
今日は久しぶりにダイニングテーブルで一緒に食事をした。けど、やっぱり体調が悪かったみたいで辛そうだった。レポートがうまく言ってない。あと数日なのに、家事も周ちゃんの3食の食事や世話、買い出だし。疲れてる。
今日は久しぶりにダイニングテーブルで一緒に食事をした。けど、やっぱり体調が悪かったみたいで辛そうだった。レポートがうまく言ってない。あと数日なのに、家事も周ちゃんの3食の食事や世話、買い出だし。疲れてる。
買い物に行くのが面倒で大量にある大豆とチキンでトマト煮込みを作った。正直、豆は好きじゃない。
ここ数日生理が遅れて、もしや、と思ったけれど、いつも通りな感じでやってきた。少しがっかりする自分がいる。特別に子供を望んでる訳じゃないし、あれから妊活だってしてない。年齢的にはもうずっと遅いし、言い訳ばかり並べても仕方ないけど不意になんだかそうなったらいいのにと思った。今妊娠したら大学の勉強だって大変だし、想像するだけで最低で最悪な日々が想像出来る。だけど、人間って生き物はバカになるように作られているんじゃないか。なんだか周ちゃんの子供がいたらいいなって素直に思った。
朝からお腹が重かった。生理は嫌いだったけど、妊娠してから少し好きになった。身体が不要としているものをダーって出していく感じは気持ちがいい。それになんだか新しくなれる気がするのもいい。それに、お腹が痛かったり体調が悪くなると堂々とストライキ出来るのもいいと思う。今日はもう無理、頑張らないーって全部きれいに投げ出してふにゃふにゃになれる。なんでもかんでも生理の所為だ。だって仕方がないよ。生理が悪いんだもの。女に生まれたくて生まれたわけじゃない。これは生物としての使命なんだから。
明後日はミオちゃんと長野だ。私の友人の中で一番IQが高くて何処かの国をトランジットしてるのが似合う女。一緒にスキーをしようと言ってたけど雪はあるんだろうか。新しいサンダルを履いていきたいけど迷ってる。
こないだ料理家の角田さんから今井真実さんの話をちらっと聞いて気になって買った今井さんの料理本。いい日だった、と眠れるように、の私小説は読んでいたけど、レシピを作るのは初めて。それにとゆうか、角田さんと仲良しだと聞いて、今井さんがどんな料理を作るのか、きっと、いや絶対に美味しい筈だと思っていた。
周ちゃんが隣で唸ってる。マッシュした里芋とゴルゴンゾーラ、モッツァレラ、余っていたブリーチーズがいい感じに口の中で混ざり合ってゆく。あまりに熱すぎて喉がやけどしそう。だけど、思い切りに頬張った。
今日は3時に起きたから眠い。受験生みたいに勉強に夢中だ。昼は納品を2本済ませて色々と事務作業。明日の撮影は瞳ちゃんと石塚さん。和やかなことは間違いない。だけど、撮影前夜はどうしても気持ちが少しキュッとする。それに、生理が来なくて少し不安定な日が続いてる。妊娠をしてからなんだか身体が変わったような気がしてる。こないだ中西くんの友達が3回流産して子供ができたって言ってた。また中西くんとお茶したいな。
夕飯はハヤシライス、朝採れの春菊のオリーブオイルのサラダとからし菜の胡麻油とマヨの和えサラダ。採れたてが食べたくてサラダがふたつ。後は鰯のつみれの味噌汁と納豆。蕪と昆布の浅漬は出し忘れた。
結局、朝一番で大場さんには断りのメールを入れた。メールの前に大場さんからも、もう一人、テレビのカメラマンの助っ人が来ますとメールが入っていた。そのメールには関係なく断るつもりだったけれど、良かったと思った。昨日ひさびさに連絡した写真家の菱沼君。「菱沼くん、映像やってる?」と聞いたその答えは「今は福島で暮らしてます。」だった。こないだ朝井リョウさんの書籍で菱沼くんの写真が使われたとインスタか何かで見たけど、きっと今も菱沼くんらしい硬くて強い写真を撮ってるんだろう。東京に仕事に来たときは呑もうね!と約束した。
大場さんの事を周ちゃんにゆっくり相談したかったけど、昨晩はなんだか色々と忙しなく夜が終わった。多分、もう自分の中でわかってた。夜にベッドの中でも思った。何かの為にとか、誰かの為にっていうのはやめよう。それから、そうゆう言い訳も。
私は映像が好きで撮っているんじゃない、料理が好きで映像を撮ってる。だから、被写体がミュージュシャンなら本末転倒。ぜんぜん楽しくない。映像が好きなわけじゃない。こないだふみえさんにも言われた。「よしみちゃんが嫌なら映像はやらなくてよし。」って。あの時は少し心に何かが引っかかったけれど、答えは違う。映像については好きでも嫌いでもない。私が好きなのは料理。料理とか料理を作る人を見ているのが好き。大場さんには申し訳ない気持があったけど、なんだかすごく清々しい。
午前はパルコの有吾さんと。午後はざおーと仕事。有吾さんに最後に会ったのは、二年前の夏。待ちの時間があって、公園通りのエクシオールカフェでお茶をした。そして、その時に夫が帰って来ないことを相談した。「多分、帰りずらいんじゃないかな。旅行でも誘ってみたらどうだろう。」一ヶ月以上帰ってこない夫に、アドバイスの通りメールしてみると、しばらくしてから「旅行でも行きませんか?」と思いだしたようにメールが戻ってきた。相談していた姉やアカリちゃんにその事を話すと、「何を今更!」って、二人とも口裏合わせたように怒っていたけど、私の心はとっくにどうにかなっていたから、夫に声をかけられるだけで十分だった。そして、夫の横に座っても前のように笑う事ができない私がいることも知っていたからメールは返さなかった。正確に言うと、返すことが出来なかった。
今更になって思い出したけど、あの日が有吾さんと会った最後ではなくて、その一週間後くらいに有吾さんの知り合いと一緒にパルコのビアガーで飲んだのが最後。その時に会った美容師の男の子が帰り際に痩せすぎだからもっと太った方がいいよと西武の前を歩きながら言った。今から7kg痩せてた頃のこと。ストレスで一気に体重が落ちてしまって確か44kgくらいだった。持ってる服の殆どはぶかぶかで、夫や毎日だけじゃなくて、もう何もかもが世界がずれていた。あの夜に1Fにあるeatripの花屋で買った植物は数ヶ月で枯れた。何を買ったのか覚えてない。
午後の現場に向かう前に、隙間の時間でオペラシティーでやってる川内倫子さんの写真展に寄った。川内さんの写真が特別好きなわけじゃなかったけど、大規模の写真展というのが引っかかって寄ってみることにした。こうしてミュージアムだとかアートにきちんと触れる、学ぼうとする姿勢を持ち始めたのは周ちゃんのお陰だと思う。感じに行くというより勉強しにいく場所になった気がする。バックパッカーをやめてから、ずっと家の中、食卓、より内側へよりマクロな世界へと興味を持ってきたけれど、周ちゃんと結婚してから、ぱっと外の世界に惹かれるようになった。北海道へのアイヌリサーチもそう。家から出て、大きいものが見たい。川内さんの写真は生きるとか生命とか、そういう事を見てる写真みたいで、今の私の気分そのもので見ていて気持ちが良かった。アイヌリサーチで試しに借りた中判カメラ。ハッセルブラッドを売ってから久しぶりの中版だったけれど、思っている以上に手応えがあったカメラ。やっぱり買おうかな。どうしよう。山登り用にワタルさんが欲しいと言ってたカメラ。私は何用だろう。世界用かな。
今夜は里芋のグラタン。
伝説の家政婦 志麻さんのレシピ
今日は新しい絨毯が届いた。人生初のビンテージ絨毯。たまたま週末に後藤さんと新宿のNewmanでポップアップしている所を通り過ぎて出会った。「よしみ、こういうのは出会いだからね。」店員さんが奥から持ってきてくれた大きな絨毯。2m×3m。うちのリビングに入るかな。次の日に周ちゃんともう一度見に行って何時間も迷って購入を決めた。なんだか夢みたい。椅子もテーブルも、一生ものだからとお金をかけてきたけど、絨毯はどうしても踏み入ることが出来なかった世界。なんだか、もう人生の半分くらい願いが叶ってしまったような気分。
