黒酢のチキンカレー

カレー 28.6,2022

午前は近所にある病院で健康診断を受けた。待合室でやっぱりと思って周ちゃんにLINE。私がもやもやしてたこと。なんだかここ数日厭だったことを少しだけ書いて送った。メールで伝えるのはよくないから今夜周ちゃんの友人が来る前に少しだけ。多分、PMSのせいもある。変なことまで色々と考えた。この人と結婚する意味ってなんだったのだろう?心がひっくり返したみたいにパタンと私は違う色になって、二日間、周ちゃんには触れなかった。触れて欲しくなかった。

朝に梃子の散歩にでると、周ちゃんから手を繋いできたけど、私はそっと手を離した。周ちゃんは昨晩から気づいてる。「俺が悪いんだよね。ごめん。」って寝る前に言ったけど、どうして嫌なのか整理のつかない気持ちを閉じて、「今日は暑いね。」と言って背中を向けて寝た。周ちゃんは私のどこに惚れたんだろう。現代美術を学んでる彼にとって、文化人類学と共に生きてきた彼にとって、数々の作品や偉業を成した沢山のアーティストと肩を並べて仕事をして、そんな恋人がいた彼は私のどこに魅力を感じたんだろう。女や人生に疲れちゃったんだろうか。

私みたいな中途半端な女が周ちゃんを満たすには半日で十分な気がする。写真作家になるのはいつかに諦めたし、だからって商業にどっぷり浸かるのも拒んで、どれもこれも私なりの塩梅で世界から見てきた答えがこれだ。

中途半端。そして、それは私らしい。偉くも凄くもならなくていいけど、強くなりたいとも思わないけど、私は私の声を聞きたい。こんな私のどこが周ちゃんの心を動かしたのかさっぱりわからない。そして、最近の周ちゃんは以前よりももっともっと私を好いてる。庭に置いた朝顔の鉢を毎朝覗きにくる子供みたいに、私を見てる。その眼差しがくすぐったくもあり、嬉しくもあるけど、本当に全くわらない。それに、今日だってまた私は怒ってる。けどそれは周ちゃんが私の怒りについて褒めてくれたからだ。「よしみの良いところは怒ること。誰かを貶める為のものじゃなくて、何かを変えるきっかけになるから。すごいと思ったんだよ。」何がどうなってるのかやっぱりわからない。ただ、私が私を思いっきりに生きようとすると周ちゃんは気に入っていくように感じる。

夜にキュレーターの高橋くんと、佐藤くんが家に遊びに来てくれた。佐藤くんはベーグル作りにはまって、先月に岡山までパン屋の修行に行ってたのだそう。美術館と食というテーマで新しい事業を立ち上げようと考えてるのだとか。3人で仕事の話をしてる。私の知らない周ちゃんを見るのが私は好きだ。緩やかな曲線が私と混じり合ってる時も好きだけど、メガネひとつとっても、その際立った輪郭に胸が少し赤くなる。周ちゃんじゃなくて、夫とか、男みたいに見える。

高橋くんは東北の美術館へ4年間いくのだと聞いた。新しい仕事、新しい暮らしが始まる。あちらでの生活がどんな風になるのか想像しただけでも楽しそう。仕事、芸術、雪。そこはどんな世界なんだろう。素直にすごく羨ましい。最近、私は変わりたいと強く望むようになった。東京にいる時はこのままでいる事を常に考えてたのに、真逆だ。なんなら、もっと田舎へ、海外で暮らしてみたいとも思う。私が知らない私を世界の事を知ってみたい。東京の仕事や東京の友達も大切だし大好きだけど、味をしめちゃったみたいだ。有名レストランで食べる有機野菜がのったお皿の上はインスタで見たとおりに華やかで美しいけれど、田舎で食べる地場野菜は舌の中であまりに刺激的で私の記憶を掴んで離してくれない。人生があと何年かわからないけど、ちゃくちゃくとビンゴカードを潰していくよりも、ビンゴしてみんなに凄いねと褒められるよりも、ビンゴしないって決めちゃうのも野蛮で私らしくて素敵かもしれない。どうせ死んだら消えちゃうのだから。