
パリのマユミちゃんから手紙が届いた。封筒の中には2022年12月18日の手紙と、年始にバカンス先から送る予定だったカードも同封してあった。もし、ずっと私達がお互いに東京にいたら今でも友達でいただろうか。友達の友達だったマユミちゃんはいつしか大切な友人の一人になった。私達の共通点は何もない。学校も仕事も趣味も、マユミちゃんがどんな男の子がタイプだったのかも知らない。一つだけ共通点があるとすれば、マユミちゃんは両腕の手首に丸のタトゥーが入っていて、私は左腕にフロイトの言葉が入ってる。それくらい。だけど、互いに入ってるって事しか知らない。その意味も聞かないし言うこともない。文通も3年目に突入。2021年の年賀状から始めて、半年もしたら来なくなるだろうと思っていた手紙。今のところお互いにやめる気配はない。他愛もない日常を一方的に書いているようで、なんだか励まされたり励ましたり、笑ったり泣いたりしてる。そして、マユミちゃんはバカンスがくる度にパートナーと聞いたことがないような名前の街へと旅に出る。私の知ってる日本人は誰も行かないだろう美しそうな街。もうしっかりとしたヨーロッパの人なのだなと思う。最近、友達が減った事を手紙に少し愚痴ったけれど、マユミちゃんの手紙にも同じような事が書いてあった。なんとなくの友達はなんとなく連絡を取らなくなって、仲が良かった友人とはより深くなったって。嬉しかった。寂しさを持て余していた私にとって十分過ぎるくらいに温まる言葉だった。
それから、”最近、服がずっと要らなかったんだけど、こないだいいブランド見つけちゃって。沢山欲しいけど、そんなに働きたくないから、そこそこに働こうと思う。” と書いてあった。マユミちゃんは元々服の学校に行ってたし、いつもマユミちゃんらしくお洒落をしていて、今でもパリコレの仕事を手伝ってるくらいだ。だけど、好きだからとか欲しいからといって自分の生活を壊してまで手に入れたいとは思わないと決めてる所がやっぱりマユミちゃんらしくて素敵だ。
そこそこに働く。いい言葉だな。数日前に私とフジモンが話していた事に過ごし似てる。バランス良く生きたい。仕事は好きだけど、仕事以外だって人生だから。何かを消費する為に死ぬ気で働くなんて嫌。「最近は、あっても撮影は週2日くらいかな。」仕事の事を聞かれたフジモンに返答すると「丁度いいね!」と笑顔で返ってきた。以前は週6日撮影していたし、1日に数本の現場が入ってるのが当たり前だった。こないだ会った中西くんも言ってた。「よしみちゃん、前は忙しそうだったもんね。」私は心だけじゃなくて、それ以外の沢山もどこかに置いてきてしまっていただろう日々。あの時はとにかく時間は私を窮屈になるまで押し込んでいたし、苦しかった。もう戻る気は勿論ない。それに、あの時は写真を撮っていたというよりも、お金を稼いでいた感じだった。人それぞれだと思うけれど、仕事は人生じゃない。その方が私にとっては気持ちがよく写真が撮れる気がしてる。スイスイと自由型で泳ぐ方がより早く進めるとゆうか、こんな風に浮いたり潜ったり出来るんだと、知らない私を見つけて驚いてみたり、教えてくれた誰かに感謝したり。まだまだ手探りではあるけど、今のところいい事づくし。
夕飯はモツカレー。モツを蒟蒻と大根と一緒に薄めの麺つゆで煮てから、カレーに入れる。カレーはスパイスは使わないでカレールーとソースで調味。スパイスカレーも好きだけど、こういう味がしみしみのカレーも好きだ。周ちゃんはすごく気に入ったみたいでお代わりしてた。