昨日にスイッチをパチンと切ってからというもの、ぐっと色々が楽になった。体調は少しお腹が痛いくらいで、健康そのもの。午後に少し映像の仕事をしたけど、思った以上にボリュームがあって体調が悪くなった。だから言わんこっちゃない。だけど、楽しいから大丈夫な気がしてる。
夕方に編集の浅井さんからこないだのサッポロビールの仕事の御礼のメッセージが入った。今度、こっちに遊びにきたいとのこと、それから少し前に聞いたプロジェクトの話、良かったら写真を使わせて貰えないか?っていう相談だった。一つ返事でメールを返した。すごく嬉しい。
今年は本当に目まぐるしく色々が変化してる。再婚して、田舎暮らしを初めて、車の免許を取り、妊娠、そして流産。自分の人生じゃないみたい。1年前の今日の私が聞いたら倒れると思う。周ちゃんと出会ってから未だ1年経ってない。もし、周ちゃんの企画した郷土料理の展示に行かなかったら、私達はデートすらしてなかったかもしれない。周ちゃんはイケメンでシングルだったし、東京のイケイケな美術館のキュレーターに猛プッシュを受けていたし、きっと、私とデートするのも忘れてただろう。私だって同じく。あの頃、よくデートに誘ってくれた30代前半の背の低い男と付き合っていたかもしれないし、ちょっと気になってた東京から田舎に移り住んだ建築の仕事をしてる人とデートしてただろう。多分、きっと。
周ちゃんに出会う前日、渋谷でバッタリ会った浅井さんに電動歯ブラシを貰った。そして、浅井さんがよく出入りしてるデザイン事務所のメンズを紹介してくださいね!とお願いしてバイバイした。人生って本当に不思議だなと思う。大体が思い通りにいかないけど、思い通りになんてしない方がいいのかもしれない。どうにかなるから大丈夫。姉の言葉の通りだ。リハビリ1日目にして、既にすごい回復を感じているし、頑張るのをやめたら楽しい。
朝から二日酔い。昨晩そんなに飲んでないのに身体が重い。電話を切ってから直ぐに寝たと思う。時間は深夜12時ちょっと過ぎ。結婚についてリリさんと話した。結婚だけじゃなくて、どうパートナーと生きていくかみたいなことも。隣にいた周ちゃんはリスクヘッジの話をしてた。私は相手じゃなくて自分を信じていけば、どんなことがあろうときっと後悔はないと思うし、不安なのはお互いに一緒だからみたいな話をした。もし、万が一、彼が他の誰かを愛してしまうような日がきても、それは苦しいけれど、もしかしたら自分の愛が足らなかったのかもしれないし、彼の人生にとって大切な人に出会ってしまったのかもしれない。もしくは、ただの馬鹿。どれをとっても理解がいく。
リリさんは途中なんども目を赤くしながら話を続けた。自分の言葉で私に伝える気持ちの色々は、きちんとしっかりと答えは決まっているようだったし、私が知っている大半のリリさんよりも、ずっとずっとまたひとつ強くなったようだった。いつだったか忘れたけど、出会ってそんなに時間が経ってなかったと思う。撮影の後に入ったタリーズで急にポロポロと泣き出した。それから、私は何度もリリさんの涙を知ってる。直ぐに泣いてしまう彼女はとても魅力的に見えたし、それでいいと思った。歳が10こ以上離れてるリリさん。20代の彼女にはこれからきっと沢山の出来事が起きる。流せるのならどんどん悲しみは流していけばいいし、弱くあることは決して悪く無い。それに、強くなんてならなくても、いつかはそうなっていく。人生に慣れてしまう日がいつかくるから。
昼を過ぎてもずっと気だるい。天気も肌寒くてどんよりしてる。心から幸せになって欲しいと思った。それに、今のリリさんならきっと幸せになっていく気がした。私の知っている限り、幸せって突然降ってくるようなものじゃない。毎日のその先にきちんと繋がってるもの。だから、今日想うことがあるとしたら、大丈夫。涙がいつかの今日をびちょびちょにしたとしても、大丈夫。
今朝は梃子の散歩で周ちゃんと水の神様が祀られてる神社へ行った。鬱蒼とした森の中にある神社。少し高台にあって、風が吹くと木々が揃って揺れて遠く街が見えた。周ちゃんはずっと神社の説明をしてる。梃子はこっちに来てから森を少し怖がってるけど知らない場所を歩くのが楽しそうな感じもする。周ちゃん曰く、この辺り一体は宮崎駿さんが愛した土地なのだそうだけど、確かにあの漫画の中の何処かにトリップしたみたいな気分。
この街に引っ越してきてから、なんだかちょっと優しくなった気がする。通り過ぎる人も、スーパーで会う人も東京とはちょっと違う。よく田舎へ行くと穏やかになるっていうけど、心が変わったというよりも、単純に広大な土地を目の当たりにして、まぁいっかみたいな気持ちになるだけのように思えた。世田谷のぎゅうぎゅうと街に押し込められた感じも好きだったけれど、人がいない田舎では人がいることが有り難く見えるような。
夕ご飯はトマトのチキン煮込み、セロリとモッツアレラのサラダ、人参のサブジ、塩豚とネギの炒め物、すじこ、青大豆のご飯、味噌汁を作った。周ちゃんはトマトのチキン煮込みが気に入ったみたいでパクパク嬉しそうに食べてる。21時ちょっと前、周ちゃんの電話が鳴った。「あ、やしろさんだ。ごめんね、ちょっと出るね。」「お久しぶりです〜。」途中途中、やしろさんの声が携帯から漏れて聞こえた。どうやら大分にいるのだけど、この時間でも行ける温泉を探してるようだった。「実は、結婚しまして。」「えー急展開だね!」話は続いた。「電話、ごめんね。仲のいいフォトグラファーの方だよ。福岡に住んでて、建築専門で撮ってる。」周ちゃんの笑顔がいつもよりも1.5倍増ですごく嬉しそう。少し年が上のやしろさんとは、大分の芸術祭の時にひょんな事で仲良くなってから、家に泊まりに行ったりと仲良くして貰っていたのだそう。
そうだよな。なんだか全然気づかなかった。周ちゃんも急にこの数ヶ月で人生が変わったんだ。
朝に納品を済ませて、午後は病院。ブライダルチェックを気軽に受けに行った筈だったのにいつの間にか不妊治療みたいな検査が始まっていた1ヶ月ちょっと。ようやく終わると思うとすごく嬉しかった。私が嫌なのは先生が嫌いだったこと。病院で決められてる小さなメモ帳みたいなノートを忘れると先生はイラっとした感じになるし、子供が欲しいのか迷ってるのに「急ぎましょう!」ばっかりだし、結局フーナーテストというセックスのタイミングをはかるものをやってみたけど検査自体失敗に終わったそうだし、お金もかかるし、毎度会う度に先生はうーんって感じで深刻に渋い顔をしているし、何だかとにかく楽しくない病院だった。注射が下手くそな年配の看護師のおばちゃんは「まぁまぁ年齢の事はあるけど、この感じなら大丈夫よ。」そんな掛け声の方がずっと気分が良かった。ああ、ようやく終わった。
「先生が嫌だったよ。」周ちゃんにぽろっとこぼすと、「まぁ、先生も色々と言われるだろうし、ちょっと過剰に慎重になるんじゃないかな。」って。けど、「あの先生といると私はどんどん不安な気持ちになるよ。」って伝えたら黙った。結局、身体を触られて、注射したり、何かよくわからない検査をするのは私自身だ。先生がリスクヘッジの為にあの感じだったとしても、正直私には関係がない。だって不安ばかりが募る一方で、全然楽しくなかったから。「ああいう場所だからね。」って周ちゃんは言ったけれど、ああいう場所とはどういう事だ!赤ちゃんが欲しいと思う気持ちは別にネガティブでも何でもないし、毎回どんよりした気持ちで受ける必要だってない。病院で不妊治療をする事がネガティブだと受け止めるのは、本人ではなく周りだなんておかしな話。そういう勝手な想像は嫌いだ。世の中は全てが自分の思い通りになんていくわけがないのだし、ただそれだけの事で幸福と不幸のどちらかにカテゴライズするなんて、無性に腹がたって怒った。周ちゃんは申し訳なさそうに「そうだね。」って言った。周ちゃんはいつも私がどんなに怒っても怒らない。
「周ちゃん、周ちゃんってどうして怒らないの?」
