Journal 01.1,2017

食卓が好き、イートニューミー は私が作った料理の写真です。

母は料理がとても上手でした。
子供の頃、家でしか食べた事がないような料理が沢山ありました。だけど、なんだか恥ずかしくて秘密にしていました。キャビアのことも、ラザニアのことも、土瓶蒸しに、テリーヌに、ピンク色の寿司飯、ミートローフのことも。きらきらとひかる食卓がとても美しくてその光景が大好きでした。

ダルバート

カレー, Journal 04.12,2022

今夜はダルバート。日曜日だけど一緒にいる。夕飯は周ちゃんが作ってくれた。少し前の私なら目くじら立てて、私の日曜日を侵害されたと怒っただろう。だけど、今日はありがたく頂いた。自覚は無かったけれど、やっぱり流産後のホルモンの所為だろうか。とにかく周ちゃんや結婚が嫌だった。周ちゃんが大好きだし結婚も後悔してるわけじゃないのに、なんだか嫌で嫌で仕方無かった。

来週はいよいよ梃子の抜糸。

朝食

朝食 03.12,2022


昼に新宿ヨドバシに行って、そのまま紀伊國屋、伊勢丹とおつかいを済ませてから幡ヶ谷のサプライへ。いまむちゃんとゆうちゃんと15時に待ち合わせ。いまむちゃんは最近パスタにハマってるし、ゆうちゃんはワインが好き。私は二人を紹介したい。という事でサプライを1週間前に予約した。

2ヶ月ぶりのゆうちゃん。今日の髪はミルクティー色だった。ゆうちゃんに初めて会った時は、なんて素敵な黒髪だろうと思った。昔の蒼井優みたいな黒のロングヘアー。いつからかゆうちゃんは金髪だったり、ショート、刈り上げと、色々な髪型に挑戦するようになったけど、それはそれでゆうちゃんらしかった。対象的にいまむちゃんはいつもの通り全身真っ黒で登場。勿論髪も真っ黒。昨日自転車にひかれたんだと、左腕の湿布を何度もさすってた。

何を話すわけでもなく、とにかく飲んで食べて、お喋りした。「東京が恋しくなった?」二人が下北の話で盛り上がってると、いまむちゃんが私に聞いた。恋しいも何も、東京は大好きだけど、今の生活も大好きだから、正しく答えるならば、「今も恋してる。」。だから、こうして東京にいる友人達とワインを傾ける夜が私の最高の今だ。引っ越した当初は寂しく思う事もあったけれど、今は大分見え方が変わってきた。東京の良さも知ってる。だけど、世界はそれ以上に広かった。田舎暮らしで知ったことは、地方や海外には東京には無いものがある。何十年と住んだ東京よりも、とても魅力的に見えた。

それに好きだった東京の夜も、もういいかなと思うようになった。曖昧にぼんやりとした夜の中を気持ちよく流れるままに身を預ける。明日になったら忘れてしまうような誰かとの形にならないような話や、ヘッドホンから聞こえてくるダウナーな音楽、昔の好きだった男の淡い記憶とか。そんな夜が好きだった。終電を逃したらタクシーに乗ればいいし、気持ちが良ければ歩いて帰ればいい。夜は朝が来るのを忘れたみたいに時間は止まり、自由で、無敵な感じがした。だからって、子供とクリスマスツリーを作る夜に憧れてるわけでもない。それはそれで素敵だろうけれど、周ちゃんが帰ってくるのを待ちながら、静かな夜を冷えた缶ビールを飲みながら夕飯を作るような今で十分だ。

いまむちゃんが眠い眠いってうるさいから今日は早めに帰ることにした。もう少し飲みたかったけれど、「またね。」と言ってバイバイした。朝食はスクランブルエッグと駅前で買ったパンと果物。それから、いつものバナナジュース。

