
「卵は?」「いる〜。」カレーをもった茶碗に生卵を落とした。私の方の茶碗は黄身が割れて茶碗の下へと垂れ落ちてゆく。カレーの次の日はカレー。これは私のルール。何度か言い続けて朝にカレーを出したら、周ちゃんも「朝はカレーだね。」って言うようになった。今日は数日ぶりに裏山に散歩へでた。森の朝はやっぱり深々としてる。すぅーっと全身が吸い込まれていくみたい。ああ、気持ちがいい。
昼は黙々と仕事。時々、新しい携帯でインスタとかLINEを見た。新しい携帯の操作がまだよくわからない。音が鳴るたびに気になって見てしまう。午後は駅前に睫毛パーマをかけに行って、ママの誕生日プレゼントを買って、OKストアで買い物をして帰宅。こないだ派手に自転車で転んでから少し自転車が怖い。左足のすねには青とか紫とか黄色とかマーブル模様みたいな大きな痣がずっとある。右足はその前の週に自転車置き場で強くサドルが皮膚に食い込んで血が出てかさぶたになった傷もまだある。東京で生活していた時は自転車が大好きだったのに、この街での自転車はなんだか好きじゃない。道路はボコボコしていて走りづらいし、駐輪場がとにかく停めずらくて、絶対に誰かの自転車に身体のどこかがぶつかる。もう、なんだよ。なんだか帰りは少し落ち込んだ。東京での暮らし、こっちにきて初めて松陰神社のあの家が恋しくて少し寂しくなった。
裏山は大好きだけど、この街は好きになれるんだろうか。お気に入りの喫茶店やカフェはgoogle mapを何度見たって見つからないし、好みのパンやスィーツを買える店も無い。家だって前の方がずっとずっと住みやすかった。それに、新しすぎる感じの内装は正直好みじゃない。食材を買うのもすごく不便で、野菜は最高だけど、それ以外のものは駅前に行かないとない。歩いて7分の所にあるスーパーは買って納豆だとかお酒。肉も魚も心が踊らないものばかり。上町のオオゼキみたいに全国から集められた季節の色々な野菜や魚や肉や調味料を思い立った時に買える店が近所にある事はすごく貴重なんだって事に今更気づいた。当たり前にあった東京での生活は十分過ぎるほどに物に溢れてて、右を向いても左を向いても私の欲望は満たされてたみたい。
帰って庭の野菜に水をあげて、みっちゃんに昨年もらった蜜柑のお酒を飲んだ。飲みながら夕飯の支度をして、お風呂にはいって、請求書の整理をした。夕飯は素麺。今夜も少し遅く帰宅した周ちゃんは満面の笑みでご飯を食べてる。「今日は元気が無い。」と伝えたけど何も聞いてこなかった。少しだけ飲みすぎた。早々にベッドへ入って抱き合って寝た。ここにあるのは、裏山と採りたての野菜。あとは、愛くらい。L.Aの姉の所に住むように暮らしていた数週間の事を思い出した。あの場所もここと少し似てる。だけど、すごく楽しかった。生活を変えたい。せっかくの田舎暮らし、東京を想って生活するなんていや。