私は奴隷だった時代が長かった。家族は悪くないと決めてる。誰にも言えない苦しい奴隷時代があった。大人になり家を出て、結婚してから再来した別の奴隷ライフを受け入れたのと、過去の私は密接に関係してるのを知ってる。私は奴隷になる許容をしっかりと持ち備えていたから。
「前にもちょっと話したけど、。中学校の時に暴力とかイジメがあったんだよね。怒ったこともあったけど、怒ると想像以上に自分へのダメージも大きくて、そのうちに怒れなくなったんだよ、、。」しばらく周ちゃんは話し続けた。川底にあるヘドロみたいに触れられないものを救ってはその中をやみくもに探してるみたい。私には何も見えないよ。なんて言葉をかけていいのかわからなかったけど、周ちゃんは私に訴え続けてた。その痛みがどんな痛みなのか全く想像がつかなかった。
「周ちゃん、私は離婚してから怒るようになったんだよ。ずっと怖い人が苦手だったし、怒れなかったよ。ずっと言えなくて我慢してた。」だから。だからもう私は我慢しない。不当な扱いを受けたり、酷い事をされたり、なんだか本当は悲しくても、辛くても、苦しくても、それでも私さえ我慢すれば世界が回るならいいなんて事はない。私でも私以外でも同じ。そんな事しなくたって世界はよく回れる。自分も誰かも犠牲にしたくない。そんな現実はもう見たくない。絶対に見たくない。
夜だけがどんどん更けていく。「だから、俺はよしみを尊敬してるんだよ。何だか愛の告白みたいになってるね。よしみはいつだって今に向き合おうとしてる。俺もそうなりたいけど、だから、すごく尊敬してるんだよ。」なんだろう。周ちゃんの言葉がすんなりと聞こえてこない。
病院にちょっと早く着いて、近くのファミマに保険の引き落としで寄った。自動ドアが開いてファミマのチャイムが鳴る。あ、あれ。怖い。一瞬でそこは違う場所になった。元夫が最悪だった時間が一瞬でやってきた。すごく久しぶり。全身が硬直してる。あ、多分あれだ。昨日、引越しの荷物をまとめてる時に元夫の写真を見つけたからだ。ああ、やっちゃった。吐き気なのか目眩なのか、悪寒、圧迫、動悸。それを説明するのにピタリとハマる言葉が見つからない。とにかく曖昧に怖いとしか言えない。ここに居るだけなのに凄くどうしようもなく怖くなる。直ぐに思った。大丈夫だし、今は違う。ああ、あの過去は本当に苦しかったんだ。苦しみが完全に過去から来たんだってわかった。うん、もうあの場所じゃない。あれから、中目黒も祐天寺も行かなくなった。行きたい店があっても行かない。もう行かない。それでいい。怖いから行かない。
周ちゃんが怒れなくなった過去。怒れない。それでいいと思う。一生そのままでいいんじゃないかな。今日を生きるために見つけた答えがそれならそれが一番いい。逃げたいなら逃げて、見たくないなら目をつぶって、それで怖いとか苦しみが減るのなら、今日が今が笑えているのなら、最高だと思う。よくやった。それって、十分に強く生きているって事なんじゃ無いかなと思う。生きている事の望みって、お金でも愛でも頑張る事でもなくて、ただ今を安心して生きていられるかなんじゃないかな。周ちゃんはもう2度と怒らなくていい。私は怒りたいから怒ってるだけ。それぞれのやり方で今を安心して生きたらいいよ。
午前は仕事をして、昼から病院へ。今日は排卵しているか検査するのだそう。「左の子宮から排卵していて、卵子が11mmです。」先生が言った、何だかすごく変な気分。生理は毎月くる当たり前のものになったけれど、どうやら排卵してるらしいとか、排卵痛があるとか、何となくわかってる事もあったけれど、一度もそれを見たことがない。下腹部の奥が痛むことがあっても、触れたこともないし、大体の形はイラストで見た事があるけど、よくわからなかった。卵子が11mm。カウンセリングを受けていた時、シンガポール在住のカウンセラーさんは卵子の事をエッグと言ってた。その時は何だか違和感を感じたけど、卵なんだ。毎月私のお腹に卵。知ってたけど、知らなかった。卵。やっぱり変な気分。
生理、めんどくさ。生理、要らない。生理痛辛い。PMS最悪。その裏側で卵がいた。卵。会ったことがないけど、お疲れさんって思った。こんな言い方は正しくない気がしてるけれど、女の体は毎月卵を出して、子供を産もうとしてるんだ。それなのに、全然違うこと、仕事だとか、恋だとか、全然別のことに翻弄されて必死になって生きてる。SEXをする時はコンドームをつけて避妊して、卵はそのまま流れてなくなっていく。春が来て夏が来て、食べて排泄して、産まれて成長して死んで、私達は自然の流れに沿って生きてるけど、当たり前の様に卵を捨てることは自然なのかどうか、ちょっとよくわからなくなった。だからって子供を産まなきゃいけないとか、産むべきだとは全く思わない。
周ちゃんが不動産を回って物件を送ってくれた。どれも全くときめかない。私も探してるけど、見つからない。何だか申し訳ない気持ち。だけど、お金出してときめかない家に住みたくない。一緒にはいたいけど、だからってあなたとなら何処でも幸せとは、もう言いたくない。
夏にはどこかの街で冷たい素麺を一緒にすすっている筈。大丈夫、きっと見つかる。
ブランチは昨晩の残りの刺身と冷蔵庫の余ったおかず。南瓜の煮物、小松菜のおひたし、ナスとレンコンと鳥もも肉の甘酢炒め、納豆、卵、海苔、ご飯とキャベツの味噌汁。ご飯は二杯おかわりした。周ちゃんは三杯だったかな。とにかく私と周ちゃんはよく食べる。今日もペロッと漫画みたいに食べた。
午後は周ちゃんに付き合って駒場にある民芸館に行った。前の家が近かったので何度もこの辺を歩いたことがあるけど民芸館は初めて。周ちゃんはまるでここの学芸員みたいに色々を教えてくれている。周ちゃんは親切で優しい男ランキングベスト3に入ってもおかしくない。ジャパンじゃなくて、もちろん、ワールド大会で。おかしなもので、数年前は全く知らない音楽に耳を傾けながらライブハウスの暗闇の中でひとり呆然と夫だった男が唄うのを聞いていたけど、今はこれから夫となろうとする学芸員の話を民芸館で静かに聞いてる。民芸も音楽と同じ。全く知らない。私の口からは、うんともすんとも何にも出てこない。展示品を見ながら、幾つも見ながらそんな事を考えてた。お腹空いたな。「周ちゃん、シーフードパスタが食べたい。」民芸館を出てしばらくすると「よしみがシーフードパスタって言うから、俺もそんな気分になってきちゃったよ!」「じゃあ、今夜はパスタにしよう!ホタテと鮭があるよ。」何だかとびきり元気な声で言った気がする。別に民芸館がつまらなかったわけじゃない。一人じゃ行かない民芸館も周ちゃんとなら楽しい。民芸は大体見てない。家でもスーパーでも日本から出てもいい、周ちゃんとならどこでも楽しい。周ちゃんはどんな表情をして、どんな言葉でどんな話をどんな風にしてる。どんな佇まいでどんな風にこっちを向いて。こっちを振り向いて。私の名前をどんな風に呼んで、その音の大きさはどんな感じ。眼差しはどこに向かってどうやってここにくる。色素の薄い茶色の目が綺麗。そんな時間をただただ見てる。どこでもいいから一緒の時間だけが見たい。これって恋人じゃなかったら完全にストーキング行為だな。
梅ヶ丘の駅前のスーパーを出ると夕方がもうすぐ終わろうとしてた。遠くに夕陽の残りが微かに見える。家までは後15分くらい。坂道を下りながら聞いた。「例えばさ、周ちゃんが今すごくお腹が空いて堪らなくて、そこのコンビニでおにぎりとか肉まん食べる?」「う〜ん。食べない。だってこれからシーフードパスタ食べるでしょ。」「じゃあさ、どうしてもお腹が空いて駅前にあったマックでハンバーガーだけのつもりがポテトも食べちゃって、そしたらどうする?すっごくお腹空いてるの。もう限界ってくらいに。」「食べないでしょ〜。一緒にシーフードパスタ食べられないじゃん。だって材料も買ってるわけでしょ。一緒にシーフードパスタ食べようって話してるわけでしょ。」「そうだよね。食べないよね。けどさ、マックを食べちゃってお腹いっぱいになっちゃって、夕飯はやっぱりいいやってなって。私は一人分のシーフードパスタを作り始めて、あ、やっぱりちょっと食べたいって言い出して、そしたらあなたの分は無いよなんて言わないよね。それでじゃあもう一つ作るからってなって、パスタは温かいうちの方が美味しいし、その温かいパスタはどんどんお皿の中から無くなっていく間に、フライパンの中ではもう一つのパスタがぐるぐると回されて乳化もいい感じ、それで、結局、私は一人で食べるよね。一人前の熱々のシーフードパスタ。」そうだよね。おかしいよね。
