
昨日はシンジくんには会えなかった。
編集の成田さんがせっかく誘ってくれたのに。周ちゃんが以前に通ってた接骨院の先生のところへ駆け込むと「絶対に安静にしてください。背中ぎっくりですから。」との事だった。
「本当にごめんね。すごく会いたかったんだよ。」
「よしみちゃん。結婚おめでとうー!」
「あ、そうそう!私、結婚したんだよ〜。」
「若のおかげだね。幸せそうで何よりだよ。」
接骨院を出て痛くて亀みたいな速度で歩きながら電話をかけると、久しぶりのシンジくんは小豆島でお世話になったシンジくんのままで元気そうな声だけが聞こえた。離婚が成立する直前の大変だった時、とにかくその優しい人柄に癒された。島で会うまではまさかそんな話をするとは思わなかったけど、シンジくんは結婚も離婚も経験者で長く暗く辛い時間の事もよく知っていた。だからか、一緒にいるだけでほっとしたというか、あの時間は特に側にいてくれた事が何よりの救いだった。
それに、シンジくんは私と同じ蠍座で誕生日はうちの兄と姉と同じ10月30日。勝手にシンパシーを感じて傷だらけのひりひりとした心を温めていたようにも思う。
泥みたいな身体をなんとかひきずって朝から現像を始めて昼頃に送り、別の仕事のデーターも急いで納品。昼食をさっと流し込み、13:59ダウンロードしたzoomで14:00から大学のオンライン個別相談に滑り込んだ。申し訳ないと思いながらもこっちのビデオはオフにしたままで。
背中の激痛で起きれなかった朝から、なんとかデスクワークをこなして、オンライン相談も時間より早く切り上げ、接骨院。なのに、結局そのまま周ちゃんに迎えに来て貰ってUターンだなんて。わたし、何やってんだろう。馬鹿みたい。シンジくんが久しぶりに東京に来たのに。あまりに情けなくて、ああ、最悪。だとか、もう嫌だ。みたいな言葉を吐き捨てたくなったけど、ぐっと飲み込んだ。くだらない。不幸を呪うほど愚かなものはないと思うから。大変な時こそ、先ず一番にすることは心の声を聞くことではなくて、最悪な現実を少しでもいいから変えること。月曜日も大事な撮影がある。痛くて撮れないなんて絶対に嫌だ。
シンジくんに会いたかった。新しい仕事の話も少し聞いたけど、もっと話したい。声を出して笑うのが辛くて、背中にズキッと痛みが響く度に肩をくすめて手短に話した。元気になったらまた連絡をしよう。久しぶりに色々な話がしたい。