カテゴリー: 夕飯

夕食

夕飯 23.11,2022


病院を出て、真っ暗な夜を車で走ってる時に車の中で静かに泣いた。あの時の夜みたい。ニコちゃんの葬儀の夜とか、離婚が決まって新しい家に引っ越した夜。心が剥き出しになって呆然とする夜。悲しいのか、苦しいのか、痛みが身体の何処にあるのかすらわからなくなる。ただ、夜だけがあって、私は途方にくれながらそこにいる。

梃子のお腹の皮20cmくらいのホルマリン漬けを先生が見せてくれた。梃子の知ってる乳首がいくつか水の中でふんわりと浮いていた。私がいつも撫でていたお腹にある乳首。私が大好きな梃子の。梃子に面会する前に周ちゃんに言った。「正直、この手術が本当にいいのかわかってない。」周ちゃんは出来るならば、手術はしようと最後まで一択だった。母や姉がこの手術を反対していた理由もわかる。犬の寿命からして、あと数年の命なのにわざわざ痛い想いをさせてまで手術をする必要があるんだろうか。そのうちにやってくる死。経験しないで死なせてあげた方がいいんじゃないか。周ちゃんの気持ちもわかる。一緒に考えて出した答えだ。だけど、生きていく中で痛みは少ない方がいい。

周ちゃんはすごく幸せに生きてきた方だと思う。辛い事も沢山あったと思うけど、人が死んだり、自分が死にそうになったり、そういう痛みを見た事がないんだろうと思った。自分から逃げられるうちはまだ幸せ。泣いたり悔やんだり頑張ろうとか明日があるなんて言えなくなる痛み。もう切り刻む所がないのにそれでもまだ痛めつけられる痛み。梃子はあんなに小さな身体なのに4度目の大きな手術。痛みは毎回新しい顔をしてやってくる。慣れるものじゃない。ただ、重なっていく。

梃子の痛みを想像するだけで身体のあちこちが疼いた。聞いたことの無いような声で鳴いて、抱き抱えると身体を押し付け私の胸から離れなかった。梃子の温もりがずっとそこにあった。この温度に何度、私は生かされたんだろう。一つ目の家族がなくなっても梃子だけはいてくれた。真っ暗な夜に怖くてどうしようもない夜に小さい身体が私を温めてくれた。名前の由来はてこの原理。初めて見た時に思ったこと。この子、こんなに小さいのに、わたしに大きな愛をくれる。

夕飯はスーパーのお惣菜。昨日のご飯と余ってた赤蕪の甘酢漬と納豆、ブロッコリーをボイルして蕪と牛蒡の味噌汁を作った。こんな事してはいけないってわかってる。答えがないこともわかってる。だけど、痛みに耐えられなくて、私は私を責めてる。

夕飯

夕飯 21.11,2022

生理がきた。生理が来ることがこんなに嬉しいのはきっと人生で初めてだと思う。直ぐに病院に電話して検査の予約をした。待ちに待った生理。確かに昨日はずっとアクビが止まらなかったし、もしかしてと思ったけど、女の人の身体って本当にすごいなと思う。夜に帰宅した周ちゃんに伝えると「昨日不機嫌だったのって、それが理由??」って。「違うよ!」周ちゃんの顔がどんどん曇っていく。「え、そうなの。じゃあ何で。」「また話すよ。二人の日記にも書いたしさ。大したことじゃないよ。それよりさ、生理がきて、ようやく身体が元に戻ったんだよ?痛みだってもう無くなるし。」周ちゃんは私の身体の事よりも自分の心の方が心配みたいだった。妊娠でどれだけ女性の身体に負担がかかるのか、男性は生理を一度も体験することが出来ない、痛みっていうのは共有できないものだし、仕方のない事だとはわかっていても、少し寂しい気持ちになった。

それに、結局昨日怒った事も同じようなこと。夕飯は昼に買った近所の野菜と冷蔵庫にあるもので作った。10月の食費に驚き何だか買い物に行く気になれなかった。

夕飯
魚介のトマトスパゲッティー
白菜のオリーブオイルとバルサミコのサラダ
焼き里芋と塩
赤蕪の甘酢漬け
砂肝と葱のナンプラーバター

ハヤシライス

夕飯, 洋食 18.11,2022

夕飯はハヤシライス、朝採れの春菊のオリーブオイルのサラダとからし菜の胡麻油とマヨの和えサラダ。採れたてが食べたくてサラダがふたつ。後は鰯のつみれの味噌汁と納豆。蕪と昆布の浅漬は出し忘れた。

結局、朝一番で大場さんには断りのメールを入れた。メールの前に大場さんからも、もう一人、テレビのカメラマンの助っ人が来ますとメールが入っていた。そのメールには関係なく断るつもりだったけれど、良かったと思った。昨日ひさびさに連絡した写真家の菱沼君。「菱沼くん、映像やってる?」と聞いたその答えは「今は福島で暮らしてます。」だった。こないだ朝井リョウさんの書籍で菱沼くんの写真が使われたとインスタか何かで見たけど、きっと今も菱沼くんらしい硬くて強い写真を撮ってるんだろう。東京に仕事に来たときは呑もうね!と約束した。

大場さんの事を周ちゃんにゆっくり相談したかったけど、昨晩はなんだか色々と忙しなく夜が終わった。多分、もう自分の中でわかってた。夜にベッドの中でも思った。何かの為にとか、誰かの為にっていうのはやめよう。それから、そうゆう言い訳も。

私は映像が好きで撮っているんじゃない、料理が好きで映像を撮ってる。だから、被写体がミュージュシャンなら本末転倒。ぜんぜん楽しくない。映像が好きなわけじゃない。こないだふみえさんにも言われた。「よしみちゃんが嫌なら映像はやらなくてよし。」って。あの時は少し心に何かが引っかかったけれど、答えは違う。映像については好きでも嫌いでもない。私が好きなのは料理。料理とか料理を作る人を見ているのが好き。大場さんには申し訳ない気持があったけど、なんだかすごく清々しい。

塩おでん

夕飯 18.11,2022

パリのまゆみちゃんからバースデーカードが届いた。女の人が裸で走ってるイラストが描いてある。なんとも海外らしい洒落たカード。このカードの理由は、いつも走ってるイメージの私らしいって。私が知ってる私は、直ぐにしゃがんだり、後ろ向きで歩いたりもすれば、大体は寄り道ばっかりだ。真っ直ぐに走れたらどんなにいいものかと誰かと比較しては少し自分のことが嫌になったり。けど、私の知らない私は走ってるのだとか。へぇ、そっかと思った。

昨晩に映像の大場さんから仕事を手伝って欲しいとLINEが入った。”技術的に不安があります。”と言うと、”僕もそうやって上がってきました。”とのこと。本当の理由はそれだけじゃない。心が動かない仕事を受けるのには抵抗がある。新しい何かを学ぶことが嫌なわけじゃなくて、私の時間が冷え切ったご飯みたいにこちこちになるのが嫌だ。感じないで仕事をする。そうゆう事も沢山やってきたけど、もういいやと思ってる。そういう時間は要らない。だけど、困っている大場さんの事は助けてあげたいと思って話を聞いた。代官山の駅前で40分くらい立ち話をした。

私は私のペースでいい。これをやっとけ、あれが得だ、世の中がそうだと言われたって、今の私がそう思わないのならば、そうじゃない。もし、未来に困ることがあれば、その時に考えたらいいと思う。失敗するのは私であって誰かじゃないのだし。それに、失敗なんて問題じゃない。離婚したらまた結婚すればいい、喧嘩したら謝って仲直りしたらいい。それでもどうにもならない時は後悔したらいい。後悔だって生きる為の大事な糧だ。

帰宅してまゆみちゃんに返答を書いた。”なんだか今日はすごく迷ってるよ。” 今の気持ちをだらだらといつも通りに綴った。大場さんの事もだし、新しくやってみようと考えていたことも、よくよく考えてみると誰かの為ばかりで私は楽しめていない事に気付いたり。それに梃子の手術。来週に予約を入れてるけど、人生2度目の癌の手術だなんて。淡々と書いた。最近手紙を書きながら思うことがある。まゆみちゃんがこの手紙の封を開けるのは、ずっと先のいつか。今、私が悩んでいることはどうにかなってる。人生なんてそんなもんだと思うと、迷ったり悩んでる自分を少しだけ放棄出来るようになった。どうしようなんて考えは3度くらいループすれば十分。だったら夕飯の献立を考える為に料理本を眺めてる方がずっといい。