あれ、悲しい。何だか悲しいことが目の前で起きてる。だけど、何故だか世界は悲しい私がおかしいみたいな雰囲気。それは家の中だけじゃなくて、いつもの中目黒の酒場とか、どこかよくわからない真っ暗闇のライブハウスでも同じ。元夫といるとそうゆう時間があちこちにあった。一人でシーフードパスタを食べるのは悲しい??たしか、元夫の友人があなたが作るから悪いって言った日があった。だけどさ、私はただ一緒に食べようって話をしてただけだし、ただ、悲しかっただけ。
お腹がペコペコだったから大盛りのパスタを作った。周ちゃんは今日も漫画みたいにぺろっと食べた。両頬を一杯にして美味しい、美味しいって言って食べてた。美味しい時と、考えながら話をしてる時によく目をつぶるけど、何度も目をつぶって味わってた。パスタ、すごく美味しいね。一緒に食べるご飯って楽しいよね。食卓って最高だよね。そうだよね。やっぱりそうだよね。
昨晩は電話してしまった。結局2時間くらい話てたと思う。嬉しいけど最悪だ。お陰で今日は6時過ぎに目が覚めたし、寝不足。支度をして駒沢公園へ向かった。モニターのネジの調子が悪くて、カメラを両手で構えて、右肘の内側にモニターを挟みながら動画の撮影をした。私、何やってんだろう。これくらいなんて事は無いけど、ちっちゃく腹が立つ。
帰りに公園のスタバでコーヒー飲みながら携帯で作業して帰ろうと思ったけれど、気分が乗らなくてパン屋でドーナツを買って帰った。もうとっとと帰ってやるんだ。昼過ぎから来月の撮影のスタジオのロケハン。今日は空がとびきり青い。いい日だな。周ちゃんは今夜くる予定だけど、ちょっとわからないって言ってた。スケジュールいつわかるんだろう。
帰宅しておやつを食べて映像の編集を始めた。未だ連絡がこない。時間は17時。うーん夕飯を作りたい。周ちゃんが来るなら色々作りたいものがある。早く連絡来い。何で連絡してくれないんだろうか。忙しいんだよね。わかってるよ。もう作ってしまおう。サミットへ買い出しに行ってロールキャベツを作り始めた。”ごめんね。今日残業になりそうだから、明日に会いに行くよ。” LINEが入る。いいよ。大丈夫。一人の夜が好きだから。仕事を少ししてお風呂に入って麦酒を飲んだ。
会いたかったけれど、寂しい気もするけれど、一人の夜も最高なんだよ。梃子がベッドから起きてきて甘えてくる。梃子、大好きよ。ああ、こんな夜も大好き。ハーフアンドハーフな夜だな。
近所のカメラマンの渉さんからLINEが入った。「よしみさん引っ越すの?同棲するの?」何だか急に寂しい気分。寂しくなるけど、よしみさんが幸せになるならいいねって。嬉しいけど寂しい。寂しいけど嬉しい。渉さんは2年前の夏に私達夫婦の話を聞いて「それは間違ってると思う。よくないよ。」ってハッキリと元夫の暴力について言った。人の家の事だからわからないとかじゃなくて、ハッキリと言ったのを覚えてる。
私の中身が段々と変化してる。お願いだから結婚にだけは染まらないで。指輪をつけるのは週半分くらいの方がいいんだろうか。この街にセカンドハウスが欲しい。
ロールキャベツ
キャベツ 5枚[1分湯がいて水気を拭いて薄力粉を薄くはたく]
コンソメ
ケチャップ、蜂蜜
たね
豚ひき肉 200g [油で炒めて冷ましておく]
玉ねぎ微塵切り 1/2
塩、胡椒
溶き卵
パン粉 大2 を、牛乳 大2 で浸しておく
朝一番でフミエさんのアトリエへ写真を撮りに行く。料理教室の撮影をして、料理本の打ち合わせ。それから、ちょっと動画を一緒にやってみようという事になった。何だかちょっといい予感。
帰って少し仕事を済まして近所のみっちゃんと家の側のもんじゃへ。みっちゃんとは2ヶ月ぶり。結婚の事は会ってから話したいと思っているうちに年を越した。「実は、。結婚するの!」私の言葉にもんじゃを手際良く鉄板でカチャカチャと音を立てていたみっちゃんの手が止まった。目をまん丸くして驚いてる。そりゃそうだよね。最後にみっちゃんに会った私は彼氏どころか結婚のけの字だって無かった。まだ引っ越して1年ちょっとだけど、引っ越す事も伝えた。寂しそうにしてたけど、「寿物件だね!よしみちゃん家に住みたい!!」と本気で考えているみたいだった。彼氏と一緒ならなぁと渋っていたけど、「自分が欲しいものは自分ひとりで手に入れた方がいいよ。」とアドバイスして、「それに、自分が手に入れたものなら、彼氏と別れようが自分のものだよ。」と付け加えたら、少し納得してた。その気持ちよくわかる。私も同じ様な事を思ったり、してきた過去がある。怖いのもよくわかる。勇気が出ないのもよくよくわかる。誰か、例えば、彼氏だとか夫だとか、そんな隣にいてくれる存在が自分を幸せにしてくれるんじゃないかといつしか期待してしまう。だけど、そうじゃなかった。自分の幸せを他人に任せるのはもうやめた。不幸だって同じ。私のものならば、どっちだって気分がいい。だってやりきってるもの。爽快であることは間違いなし。大丈夫。怖いけど、大丈夫なもの。明日は誰だって怖いもの。その程度。放っておいたらいい。
みっちゃんがお祝いにもんじゃをご馳走してくれて、また鍋でもやろうねとバイバイする。帰宅してポストを覗くと茶色い封筒が一通。裏面にフランス語の住所と、英語で日本の住所。表面に漢字で祝と書いてある。2021年12月21日のまゆみちゃんからだった。フランス語の勉強で忙しい、私の結婚の報告を手紙で読んで驚いたけど私らしくて朗報を手紙で知った時に頭にぱっと浮かんだ言葉があるよと記してくれた。よく読めないフランス語だったけど、日本語で訳すと、報いるとか、必然みたいな意味で、この結婚は偶然ではなくて、決められた未来なのだとか。まゆみちゃんはパリに単身ぽんと行ってしまうような面白い子だけど、フランス語がとにかく大好きで、そんな彼女らしい表現だなと思った。嬉しいな。心のこもった言葉が贈り物みたいに感じる。まゆみちゃんありがとう。ほんと、素敵な友人。大好きだよ。
何だか急にもくもくと体中に結婚への実感が膨らんできた。この街を本当に離れてしまうのか。この家も街も、この街に住む友人たちとの日々もあと3ヶ月でバイバイ。こんなに街が家が大好きになったのは人生で初めてなのに。寂しい。新しい暮らしへの希望もあるけど、ここが好き。大好き。
どうしたものか、姉妹とは似てるものだなぁと思った。朝起きて携帯を開くと姉からLINEが入っていた。L.Aの朝の景色が何枚も何枚も。何だか朝じゃなくて夕方みたいな写真。姉は朝の5時半に散歩するのにハマってるのだけど、最後の100mはダッシュするのだそう。100mダッシュ。私も好きなやつだ。さっと服を着て歩きに出かけた。とにかく気持ち良くてハマってる寝起きの散歩。ベッドが大好きなのに、ベッドから抜け出す朝もやめられない。
歩き出すと、”DVの女の人のドラマを見てる。” また姉からLINEが入ってきた。 “見たくない。” と返す。よくもまぁ、暴力も離婚理由の一つだったのに、そんな私に報告してくるもんだと思った。ま、そういうことだろう。全然問題ないよ。だって私は人を殴った事は無いもの。被害者になったとしても加害者では無い。いや、そうなのかな。今でも少し後悔してる。上手く説明出来ないけど、どうして私は警察に通報したんだろう。だけど、これって日々の事でも思う。正解そうな事はわかってるけど、本当にそれが正解かどうかはわからないこと。正しいって何だろう。人に話したら、「それは間違いだよ!あなたは悪く無いよ。」と背中を押して貰えても本当にそうなんだろうか。確かに人は殴っちゃいけない。だけど、殴った男の手は許されなくても、心はどうなんだろう。そうして世界に閉ざされて、男の心は何処へ向かうんだろう。
