2月21日

Journal 21.2,2023


今日も朝から撮影。昨日よりもずっと背中の調子はいい。先生からも安静にしていれば痛みは3日で徐々に消えていくと聞いていたけど、本当にその通りだった。今日は稲妻が背中を走るような痛みに襲われることもなかった。

負担のかかりそうな体勢は極力避けて、重いものを移動する時はアシスタントのムーンちゃんにお願いした。リュックに忍ばせておいたロキソニン4錠を一度も飲むこともなく無事に撮影は終了。なんとか乗り切れた。それに、身体もどんどん回復に向かってる。

先週の撮影で私が起こした背中ぎっくりは背中の筋肉が破れ内出血を起こしてしまう状態で、症状としてはぎっくり腰そのもの。激痛と共に身体がピクリとも動かせなくなる。体力のある無しに関係なく、過度な筋肉へのストレスでばりっといってしまうものらしい。マッチョなお兄さんから、私のような中年女まで誰でもなる。とはいえ、ならない努めは出来る気がしてる。春からピラティスにでも通おうと小さく誓った。

最後に口の中を〆たのは苺大福。現場で食べるご飯や差し入れのおやつはとても美味しい。最後に食べた饅頭は特に疲れた身体に甘いあんこがじんわりと心身沁みわたっていった。とにかく先週から続いた撮影が無事に終えられたことが嬉しくてゆっくりと食べた。それに、大ベテランの先輩達とこうしてお仕事が出来ることも夢にも思っていなかったことだ。キッチンで母の料理本を読み漁っていた子供の頃の私が今日の日を想像できただろうか?まさか、自分が本を作る側の人になるだなんて。

雑誌やウェブで出会う編集者とはまた違う書籍の世界。卓越した先輩方の仕事ぶりや仕事への想い。料理が好きとか、食べる事が好き、お店めぐりが好き。そういう好きとは全然違う。料理が好きで好きで、料理本を作るのが好き。何年もかけて数々の料理本を世に出してきた先輩方の姿勢は真っ直ぐと太陽に向かって立つ、太くてしっかりとした大木みたいで、側にいるだけでその清々しさに背筋が伸びるような気持ちだったり、心地よかったりと気持ちは常に高揚した。

私も料理が好きだし、料理を教えてくれる料理本は大好きだ。料理本の仕事がしてみたい。ずっと心にあった夢だった。帰り道、バスを待ってる時にふと思い出した。20代の時に働いていた制作会社で気が合う女の子がいた。入社したての頃に話していたこと。

「どんな本読むんですか?」
「実は恥ずかしい話、本は殆ど読まなくて、。料理本は読むんですけど。」
「へー。私も料理本好きですよ。」
「夜ベッドに入る前に、ベッドの脇には料理本を沢山積んでそれを読みながら寝るのが好きなんです。」
「え!私もですよ。」

料理本は実用書っていうカテゴリーだと思うけれど、実用的なだけじゃない。夜、寝る前に1日仕事を頑張って疲れた心を癒してくれるのは、美味しそうな料理写真やレシピもそうだけど、先生が食と共に生きてきたストーリーが詰まった知恵袋のような色々だ。

アトリエに入る光やキッチンに並ぶフライパン一つにとってもそう。料理を作る人の手や美しい料理が盛られた皿だってそう。そこはきらきらと光る母の食卓と同じ、胃袋だけじゃなくて全身がそこに包まれたいと願ってしまう。生活はいつまでもどこまでも限りなく豊かであることを教えてくれる。明日は今日よりもずっとずっと美味しそうに光ってるんだということを。

いい本になるといいな。もう過去の同僚とは連絡を取ってないけど、彼女のような子にこの本を読んで欲しい。