夕食

夕飯 23.11,2022


病院を出て、真っ暗な夜を車で走ってる時に車の中で静かに泣いた。あの時の夜みたい。ニコちゃんの葬儀の夜とか、離婚が決まって新しい家に引っ越した夜。心が剥き出しになって呆然とする夜。悲しいのか、苦しいのか、痛みが身体の何処にあるのかすらわからなくなる。ただ、夜だけがあって、私は途方にくれながらそこにいる。

梃子のお腹の皮20cmくらいのホルマリン漬けを先生が見せてくれた。梃子の知ってる乳首がいくつか水の中でふんわりと浮いていた。私がいつも撫でていたお腹にある乳首。私が大好きな梃子の。梃子に面会する前に周ちゃんに言った。「正直、この手術が本当にいいのかわかってない。」周ちゃんは出来るならば、手術はしようと最後まで一択だった。母や姉がこの手術を反対していた理由もわかる。犬の寿命からして、あと数年の命なのにわざわざ痛い想いをさせてまで手術をする必要があるんだろうか。そのうちにやってくる死。経験しないで死なせてあげた方がいいんじゃないか。周ちゃんの気持ちもわかる。一緒に考えて出した答えだ。だけど、生きていく中で痛みは少ない方がいい。

周ちゃんはすごく幸せに生きてきた方だと思う。辛い事も沢山あったと思うけど、人が死んだり、自分が死にそうになったり、そういう痛みを見た事がないんだろうと思った。自分から逃げられるうちはまだ幸せ。泣いたり悔やんだり頑張ろうとか明日があるなんて言えなくなる痛み。もう切り刻む所がないのにそれでもまだ痛めつけられる痛み。梃子はあんなに小さな身体なのに4度目の大きな手術。痛みは毎回新しい顔をしてやってくる。慣れるものじゃない。ただ、重なっていく。

梃子の痛みを想像するだけで身体のあちこちが疼いた。聞いたことの無いような声で鳴いて、抱き抱えると身体を押し付け私の胸から離れなかった。梃子の温もりがずっとそこにあった。この温度に何度、私は生かされたんだろう。一つ目の家族がなくなっても梃子だけはいてくれた。真っ暗な夜に怖くてどうしようもない夜に小さい身体が私を温めてくれた。名前の由来はてこの原理。初めて見た時に思ったこと。この子、こんなに小さいのに、わたしに大きな愛をくれる。

夕飯はスーパーのお惣菜。昨日のご飯と余ってた赤蕪の甘酢漬と納豆、ブロッコリーをボイルして蕪と牛蒡の味噌汁を作った。こんな事してはいけないってわかってる。答えがないこともわかってる。だけど、痛みに耐えられなくて、私は私を責めてる。