仕事をしていたら直ぐに夕方が過ぎていた。冷蔵庫の奥に覚えのない南瓜が一つ。今夜は南瓜グラタンにしよう。冬と言えばグラタンの季節。母のグラタンは黒い蓋のついた丸い皿に入ってる。黒い器の中で白くぴかぴかと光っているグラタン。
朝から納品だとか、撮影データーのアタリを作ったりバタバタと午後が過ぎて行った。夕方は編集成田さんとお米の撮影。場所はライスプレス編集部。何処かの会社にお邪魔すると、会社っていいなぁってワクワクする。人の集まる場所って活気があっていい。
移動中にいつも受けてたカウンセラーさんのラジオを聴く事にした。「よしみさんの話をさせてくれない?」「勿論です!名前だとか何でも喋って頂いて構いませんよ。」ラジオの最後の方で私の話をしてた。ラジオから自分の話を聞くのは人生で二度目。不思議な気持ちで一杯。ドキドキしてるような、他人事のような変な感じ。絵に描いた様な最低なミュージュシャンにDVだとかモラハラを受けて、共依存状態の結婚生活から抜け出し離婚して新しい愛を見つけた!という劇的な話だった。私って共依存だったんだ。自分では共依存についてよく勉強したし、そうじゃないって思ってたけど、共依存っていう場所にカテゴライズされていた事に驚いた。けど、別にその事に関してはへーって聞いていた。それよりも、人の口から、ラジオから聴こえる一人の女の人生は怖いくらいに壮絶に見えた。そして誰かの為に必死に頑張っていた事が共依存となっていた現実に驚いた。人間って中から見た世界と、外から見る世界はこんなにも違うんだな。
成田さんはほんとに可愛。皆に愛されてるなぁって事務所での彼を見てるだけで温かい気持ちになる。私の知ってる限り皆が彼を好きだと思う。そして、私も。今日は編集長の稲田さんとインターンの女の子がいた。稲田さんは会う度に髪が伸びていく。「オカキ食べます?」久しぶりに会った稲田さんからの言葉。今日も中々なパス。絶対に毎度外さない。撮影中のパサパサした口の中にオカキを一つ放り込んだ。「日記、僕も登場してるそうで。読みますね。」ものすごく尊敬しているけど、また今日も稲田さんの魅力にじわじわと襲われる。
撮影を終えて渋谷駅までだらだらと歩く。明日はイブなんだよな。今年も一人のクリスマスと一人の正月を過ごす予定。大晦日と1日は家族や友人と過ごすけれど、後はずっと一人でいたい。とにかく、ここで一人暖をとりたい。年が明けたら、一旦中止にしてた日記をまとめて写真集を作りを再開しようと思う。他にもやりたい事が沢山ある。心理学の勉強も映像も、もっともっとやりたい。だけど、お金はかけたくない。だってやりたいだけだもの。本当にやりたいだけ。知りたいの撮りたいのだけ。本当にそれだけ。嗚呼、クリスマスが楽しみ。家族と恋人と夫とのクリスマスも気に入っていたけれど、一人のクリスマスって本当に最高なんだよな。周ちゃんの事だって大好きだけど、アメリカで過ごしててくれて有難い。私の一人きりの最高なクリスマス。考えるだけでワクワクしてきた。
来週からの富山出張の準備で朝からバタバタしてる。何だかやる事が沢山。それに、月末だから請求書も出さなきゃ。だけど、とにかく今日は早く寝たい。全くもって矛盾してるけれど、まぁいい。いいのかな。
あっという間に陽が暮れて、予定通り早々に今日を終える準備。20時過ぎにはベッドで本と埋もれた。最高だな。周ちゃんから “ただいま〜。” とLINEが入る。そこから何となく電話を初めて、周ちゃんはご飯を作って、お風呂に入って、日課のぶらさがり健康器にぶらさがって、布団へ入った。私はずっとベッドのまま。今日はどんな仕事した?ランチは何食べた?とか、同僚の結婚生活がパーフェクト過ぎる、後輩が恋愛で悩んでるとか。たわいもない話をずっとずっと。作品とか文章の話になって、私が書いてる日記の話になった。日記は今は読まないでとお願いしてる。読むなら3年後にしてって。色々を話したくないわけじゃないけど、過去の話も少しは伝えてるけれど、もう少し時間が欲しい。
ずっと聞きたかった事を聞いてみた。「周ちゃんを写真に撮ってもいい?」ちょっと驚いて、しばらく言葉の意味を考えてるようだった。ゆっくりと「いいよ。」って。「何でも書いて、何でも撮って、好きなようにやってくれ。それがあなただから。」って。元夫は、僕の事を書かないで、僕の事を写真に撮らないでって口すっぱく言ってた。カメラを向けると顔を背けて、日記を書けば、夫の友人から日記を読んだ事を聞いたと怒られた。知らず知らずの内に縁取られた日々の中で試行錯誤して撮った写真や書いた文章はいつもフレーミングをちょっとずらす様な感じだったのかもしれないな。
電話を切ってから何だか沸々と嬉しさがこみ上げきて、”周ちゃん大好き!” とメールして寝た。減るもんじゃ無い。若い子みたいで恥ずかしい気もしたけど、私がこの想いを吐き出して誰が困る?答えは絶対にNOだと確信してる。いつしか消えて行く今日を今日のうちに思う存分にしたい。
朝5時過ぎに起きて、まだ半分寝てる梃子を無理やり起こして電車に乗って実家へ向かった。ああ、怠い。ちょっと気持ち悪い。二日酔いだな。
昨晩、帰宅してから酔っ払った勢いで周三君に聞いてみた。土曜日にちょっと立ち寄った近所の喫茶店でお気に入りの席に座り、私は背の低いグラスに入った白ワインを、周三君はケーキセットを頼んだ。話が楽しくて楽しくて、気づいたら3杯おかわり。私は案の定、酔っ払ってご機嫌となる。保険の契約みたいに私達はカップル成約を交わして、帰り際に子供の話しになって、私は養子に興味がある旨を伝えた。周三君は賛同してくれていたように思う。
あまりに突然の出来事に心のどこかは私の恋が一瞬で終えた事をちょっと寂しく感じてる。駆け引きを楽しみたかった訳じゃなくて、恋を、愛でて、育てたかった。そして、段々と熟していい色合いになってきたら、相手の気持ちはどうであれ、そっと触れただけでも溢れてしまいそうなままに、好きだと言ってやるんだと私のシナリオは大体完成していた。
「どうしていきなり付き合いたいと言ったの?」むずむずして聞けなかったここ数日。酔っぱらいの私が聞いた。周三君からの回答は至ってシンプル。「今だと思ったから。」直感なんだと。熟りきれないままにもぎ取られた私の恋心は、流れ星を見過ごしてしまったような気持ちが一杯のままだ。ずるい。やられた。
母とスーパー銭湯へ行き、お昼は海老のカクテルサラダを山ほど食べて、夕方頃まで二日酔いは続いた。どこからどこまでが夢なのかわからない。
今日は講義。今日の講義は少し長かった。色々な実践を終えた後に生徒が二人グループになりブレイクアウトセッション。今日の実践についての感想を伝え合い、話し合う。その後に皆んなの感想を聞いていく。確実にステップアップと共に学びを体現していく事を皆んなが楽しんでる。日々に躓くような事があったとしても、それもステップの一つとして捉えている人が目立った事も印象的だった。それに、「私はこういう考えを持っている人なんです。」と、自分のネガティブな問題を前提として話す人も増えた気がした。挨拶みたいに聞こえていいなって思う。言葉にどんな色を付けるのかは自分で選べるから。
今日は何となく私の問題についてサラッと話してみた。
「気持ち、少しわかります。丁度、昨年の今頃は私も堕ちちゃって、病院通いながらも自分を責め続けたり、もっと頑張れ、もっと出来ることがあるって自分に喝を入れたりしていました。」私が話すと相手の表情がさっと変化するのが分かった。ああ、もしかしたらこの方は堕ちた先の事を知ってるのかもしれないな。