今夜は塩おでん。先日に料理家の角田さんに本当に美味しいですよと聞いた。台所で角田さんの塩の料理帖という本を開き、塩おでんの頁にやかんを置いて、大根を切るところから始めた。おでんがぐつぐつと煮えていく。今夜も冷えてきたな。あっという間に冬がやってきた。

発酵生姜の鍋

夕飯 15.11,2022

昨日食べる予定だった発酵生姜の鍋。朝にヨーグルトメーカーのスイッチを入れ忘れて、発酵出来なかった生姜は今夜の夕飯となった。長芋とシラスのグラタン、人参のラペ、マカロニサラダを作って、周ちゃんの親戚に頂いた練物を焼いた。後は周ちゃんが柚子を絞ってポン酢を作ってくれた。近所で採れた濃い味の柚子と東京で作っているキッコーゴ醤油。この組み合わせが何とも最高でシメの乾麺にまでかけて一滴残らず綺麗に食べた。

今日は先週に初めてお会いした料理家の角田さんと。編集は佐々木さん。ライターは森本さん。やっぱり料理のお仕事が好きだなと思う。料理を作る人がそれも、食卓の為に作る人が。撮影を終えて、角田さんにこないだ聞けなかった話や出されてる本の話を聞いた。出来ることならこの時間を独り占めしたいと思うくらいに聞きたいことが沢山あった。角田さんは、行政の仕事で東京の農作物を広める仕事をしている。多摩地方の農家さんのお話や、私も同じく移り住んだ武蔵野の土地で最近感じている、舌を通して知った地場野菜の美味しさや存在について。この歳になって野菜の概念がガラリと変わった。私が今まで食べてきた野菜がまるで違う食べ物なんじゃないかと感じてしまうくらいに。

料理を通して、それは別に料理を作ることだけを意味せずに、ただ人を豊かにしたい、きちんと自分の声も大切にしながら。そんな角田さんの想いは、まるで自分ごとかのように私の胸を熱くした。私がいた東京では見えなかった世界だ。今はまだ右も左もわからないけれど、ひさびさに新しい場所を歩いてるような気分。20代の時に初めて訪ねたロンドンとか、初めて訪ねたNYとか。

夕飯

夕飯 10.11,2022

午前にパルコカードを作って、アルパカのセーターを買った。それから世界堂でレフ用のスチレンボードとペーパーを買い新大久保へ。料理家のふみえさんとネパール料理屋のアーガンで待ち合わせ。アーガンはミサちゃんに教えて貰ったお店。ふみえさんは髪をバッサリとショートに切ってなんだかとてもすっきりしてた。この半年でどんどん髪が短くなっていくふみえさん。それでなくても軽快で心地がいい人なのに、どんどん軽くなっていく気がした。

ふみえさんからハーブティと、氷見のHOUSEHOLDのふたりから預かってるというお土産と昨年に撮影したカタログを受け取った。私は今朝、無人販売所で買った原木なめこを渡した。今度の撮影の話から、最近のお互いのこと、色々な話をした。人の悩みを面白いなんて言ったら失礼だけど、私からは絞っても出てこないような、ふみえさんの悩みはふみえさんらしくて興味深かった。けど、実際にふみえさんは困ってるし、そんな自分の癖が嫌だと感じてるし、変わりたいとも望んでる。それに反して、私が持っていないそれは、いつも羨ましく魅力的なふみえさんの要素の一つだ。ふみえさんのようになれたらどれだけ強く生きられるのだろうと時々思うくらいに。

人って不思議な生き物だ。もう今のままでも十分に満たされている筈なのに、自分には無いものを望んだりする。新宿に三越伊勢丹に行くと欲しいもので頭がいっぱいになる。地下の食品から、コスメ、洋服と、お金が幾らあっても足らない。だって冬だからクリームが必要だし、だって仕事用に汚れてもいいよう黒いけどお洒落なコートが欲しいし、。明日の私を満たしてあげる為に必要そうなものは数えきれないくらいある気がしてしまう。どうしてこんなに止めどなく欲望が湧いてくるものかと、時々うんざりもするけど、湯船に使った時だとか、スープでお腹が温かくなった時とか、陽だまりにいる時なんかに気づく。今は十分に満たされてるって。ふみえさんには申し訳ないけど、ふみえさんは今のままで十分過ぎる程に素敵だし、変わらなくてもその魅力はこれからも絶えず拡がってゆくものだと思った。

帰りに銭湯に寄って、久しぶりにサウナに入った。帰り道に携帯を開くと周ちゃんからLINE。”足を挫いたから病院へ行きます。”それ以上もそれ以下も書いてない。帰宅したのは1時間以上経ってから。左足が包帯ぐるぐる巻になって帰ってきた。「何で連絡してくれなかったの?交通事故にでも遭ったのかと思ったよ。」と言うと、「俺だって大変だったし、そんなに怒らないでよ。傷ついてるんだよ。」と、真剣な面持ち。目は冷たくて硬ってた。周ちゃんは痛みに弱い。そして、それを飲み込むまで少し時間がかかる。そして、それは星の光のようで、私の所にやってくるまでにはタイムラグがある。寂しかったり、少し苛ついたりもどかしかったりもするけど、それが、私達だ。私が選んだ、誰かと生きるとゆうこと。私に出来る事は速く連絡するように促したって変わらない彼の声を、ただそっと信じて待つだけ。私達はただ法的契約を交わしただけで、私には彼を変えてもいいなんて尊厳は持てない。持ちたくない。

夕飯
原木椎茸のオーブン焼き
赤蕪と小松菜の蒸したもの
塩豚
長芋と豚の醤油麹バター焼
ほうれん草のおひたし
納豆
ご飯
原木なめこの味噌汁

夕飯

夕飯 09.11,2022


昨晩飲んだピルの副作用が酷くて午前はリビングでうめいてた。午後は薬が馴染んだのか体調はすっかり戻った。夕方に久しぶりに俳優のゆうちゃんからLINE。ゆうちゃんは前の家から5分くらいの所に住んでいる。最後に会ったのはうちでたらふくビールを飲んだ時。一時期タクシーを乗る度に画面の中にいるゆうちゃんを見かけていたから、そんなに久しぶりな気はしていなかったけれど、確かに、もう1年は会ってない。引っ越したことを伝えるととても驚いてた。結婚したことは言ってない。

夕飯
昨日の鍋の残りで茸のクリームスープ
キャベツのペペロンチーノ
柿と洋梨とモッツアレラのサラダ
ブロッコリーとしらすのオイル蒸し
ニラ玉
納豆

茸鍋

和食, 夕飯 08.11,2022

「今夜は皆既月食見ながら夕飯を食べよう!」朝に周ちゃんと約束をした。夕飯、何がいいかな。秋の味覚を堪能できるようなご飯を1日中考えていたけど、中々決まらない。夕方の病院が混んで、結局帰ったのは18時過ぎ。せっかくゆっくり夕飯を作ろうと思ったのに、皆既月食始まっちゃう。

椎茸の焼売を作って蒸し器で蒸して、魚介のパスタに柿とバルサミコを使ったパスタに茸のスープ?・・。なんとなく考えていた献立はやめて、1時間くらいで出来そうなものに変更。一つ目のコンロに茸鍋の準備をして、二つ目に砂肝と青葱たっぷりのコンフィーを、もう一つのコンロで銀杏をフライパンで炒った。あとは昨日作った蕪の煮物、納豆、ご飯を準備した。

「ただいま〜。」周ちゃんが帰ったのは19時過ぎ。「始まってるよ!」急いでベランダに上がって空を見上げる。「すごいね。」「うん。すごい。地球と月と太陽が一直線にこれから重なるんだよ。」毎年、何年ぶりだとかいう夜空を見上げてる気がする。昨年もスーパームーンと皆既月食が同時に起こる夜があった。夜中に目が覚めた時、カーテンから溢れてくる光に驚いてベランダに出ると、見たことがないような明るい夜だった。離婚から半年くらい経った、まだ心が痛くて仕方なかったころのこと。夜はタクシーの音がする度に元夫なんじゃないかと真夜中と記憶がシンクロして胸の鼓動が止まらなかったけれど、月が明るくて、隅々まで白く光って見える世界にほっとした。

