
東京最後の日。ここ数日、友人にバイバイを言う度に寂しさが増していく一方で同時に次が始まっている気配に少しうきうきしてる。梃子は10時に商店街のペットサロンでいつもと同じカットをしてスッキリして帰宅。引っ越しの片付けを途中で終えて私も青山のサロンへ。編集の槙尾さんに紹介してもらってずっと行きたかったところ。東京最後の日にいつもと違う事をしたかった。ずっと伸ばしていた長い髪を昨年の秋、周ちゃんに出会う数日前に思い立ってショートにした。近所の美容師をしてるタマちゃんに教えてもらった女性の美容師さんに数ヶ月切ってもらっていたけど、何だか男の人に切ってもらいたくなって予約をした。
髪を切るのはいい。すごくスッキリするし、気分がいい。素敵な美容師さんだった。帰り道に槙尾さんに御礼のメッセージを送ると、興奮した感じの返答。私もそう思う。人生1のベストオブショートで賞。いつもと違う感じの自分でちょっと驚いた。東京最後の夜にぴったりな気分の良さ。渋谷まで歩いて田園都市線に乗って三茶で降りた。世田谷線に向かう途中で近所のタマちゃんに声をかけられた。「よしみちゃん?」後ろ姿がタマちゃんっぽいなぁって思って歩いてたけど、時間も早いし。だけど本当にタマちゃんだった。今日は早退したのだそう。タマちゃんとは離婚する直前に一緒に伊勢神宮へ行った。あの旅はすごく楽しかった。心身共に元気な今ならあの3倍は楽しめると思うけれど、あの時の精一杯ですごく楽しかった。一泊二日。一緒にお風呂に入って一緒に寝て一緒に参拝した。世界は夫婦だけだと思い込んでいた私に世界は広くて楽しくて優しくて温かいって事をみんなが教えてくれた旅。タマちゃん、旦那のADのしみるさん。しみるさんの後輩の芸術家の今む。
今日会えるなんて凄いな。計らったみたいに会えた。
帰りにサミットで鯖寿司を買った。片付けをして、お風呂に入って、ビール。Tverで大豆だとわ子がやってる。久しぶりだな。第一話だった。とわ子が田中さん、佐藤さん、中村さんって、三人の元夫の名前で呼ばれてるシーンを見て何だか可笑しくなった。編集の槙尾さんは私の事をきくちさんって言う。昼に掛かってきた引越し屋は菅原さんって言ってた。さっき髪を切ってもらったサロンでは熊谷さんって呼ばれて、タマちゃんはよしみちゃんって言う。離婚した時のアイデンティティの崩壊の酷さと言ったらそりゃ無かったけれど、もうどこにも所属しないって決めたら何だかとわ子の飄々としてる感じがすんなりとわかる気がした。
「明日天気悪いんだってね。」明日の引っ越しを心配したタマちゃんが世田谷線の中で言った。「うん。そうだね。けど、家に着けばいいよ。」そう、何だか最近どうでもいい。晴れてる方がずっといいけど、人生なんてそんなもんだ。何かに依存しなければ、大体何でも似たようなもの。菊地でも菅原でも熊谷でもよしみでも、私はいつだって私。誰かの何かになろうとするから苦しくなるだけであって、私でいれば何も困ることはない。失うのは辛いけど、変わるのも怖いけど、私があればどうにかなる。どうにだってなる。
今日タマちゃんに会えて良かった。