数日前に似ている人を見かけて、気になって今は作家となった宮崎君の事をネットで調べた。宮崎君は酒飲みだと聞いていたけどある時に急にお酒を止めた。それからもうずっと会ってない。記事には、ただの酒飲みの話じゃなくて、もっともっと深い本当の理由について書いてあった。そこに、”自分は強い人間だと思ってたし、それで今まではやってきたのに、そういうんじゃなくて、堕ちていった。” みたいな事が書いてあって、ああ、あそこかって想像するとぞくぞくした。だけど、あの頃は宮崎君の360度どこにもそんな彼に私は気づけなかった。
夕方に周三君と電話をした。どうして話の流れがそっちに言っちゃったのか全くわからないけど、周三君が20代の時にお父さんが倒れ植物人間状態になってしまって、家族のために働いてとても苦労して、お母さんもお父さんの苦労が沢山あって、亡くなった今が第3の人生みたいに生き生きしているのだと話してくれた。私はパンを妹の私の為に焼いて送ってくれる兄ちゃんは、昔は不倫して大変な時があって、姉ちゃんと母が激憤したとか、私が夫と裁判だけはやりたくなくて、元夫の色々を許せない家族を説得したという話をした。「結構、引いちゃう話したよね。」って周三君が申し訳なさそうに言ってたけど、私の話は別として「とてもいい話だよ。」って何度も言った。
人は誰しも過去に苦しみを持っているけど、今がハッピーならそれが答え。そういう答えになる。声を揃えて、だよね、だよねって、相槌を打ちながら話した。
今日は何だか沢山の痛みのある話を聞いて、私も他人事みたいに私の話をした。
やっぱり耳が聞こえない。何だか昨日よりも聞こえなくなってる。左耳を塞ぐと耳栓状態。耳の周りもじんわりと麻痺してる。完全にストレスだ。心身共にピンピン何だけどな。だけど、どこかが頑張り過ぎてるって事だよね。今日は仕事するのをやめよう。
「耳の周りの血流がストレスとかで滞ってるのよ。温めてマッサージ!」母からメールが入った。プロジェクトのやり取りでメールをしてたフミエさんからも「自然に触れたりするといいかも!」と、教えてくれた。ベッドでしばらくマッサージして、ゴロゴロして、午後は駒沢公園へ行く事にした。ポストを開くとマユミちゃんからの手紙があった。黄色の封筒にスラスラと書かれたフランス語。ポストに手紙が入っていると、一気に気分が上がる。公園で珈琲でも飲みながら読もう。
珈琲を買って、ベンチに腰掛けゆっくりと時間をかけて手紙を読んだ。二周して、封筒にしまった。手紙は9月26日の事が書いてある。一ヶ月前に、パリの部屋で彼女が手紙をしたためてるのを想像するだけで幸せな気分になる。
夕方に一本だけ堀江さんと電話で打ち合わせ。もう7、8年の付き合い。当時はクリエイティブディレクターアシスタントとして、今はフォトグラファーとしてお仕事を請けてる。
先週の撮影の帰り、恵比寿のスタジオから三茶まで送って貰って、何となく離婚の話になった。私がミュージュシャンと結婚する事が決まって、昔バンドマンだった堀江さんはすごく喜んでたけど、離婚の話を打ち合わせの時に話して目を丸くして驚いてた。それで、簡単に離婚の理由を説明すると、自分の離婚の話をしてくれた。当時の私なら全然聞こえてこなかった話でも、今の私なら全く違う感覚で堀江さんの話が聞こえる。それも、何だか鮮やかに聞こえる。堀江さんは今も昔も変わってないのに不思議な気分だった。私が知れなかった堀江さんは、沢山の苦労を乗り越えてきた人だった。どうしていつも、どんな時も、面倒見がいいとか、嘘をつかないとか、嫌な事が起きてもきちんと向き合ってくれるとか、色々な背景に納得した。出来る事なら、離婚する前に相談したかった。そしたら、もっと傷つかずに傷つけずに離婚が出来たかも知れない。
当時は、大概の人が離婚した方がいいとアドバイスしてくれたし、夫の音楽友達でさえ、離婚も有りだと思うって遠回しに離婚を勧めてきたけど、結局のところ、誰もが離婚未経験者で、離婚がどれだけ苦しいかなんて、離婚後にどうやって生きていけばいいのかなんてアドバイスをしてくれる人は誰一人いなかった。想像と実際に経験するのは全く違う。だから、離婚を選ばない友人達を見て、勇気がないだけ!なんて今は言わない。99%離婚しない方を勧める。苦しむ覚悟が無いなら、やめた方がいい。そもそも今の問題を解決できていないのに、離婚したからって解決できるわけでも無い。もっともっと大きな溝に堕ちる。人生そんなに甘くない。ただ、逆に言えば、覚悟が決められる。
「この仕事が終わったら、こないだの話の続きをしましょうね!」電話を切った。何だか、すごく嬉しい。人生って面白いものだと思った。
ああ、疲れた。色々な作業が全然終わらない。あっという間に土曜日が終わって、明日は講義。つい数日前が日曜日だったのに、また日曜日だ。時間が早すぎる。どうかしてるよ。
朝、講義の教材としてる本を15分読んだ。内容は “心の抵抗” について。何かしらの心の痛みだとか、しっくりとこない時の不満足な気持ちについて、それは時として苦しみを受け入れたく無いという抵抗なのだそう。本来は生きる為に備わったシステムなのだけど、それが過度に続くと自らを苦しめる事となる。無意識に抵抗している事に気付いてみましょうというエクササイズだった。今日一日を通して、割と簡単にあちこちで捕獲。私の場合、抵抗は基本的に家の中にはあまりいない。梃子の散歩の時とか、スーパーまで歩いている時とか、外出時に何かを見た時に誘発し現れる事がわかった。過去の苦しみの欠片を見つけてばっかりで、本当にいい加減にしなさいよと思っているのに、触覚がざわめき苦しみを見つけてくるらしい。そして、わざわざ自ら見つけてきた苦しみに抵抗を起こす。
厄介だな。大きな恐怖や苦しみは生きる為に私から出て行ってくれないけど、ハッピーに生きる為にはあり過ぎても困る。「はい、抵抗!見つけた。」抵抗を捕獲する度に心の中で大きく言った。「抵抗見つけました〜。」「ていこ。」「梃子」、ん?。てこって言うと、心にパッと花が咲いた。抵抗が起きても、梃子って言うと、パッ。パッ。次々と花が咲いた。
悪魔達との最低な過去を見つけて抵抗する度に、抵抗と言わずに梃子と言い続けた。どうして、私、あんな酷い事を言われたり、されたりしなきゃいけなかったんだろう?!いつしか花畑一面に広がる梃子の温もりの中で私は怒ってた。今日も負けないよ。
やっぱり世界は愛由来の何かで出来てると思う。
“人生とは、何かを手放すとまた新しい物がすっと入ってくるもんだ。”と、よく言うけれど、半ば諦めてたベッドルームの照明問題。前のライトが失くなってから二日。ハイパーにパワーアップした素敵なライトがやってきた。夜な夜なネットであちこちを探し回っている中で、急にふっと思い出した。「あ、そういえば、春にブルペンで素敵なライトを見たな。」直ぐにネットで調べて、ブルペンに電話。「テーブルライトありますか?」「ありますよ。」「あの、なんとか熊みたいな名前の。」「稲熊ですね。有りますよ。」工場にもネットにも、一点物で作ってるライトの在庫は生産自体もしばらくお休みだと書いてあったけど、店にはあるとの事。編集の野村さんがブルペンで素敵なフロアライトを買ったという話を思い出して直ぐにLINEして値段を聞いてみる。むちゃくちゃ素敵な藤のフロアライト の写真が送られてきた。テンションは、だだ上がっていく。「ブルペンとの別注のライトが可愛いですよ。」「そうなんですね!今から行って来ます!!」何だかいい予感しか無い。ずっとずっと探してきたライト。ようやく今日こそ出会えるかもしれない。長い長い旅だった。
「テーブルライトを見に来たんです。」「こちらのか、別注のはこちら。しばらく作らないので、これが最後の一つです。」「別注の方で!」迷いもせずに別注で決まった。すっごくバッチリな風貌だった。他のライトの事も色々とお話を聞いた。ビンテージの16万のも欲しかったけど、さよなら。今日は無理。もう二度と会えない素敵なライトにお別れをしてウキウキで重いライトを持って青山へ向かう。こんな事ってあるもんだ。まさかのラストワン。こんな近くにあったなんて!