姉から新車を買ったよとLINE。2023年モデルのワーゲンの写真が送られてきた。車には赤くて大きなリボンがついてる。自分への誕生日プレゼントらしい。先月の交通事故では結局車は大破しちゃったけど、身体に問題はないし、新しい車の事を結果オーライと言ってた。なんだか流産から不正出血が続いていて、気持ちが少し晴れなかったりもするけど、そんなに心配することはないのかもしれない。病院からは生理をリセットするというピルが処方された。妊娠でつくづく思ったけれど、女であることは本当に大変だ。子供は私と周ちゃんのことなのに、女の体を持っているだけで、さまざまな身体的困難を強いられる。

枝豆

夕飯 22.10,2022


久しぶりに編集の柳瀬さんとお仕事。「よしみさん、日記見てますよ〜。実は前に私の事を書いてあって、キャプチャーしたんです。」女性の方から時々言われる。実はこっそりと見てるんですよって。そう言われる度に少し浮足だってしまう。仕事用のHPに日記を掲載するなんて馬鹿だなとも思うけれど、以前のついつい体裁を整えてカッコつけてしまう私があまり好きじゃなかったし、もういいやとどこかが吹っ切れて、家の食卓写真と一緒に日記を書くようになった。どうせ服の下はみんな裸なんだしと。

一人目の旦那さんの事を書いていた時はファンだという女性から忠告を受けることがあったり、見たくもない感じのメッセージが来る事もあった。私自信わかってる。私は普通に偏ってる。みんなと同じように普通であり偏りもある。いつも笑ってるような人なんかにはなれないし、口から意地悪が勝手に出てくる日もあれば、自分勝手に当たり構わずジェラシーを蒔き散らす事もある。こんな自分は嫌だって思うくらいに、気持ちが悪い感情がどうにもならなくても書く。それに、ずっと離れてるりょーこちゃんが「よしみちゃんの日記、いつも見ているよ。元気そうだね。」と、連絡をくれる度に安心して、また書こうとなる。朝でも夜でも、私の隣に座り、そっと話を聞いてくれているみたいで。完全に妄想なんだけど、なんだか一人じゃない気がしてまた書く。

今日の現場は穏やかだったな。人って面白いなと思う。誰と一緒にいるかで見える世界が変わる。柳瀬さんの現場はコジコジワールド。ずっと笑顔でニコニコ笑ってる柳瀬さんを見ていると、こっちまでニコニコしてしまうし、ユルイ空気感がじんわりと現場を温めてく。私の知ってる限り、だいたいのおじさんはメロメロになる。それを見るのも結構すき。そうして、日本橋の街を歩きながら写真を撮り、柳瀬さんの新しい恋の話を聞いたりして、新宿で会期中の写真家の中野さんの展示へ向かった。

ギャラリーに入ると、写真家の広瀬さんの名前が記帳されていた。「広瀬さん、今どこですか?」「もう、電車だよ。」「すごい運命的なニアミスじゃないですか!」直ぐに電話を鳴らしたけど、声しか会えなかった。なんだかんだと30代前半から仲良くして貰ってる広瀬さん。今は子育てで忙しいみたいで、作家活動は少しお休みしているみたい。だけど、今が楽しいって言ってた。中々子供が出来なかったけど、ある時に急に出来たのだそう。「俺の年齢だと1%の確率だよ!」としきりに言ってた。あの時は全く妊娠の事を知らなかったから右から左だったけれど、今なら隅々まで溢す事なくしっかりと話せる。2周くらい周りギャラリーを出ると、シティーボーイです。って顔に書いて有りそうな感じの男の子が座ってた。「え?中野さん??」「ああ、お久しぶりです。」「嘘でしょ。全然違うじゃん!」中野さんは元自転車のなにかの選手だったけど、写真家になった。8☓10という大きな箱みたいなカメラを背負って秘境の温泉を撮る写真がとても力強くて、この人はただもんじゃない。と直ぐに好きになって、友達になった。何年か前のアートブックフェアでのこと。「だから、家の中の写真なんだ。じゃあ、この裸かは彼女ってこと?」「ちゃんと彼女に出していいか聞きました。」「偉いね。」中野さんは写真を撮る為に会社をやめてタクシーの運転手になったけど、コロナでしばらく会わなかったこの3年、恋に堕ち、同棲を始めた人生初の彼女と一緒にいる時間が惜しくて写真を撮るのをやめた。「絵なら、遠くに行かなくてもいいし。いつでも書けるし。あと、絵は自分の物に出来るから。だから欲しい物があっても、買わなくても満足するんです。色々と閉じ込めておけるというか。」なんだか、やっぱり中野さんが大好きだなと思う。最近、有名な美術館に作品が収蔵されたのに、今は恋がしたいから、写真はやめた。そして、彼女はスタイリストのアシスタントなのだとか。超ど真面目の中野さんがシティーボーイの成をしていた理由がようやくわかった。

人生ってそういうものでいい。恋だとか愛が一番でいい。広瀬さんも立派な写真家で、中野さんもだけど、ふたりして、写真の中でぐつぐつといい感じに煮込まれていたけど、潔く火を消した。

「なんていうか、すごく安心するんです。」携帯カバーの中に彼女と撮ったチェキの写真を見せてくれた。昨年の大晦日に過ごしたどこかの旅先での写真。中野さんにとって写真は見たことが無いものを撮る行為だったそうで、だけど絵は違うって。私は逆で、見たことが無い景色よりも、写真になにかを希望してるというか、祈りみたいなものを、きっと込めてる。普遍的なもので在ればあるほどに、重なった背景に胸が熱くなる。

面白かったな。すごく。それに、柳瀬さんの恋の話もだけど、なんだかいい日だった。兄から送られてきた黒豆の立派な枝豆を茹でて、枝豆だけを見て食べた。世界は愛や恋に包まれていたけど、周ちゃんとは昨日から喧嘩してる。好きになればなるほどに、相手に求める事が増える。自分の思い通りにしたいわけじゃないけど、より近づきたいと思えば思う程に、上手くいかなくなる。

ほくほくの枝豆。豆がとても大きかった。

夕飯

夕飯 09.9,2022

昨日の撮影での事を成田さんと互いにLINEした。こんなに嬉しくて楽しかったのは私ひとりだけなのかと思っていたけど、なんだ、成田さんもそうだったの!と、さらに嬉しさは膨らんでこみ上げてくるみたいだった。一日たった今日もまだ楽しい気分が続いてる。写真、やっぱりやっていて良かった。とにかく今日は嬉しかった。夕飯は昨日、ワタルさんに貰った野菜を使った。久しぶりに沢山料理をした気がする。

夕飯
海老と豚と香菜のワンタン
マッシュルームと今夏に作ったドライトマトのアヒージョ
檸檬とヤクナムのトウモロコシ炒めご飯
パプリカのサラダ
オクラのボイルとマヨ
納豆
庭の茄子の麹和え
トマトと生姜と茸の味噌汁



夕飯

夕飯 19.8,2022

今日からシェフインレジデンスの合宿。昼過ぎにフミエさんと、山若くんが家にやってきた。

夕飯

夕飯 14.7,2022

明日、免許の学科試験を受けるために早朝から試験勉強。ここ数日根詰めて頑張った。28歳の時にとった時は勉強なんて殆どしなかったのに。こんなに記憶力がなくなっちゃうものかと怖くなる。だけど、気持ちは万全。早く運転がしたいし、ドライブしてるところを想像するだけでワクワクする。

明日は出発が早いから、試験会場への持ち物を早めに準備しておこうと教習所卒業時に配られた資料を探した。え?ない。まるっと一式ない。ん??? 物は失くさない自信があるし、几帳面な方だし、何処に置いたかわからないなんて事はないのに。だけど、ない。置いておいた場所にない。えーーー!!急いで周ちゃんに連絡した。”大変なことが起きたよ!”

