それは後ろ歩きしてたからだよ。」「違うよ!超歩きやすいんだってば。すっごく快調なんだよ。色々が。」姉の事はよく知ってるけれど、沢山の事をまだまだ知らない。とりあえず嬉しそうだからいいや。とにかく沢山笑った。それから、結婚がいいもんじゃ無いって話もした。うん、これから二度目の結婚をしようとしてるけれど、そう思う。結婚はいいもんじゃ無い。
兄は幸せだったと思う。どうして元気が無いのか姉は少し聞いてるようだったけれど、結局姉妹の推測でしかない。ただ、姉も私も結婚に苦しんだことがあるから、その虚しさが少しでも想像できる気がした。妻になる。夫になる。父になる。母になる。役を担うのは簡単。どうにかして頑張ればいい。だけど、難しいのは役に自分が喰われないようにすること。頑張れば頑張ってしまうほどに喰われていく気がしてる。嬉しい楽しい苦しい悲しい、色々な時の自分が気づいたらどんどんムシャムシャと。いいよって言ってないんだけど、家族が夫が妻も一緒になって食べてる。誰も意地悪してやろうなんて一切思ってないし、それって生きる為に必要だったりそうじゃなかったりなんだけど、私の栄養が私が生きる為のそれが気づいたら底をつくまで喰われていく。「お腹空いたから今すぐ何か作れる?」「ご飯もう作らないでいいよ。作ってなんてお願いした?」「全部別々でいいから。好きにさせて。じゃなきゃ離婚でいい。」「今日は早く帰れるから一緒に食事しよう。」「お土産に醤油買ってきたよ。」家に居たり居なかったりがよくわからない元夫の口から出る言葉は全くよく理解出来なかった。抱きしめられたり突き飛ばされたり。とにかく私を蝕んでいった。あの頃の私は何を担っていたんだろう。今でもよくわからないけれど、戸籍には妻だったと書かれてる。
電話を切ってから少し考える。姉はしばらく一人で生きたいって言ってた。誰かを想うことで自分を失ってしまう時間が来るのはもう嫌だって。私もそう思う。だから誰かと一緒になりたいとは思わない。結婚はするけど、ずっと別々でいたい。周ちゃんが家族の何かを担おうとしたり、それで苦しんでしまったりしたら、どうかここから離れて下さいとお願いしようと思う。離れて欲しく無いけど、切り離された場所は露わになって私は生きづらくなるかもしれないけど、それでもいい。それがいい。