「マックスマーラ前にいるよ」と後藤さんからLINE。行きつけの古着屋へ連れて行ってくれた。私の今年の冬の目標は素敵なユーズドデニムに出会う事。古着先輩の後藤さんと一緒にビルの一室にあるショップへ入った。まるでプレスみたいなショップ。デニムが沢山。中にはガラスケースにも入ったデニムも。「女らしいデニムが欲しいんです。」幾つかデニムを試着して、8万のビンテージデニムもちゃっかり履いて、お気に入りの一本を見つけた。古着先輩と仲良く店員さんがお喋りしてる。そして凄い話を聞いてしまった。「デニムは一生物だからね。」ライトを買ったばかりで今日はお買い物はなぁと思っていたけど、一生物なら仕方ない。母もよく、一生物と良い物に関しては買うべき時に買いなさいと言ってたし、それに今日後藤さんに会えるのが楽しみで仕方無かった。だから、きっと今日は特別。嬉しい日だから買ってしまおう。
大荷物で歩いて数分の居酒屋さんへ。古着先輩が直ぐに予約を取ってくれた。そして、後藤さんの新しい恋の話をたっぷりと聞いて、最高にハッピーな夜を過ごした。こんなに幸せな事ってあるだろうか。嘘みたいな毎日の話を、嘘みたいな現実の光景を、ニンマリしながら話してたと思う。だけど、きちんと過去の苦しみも持ってる。だから今が楽しくて仕方ない。そんな気もした。過去のあの時はそれに必死で通り過ぎてしまった事も、今だから思い返せたりする。過去は過去だからってバイバイじゃない。過去は今に繋がってるし、それが今を作ってる。最悪だった事も最高だった事も今を作ってる。
勉強してる心理学のコンパッションで近しい考えがある。最悪とバイバイしないほうが幸福になれるという人間の心理について。私達人間には苦しみを優しさや愛情で癒す力を持っている。自分の苦しみにその力を向けられるのは他人ではなくて自分。だから、過去とバイバイしたら、癒せなくなってしまう。先生の考え方で色々な言い方があるけれど、チャンスだと云う人もいた。自分を癒せるチャンスだって。そんなチャンスは要らないよとも思ったけれど、誰しもが人生に置いて必ず出会える物。それをどうかよく受け取ってって云う意味なんだろう。
帰宅してお風呂に湯をはってる間に、パンツ一丁で脚立に乗って仮でつけてたIKEAのシーリングライトの撤去と、新しいテーブルライトの設置をした。いつだったか姉が言ってたな。「家の色々な事、男手が欲しい時は特に、ニコが死んで居ない事を辛く思うよ。」って。私はいつも一人でやってきたと思う。ダブルベッドも一人で担いだし、家のDIYも全て一人でやった。3度くらい一緒にした引越しも全て一人でやった。どうしてかな。大変な時にいつも俺は忙しいと出かける元夫が作ったのは犬小屋くらい。梃子は全く見向きもしなかったし、何度も板のささくれで指を傷をつけて、本当に悪魔な代物だと思ったのを覚えてる。だから、パンツ一丁でライトを別の部屋に綺麗にバッチリな感じで取り付ける事も、明日やろうじゃなくってささっとやれる。男仕事を出来る。これが私の特技かもしれない。
お風呂から出て、ベッドルームの最高な塩梅の調光を眺めた。調光は二段階。二段階目の暗い感じも素晴らしい。ぼーっと見つめていたらそのまま朝が来た。ハッピーすぎる夜だった。
昼過ぎまでバタバタと仕事を終えて、午後過ぎに新宿へ行く。どうしても見たかったGANNIのリサイクルダウン。デンマークは環境問題への意識がとても高い。デンマーク出身のGANNIのデザイナーの考え方がすごくユニークでずっと気になってる。だから、とにかく試着してみたかった。ついでにH&Mもチェック。こちらもリサイクル素材の洋服をチェックしたかったから。洋服の仕事だとか、環境の何かをしてる訳でも無いのに、平日の午後から一体何をやってるんだろうと思うけど、何だかすごくいい時間。それもこれも料理家のフミエさんと出会ってから。
フミエさんは一言で表すなら自由な大人。子供がいて、優しい旦那さんと三人家族。料理家としても立派に活躍されてる。私が結婚で得た物は不自由と責任だった。それは自然と今までの人生で学び習得してきた結果であり、フミエさんの様に自由な女性に出会うチャンスが無かった事もある。家庭を放棄する女性は見かけるけれど、それは私にとって自由とは思えなかった。だけど、フミエさんと一緒にいると、とにかく毎日が楽しかった頃の私の日々を思い出す。興味のままに、好きなことを存分にやる。私が結婚の、男の奴隷になる前の日々の事。過去を否定したいわけじゃないけど、重い鎧を下ろした事を改めて感じてる。
新宿から帰って、ベランダで再生用の土作りの作業を始めた。夏に育てた野菜の古い土をふるいにかけて、根っこを取り出す作業。面白くない作業だけど、ラジオを聴きながら日が暮れるまで続けた。そして、ワインを沢山飲んで、早い夜に早々にダウンしてしまった水曜日。何時間寝たんだろう。すっごく気持ちが良かった。夢もなんだか沢山見たけど、覚えてない。飲みすぎた。
日曜日は何もしないデー。そう思った矢先、月曜納品の仕事が昨晩にきていた事を思い出す。あーあ。どうしよう。出来れば今日はデスクには座りたくないな。月曜は撮影だし、今日やっておいた方がいいよね。うーん。いいや、月曜の朝にやろう。最近、作業の日数が殆どないような仕事がちょくちょく来る。どうしてだろう。私、意外と毎日忙しいんだけどな。
だって今週はよく働いたし、もの凄く疲れてるし、そんな果ての日曜日だもの。今日やりたくない、やらない理由を並べてベッドに潜った。本を読んだり、ネットしたり、ラジオを聞いたり。昼食をとった後、吸い込まれるような睡魔に襲われる。目を覚ますと16時を過ぎていた。近所に住むライターの石塚さんに教えてもらったVegan菓子の店へ行こう。帰りにオオゼキで夕飯の買い物をしよう。
のんびりと歩く。寒いな、今日。今夜はラザニアにしよう。昨日作ったトマトソースの余りでミートソースを作ろう。
お休みにしたけど、どうしても書きたくてフミエさんとのプロジェクトの記事を進めた。すいすいと3本書いて、ご満悦のままにまた寝た。お休みって最高。
ベランダのゴーヤカーテンを撤去した。だけど、本当はもっと楽しみたかった。けれど、青虫が大量発生して地道な駆除に時間を費やすくらいならと撤去を決めた。青虫には申し訳ないけど、野菜達の被害も考えると早めの決断が必要。ベンチに置きっぱなしだったラグにまで巣作りを始めていた青虫達を箸で摘んだ。ごめんね。ここは駄目なんだよ。青々しい緑のカーテンから溢れる朝陽が本当に好きだったな。寂しいよ。だけど、秋分だし、夏とさよならしよう。
今日はお休み。身体に溜まった乳酸や、ぎゅっと詰まったままの脳疲労を緩和させたい。朝はフジモンに一昨日に貰ったキャロットケーキを食べながら、仕事のメールとかをパッパッと終わらせた。頭がずっとぐらぐらしてる。昼食にスパゲッティーを食べてソファーに横になる。1時間ちょっと昼寝をして、干していた洗濯物や布団をしまって、ゴーヤカーテンの撤去に小1時間。あっという間に夕方が来た。
夕飯の塩麹鍋をつつきながら、セカンドウェディングっていうameba TVの番組を見た。離婚してる男女が、再婚をする為にマッチングして結婚をしようという番組。私も企画でマッチングをしてる。けど、正直ピンと来ない。いい人そうな男性は沢山いるけど、恋には落ちない。番組を見ながら、やっぱり私は恋に落ちないなぁって思った。一体、恋って何なんだろう。あんなに恋をして結婚したのに、あんなに大好きだったのに、離婚した。けど、きっとマイコさんみたいにいきなり来るんだろう。けど、それは私にも来るのかな。それとも来ないのかな。
やっぱりどこかでまた裏切られたらって怖い気持ちがある。だけど、問題は裏切られるかどうかじゃなくって、信じる事なんだと思う。私だけじゃなくって、誰しもが決まった明日なんて持ってない。いつでも最悪は自由気ままにやってくる。だから、怯えるよりも信じて未来を明るくしておけば、もしまた最悪な事が怒っても、最低な事をされても、大丈夫って言い聞かせて前へと進めば自分が用意した明るい場所にきっと行ける。