午後は近くのカフェで最後の追い込みの勉強をする筈だったけれど、もう完全に現実にノックアウトされた。もう嫌だ。最近、なんだか色々が上手くいってない。それもどれもが一緒になって、あれもこれもそれもどれも、やることなす事上手くいかないと駄々をこねる子どものようになった。「もう嫌だ。」何度も口に出して言った。雨が降る窓に向かって、マックのスクリーンセーバーに向かって、誰もいないリビングの先に向かって。とにかく、「もう本当に嫌だ。」と言い続けた。始まりは先月の仕事から。頑張ってる事だとか、自分が真剣に向き合ってる事が上手くいかなくなった時に、色々と反省したり改善したりする余地は十分に見つけられたとしても、再出発の旗を振って荒野に出た途端に嵐に巻き込まれるみたいな感じで、6月の終わり頃から、再出発を何度も繰り返してる。何度も嵐に叩きつけられて、もうドアを開けるのも億劫に感じてる。もう、いい加減にしてよ。写真なんか嫌だ。嫌、悪いのは写真じゃない。色々とひとり押問答してるうちにまただ。卒業証明書なんて再発行すればいいだけじゃない。面倒だしお金はかかるけど、それだけだよ。それなのに、度重なるちっちゃな不運たちに被害妄想だけが膨らんでいく。

来週から沖縄へひとり旅にでも行ってこようかな。旅はきっと私を癒してくれる。昨年のように。きっと。けどさ、昨年の今頃、私は半死にしていたわけじゃん。今の生活をみてみなよ。安心に暮らせて、ぐっすり寝てるじゃん。愚痴を聞いてくれる人がいるよ。毎日食卓を囲んで、作ったものを食べてくれる人がいる。何を言っちゃってんだよ。仕事でちょっと嫌なことがあったくらいの程度じゃん。それが続いたくらいで、私は死なないし、ビールだって飲める。ベッドは今夜も私をすっぽりと包んでくれるし、夫の胸に飛び込めば私をぎゅっと抱きしめてくれる。仕事のことだって、また好きな仕事をすればいいし、それが無いなら自分で探しにいったらいいじゃん。私の傲慢さたるや、恐ろしい。

それに、誰かを悪く想うことに心を痛めたり、会うたびにそう感じてしまう自分を非難したりしてしまったけれど、それも結局のところ私の我儘だ。タイプじゃない男だとか、面倒そうな男に言い寄られたら、めんどくさって思えるのに、どうして仕事だと好きにならなきゃ!とか、私の何処が悪かったんだろう?って、頑張っちゃうのだろう。しかも、自分が嫌だって思うことを相手はしているのに。それって、やっぱりおかしい。結局、私の問題だ。相手がどうこうじゃない。「うん。またご飯行こう!」心の中では2度と行かない〜って思いながら笑顔で断る男と同じでいい筈。「聞いてる音楽がダサくて嫌。」とか「ポジティブすぎてロボットみたいでつまらないんだよ。」何んて意地悪言うわけがないし、もっと分かり合おうと努力もしない。誘ってくれてありがとう。じゃあね。でいい。だって、私はあなたと一緒にいても楽しくないんだもん。

まとわりついてる埃をパンパン叩いてみると、あ、結構今って悪くないのかも。そんな風にも見えてきた。確かに上手くはいってないけど、今まで見えなかったことが見えてる。それに新しい仕事が始まりそう。それで、早速いまむを誘ってみた。こないだ仕事の事で励ましてくれて、この人と一緒に仕事がしたいなって思ったし、仕事で大切にしたいのはやっぱり信頼関係でいいんだって気づかせてくれたから。この人とだからやりたい。一緒にやれることを大事にしたい。ひとりなら不安になってしまうことも、誰かがいる、信じて貰えてるって想うだけで、私はより高くジャンプが出来る!先月末からどんよりモードだったけれど、今日もまた雨だけど、今度こそ梅雨明けでいい。

なんだか、新しく本が作りたいと急に思った。大好きなカップルの話。ふみえさんとの料理本の出版企画書を周ちゃんにブラッシュアップしてもらう中で、私が何がしたいのかが見えてきた。そう。私はあの人たちの本が作りたい。新しい企画書を作って、一緒に作ってくれる編集者を探そう。だってやってみるのはタダだし。それで失敗したらまた落ち込むのだろうけど、そしたら、またやればいいし。嫌になったらやめればいいし。時々、周ちゃんの胸を借りて、何かをチャージしてビールも飲んで、またやればいいじゃない。あのカップルの食卓は家庭に溺れていく私を救ってくれた。彼らは同じように誰かのことも救ってくれると思う。冷えていく心を見つけては温めてくれるはず。だから作りたい!

夕飯

夕飯 02.7,2022

久しぶりにのんびりと過ごした休日だった。自転車でちょっと先にあるアウトレットへ買い物に行って、ナイキで夏に履くサンダルを買った。国道沿にあるスタバで家族会議。夏休みは沖縄と東北へ、クリスマスはNYに、年末年始はL.Aで過ごそうかと話した。後は結婚した記念にいつ写真を撮るとか、家計簿についてとか。あと、旅行貯金をしようとか。それから、庭に向日葵を植えようとも話した。ありふれたような暮らしがずっとしたかった。ただ、一緒に夏を走っているだけなのに、嬉しくて楽しくて仕方がない。

手巻き寿司

夕飯 19.5,2022

今日は周ちゃんの誕生日。朝は久しぶりに山へ行った。ここ数日の晴れでぬかっていた足場も良くなって、緑もまたぐんと伸びた。午前は青山の美容院へ行って、そのあとに渋谷に新しく出来たショータさんのお店、麻婆豆腐のかかんでみんなでランチ。久しぶりのフジモン、瞳ちゃん、じゅりえちゃん。フジモンにはなんだかんだとずっと会えてなくて、年賀状に “話したいことがあるよ!”と書いたけれど、ようやく報告出来た。「よしみさんどうやって結婚したんですか?」じゅりえちゃんが言った。「2回目のデートで付き合って、それから3日後に結婚して欲しいとなって、それで、まだまだ離婚へのトラウマがあったし、結婚とかよくわからなかったんだけど、2週間後くらいにたまたま大好きなNYのジュエリーデザイナーのポップアップをしてて、それでマリッジリングをオーダーしたの。それから親にあったりして3ヶ月くらいで籍を入れたよ。」「えー?!」「けど、色々な話、二人の話だけじゃなくて、人生とか結婚とか、結婚制度とか、本当に色々な話をしたのだけど、私はこう生きたいとか。色々な話を沢山したんだよ。」簡単に端折って話したけど、あの時のスピードはどうにもこうにも誰にも上手く話せない。想いとか願いだけが毎日を勝手に突き動かして行った。もう傷つきたくない、だから幸せになろう。それだけ。結婚したいとか、この人を手に入れたいみたいな気持ちは一切無かった。

新しいお店はヨーロッパにあるオシャレなチャイニーズレストランを連想させるお店で、東京にはあまりない感じのセンスがいい内装だった。フジモンもショータさんも独特のセンスがある。二人が夫婦になった理由は、二人と別々にいてもわかる。人はたまたまに出会うんじゃなくて、選んで出会ってる。それは惹かれ合う理由の一つと言っても過言じゃないと思う。だって、同じ世界を見るために似たレンズを持っていた方が楽しいから。人間って楽しいことが楽しむことが好きな生き物だから。二人が似ているのは独特のセンスと誰にでもオープンなマインド。それはとても広域にわたるものだから、他の友人を探しても二人にとても共通してるもの。フジモンが結婚のお祝いにスープカップをくれて、ショータさんは帰りに麻婆豆腐をくれた。二人らしい軽やかな愛情。ショータさんと仕事の話をするといつも周りがちゃんと楽しめてるかっていう話になるし、フジモンは何てことのない日に小さなプレゼントをくれる。二人は夫婦だけど、私にとっては別々の人で、だけど似てる。同じ家から来たんじゃなくて、同じ家に帰ることがわかる。

「誕生日は何が食べたい?」付き合った当初に周ちゃんに聞いたのは昨年の11月。半年後の今日が本当に訪れるのかも知らなかったのに、当たり前のように手巻き寿司を食べてる。帰りに新宿の高野フルーツパーラーで買った苺のケーキの上に綺麗に5本のローソクを並べて、当たり前のように、まるでシナリオをなぞるようにふっと一息で周ちゃんが消した。41歳の抱負を聞くと感慨深く答えていたけれど、殆どがあまり聞こえてこなかった。古市で買った赤い花瓶にピンク色の薔薇が煌々と光に照らされてる。ただただ、やっぱり当たり前のような顔して照らされてる。夕方帰宅すると玄関に大きな花束。宛名は周ちゃんのお母さん。「今日は周ちゃんが活けたら。」「大丈夫?変になるかもよ。」「いいよ。好きなように活けて。」大きな花束は大小さまざまな形の花瓶に少しずつ活けられていく。帰宅したばかりで白いシャツにパンツ一丁の周ちゃんが一生懸命に活けてる。どれも少し長すぎる背丈で花瓶からニョキっと突き出していて、それはすごく不格好で愛らしくて可笑しかった。家のあちこちに置かれた花は明日からまた当たり前のように咲き続けて、そして終わるんだと思うとすごく何だか幸せだなと思った。