麻婆豆腐

中華 30.11,2022


今日は久しぶりにリリさんに会った。左薬指の指輪を見て、嬉しくてちょっと泣きそうになった。出会った頃のことや、カフェで泣いてた日のこと、別の日も泣いてた。酔っ払ってる日もあった。あんな男を好きになったなとか、つい先日も借りっぱなしのノルウェーの森の話をした。「今の私にとって大切の本だから上巻だけ貸しますね。」と言って、ブックカバーを外して家に置いていってくれた。色々な想いや色々な時間がゆっくりと込み上げてきた。

夜に周ちゃんに昨日届いた大学の教科書とシラバスを見てもらった。「医療の専門書みたいなんだけど。」と不安気にいうと、「大学は専門を学ぶところだからね。」って笑ってた。そうか、そうだった。お遊び心理学じゃなくて、学術的なものを学びたくて受講するんだった。それにしても本当に大丈夫なんだろうか。けど、やらずに後悔するよりも、やって後悔した方がずっといい。やっぱり勉強無理ってなるかもしれないし、それなら十分に諦めもつく。とりあえずのお試しの科目履修生。高校生の私は心理学じゃなくて写真を選んだけど、また心理学。結局、好きな事は変わらないし、夢っていうのはいつまでも夢みたいだ。諦めたり嫌になったら終われる。左腕のフロイトのタトゥーはフロイトの造語。高校生の時に考えたもの。稲妻が走ったみたいにフロイトに憧れていた時期があった。けど、実際にフロイトが何なのか未だによくわかってない。だからこれから勉強するのかもしれないけど、わたしの人生ってなんだかな。恥ずかしいことだらけだ。

周ちゃんはずっとシラバスを見てた。シラバスを見るのが趣味なんだとか。それから、私の寝相が悪い話になったけど、こんなに悪い女に出会った事がないと言ってた。歯軋り、いびき、寝言、ベッドの上で自由奔放にやってるらしい。「恥ずかしいからもうやめて。けど、そんな寝相の悪さに愛着を感じてるんでしょ。」と聞くと、「だって仕方ないでしょ。本人悪気がないんだから。」と言ってた。寝顔が可愛い女になりたかった。添い寝してる男にキスで起こされるような女がいい。だけど、夢の中の私は現実よりもずっとずっと伸びやかに健やかに生きてるようでちょっと嬉しくもあった。

今夜は麻婆豆腐。

里芋ご飯

和食 29.11,2022

朝、近所で里芋を買った。芋煮にするか迷ったけれど、今日は里芋ご飯。2年前、うちで作った時にやっちゃんが美味しい美味しいって食べてくれたのを思い出した。山形出身のやっちゃん。元気かな。

牡蠣と水菜のおろし鍋

28.11,2022

今夜は牡蠣と水菜のおろし鍋。藤井先生のレシピ。少し前の仕事で、レシピを考えて欲しいというご依頼があった。多分予算が無いからなのだろうけど、それは難しいとお断りした。料理家さんがどれだけすごいか、全然わかってない!と苛立ちさえあった。そんな事を夕方に編集の瞳ちゃんにLINEで話すと、”わかる〜。”とのこと。私は料理の写真を撮るのが好きなだけであって、料理家じゃない。簡単な遊びレシピなら全然紹介出来るけど、この素材を使ってなんて言われると困る。それに、そんな時に頭にきてしまう自分も嫌だ。そうですね!じゃあ。こんなのどうですか?なんて、柔軟に動けない。正直、本当に馬鹿だなって思う。だって、料理家さんってただ料理を作れる人じゃない。「超リスペクトだよ。」周ちゃんに言った。「そうだね。」「でしょ。こんな美味しい鍋、すごいよね。よく考えられてるんだよ。」「50代の夫婦のご飯って感じだね。」「まさに!」このレシピは藤井先生のふたり ときどきみんなでご飯っていう料理本の中の一つ。子供が巣立って、夫婦二人での生活を想定したレシピ本。なんて素敵な本なんだろう。

