
朝から雨。すごく寒い。午前に私の部屋の中古の無印の棚が来て、周ちゃんの部屋の天道木工の座椅子とニトリの本棚がきた。周ちゃんの部屋はきっと本で埋め尽くされるんだろうな。想像するだけでワクワクした。引っ越しから2週間ちょっと、ようやく仕事部屋のダンボールが全てが空になった。ああ、すっきり。それにしても、私には荷物がなかった。印画紙、額、プリント、ネガ。ダンボールを開けるとそんなものしかなかった。もっとないもんかね。だけど、確かに引っ越しをする度に沢山を捨ててきたようにも思う。ちょっと寂しいような、だけど、大事なものってそんなに多く無いような気もした。
ダンボールから昨年の夏に編集のりりさんに借りたノルウェイの森が出て来た。一緒に引っ越してきたんだ。りりさんに本の内容を少し聞いた時に今は読めないなと思って棚に置いた。そうして秋を冬を越していつのまにか春になった。引っ越しの片付けも落ち着いてきたし、そろそろまた読書の時間を作ろう。「周ちゃんみたいに私も寝る前に本を読もうと思って。」ベッドルームにノルウェイの森を持って行った。周ちゃんは最近すごく難しそうな植物の本を読んでる。タイトルだけでも頭を抱えてしまいそうだからそれがどんな本なのかは聞かない。「リリさんに借りて、ずっと読めなくて。」「俺も持ってるから大丈夫だよ。」「そういうんじゃなくて。リリさんが貸してくれた本を読みたいんだよ。」「うん。じゃあ、一緒に読もう。」周ちゃんは本を声に出して読み始めた。「1ページずつ読もう。」周ちゃんって人は変な人だなと思う。変すぎてもう呆れて感心すらしてる。朗読しようだなんて、人生で初めて男に言われた。変な気分しかないよ。
人生初めての好きな人との朗読。思ったよりも良かった。それに、声に出して読んでみるとなんだか主人公の心が言葉がしっかりと聞こえてくるような気がした。交互に朗読を続けて第1章を終えるとどうにも切なくなってしまい本を閉じて抱き合って寝た。カップルになると2人だけのまぬけな出来事が起こっていくなと思うのだけど、今夜は正にまぬけだった。とてもまぬけな夜で周ちゃんがまた好きになった。