夕飯

夕飯 29.4,2022

朝はゆっくりと起きてダラダラと過ごした。昼頃、駅前のOKストアに明日の買い出しをしようと外に出ると雨がポツポツ。あーあ。帰りにインドカレーでも食べて帰ろうなんて話してたのにな。「どうする?」「うーん。近所の饂飩屋に電話してみるよ。」こんな事を考えるのは良くないって思うけど、前の旦那さんはそんな事してくれなかった。「行けば何とかなるよ。」とか、「スーちゃん電話してよ。」って言った。私は電話が苦手だからよっぽどじゃないと電話しない方を選んだ。だってずっと頑張るのは疲れるから。家から歩いて5分。店らしからぬ感じの店。こんな場所?住宅街の中に砂利の駐車場、店内は綺麗そうだけど入りたいとはあまり思わないかも。「いらっしゃいませ。さっき電話してくれた方?」年配の女性の方が席へと案内してくれた。隣は60代の夫婦、その隣も同じ世代の夫婦がお酒を飲んでいた。何だかいい感じの店。お昼から日本酒と板わさなんか食べたくなる。

周ちゃんは蕎麦と天丼のセット、私は野菜の天麩羅饂飩にした。天麩羅は長い間苦手な食べ物だったけれど、こないだ周ちゃんと高橋くんとサボテンを買いに行った時にすごい久しぶりに食べたら美味しくて食べれる事がわかった。それにしたってなんて美味しいんだろう。手打ちの形が不揃いの饂飩。つるつると口の中に綺麗に入っていく饂飩も好きだけど、不揃いってどうしてこんなに魅力的なのかな。ざるからどんどん失くなっていく饂飩、少し寂しかった。あっという間に食べ終わって、雨がしとしとと降っている中を傘を並べて歩いて帰った。美味しくて機嫌が良かったのかな、鼻歌を歌う私に周ちゃんが笑いながら言った。「お腹が一杯って歌だね。」「え、うん。そうだよ。」私、そんな鼻歌歌うんだ。歌とか歌うんだ。どっちがどうとかじゃないけど、誰といるかで私って変わるんだ。同じ私なのに私は頑張るのをやめたら変わった。鼻歌を歌うのをいつも聞いている方だったのに。

帰ってお茶をしたらすごく眠くなって、周ちゃんと梃子とみんなでベッドで昼寝をした。雨はどんどん強くなっていく。気持ちがいい。またぐんと気温が下がったけれど、それもいい。ひとりでそっと起きて書斎でお茶をすすりながらマユミちゃんからの手紙をもう一度読み返した。最近、藤井風さんっていうミュージュシャンが気になってるらしく、Taylorのshake it offっていう曲のカバーがすごくいいよって書いてある。youtubeで流しながらまた手紙の続きを読んだ。こんな風に音楽を聴くのはすごく久しぶり。女の子が誰になんて言われようと私は私らしく生きていくっていう曲。音楽ってやっぱりいい。少しだけ泣きそうになった。音楽は離婚してから聞かなくなったけれど、音楽が悪くない事くらいわかってる。嫌なのは元夫が歌を歌ってたっていう私の思い出。音楽の力みたいなのを感じるのが怖かったんだと思う。そしてそれをまた感じてしまったら戻されてしまう気がして避けてた。だけど、聞けた。そして、すごく良かった。

マユミちゃんは離婚の色々が落ち着いてきた頃に少しだけ離婚の事を話して、生活を立て直し始めるのと同時に文通も始まった。だからか一人勝手にこの文通が私の生活をちょっと見守っていてくれてるような感じがしてる。それに、たったの数ヶ月でも、この1年でも、お互いの生活がガラリと変わって、送ってくるポストカードも、送るレターセットも、その時々で色々と思い出が詰まってる。また今年もこれからも文通を続けよう。この文通がやっぱり好き。それから、日記の写真集を作るのをやめようかなって考えていたけど、なんだかもういいやって想う気持ちも考え直そうと思った。本当に作りたいのかどうか、本当が何かわからないけれど少し考えてみよう。パリで生きるマユミちゃんを想うと私も頑張たい。写真集を作ることがそれに値するかはわからないけど、このまま今にお腹を満たすだけで今日が終わるのは何かをやり残してるみたい。苦しかった事は未来になっても苦しいけれど、だからってそれを忘れようとするのも違う。生きることに少し余裕が出てきたらか、今だけじゃなくても、今や過去を行ったり来たりしてみるのもいいのかもしれない。いつか死んじゃうのだし、そうやって色々を忘れちゃうのだから。

鯵の干物

夕飯 19.4,2022

特急列車に乗って東京へ向かった。車中で昨日フミエさんと話してたインスタのリールを早速あげてみた。なるほど。これがリールか。夢中になって携帯をいじっていたら少し電車に酔った。今日は目黒のハウススタジオ。ちょっと駄目なエリア。嫌いというか、あまり立ち入りたくない場所。別にいいけど、すごく厭。中目黒だったらきっと息を止めて歩くけど、目黒の先だし、まぁいっか。好きじゃないだけ。

今日は天気がすごくいい。目黒駅でタクシーに乗った。ああ、やっぱり東京はいい。東京のタクシー最高。本当に好き。ありがとう、タクシーの運転手さん。直ぐに来てくれるし、直ぐに思いの場所へ連れてってくれるし、私が好きなジャパンタクシーがいっぱい走ってる。タクシーはジャパンタクシーしか乗りたくない。じゃんじゃんあちこちを走ってるジャパンタクシーを見るだけで気分がいい。東京暮らしを離れて思うことは、東京は時々くるとすごく楽しい。

スタジオに強い日差しが入ってきてすごく気持ちが良かった。昨日はあんなに寒かったのに嘘みたい。初めましてな人ばかりだったけれど撮影は楽しかった。帰りの電車で読んだ江國香織さんの本 “泳ぐのに、安全でも適切でもありません” の中の”犬小屋” というお話。わからない。不思議な感情になった。多分、初めてかも。読んでるのに、無色透明に伝わってくるわからない。もしくは、もしかしたら、見ない知りたくない事なのかも。

その話は、他人から見ても仲睦まじいカップルが夫婦になっても愛し合っていて、主人公の妻は夫をその夫も妻を愛していたのだけど、そうだった筈なのだけど、いつも「うん。」って何でも聞いてくれる優しくて愛おしい夫が犬を飼いたいと言い出し1ヶ月かけて犬小屋を建て、ちょっと犬小屋で寝てみたいと言い犬小屋で寝出してから出て来なくなったという話。愛ってどこから愛でどこまで愛じゃないのか時々わからなくなる。ましてや夫婦になるとその線引きが毎日にどんどんと溶けていくのを知ってる。正直、今の生活、新しく始めた二度目の結婚生活があと何十年って同じ場所で同じように続く事に恐怖がある。昨日フミエさんと話していた事。「100%信じれるっていう関係にはなれなくて。周ちゃんが悪いとかそういうんじゃないんですけど、だけど、一定の距離は置いて置きたいです。」「よしみちゃん。流石、経験者だねぇ。」何だか、そんな気持ちをもってる自分が周ちゃんに申し訳ないような後ろめたさがどこかにある。全力で私に駆け寄ってくれる周ちゃん。私は両手を広げながら、しっかりと何処かにそれを隠してる。引っ越す前か引っ越して直ぐの時に東京に家が欲しい話を周ちゃんに話した。「機材用の倉庫を借りたら?」って周ちゃんが言った言葉に「そうじゃない。」ってちょっと強い口調で返した。そうじゃないよ。私は怖かったんだと思う。私達はそれぞれなのに、また曖昧になってしまうかもしれない事がきっと怖い。

