
5時にセットした目覚ましが鳴る前にベッドを出た。今日は東京の家の引き渡し。その前に粗大ゴミを8時までに捨てなきゃいけない。着替えて簡単にメイクをしてポットにオーツミルクのカフェオレを作った。やっぱり、特急列車で行こう。20分くらいしか変わらないけど新幹線みたいに指定席でゆったりと座れるから楽しい。コーヒーを飲みながら本を読もう。家を出る間際に周ちゃんと梃子が起きてきた。「ごめんね。起こしちゃったね。」「大丈夫だよ。気をつけてね。」
2週間ぶりの我が家。ガランとして何もない。寂しくなって胸がぎゅっとした。いい家だったな。ベランダはテントが3つか4つはれるくらいに大きくて、全部が南向きの窓で1日中明るい部屋だった。お風呂は西側だからよく夕陽の中でお風呂に入ったし、キッチンが大きくて料理を思う存分に出来た。角部屋だから梃子がどんなに騒いでも誰にも怒られないし、松陰神社の駅前なのにいつも静かで鳥の声が毎朝聞こえるのが好きだった。あと、神社にもよく梃子とお参りに行った。ここでの暮らしが何よりも好きだった。不動産屋さんが来るまで1時間。朝ごはんを食べに家を出る。ずっとずっと昔にデザイナーの大西さんと打ち合わせで行った世田谷通りのカフェコロラド。10年ぶりくらいに入ったけど、今でも愛煙家の溜まり場だった。煙草の匂いは嫌いだけどなんだか居心地がいい。マスターの元気な朝の挨拶もいいし、メニュー裏に手書きで書いてある裏メニューっていうのも良かった。常連さん同士がコーヒーをすすりながらお喋りしてる、東京っぽいこなれた朝だった。
渋谷の蔦屋で仕事用の資料の本を探して、睫毛パーマをかけて、渋谷スクランブルでベージュのパンツを買った。13時にミオちゃんとストリームで待ち合わせをしてる。「よしみちゃん田舎もんづらしないでよ。つい最近まで東京いたじゃん。」ミオちゃんはいつも色々な髪の色をしているけど、20年ぶりくらいに黒髪にしたのだそう。何だか少し大人っぽく見えた。「新しい生活はどう?」「田舎だよ。すっごく。裏に山とかあるから。」私のスローライフから、ミオちゃんの最近の仕事や戦争の話や知り合いが亡くなってしまった話、いつ海外に住むとか色々な話をした。ミオちゃんは仕事だから時間が無いって言ってたけど、店を出たのは16時前。体調悪くて胃が痛いと殆ど食べなかったミオちゃんのフォーはまるで食品サンプルみたいになってた。「これからヨドバシに行って、新しく買った自転車を取りに行ってから帰るよ。」「長い道のりだね。」「すっごく長いよ。」「じゃあねミオちゃん。また東京くるね!」「田舎もんづらしないでよ!」私の埼玉ライフ。友達と気軽に会えないのは寂しいけど、もしかしたらそんなに悪くないかもしれない。東京は住む街じゃなくて通う街。好きな人に会いに行く場所になった。
今日の夕飯は餃子。本人は言わないけど、どうやら周ちゃんは街中華の餃子の方が好みっぽい。何度か色々な餃子を作って気づいた。キャベツ、ニラ、ねぎ、豚ひき肉を合わせてよく混ぜて、オイスターソース、醤油、ごま油多め、鶏ガラスープの素を入れて冷蔵庫で30分。大判餃子の皮にしっかりと具材を入れて羽根つき餃子にして出来上がり。餃子、美味しかったな。