編集は若名さん。カメラマンは竹内さん。超リスペクトメンバーだ。こないだ角田さんの所で頂いたお鍋も最高だった。ああ、本当に天才的。お鍋が最高の季節がやってきた。

生姜の味噌汁

和食 27.11,2022

朝からゆっくりと過ごした。ここ数日、梃子の看病でずっと一緒にいる気がする。合間を見て互いに仕事へ出かけたり、デスクに向かったりはしたけれど、殆んどが一緒だ。小さな灯火をずっと守り続けてるみたいにそっと寄り添ってる。梃子は昨晩からまた少し元気になった。多分、傷口が塞がって痛みも弱くなってきたんだろう。明朝にまた病院なので少しホッとしてる。

午後は2ヶ月ぶりに家族会議をした。結婚記念に写真をいつ撮るか、お墓参りのこと、それから、先日にうちの母が言ってた、二人の目標を作りなさいって話。「家はどうするの?」「どうするって、なにが?欲しいなんて思ったことはないよ。嫌だよ、同じ場所にずっと住むなんて。」「けど、資産にだってなるし。」「ママ、今の時代何が起こるかわからないでしょ。そもそも家なんて欲しくないんだから。」母は季節に一度は何かのCMかのように家を買った方がいいと言い出す。だけど、私にきっぱりと断られるのもいつものオチだ。結局、家を買わなくても、結婚して二人の目標みたいなものを持った方がいいと話は変わった。「お母さんが言ってた目標の話、考えてみようか。それいいなと思って。」周ちゃんが言った。「短期、中期、長期。それから40代、50代、60代で設定してみない?」「それ、なんとか本みたいだね。」私が笑って言うと、周ちゃんが言った。「自己啓発ね。」

じゃあメモ程度にノートに書いてみるね。私が自分が考えてる事を書き始めて、周ちゃんのも聞きながら書いた。面白いものだなと思う。周ちゃんが望むものと、私が望むものはやっぱり違う。ふたりの目標であっても、私達それぞれが異なるように、しっかりと異なってる。例えば、私は海が好きだから泳いでいきたい、だけど周ちゃんは本を読みながら向かいたいから船に乗っていきたい。みたいに。けど、目指す島は同じ。そこでしたい事も同じ。

それに、周ちゃんは子供がいるパターンと、子供がいないパターンとで分けて考えていたのも新鮮だった。逆に私は全くボーダーラインを引かなかった。前の私ならしっかりと引いていたと思う。それよりも、子供が出来たらサポートして欲しいとお願いした。私がやりたい事を諦めるという選択肢はし無かった。それから、来年の事も少しだけ話した。先ずは新婚旅行がしたい。周ちゃんは「北欧もいいな。」と言ってたけど、流石に2度目の新婚旅行も北欧だなんて酷すぎる。「アイスランドいいよ。すっごくいい。けど、砂漠で結婚写真を撮るのもよくない?」こういう時の私って天才って思う。さっと次の展開に持っていける。周ちゃんはニンマリ、きっと頭の中でモロッコを想像して嬉しそうにしていた。「モロッコ。サハラ砂漠。スーク。ベルベル人。タジン鍋も買いたいよね!砂漠で写真、いいでしょ、めっちゃよくない?」「うん。いいね!」

夕飯は周ちゃんが作ってくれた。自然薯のすりおろしたもの、鮭のちゃんちゃん焼き、納豆、昨日のサラダ、ご飯。ちゃんちゃん焼きは料理家の角田さんのレシピ。私が作ろうと本に付箋をしていたのを作ってくれた。周ちゃんは少し汁気が足らなくなったと言ってたけど、十分に美味しかった。それに、最近時々作ってくれる生姜の味噌汁。これはもう周ちゃんの18番と言ってもいい。今日も最高だった。

発酵白菜鍋

エスニック 25.11,2022

今年初の発酵白菜の鍋。今日も梃子は辛そうだった。周ちゃんは早い夕方に帰宅。今日も何か映画をみようと話してたけど結局見なかった。姉から感謝祭の様子が送られてきた。今年は結局、キャンピングカーを借りることも、スキーもやめたのだそう。飼い犬のココに「Coco, Happy thanksgiving」と言いながらご馳走をのせた器とローソクを床においている動画が送られてきた。姉がしつこく言うからココは困ってた。来年の感謝祭は一緒に過ごせたらいいなと思う。今週末は梃子の看病。ミサちゃんとヒロさんと新大久保ツアーをお願いしていたけど、日程を変更して貰った。来月楽しみだな。ダルバートやスパイス屋、それから新大久保のどんにも紹介してくれるのだそう。