夕飯を食べ終わって、いつもみたいにソファーで周ちゃんの実家で作ってる健康茶をすすりながら話した。「周ちゃんに借りた江國さんの本でわからなくて。犬小屋って話覚えてる?」「うん。あの江國さんの本は覚えてるよ。だけど、ちょっと忘れてるかも。また読んでみるよ。」「うん。犬小屋から出てこない男の人の気持ちが知りたいんだよね。」「うん。わかった。」この人とはずっと別々でいたい。大切にしたいから私からは離れていてほしい。

筍ご飯

夕飯 18.4,2022

今日は久しぶりにフミエさんのアトリエで写真を撮った。天気はあんまり良くない。だけど、いつも通り元気なフミエさん。毎度、はじめましてのように関心するのだけど、フミエさんって本当に素敵。一緒にいるとぱっと時間が華やかになる。それでもってご飯も美味しいなんて、そんな最高な事はない。今日もすごく美味しかったな。周ちゃんにお土産までいただいてほくほく気分で帰宅した。

駅を降りると今にも雨が降り出しそう。それに東京よりもずっとずっと寒い。なんだか甘いものが食べたい。駅前にあるミスドでドーナツを3つ買って帰った。玄関を開けると早く帰宅した周ちゃん。黒いシャツが素敵。明日は早いから今日はビールはやめて、筍ご飯を一杯食べて早々に寝た。

焼き筍

夕飯 13.4,2022

朝は少し寝坊した。本当は4時半に起きて仕事をしようと思ってたけど、起きたのは6時過ぎ。少し書斎で片付けごとをしてまたベッドへ戻った。寝起きの周ちゃんとセックスをしてまた普通の私達の朝がやってきた。今日も暑そうだな。ベッドルームや吹き抜けの階段が光で充満してる。一昨日に買ったコッペパンで卵サンドを作って、お茶をポットに入れて周ちゃんと梃子の散歩へ出た。

何であんな事で喧嘩みたいになっちゃったのかわからないけれど、私の言うそれと、周ちゃんの言うそれは交れなかった。だってさ、絶対に。なんて当たり前のような話をしても、それは私だけの世界の見方であって、それが100%正しかったとしても、それは私にとって正しいとしていること。ほんの小さな事でも一瞬で大きな溝なのか壁なのかが私達に果てしなく遠いいような距離を作った。かける言葉ひとつひとつが胡散臭く聞こえてしまったり、どうしたらまた元に戻れるのか途方に暮れていたけど、もしかしたら周ちゃんもそうだったのかもしれない。昨晩の夜中に周ちゃんの背中を見てすごく寂しくなった。少し意地を張っている自分がいそうな気もしていたし、そんなプライドは誰のためにもならないことくらいわかってた。

裏山で気に入っている場所がある。そこは森の中に木のテーブルと椅子があって、小さな広場のようになってる。そこに腰掛けて朝食を始めた。ウグイスだとか鳥の声が気持ちがいい。そのうちに梃子と周ちゃん、私も追いかけっこをして、散々走って、家路に着いた。

“筍、買っていくね。” 仕事に出た周ちゃんから写真と一緒にメールが送られてきた。ミュージアムの近くの畑で採れたのだそう。じゃあ、今日は春キャベツの春巻きにしようかな。19時前、床屋に寄って髪がさっぱりした周ちゃんが帰ってきた。手には菜の花を持ってる。「おみやげだよ。」「どうしたの?」「拾ってきたよ。」そのまま、本棚の隣にある黒い花瓶に花をさして二階に上がった。菜の花、綺麗だな。周ちゃんって可愛いな。筍を切って糠でアク抜きを始めた。「周ちゃん、筍はどうやって食べる?」「刺身もいいし、焼きもいいよね。」

夕飯は春キャベツの春巻き、蕪のサラダ、豚の角煮、葱とワカメの味噌汁、納豆、ご飯。筍は焼き筍にして食べた。周ちゃんが春巻きを美味しい美味しいって何度も言ってた。こっちに引っ越してきて変わった事の一つに、近所で採れる野菜がとにかく美味しい。そして私達はきっと仲直りをした。

ハヤシライス

夕飯 11.4,2022

今日は納品作業。夕方早い時間から夕飯の支度を始めた。明日は昼前から撮影、まだ慣れない移動の為にも早く寝たい。今夜は周ちゃんが好きな豆のスープを作った。キャベツ、セロリのみじん切りに手羽元と青大豆をコトコトと煮たスープ。味はコンソメ、塩、ローリエを1枚。

19時にフミエさんと山若君と打ち合わせが入ってる。その前にお風呂に入って、と色々の準備を進める。周ちゃんが18時過ぎに帰宅。「私、明日早いからね。」「ちょっと部屋の片付けをするよ〜。」部屋にこもった周ちゃん。打ち合わせが終わった事を周ちゃんに伝える。「お風呂入ろうかな〜。」なんでわざわざいま?「さっとシャワーに浴びるね〜。」中々出てこない周ちゃん。ざぶんと湯船に浸かる音がした。「周ちゃん、いつでる?」「もう出ます〜」何だかイライラが爆発しそう。明日は11時から都内で撮影だけど、家を出るのは8時半。その前に色々とやりたい事もあるからいつも通り5時には起きたい。早く夕飯だとか色々の準備をしたのにな。それに昨日から早い事は伝えてる。怒らない、怒らない。いや、食事の前に伝えようかな。「お風呂頂きました〜。」一旦、爆発寸前の私をマンホールに閉じ込めて食事だけを済ませた。押し込められた私の心は何も感じないようにと努めてる。だからか言葉は殆ど出てこなかったし、ハヤシライスも殆ど噛まずに平らげた。食事を終えて適当に寂しい会話をしてベッドに横たわった。

読みかけの本を読み切って、部屋の片付けに戻った周ちゃんに声をかけた。周ちゃんは私が怒ってる事も、その理由も、少しの会話で察していた。「ごめん。俺が悪かったよ。」ぎこちないままに、一緒にベッドへ行って寝た。私一人が怒っただけの事だけど、初めての喧嘩かもしれない。周ちゃんはひたすら謝っていた。私は気持を伝えたかっただけで、周ちゃんが悪いとは思ってない。ただ、私の仕事が田舎へ引っ越す事で大変になる事を理解して欲しかっただけ。今までと殆ど変わらない生活をする周ちゃんはいいよ。私は東京の真ん中から埼玉の端っこに引っ越したのだから、ここでの生活が順調そうに見えたとしても、まだ不安は沢山残ってる。

野菜炒め

和食, 夕飯 09.4,2022

私はいつも通り5時頃、周ちゃんは7時前に起きた。今日はキュレーター仲間の高橋君と千葉のサボテンの聖地、グランカクタスという店に行く。そのついでにジョイフル本田で庭の土や植物を色々買おうとなってる。ふたりでパジャマのまま庭に出た。周ちゃんが小さなスコップで土を掘り起こす。テコは朝陽の中で庭のあちこちを徘徊してる。気持ちのいい朝。何処に何を育てようか光の中で話した。

高橋君は周ちゃんより少し年下。毎回思うけれど、少年みたい。昆虫博士みたいな緑色のジャケットに白いパンツ、大きな大きな白いトートバッグを持って現れた。「おはよう〜。」二人はしばらくの間、東北の美術館での仕事の話やキュレーターの誰かの話をしてた。まったくちんぷんかんぷんな話。時々、アーティストの奈良美智さんとか、建築家の青木淳さんとか、私でも知ってるような単語が聞こえた。毎日の中にいると忘れてしまうけれど、周ちゃんは学芸員だったんだ。芸術に関する膨大な知識とそれと出会ってきた沢山の経験や世界。私が知ってる周ちゃんの一体どこにそれが隠れているんだろう。私達は同じくらいの年数を生きてきてるのに。何だか少し情けなくなった。私は今まで一体なにをやってたんだろう。恋だとか旅だとか写真、そんな事しかやってない。いや、それしかやってない。

千葉あたりを走る頃には高橋君と私の離婚の話になった。高橋くんは結末みたいなものから話始めた。「あの傷はずっと塞がらなくて、体の一部が失くなったみたいな感じなんだよ。」高橋君の言葉にうんうんと何度も何度も頷く。それぞれの別々の結婚や離婚があったとしても、その痛みはもう私を突き刺したりはしなくても、同じ場所で同じ景色を見ているような気持ちになった。周ちゃんはただ前を見て運転していた。私は私の話を上手く伝えられたかわからなかったけれど、出来る限りの言葉や想いを伝えた。そうしてしばらく離婚やパートナーの話をしていたけど、高橋君が少しでも前に進んだり、少しでも傷が癒えてくれるなら、何時間でも何度でもこの話を続けたいと思った。

