
朝一番に起きるのは私。その後、梃子が7時くらいに起きてきて、梃子が二度寝をしにベッドへ戻った時に周ちゃんを起こしてくるのがいつもの朝。今日も。書斎で日記を書いていると梃子が部屋に入ってきた。「てっちゃんお早う。」今日はこのまま抱きかかえていよう。日曜日だし周ちゃんはたまには寝坊した方がいい。朝食は目玉焼きご飯と残り物のおかず、納豆、キャベツと揚げ麩の味噌汁。今日は初めて畳の部屋で食事をした。テーブルは買ったばかりのちゃぶ台。私が数ヶ月にわたり周ちゃんにプレゼンし続けて口説き落としたテーブル。中々、高価な買い物だったからか、ずしりと新しい生活に根をおろしたような気持になった。
昼頃から庭の土おこしを始めた。周ちゃんはポカリスエットのCMにでも出てきそうな清潔感たっぷりのTシャツ姿で大きなスコップで汗をたらしながら土を掘りおこしてる。私はその脇で掘りおこした土の根や雑草をとり続けた。今日の庭仕事は土を整備し、昨日買った金木犀の木、ミモザの木、トマト、胡瓜、茄子の野菜の苗、それから、私がマンションのベランダで育てたハーブや月桂樹の木、巨大アロエを植えること。暑い初夏みたいな午後はどんどん過ぎていった。玄関横に前の人が育てていたらしいミントの香りがする木を見つけて林檎箱に植え替えたりもした。途中で周ちゃんがコンビニで買ってきてくれたシロクマアイスを食べたり、アールグレイのアイスティーをいれて飲んだ。ああ、暑い。時間は16時前、ようやく色々が片付いて遅い昼食に素麺を茹でて食べた。冷やし素麺は今年初めて。氷を沢山入れて冷え冷えにした。
ああ、土いじりって気持ちがいい。だけどちょっとまた熱中症気味。身体が重い。夕飯を食べながら高橋くんの話になった。「昨日は楽しかった?」「うん。高橋くんの3箇条、楽しかったね。よしみがメンターみたいだったよ。」「楽しかったね。けどさ、1つ目については心の叫びに聞こえたよ。」「うん。俺も。聞いてて辛かったよ。優しさというより、痛みにきこえちゃってさ。」「うん。私も。だけどいいと思う。こうやって人は自分の人生を選んでいくんだよ。」
人生って平等だなって思う。地獄みたいな日々を過ごしていた時期は世界を恨んだりもしたけど、選んだのは私だったと今となっては自覚してる。まさか愛した男に酷い事をされるなんて想像はしなかったけれど、あんなに酷くなる前に逃げる選択は十分に出来た。言葉を変えるなら、いなくなる選択肢は愛する選択と平等に持ち備えていた。世界中の人が平等とは思わないけど、私の人生においては平等に出来てる。幸せにも不幸にもなれる。しっかりと今日まで選んできた。だから、高橋くんが優しい人を求めるのは、もう愛した人に傷つけられたくないと切望するのは、高橋くんのこれからの人生の希望であり道筋になる。次に会う人は優しいだと思う。大丈夫。「1つ目は中々見つけられないよね。」って高橋くんは言ったけれど、「自分を信じれば大丈夫だよ。」って伝えた。優しい高橋くんは、優しい人に出会う。もし優しくない人に出会ったとしても、もう愛さないと思う。