
特急列車に乗って東京へ向かった。車中で昨日フミエさんと話してたインスタのリールを早速あげてみた。なるほど。これがリールか。夢中になって携帯をいじっていたら少し電車に酔った。今日は目黒のハウススタジオ。ちょっと駄目なエリア。嫌いというか、あまり立ち入りたくない場所。別にいいけど、すごく厭。中目黒だったらきっと息を止めて歩くけど、目黒の先だし、まぁいっか。好きじゃないだけ。
今日は天気がすごくいい。目黒駅でタクシーに乗った。ああ、やっぱり東京はいい。東京のタクシー最高。本当に好き。ありがとう、タクシーの運転手さん。直ぐに来てくれるし、直ぐに思いの場所へ連れてってくれるし、私が好きなジャパンタクシーがいっぱい走ってる。タクシーはジャパンタクシーしか乗りたくない。じゃんじゃんあちこちを走ってるジャパンタクシーを見るだけで気分がいい。東京暮らしを離れて思うことは、東京は時々くるとすごく楽しい。
スタジオに強い日差しが入ってきてすごく気持ちが良かった。昨日はあんなに寒かったのに嘘みたい。初めましてな人ばかりだったけれど撮影は楽しかった。帰りの電車で読んだ江國香織さんの本 “泳ぐのに、安全でも適切でもありません” の中の”犬小屋” というお話。わからない。不思議な感情になった。多分、初めてかも。読んでるのに、無色透明に伝わってくるわからない。もしくは、もしかしたら、見ない知りたくない事なのかも。
その話は、他人から見ても仲睦まじいカップルが夫婦になっても愛し合っていて、主人公の妻は夫をその夫も妻を愛していたのだけど、そうだった筈なのだけど、いつも「うん。」って何でも聞いてくれる優しくて愛おしい夫が犬を飼いたいと言い出し1ヶ月かけて犬小屋を建て、ちょっと犬小屋で寝てみたいと言い犬小屋で寝出してから出て来なくなったという話。愛ってどこから愛でどこまで愛じゃないのか時々わからなくなる。ましてや夫婦になるとその線引きが毎日にどんどんと溶けていくのを知ってる。正直、今の生活、新しく始めた二度目の結婚生活があと何十年って同じ場所で同じように続く事に恐怖がある。昨日フミエさんと話していた事。「100%信じれるっていう関係にはなれなくて。周ちゃんが悪いとかそういうんじゃないんですけど、だけど、一定の距離は置いて置きたいです。」「よしみちゃん。流石、経験者だねぇ。」何だか、そんな気持ちをもってる自分が周ちゃんに申し訳ないような後ろめたさがどこかにある。全力で私に駆け寄ってくれる周ちゃん。私は両手を広げながら、しっかりと何処かにそれを隠してる。引っ越す前か引っ越して直ぐの時に東京に家が欲しい話を周ちゃんに話した。「機材用の倉庫を借りたら?」って周ちゃんが言った言葉に「そうじゃない。」ってちょっと強い口調で返した。そうじゃないよ。私は怖かったんだと思う。私達はそれぞれなのに、また曖昧になってしまうかもしれない事がきっと怖い。
夕飯を食べ終わって、いつもみたいにソファーで周ちゃんの実家で作ってる健康茶をすすりながら話した。「周ちゃんに借りた江國さんの本でわからなくて。犬小屋って話覚えてる?」「うん。あの江國さんの本は覚えてるよ。だけど、ちょっと忘れてるかも。また読んでみるよ。」「うん。犬小屋から出てこない男の人の気持ちが知りたいんだよね。」「うん。わかった。」この人とはずっと別々でいたい。大切にしたいから私からは離れていてほしい。