それから、高橋君の次の恋をどうするか3人で話した。私は周ちゃんを見つけた時にパートナーに求める3か条なるものを自分の中で決めていた。「高橋君、パートナーに求める3か条って何?」「え〜3つ?足らないよ〜。」「駄目。3つに決めて。」「うーん。まず1つに優しい人かな。それってただ優しいんじゃなくて、例えば身内の人が病になって、だけど自分は仕事が忙しくて調子が良くて、そんな時に仕事はいつだってまた出来るからと諦めて、人の看病に専念出来るような心から優しい人かな。」「そうなんだ〜。じゃあ1つ目は優しい人ね。」「次は自立かな。仕事も生活も自立してる人。家事代行とかする人が悪いってわけじゃないし、忙しい女性が料理をしないで外食ばかりっていうのが悪いってわけじゃないけど、一緒に料理したり、掃除したりしたい。だから、自立してる人がいい。」「なるほどね。けど高橋君、それは自立っていうより生活の価値観じゃないかな。世の中に料理をしない女性は沢山いるよ。働いてる女性には多いものだよ。だけど、それって悪い事じゃなくて、料理を楽しみたい人かそうじゃないかなだけじゃないかな。どちらも経済的には自立してる。だから、高橋君は生活を楽しむ事が人生の中で大事で、その楽しみを一緒に出来る人がいいって事じゃない?だから、価値観だと思うな。」「確かに〜。」「じゃあ、3つ目は?」「知的な人かな〜。話せる人っていうのかな。こうやって色々な話が出来る人がいい。」「高橋君、外的要素はゼロ?心が良ければ、ものすごく派手な服装で髪はピンクで、結構ふくよかな子でも大丈夫?」「うーん。すっごく話が合う子がいたんだけど、どうしても好きにはならなかったんだよね。」「それってさ、高橋君が心だけじゃなくて、女性に外的、性的要素を求めてるって事だよね。例えば、可愛いとか、胸が大きいとか、肌が白いとか、そこに高橋君が恋に落ちるポイントがあるんだよ。」「確かに。じゃあショートの子かな。けど、誰でもいいってわけじゃなくってショートが似合う子がいいんだよね。」「ショートが似合う子がいいってよく男の子は言うけど、それって結局ショートの似合う可愛い子だよね。」周ちゃんと高橋君がわっと笑った。「3つ目は知的じゃなくて、ショートにしよう。」「えー難しいよ。」「ダメだよ。自分の100%理想なんていないよ。それに、性的要素は入れた方がいいよ。後は、大丈夫。相手を知る上でわかっていくものだから。」

私が周ちゃんに出会った時に掲げていた3ヶ条。明るい、身長が175cm以上、セックスがうまい。まず、未来に明るい人が良かった。どんなに苦しい事があっても、どうしようもない事が起きても、生きる事に希望を持てる人は生きる事が上手になる。明るい人は明るくなりたいから、明るく灯そうと努めるその光が周りを温かくもしてくれる。後は性的要素が2つ。だって、性的要素がなければ、動物だとか、友達だとかで事足りる。背の高い男が私はカッコよく見える。あとはセックスが上手ければ、男と女である事を楽しめるし、言葉では通じない事も身体を通してコミュニケーションがとれる。想いなんてものは共有しなくていい。心は私の男の中にそれぞれポツンと置いてあるものだから。それよりも一緒に楽しむことが出来れば、勝手に色々は上手に転がっていくものだと信じてる。私の経験上の話。

高橋君はレアなサボテンを3つ。周ちゃんは色と形が絶妙なサボテンを一つ。あと家に舞茸みたいなピンク色のサボテンを買った。帰宅したのは20時過ぎ。疲れた。暑いサボテンのハウスの中で4時間くらいボテンと格闘したから軽く熱中症気味。夕飯は簡単に野菜炒めにした。ジョイフルで買った金木犀や野菜の苗。明日は庭いじり。楽しみだな。

ちゃんちゃん焼き

夕飯 01.4,2022

8時にスタジオ入り。終わったのは16時過ぎ。楽しかった。すごくへとへとだけど、いい現場だったな。急いでタクシーに乗って新宿の駅に向かった。特急列車が丁度のタイミングで発車。あ〜あ、乗り過ごした。次の電車に乗ろう。席について窓の外を眺める。夕陽が綺麗。建物の間を光が通り抜けては列車の中に入ってきた。LINEを開くと編集の成田さんから “明日大場さんの展示ご一緒しませんか?” 行きたいけど明日はダメだ。もし東京ならサクッと出かけられるのにな。成田さん、会いたかったな。大場さんも。

駅を出てスーパーの入り口で仕事帰りの周ちゃんと待ち合わせ。「よしみ、お疲れ様〜」駆け寄ってくる周ちゃん。「夕飯何にしよう?」「ちゃんちゃん焼きなら作るよ。」「うん、、。」お昼のカレー弁当があまりに美味しくって完食した所為で午後からずっとお腹が痛かった。さっぱりしたものがいいな。疲労や腹痛、荷物の重さに色々がぎりぎり。食事を作って貰えるだけで有難い事なのになんだかずっと私の機嫌はよくない。レジで会計を済ませてエスカレーターに乗り前にいる周ちゃんの腕に不意に手を伸ばした。洋服の上から触れる周ちゃんの腕。一瞬で胸の辺りがじんわりと温かくなった。もう2度と愛する人を世界から失いたくない。だから、十分に私を満たさないでと強く望むけれど、これから段々とそうなっていくんだろうと思った。

夕飯のちゃんちゃん焼き。今日も美味しかった。

手巻き寿司

夕飯 30.3,2022

5時過ぎに起きて裏山に散歩に出た。忙しなさに気持ちが少しざわざわしそうだったから朝の空気で頭を空っぽにしたかった。帰宅して直ぐに仕事に取り掛かる。やってもやっても忙しさばかりが追いかけてくる。バタバタと朝食や昼食を済ませて気づいたら夕方。撮影で使う造花を駅前に買いに走った。本当は夕方に引っ越し疲れを癒しに近くの温泉へ行こうと周ちゃんは1日リモートに切り替えて時間を調整してくれてたけど結局私の仕事が終わらないままに夕方も過ぎようとしていた。「今夜はお刺身にしよう。」「簡単な手巻きにしよっか?支度は俺がやるから。」周ちゃんが言った。息をつく暇もなく駅から帰宅してまた仕事。首だとか色々がぎゅっとしてて痛い。お風呂にざぶんと入った。ああ、時間がない。まだ明日の準備が残ってるのにもう夜。リビングを開けると綺麗に準備された食卓がでーんって感じでいた。しばらくの間食卓を遠くから眺めてみる。綺麗。周ちゃん、ありがとう。

こてっちゃん

夕飯 27.3,2022

朝からレンタカーを借りてリサイクルショップと八王子のMICHIO OKAMOTO WEARHOUSEヘ。ここに来るのは何年ぶりだろう。近くにのむらさんとミッチーの家がある。男と男のカップルの食卓を撮るっていう作品を作っていた時に通っていた八王子の街。MICHIOヘはキナリノの相田さんとのお仕事で店の2Fで営んでる菓子屋の撮影で行った。懐かしい。

「本棚を探してるんです。」紹介して貰ったデンマークビンテージの背丈が1m程の棚。すごく素敵。値段を聞くとミチオさんが出てきた。「この棚はいいんですよ。珍しいですよ。」確かに、デンマークビンテージで小ぶりの棚を見かける事はあまりない。ただ、日本に入ってきていないだけなのかなと思っていたけど、作っている数自体も少なく希少なのだそう。「少しマニアックな話をしてもいいですか?」ミチオさんから次から次へと出てくる面白そうな予感がぷんぷんする話が続いた。棚をつなぎ合わせてる木の拘りや、背面に使ってる木の柄について。例えば無印のように繋ぎ合わせた木では見れない木そのもの柄や、樹齢、木を贅沢に使えた時代の話。何十年も前に丁寧に人の手で作られた家具。私達が所沢から来た事を言うと、隣町の東村山にある宮崎駿さんのご自宅の近くに子供の頃に住んでいたそうで、そこから西所沢のnegomboカレーの話になって「メニューには無いんですけど、山田くんの野菜カレーは本当に美味しいですよ。」って。negomboはRiCEの撮影でもう何年も前に編集の成田さんと撮影に行った店。夏の暑い日だったような気がする。駅で待ち合わせして、喫茶店で少し打ち合わせしてから向かった。ポークビンダルーを撮って、私は肉が苦手なのを知ってか成田さんは撮ったカレーをもりもりとひとりで食べてくれた。あれが所沢だったんだ。まさかその街に住むなんて。人生って本当にわからないもの。

