
久しぶりに編集の柳瀬さんとお仕事。「よしみさん、日記見てますよ〜。実は前に私の事を書いてあって、キャプチャーしたんです。」女性の方から時々言われる。実はこっそりと見てるんですよって。そう言われる度に少し浮足だってしまう。仕事用のHPに日記を掲載するなんて馬鹿だなとも思うけれど、以前のついつい体裁を整えてカッコつけてしまう私があまり好きじゃなかったし、もういいやとどこかが吹っ切れて、家の食卓写真と一緒に日記を書くようになった。どうせ服の下はみんな裸なんだしと。
一人目の旦那さんの事を書いていた時はファンだという女性から忠告を受けることがあったり、見たくもない感じのメッセージが来る事もあった。私自信わかってる。私は普通に偏ってる。みんなと同じように普通であり偏りもある。いつも笑ってるような人なんかにはなれないし、口から意地悪が勝手に出てくる日もあれば、自分勝手に当たり構わずジェラシーを蒔き散らす事もある。こんな自分は嫌だって思うくらいに、気持ちが悪い感情がどうにもならなくても書く。それに、ずっと離れてるりょーこちゃんが「よしみちゃんの日記、いつも見ているよ。元気そうだね。」と、連絡をくれる度に安心して、また書こうとなる。朝でも夜でも、私の隣に座り、そっと話を聞いてくれているみたいで。完全に妄想なんだけど、なんだか一人じゃない気がしてまた書く。
今日の現場は穏やかだったな。人って面白いなと思う。誰と一緒にいるかで見える世界が変わる。柳瀬さんの現場はコジコジワールド。ずっと笑顔でニコニコ笑ってる柳瀬さんを見ていると、こっちまでニコニコしてしまうし、ユルイ空気感がじんわりと現場を温めてく。私の知ってる限り、だいたいのおじさんはメロメロになる。それを見るのも結構すき。そうして、日本橋の街を歩きながら写真を撮り、柳瀬さんの新しい恋の話を聞いたりして、新宿で会期中の写真家の中野さんの展示へ向かった。
ギャラリーに入ると、写真家の広瀬さんの名前が記帳されていた。「広瀬さん、今どこですか?」「もう、電車だよ。」「すごい運命的なニアミスじゃないですか!」直ぐに電話を鳴らしたけど、声しか会えなかった。なんだかんだと30代前半から仲良くして貰ってる広瀬さん。今は子育てで忙しいみたいで、作家活動は少しお休みしているみたい。だけど、今が楽しいって言ってた。中々子供が出来なかったけど、ある時に急に出来たのだそう。「俺の年齢だと1%の確率だよ!」としきりに言ってた。あの時は全く妊娠の事を知らなかったから右から左だったけれど、今なら隅々まで溢す事なくしっかりと話せる。2周くらい周りギャラリーを出ると、シティーボーイです。って顔に書いて有りそうな感じの男の子が座ってた。「え?中野さん??」「ああ、お久しぶりです。」「嘘でしょ。全然違うじゃん!」中野さんは元自転車のなにかの選手だったけど、写真家になった。8☓10という大きな箱みたいなカメラを背負って秘境の温泉を撮る写真がとても力強くて、この人はただもんじゃない。と直ぐに好きになって、友達になった。何年か前のアートブックフェアでのこと。「だから、家の中の写真なんだ。じゃあ、この裸かは彼女ってこと?」「ちゃんと彼女に出していいか聞きました。」「偉いね。」中野さんは写真を撮る為に会社をやめてタクシーの運転手になったけど、コロナでしばらく会わなかったこの3年、恋に堕ち、同棲を始めた人生初の彼女と一緒にいる時間が惜しくて写真を撮るのをやめた。「絵なら、遠くに行かなくてもいいし。いつでも書けるし。あと、絵は自分の物に出来るから。だから欲しい物があっても、買わなくても満足するんです。色々と閉じ込めておけるというか。」なんだか、やっぱり中野さんが大好きだなと思う。最近、有名な美術館に作品が収蔵されたのに、今は恋がしたいから、写真はやめた。そして、彼女はスタイリストのアシスタントなのだとか。超ど真面目の中野さんがシティーボーイの成をしていた理由がようやくわかった。
人生ってそういうものでいい。恋だとか愛が一番でいい。広瀬さんも立派な写真家で、中野さんもだけど、ふたりして、写真の中でぐつぐつといい感じに煮込まれていたけど、潔く火を消した。
「なんていうか、すごく安心するんです。」携帯カバーの中に彼女と撮ったチェキの写真を見せてくれた。昨年の大晦日に過ごしたどこかの旅先での写真。中野さんにとって写真は見たことが無いものを撮る行為だったそうで、だけど絵は違うって。私は逆で、見たことが無い景色よりも、写真になにかを希望してるというか、祈りみたいなものを、きっと込めてる。普遍的なもので在ればあるほどに、重なった背景に胸が熱くなる。
面白かったな。すごく。それに、柳瀬さんの恋の話もだけど、なんだかいい日だった。兄から送られてきた黒豆の立派な枝豆を茹でて、枝豆だけを見て食べた。世界は愛や恋に包まれていたけど、周ちゃんとは昨日から喧嘩してる。好きになればなるほどに、相手に求める事が増える。自分の思い通りにしたいわけじゃないけど、より近づきたいと思えば思う程に、上手くいかなくなる。
ほくほくの枝豆。豆がとても大きかった。