ピンクの薔薇

Journal 20.5,2022

あ、打ち合わせ!気づいたのは9時50分。呑気にソファーでインスタ見ながら紅茶を飲んでいた。急いで支度をして書斎に向かう。今日は新しい仕事の打ち合わせ。コロナ前にあった連載は気持ちいいくらいきれいサッパリ全てが打ち切りとなった。なんだか今年から新しい風が吹いてる気がしてる。春に始まったキリンの仕事もそう。年単位のプロジェクトが始まる。またこうしてチームでの仕事が出来ることがすごく嬉しい。会社勤めは私には難しかったけれど、チームでの仕事は性に合ってる。久しぶりに会う現場にもスタッフにもどんどん愛着が湧いていくし、その楽しみはどんどんと膨らんでゆく。

今回の仕事は今までとはちょっと違うお仕事だった。コロナが始まってから、撮るだけじゃない仕事も増えた。考えたり、提案したり。撮影以外の仕事。今回もそんな感じのお仕事の依頼。食に纏わるプロが集まったメンバー。「ワカナさん、私で大丈夫?」打ち合わせの途中に何度も聞いた。メンバーの中には何人か知ってる顔もあった。

2年前、まだ離婚なんて選べなかった時に、まだ元夫が病気だなんて認められなかった時に、私達夫婦がやっぱり普通じゃない事やモラハラという言葉をナッチャンの話で知った。ナッチャンはデザイナーのちあきちゃんが連れてきてくれた子。一緒にうちでご飯を食べて、シングルだと聞いて勝手に作本さんを紹介したりして。背が高くてすらっと伸びた手足。街角で通り過ぎた時に、あ、綺麗なお姉さんって、辺りの空気がさらっとするような感じの子。離婚する頃、過度なストレスと目まぐるしく変わってゆく元夫が起こす色々な酷い現実が受け止められなくて夏が終わる頃には鬱が発症。わりと早い段階でストレスの軽減と共に病は治っていったけれど一部の友人を除いて殆ど誰とも連絡を取らなくなった。ナッチャンに最後に連絡したのは離婚の報告。それがきっと最後。「よしみちゃん、離婚して、今がすっごく楽しいよ!」初めて会ったときにナッチャンが言った言葉を何度も思い出した。いつか私にもそんな日が本当に来るんだろうか。朝から晩まで苦しくて、次の日が来ても朝から晩まで苦しい。そんな日がずっとずっと続いているのに、本当に?私はこの地獄から夫の色々から本当に抜け出せる?本当に終わる?何も酷いことがない今日が、ただお喋りしたり、ただ食べたり、ただ普通の、何も考えないで、目から涙がこぼれないで、歯の奥を食いしばらないで、胸が潰れるような事が起こらない今日が私にも本当に戻ってくるの?

人生っておかしい。世界で一番愛している人生を捨てたら私は死んじゃったけれど、命があればいつでも生き返ってこれるし、過去にいた友人にも会える。離婚を機に沢山の人と縁を切った。元夫と関係する人は全員と会わないことに決めて、元夫の影が見える場所には近づかない。「私たちのことを助けて」とお願いした人もいたけど、もう会いたくないから会うのはやめた。愛の為にと信じて我慢して嫌な人に会うのはやめた。きっと私は必要以上に色々を失ったと思うけれど、あの時間にあった元夫と関係のない色々までまとめて捨ててしまったけれど、こうやってまた会える友人だっている。

ナッチャンに打ち合わせで会ったら結婚を報告しよう。