朝から雨。昨日より10度も気温が低い。多分、周ちゃんは低気圧でダウンしちゃうんだろうな。低気圧であんなに辛そうな人、今まで見たことがない。日中、授業の合間に美容ライターの長田さんのラジオで低気圧のダウンはまるでPMSだという話を聞いた。そりゃ辛い訳だよ。頭痛だけじゃなくて、気持ちのダウン。軽い鬱状態を示してるってこと。PMSは酷い人だと死にたくなる症状も出るほどだし、それはPMDDという鬱病の一種でもある。大丈夫かな。雨が強くなる度に気になった。
技能練習の授業を2回連続で受けて旅館に帰宅。今日の無線講習。車内がクーラーでガンガンだった。どう消していいのかわからないし、先生からは一方的にコースの指示がくるだけ。冷えきった身体、首も肩も慣れない運転でガチガチ。お風呂に入ろう。背筋がゾクゾクする。部屋に戻って横になったらいつの間にか寝ていた。
夕方過ぎに目を覚ました。すごくスッキリしてる。ノートパソコンで納品作業をし始めると旅館のおばちゃんから内線。「熊谷さん、夕飯まだ来ないの?」「今行きます!」慌てて食事場へ行った。「今日はラーメンだから。」おばちゃんはカセットコンロでグツグツと鍋に入ったスープを温めてる。おばちゃん、スープは煮詰めちゃ駄目だよと思った。今日もやっぱり旅館のご飯はしょっぱくて中々な味。昼の弁当も。準備して貰うのはとても有り難いけど、驚くほどに不味い。なんてことのないお浸しでも絶妙な味がするし、ご飯は毎回粒が見えないくらいぐちゃぐちゃ。うちのご飯が食べたい。そして、お腹一杯になってご機嫌で寝たい。
「私にどきどきしないでしょ。」今夜の周ちゃんは想像よりずっと低気圧のダメージを受けてなかった。「え?なにそれ。だって、ほうれい線伸ばしながら電話してる人にどきどきしないでしょ〜。」「そうじゃなくて、私達はどきどきが始まる前に付き合って結婚したでしょ。どきどきしたかったなと思って。」「え〜難しい質問だよ。」周ちゃんと離れて1週間。今更になって私は恋をしてると思う。テレビ電話に映る端正な目や鼻、綺麗な眉。綺麗に灼けた肌。周ちゃんを見る度に顔が少しゆるむ。授業中、何度も周ちゃんを思い出しては、先生が周ちゃんだったらどうしようと妄想しては小さく胸を高鳴らせてる。それから、周ちゃんの前の婚約者が大学の先生だった事も一緒に思い出して少しだけ嫌な気分になってやめる。なんて下らない考えだろうと思うけれど、好きな男の好きだった女は嫌い。わたしよりもずっと素敵な気がしてしまう。立派なアーティストだったと聞いてるけど、絶対に美人で賢くて私のように騒がしくない。きっと周ちゃんはその才能にも惚れ込んでいたんじゃないか。大学でその人を見かける度に、数え切れないくらいどきどきしたんだろう。
周ちゃんに出会って7ヶ月。結婚して3ヶ月ちょっと。今さらだけど、福島に来てから私は周ちゃんに恋をし始めた。順序がばらばらだけどこれは恋。周ちゃんに会いたい。