
婚姻届は提出する区の役所に取りに行かなきゃいけないのかと勘違いしてた。全国共通なのだそう。「じゃあ、渋谷区役所に行かなくていいじゃん。スーパーに行く前に役所に寄ろう。」辺りはもう直ぐ夜。少しだけ夕方が残ってて何だかいい夕方って感じ。今日は午後から書き初めをして家訓を書いた。”幸せは二人分、悲しみは半分。” 嬉しい楽しい時だけじゃなくて、困った時も助け合ってみよう。お互いに過去にそれぞれ苦労があった。その時に学んだのは、自分で自分を救う術。ひとりで生きるのは強くいられるからいい。だけど、恐れずに信じて分けようって話をした。まだ付き合って直ぐの頃に。
土曜日だから時間外窓口への階段を降りた。おじさんが二人。こちらが開口する前に婚姻届を手に取ってたように思う。「二部頂けますか。」「大丈夫、間違えちゃうよね。二部入ってるよ。」何だかすごく可笑しかった。スーパーへ向かいながら、おじさんの真似をしてケタケタ笑う周ちゃん。周ちゃんはすごく大人な方だと思う。真面目だし、我慢も得意。仕事もバリバリして、周りの人に気を使う事も自然に出来るのだけど、実は結構子供っぽい。なんなら私よりもそうかもしれない。ずっとおじさんの事で嬉しそうに笑ってる。あのおじさん、そんなに面白かった?婚姻届を貰ってそんなに嬉しい?何だか今にもスキップしてしまいそうな笑顔の周ちゃんが可愛くて仕方ない。
食後にお茶を飲みながら婚姻届を眺める。「何だか、ドキドキするよ。」と、私。「いつ書く?周ちゃん、いつ書く?」「今、書こう!」周ちゃんはシャーペンで下書きを始めた。私は面倒くさいから、どうせ二部あるしとボールペンで書き始めた。せっかくだから下書きしてる周ちゃんを携帯で動画を撮ろう。「携帯の動画もさ、いつか何十年後は見られなくなるよね。」「そうね〜。」話半分の周ちゃん。「デバイス問題って何なんだろうね〜。」「ね〜。」真剣に書いてる。また名字が変わる。次は熊谷。仕事の活動名を下の名前にしておいて本当に良かった。印鑑も屋号も全部、よしみにしてる。名字が服を着替えるみたいに簡単に変わってしまっても大丈夫。対策は万全。私のアイデンティティはもう二度と崩壊させない。