
今夜はおでん。世田谷通り沿いにある練り物やの、や亀やに早い時間に買い出しに行った。もう一つ数百メートル先によね屋とゆうのがあるけど、どうゆうわけか私が行く日は閉まってる。だから今日も、や亀や。今日のおでんはいつもより少し丁寧に仕込んだ。おかずにルッコラのサラダと蛸と揚げなすのピリ辛和え、ホタテと豆苗の中華炒めを作る。近所のヘアメイクのみっちゃん。自称美術家でプロデューサーの今む。この3人の晩餐会も楽しいご近所会として定着してきた矢先に私の引越し。あと5年くらいは続けたかった。最近あったどうでもいい話とか、ちょっとしたニュースとか、みっちゃんの彼氏の悪口を聞いて、今むのすっとぼけた話をきいて、笑って夜が更ける。そうして私がそろそろ眠いとなり解散。結構、好きな夜だった。今日だって、本当に最高な夜だった。
「私はワンシーズンに2回行くよ。」みっちゃんが言った。「疲れてるの?俺は半年に1回かな。」と今む。「シーズンに1回は来てよ。季節のものを食べたり、餃子を巻こうよ。お願いだから遊びに来てよ。」友達が食卓を明るくしてくれた。帰る人が帰らなくなって、作った料理も捨てる一方で、食卓を照らすライトの外側が真っ暗になった頃、友人達がやってきてくれた。心から感謝してる。ただの飲み友達だった今むも、アシスタント友達だったみっちゃんも、いつしか親戚みたいな感じになった。すごく寂しい夜も、すごく虚しい夜も、彼等がいたから食卓だけは何とか灯を灯してくれてたように思う。そうして食べて、笑って、また明日がやってくる。そんな繰り返しを、とにかく続けて続けて今日がやってきた。どん底だってとにかく食べまくって、どんどん痩せていく身体があっても胃袋をパンパンにしてやった。もし、私みたいにどん底に落ちちゃった誰かを見つけたら、まずうちの食卓に来てって言おう。私が彼らに救ってもらったように、この食卓で誰かの胃袋を一瞬でもいいから一杯にしてあげたい。お腹が減ったらまた来てほしい。いつしかそれが血や肉や明日への希望に変わるはず。
寂しい。すごく寂しい。東京を離れたくない。
ちょっと泣きそうな夜だった。