のむらさんからメールがあった。シェフインレジデンスの件と、流産のこと。僕らは男だからよしみさんの気持ちがわからないけどって書いてあったけれど、男も女も同じだよとも思った。私だって、のむらさん側に数ヶ月前までいたのだもの。だって、私という女の身体はどうやら妊娠するらしいという事を頭では知ってはいたけど、それは知っていただけで、実際に本当にそうなんだか知らなかったから。妊娠して、妊娠が想像しているものと全く違うものであり、それが妊娠だという事らしくて、そこに命があるんだと知り、私も母という女の身体から産まれたんだと具体的に想像することが出来た。これは女の特権かもしれないけれど、男がいないと妊娠は出来ない。だからって、同性愛者なのむらさんがそれを経験出来ないわけでも無い気もした。だって私達自身がそうやって産まれたんだもの。もう記憶にはないけど、現実であり事実。だからというか、産まれてくることが、簡単そうですごく難しい事を妊娠という経験を経て知った事をメールで書いた。ここに生きているだけでどうやら奇跡らしいという事も。
“もう自分の中で整理できてるなら、やるだけですよ。” 夕方、渋谷だとか銀座を歩きながら映像の大場さんとLINEした。ここ数日、大場さんとLINEしてる。大場さんのパソコンが壊れたらしく、仕事を手伝うの手伝わないのって話の流れで私の仕事の話を相談した。なかなか厄介な仕事の話なのに、丁寧に長い時間をかけて聞いてくれた。そして、大場さんはクリエイティブに期待してないと言った。そこまで言い切れるなんて、とも思ったけれど、だけど、そうだよなとも思った。裏切られたと想う度に色々が疲れてしまうし、誰かを嫌いになることはすごく傷つく。大場さんの発する言葉は私と真逆だったけれど、まるで同じだ。そして、やっぱり大場さんという人が好きだなと思った。信じたい、そして傷つくのが嫌だからこそ、期待しないようにしてるんだろう。
仕事がすごく好きだし、一緒に仕事をしている人も好きになりたい。誰かだけが喜ぶことじゃなくて、きちんと強度のあるものを作り、作っているチームもしっかりと楽しむ。大場さんとの話で私が望むことがよくわかった。これから始まる新しい案件がある。自分の人生にとってきっと大きな経験のひとつになると思う。大切に丁寧にきちんと、想いを込めてしたいと改めて思った。今回の仕事を経て、大場さんと話して心からそうしようと誓った。
大場さんに相談できて良かったな。「だから、そんな仕事を請けるのが悪い。」と最後まで冷たい言葉をかけてくる大場さんの全てが大場さんの愛に聞こえる。