家の色々を買いに寄ったホームセンターとリサイクルショップ。疲れたけど楽しかった。リサイクルショップでは新品のオーブンレンジ1万と無印の扇風機を3000円くらいで購入。中々な破格。こんな買い物の仕方があるんだ。人の動きが激しい東京こそ家具や家電のリユースをもっと活用出来るようになればいいのに。リサイクルショップで買ったオーブンレンジを車まで運ぶ周ちゃん。有り難いな。長いこと何でもひとりでやってきたせいか、なんだか申し訳ない気持ちになったり、かよわい女になったような気分でそわそわした。

今日は外で見る周ちゃんをお腹いっぱいに見た。ひょいっと重い荷物を運ぶ周ちゃん。リサイクルショップのどこにいてもすぐに見つかる背の高い周ちゃん。メガネをかけて運転する周ちゃんもなかなか良かった。耳にかかる少し茶色い髪や筋肉が程よくついた腕が色っぽくて堪らない。ホームセンターで工具を真剣に探してる周ちゃんもいい。あ、イケメン。ホームセンターで遠くにイケた男を発掘気分。あっちこっちでニヤニヤしてる私を見かけては「何かいい事あった?」何度も聞いてくる周ちゃん。「なんもないよ。」と同じ言葉を何度も返した。

帰りの車中で周ちゃんに聞いた。「無性にこてっちゃんが食べたくなる日ってあるよね?」「うん、あるある。」夕飯はこてっちゃんと春巻。

鯖寿司

夕飯 21.3,2022

東京最後の日。ここ数日、友人にバイバイを言う度に寂しさが増していく一方で同時に次が始まっている気配に少しうきうきしてる。梃子は10時に商店街のペットサロンでいつもと同じカットをしてスッキリして帰宅。引っ越しの片付けを途中で終えて私も青山のサロンへ。編集の槙尾さんに紹介してもらってずっと行きたかったところ。東京最後の日にいつもと違う事をしたかった。ずっと伸ばしていた長い髪を昨年の秋、周ちゃんに出会う数日前に思い立ってショートにした。近所の美容師をしてるタマちゃんに教えてもらった女性の美容師さんに数ヶ月切ってもらっていたけど、何だか男の人に切ってもらいたくなって予約をした。

髪を切るのはいい。すごくスッキリするし、気分がいい。素敵な美容師さんだった。帰り道に槙尾さんに御礼のメッセージを送ると、興奮した感じの返答。私もそう思う。人生1のベストオブショートで賞。いつもと違う感じの自分でちょっと驚いた。東京最後の夜にぴったりな気分の良さ。渋谷まで歩いて田園都市線に乗って三茶で降りた。世田谷線に向かう途中で近所のタマちゃんに声をかけられた。「よしみちゃん?」後ろ姿がタマちゃんっぽいなぁって思って歩いてたけど、時間も早いし。だけど本当にタマちゃんだった。今日は早退したのだそう。タマちゃんとは離婚する直前に一緒に伊勢神宮へ行った。あの旅はすごく楽しかった。心身共に元気な今ならあの3倍は楽しめると思うけれど、あの時の精一杯ですごく楽しかった。一泊二日。一緒にお風呂に入って一緒に寝て一緒に参拝した。世界は夫婦だけだと思い込んでいた私に世界は広くて楽しくて優しくて温かいって事をみんなが教えてくれた旅。タマちゃん、旦那のADのしみるさん。しみるさんの後輩の芸術家の今む。

今日会えるなんて凄いな。計らったみたいに会えた。

帰りにサミットで鯖寿司を買った。片付けをして、お風呂に入って、ビール。Tverで大豆だとわ子がやってる。久しぶりだな。第一話だった。とわ子が田中さん、佐藤さん、中村さんって、三人の元夫の名前で呼ばれてるシーンを見て何だか可笑しくなった。編集の槙尾さんは私の事をきくちさんって言う。昼に掛かってきた引越し屋は菅原さんって言ってた。さっき髪を切ってもらったサロンでは熊谷さんって呼ばれて、タマちゃんはよしみちゃんって言う。離婚した時のアイデンティティの崩壊の酷さと言ったらそりゃ無かったけれど、もうどこにも所属しないって決めたら何だかとわ子の飄々としてる感じがすんなりとわかる気がした。

「明日天気悪いんだってね。」明日の引っ越しを心配したタマちゃんが世田谷線の中で言った。「うん。そうだね。けど、家に着けばいいよ。」そう、何だか最近どうでもいい。晴れてる方がずっといいけど、人生なんてそんなもんだ。何かに依存しなければ、大体何でも似たようなもの。菊地でも菅原でも熊谷でもよしみでも、私はいつだって私。誰かの何かになろうとするから苦しくなるだけであって、私でいれば何も困ることはない。失うのは辛いけど、変わるのも怖いけど、私があればどうにかなる。どうにだってなる。

今日タマちゃんに会えて良かった。

手巻き寿司

夕飯 19.3,2022

早朝に起きて納品作業。段々と目処が見えてきた。胸をほっと撫で下ろす。良かった。これなら終われそう。午後に散歩がてらオオゼキへ刺身と海苔を買いに行った。1年ちょっと前、この家に越してきて最初の来客は後藤さん。引っ越してから2週間くらいだった気がする。とりあえずで付けておいたサイズの異なるカーテンだとか生活がまだ馴染んでいない頃に遊びに来てくれた。今思い返せば、住んだ当初は怖かった。夜が来る度にドアの外の足に耳を傾け、夜中にマンションの前でタクシーから降りる誰かの音を聞いては心臓がバクバクした。それから1ヶ月後くらい、警察から最後の電話があって、もう新しい場所へ引っ越しましたと伝えて、何だかそこから少し落ち着いたように思う。夫から避難したのは事実だけど、別に夫の暴力から逃げてたわけじゃない。病の事を説明するのは難しい。だけど、警察にはそう映ってるみたいだった。引っ越して直ぐ、3ヶ月の経過観察も含めて通ってた心療内科を卒業し、体重もあっという間に元に戻っていった。この家に来てからは悪い事は何一つとして起こらなかったように思う。記憶は何度も私を襲い続けてたけれど、現実は温かく見守ってくれてたいた。”最初と最後に行かなきゃね。” 引っ越しが決まってから来た後藤さんからのメッセージ。何だかすごく嬉しかったな。そうして、引っ越しまであと3日。外は雨が急に降り出してる。傘を持った後藤さんが沢山のビールとスパークリングと苺を持っていつもの笑顔で遊びに来てくれた。

引っ越しの片付けも仕事もあったから今日は手巻き寿司。菜花の辛子和えと、蓮根のナンプラー炒め、なめこと揚げ麩の味噌汁を作った。乾杯をして、海苔を手に持った後藤さん。未だ食べてないのに「手巻き寿司楽しい〜。」って子供みたいに目をきらきらさせてる。ミオちゃんはよく後藤さんの事を「ゴッサンは、直ぐに人を信じちゃうから悪い男に引っかかるんだよ〜。」って冗談で言うけど、そりゃ悪そうな男も付いてきちゃうくらいその無邪気さが魅力的ってことだと思う。また一緒に手巻き寿司をしたいな。嬉しそうな顔が可愛かった。

私が東京を離れるのが寂しい寂しいって言うと、「この家で色々とひとりで生活を始めたから、そうゆうのもあるんでしょ。」って後藤さんが言った。そう、元夫との暮らしを捨て、新しい場所で暮らし始めたのはこの家が起点。菊地だった私を捨てて、家具を新しく買い直して、少しずつ少しずつ生活を整えてきた。夏になる頃には殺風景だった大きなベランダも植物園みたいになった。中でも夏のゴーヤカーテンの下で日向ぼっこするのがとびきり好きだった。ここからまた始まったんだ。沢山の思い出がある。東京で暮らして一番好きな家、一番好きな暮らしだったな。

後藤さん今日もありがとう。私の生活ありがとう。