今日も月が明るい。いい夜。
バジルのジェノベーゼばっかり食べてる。こないだ八百屋で買ったヘベスを絞って食べたら、中々の美味しさ。この美味しさ、誰かにわけてあげたい。
長らく遅れてようやく来た生理。まさかの子宮頸癌の検査の日と当たるなんて。数ヶ月前から予約してたのに、どうしてこうなんだろう、先生と話したいことだってあったのに。なんだかな。7月の生理が遅れて一体PMSはいつ終わって、いつまでそれとも今日まで続いてるのか、心も体も不明な数日がようやく終わったと思えば、要らない血が身体から出て行くのもそうだけど、ジャスト検査日に始まった以外においては今回の生理は何だか嬉しい。
やっぱり、微妙にバランスが崩れてたのかな。ずっと寂しかったな。確実に悔やんでた。あーヤダヤダ。あの日常を止めようと決意したのは私だよ。何を勝手に過去にトリップしちゃってるんだか。この選択を活き活きとさせたいなら、過去は過去にしなきゃいけなのに。蝉の声を聞いた。夏の夜の香りを嗅いだ。いちいち、8年間のどこかの記憶からある日が出てくる。呼んでないよ。やっぱりPMSだな。ただ、PMSじゃなくてもそうでも、その気持ちがあるから出てくる。仕方ないこと。
” 悔やむなら、後悔しないで反省して、末広がりになっていきましょう。” 散歩中に聞いてたyoutubeの和尚さんの話。私はPMSの度に過去にトリップする。まさに水前寺清子さんの、二歩下がって、また進むの、二歩だ。もう、後悔も反省も何が何だかわからないくらいやったけど、こう思えばいいんだ。私はちゃんと末広がってる。一歩が十歩になって、百歩になって、千歩になったら、そこそこ広がってる。
PMS、終わったから今日からステップしよう。またどうせ来月トリップするから。ステップを稼ぐ事が最善なんだ。きっと。
カメラの点検のついでに、大場さんに教えてもらった森山大道さんの映画を観に行った。映画館、何年ぶりだろう。最後に見たのは映画監督をやってる友人にチケットを貰った、万引き家族だった気がする。六本木で元夫と見た。1回目の酒乱が始まって間もない時だった気がする。いつもの様に待ち合わせした場所に夫はいなくて、待てども待てども時間だけが過ぎ、メールも既読にすらならない。今思えば、アレは病気の一つだったのだろう。完全なる躁状態。映画館の前で突っ立ったままでいると、開始直前に電話が鳴った。「俺はビジネスで忙しいんだよ!」電話が割れる様な声で怒り狂う夫。たったの数時間前に「じゃあ、後で。」と言って出かけて行ったのに。躁状態の時はよく出てきた、ビジネスっていうワード。いつもの酒場での飲酒もビジネス。友人とのお茶もビジネス。女性とのLINE交換もビジネス。全部ビジネス。ビジネスだから、俺の邪魔をするなとよく怒り狂ってた。
双極性障害についてはよく知らなかった。だけど、カウンセリングを勉強してる友人に、夫の事を不意に相談した時に指摘された。もしかしたら、って。もうどうにも出来なくって、心療内科へ夫がアル中かもしれない!と駆け込んだ時に言われたのは、アル中もそうだけど、双極性障害の方が強く出ているとの事だった。ああ、そうかって。ようやく納得が出来た。双極性障害を調べると、どれもこれも夫の話をしてるのかと思った。世の中には、売れないミュージュシャンをリスペクトする酒場があるみたいで、そこでは、いつもいつも同じ顔が集まり、同じ酒を飲み、同じ話が飛び交っていた。中目黒の一角。きっと悪い人はいないと思う、だけど彼等は元夫が暴れるのを好んで見てた。彼等にとって夫はスターであり、夫にとってもそこは輝ける場所だった。
映画を観ながら、何だかボンヤリと色々を思い出す。映画館はいつも元夫と来てた場所だ。アレが来ない時期は、まるで別人で優しくて楽しい人だった。いつも肩を並べてポップコーンを齧りながら映画を一緒に見た。酒を飲めば飲むほどに、双極性障害は酷くなる。それだけは、天気が変わるくらいにハッキリとわかった。自分にとって誰が友達で、誰が大事なのか、よく考えて行動してと何度もお願いしたと思う。中目黒の酒場があなたの居場所なのかどうか、よく考えてと。
躁状態になるから、普段言わない様な口調になったり、大声をあげたり、喚いたり、しまいには手を出したりする。中目黒から帰る夫が、壁やテーブルを稲妻が走る様に叩くのも何度も見た。だけど、暴れて数分も経つと、何事もなかった様にケロっとしてる。毎日という場所は舞台で、そこで何役も演じてる様に見えた。いつしか、男という人間が発する強い力にも慣れて、男の大声も騒音程度に聞こえて、どうせ殺されはしない。これは私への甘えだとわかっていたから、目の前を受け止める事が彼への抱擁だと信じるようになったけど、違かったのだろう。
1時間くらい経ったかな。眠くて眠くて、二の腕をつねった。二の腕をつねりながら数十分が経ち。いよいよクライマックスだろうというシーンに入り、印刷所でどんどんと刷り上がっていく本たち。泣きそうになる。私の感動ポイントは製本だった。なんだかなと思いながら、映画館を後にする。世界堂で額装用のマットを注文をして帰宅。
遅い昼食に、昨日焼いた鮭をほぐして、トマトとナスと一緒にスパゲッティーを作った。
ここ数日、プロダクト紹介用の映像を作ってる。すごく楽しい。先週にユウヤくんとうちで撮影した。テーマは家庭の中のストーリー。曲は姉にお願いしてる。2作品作っていて、一つは静かな曲。もう一つはワルツにして、とオーダー。最近、姉の曲がまた変わってきた。年始にお願いして即興曲を作り始めてもらった時は、とにかく重くて、重さの中に光が溢れるような曲もあったけど、聞いてて泣いてしまいそうになった。少し前からリズムが早い曲が増えてきた。焦っていたり、攻撃的だったり、気持ちの抑揚が感じられる曲。音をずらしてるような曲も時々あって、次の音にハマれなくて、階段を踏み外したまま、重力の通りにも出来ないで足と身体が幽霊みたいにこの世に浮遊していくような曲。ああ、今日は不安なんだね。彼女の心の内はバレバレだった。
今回はすごく良かった。”朝の5時に一気に作った” LINEにメッセージと曲が送られてきていた。とても潔い曲が多かった。例えるなら、曲を弾きに行っている感じ。
何だか、そうだよねって思った。歩くっていうのは目的があって歩く。ぼんやりと歩いていたら、いつまで経っても行きたいどこかには辿り着かない。道の途中でドラゴンボールに出てくるようなキントーンを貸してくれるような神様なんて現れないし、疲れて座り込んだって、白馬の王子様はいつまで経っても迎えに来ない。もう、若い時に経験出来た事は出来ないんだよな。歩くだけで君には可能性がある!みたいに言ってくる大人はもう一人もいない。だって私がその大人になったから。残念ながら、劣ろえていく身体を、劣ろいていく心や思考をしっかり持って、歩いて行くしかない。いよいよこれからが本線だなって気がしてる。そう、歩かなきゃいけない。自分の向かう場所を目指して。
映像の大場さんが、新刊のよしみさんの写真をとても褒めてましたよって成田さんから聞いた。嬉しくなって大場さんに連絡する。ずっと大場さんとお喋りがしたかったから嬉しい。けど、調子に乗った私が悪かった。とにかく私の写真の事を褒め称えてはいるけれど、同じ分だけ私の駄目な所を的確に言い当てた。「よしみさんは臆病だから、それは写真にとって致命的なんです。」臆病だからここまで来るのに時間がかかったのは現実の通り。やりたいと思って直ぐに人様の前で写真を撮る勇気も無ければ、自分の写真が人に見られる事だって恥ずかしかった。わかってるよ、大場さん。あなたのその鋭い嗅覚、すごいよね。
大場さんは一線で活躍されてる。そういう人に、とにかく、あなたの写真はいいんだよ。と褒められるのは勇気が出る。だけど、辛い。「崖から突き落とされて、ブラックホールに花束を放り込まれた様な気分です。」私の今の気持ちをメッセージした。
わかってる。わかってるけど、未だ傷も痛いよ。わかってる。全部、言い訳な事も。だって、私は臆病だから。