
上野に着いたのは11時過ぎ。上野公園口で降りると、真夏のど真ん中に放り出されたみたい。熱々に混ぜられたそれはあっちこっちに弾けて飛んで行ってしまいそう。人混みを見ているだけで目がクラクラした。周ちゃんの後を追いかけてレストランへと急いだ。「なんでこんなに混んでるの?」私がイラついて言うと周ちゃんはいつもみたいに笑ってた。途中で何枚か写真を撮って到着。しばらくして父、母、姉とマルコとヘレナ、兄とりーちゃんが到着。それから10分くらいして、周ちゃんのお母さん、弟、先週コロラドから帰った妹のみつきさんと子供達が部屋へ入ってきた。周ちゃんは朝から落ち着かない。話を半分聞いているようで聞いてない。席について慌ただしいままに頼んだドリンクを手にして乾杯をすると姉が計らったみたいに泣き出した。「ちょっとー!」「ごめんごめん。だってさ。」つられて妹のみつきさん、周ちゃんのお母さん、私の母まで目に溢れる涙を拭い始めた。
姉の涙や鼻水が私のピンク色のハンカチを濡らしていく中で、私にも色々が溢れていった。兄は代理人となり、連絡が取れなくなった元夫と離婚の交渉人役として色々を進めた。その間、姉は毎日、多い時で日に2度か3度、電話をくれた。元夫からの何かがある時だけじゃなくて、私の心が冷えてゆこうとする度に電話を鳴らしてくれたんだと思う。私の離婚は最後は一人で終えたけれど、私が一人で終えられるようになるまで兄弟が必死に終わらせようと助けてくれて、支えてくれた。「これは裁判するしかないよ。」冷静だった筈の兄が言いだした時、「裁判はやめよう。」一番裁判を望んでいた姉が裁判はすべきじゃないと言った。「これ以上苦しむことはないんだよ。裁判をしたらもっと傷つく。それに、長い時間もかかる。彼を法的に罰したとしても苦しまなきゃいけない。あの男がした事は許されないことだけど、私たち家族が望むことはよしみが1日も早く幸せになることだから。」それから姉はもう裁判って言葉を言わなくなった。いつも、「うん。」「うん。」って私が話す言葉をただただ全てを受け入れるように聞いてくれた。私が笑う日を一番に望んでくれた家族は、過去の色々を白状な程に忘れて笑ってる私を見て、笑って泣いた。
料亭から見える上野の不忍池は緑緑しくて力強い夏だった。あの日々の事をこれからもどんどん忘れていったとしても、今日のことは忘れたくない。周ちゃんは色々を頑張りすぎて疲れたのか20時過ぎには布団に子供みたいに転がってた。今、私も私達家族もすごく幸せだと思う。みんなが笑ってる。とにかくそれだけでいいと思った。家族が好きだ。大好きだ。先週に姉には言ってある。「また昔みたいにL.Aに通おうと思って。もちろん一人で。」「え?なんで。」「前の結婚の時は、奥さんとしてそういうのダメかなって思ったんだけど。私の人生だから。」「いいんじゃない。」