
「すーちゃんさ、僕のキーマカレー食べたことある??」夫は機嫌がいいと、こういう話をする。一週間前の地獄の朝をすっかり忘れているのか、それともあの記憶を忘れたいのか。
雀の声と朝陽の中、玄関の前に悪魔みたいなのがいたのをドア越しに目撃した。その悪魔みたいなのは麺の入ったゲロをマンション共有の階段にぶちまけて消え去った。麺の欠けらみたいなのが、犯人の足跡のように転々と残っていた。昔の私ならば悲鳴をあげるような事も、今の私は笑ってしまう。いや、笑うしかない。そう私の心は覚えた。だけど夫はずるい。そんな私に気づいてる。