9月4日

Journal 04.9,2022

今日は昼からしみるさんといまむが遊びに来てくれた。なんだか世田谷の時みたいで懐かしい。みんなで集まって、食卓を囲んだり、お喋りしたり、楽しかったな。いつしかいまむは彼女と別れて、しみるさんは結婚して、もうすぐ子供が産まれる。埼玉の暮らしで失ったものと言えば、友人達との時間だけど、みんなにそれぞれの時間が流れてもまたこうして他愛も無いお喋りが出来るだけで幸せな気もした。

いまむは結婚のお祝いにとバーミュキュラのフライパンをくれた。私と周ちゃんからは、誕生日プレゼントに先日の那須出張で見つけた周ちゃん曰く超レアらしいお面をあげた。那須で見つけた時に、Googleで検索してもその実態が明確にわからない事に「やっぱりGoogleには皆が知ってる事しかないよね。」と言い、学芸員としての血が騒いだのか子供みたいに興奮していた周ちゃん。お面はニンマリととした顔で笑っていて、なんだかいい顔だった。それは、春の個展が終わってから元気が出ないと嘆いていたいまむにぴったりな気がしたし、超レアなら尚更、周ちゃんも酷く興奮しているし、広い民芸店の一角で見つけた事も、なんだか宝探しみたいで良かった。しみるさんには犬の張り子を先日の御礼と、安産を願って渡した。犬には昔から安産祈願や家庭円満の意味があるらしい。

それから、4人で食卓に座って私の新しい名刺のペインティングをした。前回の名刺のテーマは地味。誰にも気づかれないような、誰だかわからなくなってしまような名刺。さらっとした名刺にして欲しいとお願いして作って貰った。フォントはAesopのロゴデザインでも使われているもの。色は何色かわからない暖色にしてもらった。あの時は離婚して直ぐの頃で、元夫の名字をもう使いたくないと改名に迫られて、友人達の公募により結局一番シンプルだったyoshimiに決めた。好み的に言えば平仮名、そして明朝が良かったけれど、少しでも地味にしたかったから、英語の方にした。とにかく1ミリだって傷つきたくなかった頃のこと。フリーランスで働いているのに、どうか、私の事を構わないで下さい。そんな想いが込められていた。今となっては、過去の私らしい名刺。

新しい名刺は、東京の住所の記載を抜いたものを作らなければならなかった理由があって作ったけど、最近の色々も手伝って、もっと私らしい感じの名刺にしようと思った。明るくて楽しい感じの。少し前の苦い仕事の経験を考えても、ああいう写真は出来れば撮りたくない。誰かみたいになる必要もないし、有名とか偉くならなくてもいい。髪の毛を派手な色にしたり、フォトグラファーですからみたいな感じも、もう見るのだって疲れた。きっとそういうのが大事な時代があったんだと思う。だけど、もう変わってきてるのだから、東京を抜け出したように、さっさとドロップアウトしようと思った。

郊外の田舎暮らしを始めて、驚く事ばかりだったけれど、なにより胸に響いたのは野菜のこと。私が今まで食べていたのは、一体なんだったんだろう?採れたての野菜は同じ物とは思えないくらいに美味しかったし、全部が100円。東京で買っていた野菜と殆ど値段は変わらないのに味は格別に違う。世田谷で時々買っていた有機野菜はカレーも作れないような量で千円くらい。そして、本当に美味しいかどうかはよくわからなかった。ただ、安全だよっていう言葉だけを信じて買っていたように思う。地産地消やフードマイレージ。今までだって出来るだけそうしようと心がけていたけど、ようやくその意味がわかった。だって、美味しくて、楽しい。日に日に赤くなるトマトも、早朝に梃子の散歩に出かけて畑仕事をしてるおじちゃんと挨拶を交わすのも楽しい。畑を覗いては次にやってくる野菜を待ち遠しく思うのも楽しい。地産地消でもフードマイレージでも、試みっていうのは、自分にも還元されることを意味していたんだなって。誰かの為、何かの為にやることは素晴らしいことだけれど、その支点には自分がいないと楽しくない。だって、私が生きている世界なのだから。

「食卓みたいな感じが良くて。」私の意図を汲んでデザインしてくれたのは今回もしみるさん。表面は箔押しで色なしで名前を入れて貰った。庭の茄子や近所で採れた玉ねぎ、それからスーパーで買ったビーツなどでベジタブルダイを作って、箔押し部分にペイント。ペイントで名前が表現できるようになってる。ペインティングも食卓を囲むようにわいわいとやりたかったから、しみるさん、いまむ、周ちゃんの四人で描いた。それぞれが好きなように自由に。いまむは「俺は描かないよ。」と言ってたけど、みんなが楽しんで描いている様子を見てやり始めた。「楽しいでしょ。」と聞くと、「だって、よしみちゃんに失敗したら怒られると思ったんだもん。」と言い、何枚も何枚も描いていた。確かに私はいまむに直ぐに怒るけれど、絵くらいで怒るだろうか。いや、怒るかもしれない。いまむは絵描きだからか、なんだかすごく情緒的な感じのものを描いてて、これは人に渡してもよいものかと思う程だったけど、まぁいいかとなった。

みんなで楽しみたい。誰か一人が、誰かが失敗して、誰かだけが。そういうのは好きじゃないし、やりたくない。食卓と同じ。楽しくお喋りしながら、お腹を一緒に満たそう。そういう仕事がしたいなと思う。昼からしくしくとお腹が痛んだけど、いい日だった。やっぱり友達は大切だし、彼らとは何だかんだと10年くらい仲良くやってる。いつもありがとう。周ちゃんもありがとう。