誕生日ケーキ

お菓子 24.11,2022

朝一番で梃子の病院。今日は退院日。支度をして急いででかけた。病院に着くと梃子が鳴いてる声が聞こえる。呼ばれて診察室へ行くと、今は痛み止めが効いてるからなのか、迎えにきた私達に興奮しているのか、想像していたよりずっと元気そうだった。静かに毛布に包んで帰宅した。久しぶりの家に嬉しそうな梃子。だけど、時間が経てば経つほどに辛そうだった。

一階の和室に布団を敷いて、周ちゃんと交代で梃子の側にいてあげる事にした。傷口の所為で身体を横に出来ないみたいで苦しそうに寝ていた。昨晩に周ちゃんに相談した。梃子の傷が塞ぐまで皆で和室で寝ようって。畳に大きな布団。修学旅行みたいで少し楽しい。「私の妊娠の時みたいだね。」周ちゃんに言った。何だか数ヶ月前の生活を思い出した。あの時も絶対安静で布団から動けなかった。まるでずっと昔のことみたい。

周ちゃんは今日は代休をとってくれた。午後からは借りたレンタカーを返しに行って、新しい車の車庫証明や保険の手配をしてくれてる。包帯に滲んだ血も、痛くて呻く声も、私達は一緒にいてあげる事しか出来ないけど、ただ身体に触れているだけでも、安心して眠りについてくれるようだった。日常を送りながらも、ふたりともいつもの1.5倍は明るかった。明るくいようと努めた。

早い夕方から布団で映画を見ることにした。Don’t look upというNetflix限定のブラピ主演の映画。テンポのいいアメリカ英語やアメリカらしい食事や店や家、雑でオーバー気味なリアクション。アメリカっていう文化がやっぱり好きだ。いま直ぐにL.Aに行きたくなった。周ちゃんは何が好きなのかわからないけど、アメリカ映画は好きみたいだった。何となくそこは合うんだなと思った。今っぽくていい映画。地球滅亡は無いけど、なんだか自分の身の周りにあるような話だ。売れたいの、有名になりたいの、お金が欲しい、理想の生活がしたい、自分じゃない誰かになりたいと欲望の虜となる人々と、欲望ではないものを望む人々。けど、結局どちらの生き方も間違ってない。どっちだって人間らしい。欲望が無かったら生きていけないし、欲望ばかりでも生きるのが苦しくなる。

映画の最期、地球滅亡の直前に「僕たちは沢山を持っていたんだ。」とブラピが言った。大切な人達と最後の晩餐を囲むシーン。生き方に正解なんてものは無いと思うけれど、欲しがっているばかりの人を見かけると、何故か寂しそうに見える。きっと私もそういう人だったからだろう。欲しいものばかりで、そうじゃないこと。例えば、自分の人生を大切にするとか、目の前にいる人の人生を大切にするとか、今という時間を大事にすること。そういった当たり前に出来そうな事がすっぽりと抜け落ちたように出来なかった。稼がなきゃ、とにかく働いて立派にならなきゃ、楽しいとか楽しくないとか関係ない。一つでも多くの仕事を取って、誰よりも多くの写真を撮らなきゃ。休みなんて要らないし、ストレスが溜まったら新宿の伊勢丹に仕事帰りに寄って好きなものを買ったらいい。とにかく沢山の情報を詰め込んで、話題の料理本を全てチェックして。私は強いから大丈夫。我慢出来るし、努力は報われるから。

