水餃子

中華 01.5,2022

「今夜はもうちゃちゃっと冷蔵庫にあるものにしよう。」料理が面倒になる夜は週に1度か2度やってくる。だけど結局あれやこれやと冷蔵庫の色々を並べているうちに食卓は賑やかになってゆく。「今夜も立派になっちゃったね。」周ちゃんが言った。

みっちゃんが昼頃に帰ってから駅前におつかいに行って、そのままインドカレーを食べて帰った。帰りがけに雨が降ってきてずぶ濡れ。温かいお茶を飲んで温まってからベッドへ入って簡単なセックスをして裸のまま寝た。周ちゃんとは出会ってあっという間に結婚してしまったけれど、周ちゃんが今でも彼氏だったらと憧れる事がある。こうして二人以外の時間を過ごすと尚更に思う。結婚したからと言って周ちゃんは私の物じゃないけれど、いつサヨナラをしてもいい関係の男がいるのは自由だし魅力的。そして相手も同じ様に自由な筈なのにひとり時々寂しさを覚えたりして不安になりながらもバイバイしてまた会う。そんな日々を重ねてみたかった。夜の奥渋なんかをほろ酔いで肩を並べて歩いたり、帰ってしまう背中を、見知らぬ洋服を見知らぬ靴を履いている姿をもっともっと知りたかった。ああ、この人を私の物にしたい。いや、やっぱり要らない。そんな欲望を抱いたり捨てたりを繰りかえしたりしたかった。

水餃子をつつきながら、みっちゃんと昨晩に話した恋の話を続けた。「結婚は別にいいもんじゃないし、結婚はしなくてもいいし。ごめんね。新婚なのにこんな事言って。結婚は魅力的では無いって話ね。周ちゃんの事は大好きだよ。」「うん。わかるよ。」「結婚に憧れる気持ちはわかるけど、私だって憧れて結婚したし。だから結婚がしたくてするのもいいのだけど、、。離婚はさ。大変でしょ。」「…。うん。よしみが言うと染みる言葉だね。」「そうかな。」結婚も離婚も、どちらでなくても、一直線上の自分の人生の上に立ってるのは同じ。結婚に憧れるのは子供の時にいつか素敵な恋がしたいと夢見た気持ちと似ている気がする。同世代の独身の友人達は子供が欲しいとか結婚がしたいとか同じセリフをもう何年も続けて、しまいにはいつかの彼氏の話ばかりしてるけれど、夢よりも現実の方がずっとずっと楽しい事も薄々気づいているとも思う。結婚してもしなくても離婚しても、結局どれも大差ないよ。要するに楽しければ。楽しめれば。