映画は麦酒とポテチで始めて、途中で夕飯を食べながら見た。台湾風のスペアリブの煮物の丼、麺なしフォー、蕪のトムヤムサラダ。周ちゃんは煮物が気に入ったみたいで嬉しそうに食べていた。アニスの香りが甘くて、味の染み込んだ大根も最高だった。映画を見終わってから、周ちゃんからのサプライズ。昼に大きなケーキ箱を抱えて帰宅したのは知ってたけど何も言わなかった。こないだ誕生日ケーキが食べたいと言ったのを覚えていてくれたみたいだった。それに来週は梃子の誕生日。

キッチンからローソクが小さく光るお盆を持って歩いてきた。一つは丸い大きなチーズケーキにローソクが4本並び、真ん中に私の名前が入ったチョコレートのプレートがのってる。もう一つはクリームがたっぷり入ったシュークリーム。こっちも”テコおたんじょうびおめでとう”と書いたチョコレートプレートがのってる。梃子は人生初のチョコレートプレートだ。あまりに可愛くて、ぎゅぅっと胸が熱くなった。梃子の人生はきっと犬世界の中では波乱万丈な方だと思う。あっちこっちと引っ越す主人の所為で寝床がひっきりなしに変わり、一度や二度じゃない今回で4回目の手術。主人が直ぐに恋に堕ちるから、見知らぬ男とは2回住んで、1回旅行に行った。やっと家族になったと思った男とは離婚。せっかく懐いていたのに、ある日に突然さよならも言わずに消えた。何処へ消えたのかも知らない。犬は帰ってこない主人に対して、自分は捨てられたと感じると何かで読んだ事がある。本当に散々だったと思う。最近また甘えん坊になった梃子。周ちゃんにかまってだの、おやつを頂戴だのって我儘ばかり言ってる。ようやくだ。梃子はようやく落ち着いて暮らしてる。私もそう。この家族にこの家にどっぷりと浸かり、平和で安全に暮らしてる。来週に13歳。人間だと大分おばあちゃん。80歳くらいとかかな。もう、これ以上苦しい思いも哀しい思いもさせたくない。死ぬまでずっと幸せにしてあげたい。このまま、このままの今日をずっとずっと死ぬまで。

夕食

夕飯 23.11,2022


病院を出て、真っ暗な夜を車で走ってる時に車の中で静かに泣いた。あの時の夜みたい。ニコちゃんの葬儀の夜とか、離婚が決まって新しい家に引っ越した夜。心が剥き出しになって呆然とする夜。悲しいのか、苦しいのか、痛みが身体の何処にあるのかすらわからなくなる。ただ、夜だけがあって、私は途方にくれながらそこにいる。

梃子のお腹の皮20cmくらいのホルマリン漬けを先生が見せてくれた。梃子の知ってる乳首がいくつか水の中でふんわりと浮いていた。私がいつも撫でていたお腹にある乳首。私が大好きな梃子の。梃子に面会する前に周ちゃんに言った。「正直、この手術が本当にいいのかわかってない。」周ちゃんは出来るならば、手術はしようと最後まで一択だった。母や姉がこの手術を反対していた理由もわかる。犬の寿命からして、あと数年の命なのにわざわざ痛い想いをさせてまで手術をする必要があるんだろうか。そのうちにやってくる死。経験しないで死なせてあげた方がいいんじゃないか。周ちゃんの気持ちもわかる。一緒に考えて出した答えだ。だけど、生きていく中で痛みは少ない方がいい。

周ちゃんはすごく幸せに生きてきた方だと思う。辛い事も沢山あったと思うけど、人が死んだり、自分が死にそうになったり、そういう痛みを見た事がないんだろうと思った。自分から逃げられるうちはまだ幸せ。泣いたり悔やんだり頑張ろうとか明日があるなんて言えなくなる痛み。もう切り刻む所がないのにそれでもまだ痛めつけられる痛み。梃子はあんなに小さな身体なのに4度目の大きな手術。痛みは毎回新しい顔をしてやってくる。慣れるものじゃない。ただ、重なっていく。

梃子の痛みを想像するだけで身体のあちこちが疼いた。聞いたことの無いような声で鳴いて、抱き抱えると身体を押し付け私の胸から離れなかった。梃子の温もりがずっとそこにあった。この温度に何度、私は生かされたんだろう。一つ目の家族がなくなっても梃子だけはいてくれた。真っ暗な夜に怖くてどうしようもない夜に小さい身体が私を温めてくれた。名前の由来はてこの原理。初めて見た時に思ったこと。この子、こんなに小さいのに、わたしに大きな愛をくれる。

夕飯はスーパーのお惣菜。昨日のご飯と余ってた赤蕪の甘酢漬と納豆、ブロッコリーをボイルして蕪と牛蒡の味噌汁を作った。こんな事してはいけないってわかってる。答えがないこともわかってる。だけど、痛みに耐えられなくて、私は私を責めてる。

林檎トースト

朝食 23.11,2022

生理2日目。とにかく気持ちがいい。出血はいつもの生理よりも多いけれど、今までの全ての不安が流れでていくみたいで清々しい。午前は明日の梃子の手術に備えてお尻の毛をカットしたり、駅前に食材の買い出しと、大学の履修科目生の授業料を払いに銀行へ行った。明日の手術の事を考えると気持ちは落ち着かないけれど、なるべく普段の通りに過ごすようにした。午後は少しだけ仕事の事をして、夕飯のカレーを作った。今日はチキンカレー。そして今日はいい夫婦の日だ。昔、この日に結婚した友達がいたけど、彼女は今でも幸せにやってるんだろうか。結婚式にセックスフレンドが7人来ていたと後に聞いたけど、その中のひとりは友人のカメラマンだ。もうひとりは友達の旦那さんの同僚。何度かその奥さんとお仕事をした事もあった。何とも複雑な想いの結婚式で、その後、その子とは何となく近所に住んではいたけど疎遠になった。数年前に2駅先に新居を建てたと聞いたけど、やっぱり遊びに行く気にはなれなかった。

周ちゃんは夜に撮影の立ち合いがあるか何かで帰宅が遅い。ひとりで早い夕方にチキンカレーを作って食べた。勿論、お代わりだってした。ダメだってわかってるのに、カレーと炊き立てのご飯。相性が良すぎる。スパイスはこないだハラールフードで買ったパキスタンのマサラ。思っていたよりもずっと美味しく出来た。そのまま夜はデスクワーク。梃子がずっと今日は離れない。膝の上でいびきをかいて寝てる。いつもならこの時間はベッドなのに、何かをわかってるんだろうか。今日は一日私から離れない。19時を過ぎた頃、リリさんからのLINE。驚いて直ぐに電話をかけるといつも通りの元気そうな声。今日の昼にリリさんの事を思い出した所だった。もしかして結婚破棄になったんじゃないか。ちょっとドキドキしていたけど、すごく嬉しい。聞きたいことも話したいことも沢山あったけど、明日が新居への引っ越しだというので20分くらい手短に話をして電話を切った。自分が思っている以上に私の色々が嬉しかったんだろう。珍しくお風呂で鼻歌なんて歌ってた。そして湯船に浸かりながら少し泣きそうになった。

昨晩の周ちゃんの日記。最高だったな。私の日記を読んだ後に書いたようで、私の心が読めなくてこわい〜って小学生がお化けを怖がるみたいな字で書いてあった。周ちゃんは背筋がピンとしていて、それなりにマッチョで、学芸員で、黒縁メガネのイケメンだ。背は176cm。絵に描いたような男だと思う。頭もいいし、ハキハキ喋るし、下手に今っぽい感じの服を着ないのでそこがまた好感ポイント。そして紳士で、しっかりもしてる。勿論、実際には色々とあるけれど、一見、非の打ちどころが無さそうな周ちゃんが、”こわい〜。”なんてミミズみたいな字を書くなんて誰が想像するだろう。可笑しくて堪らない。

夕飯

夕飯 21.11,2022

生理がきた。生理が来ることがこんなに嬉しいのはきっと人生で初めてだと思う。直ぐに病院に電話して検査の予約をした。待ちに待った生理。確かに昨日はずっとアクビが止まらなかったし、もしかしてと思ったけど、女の人の身体って本当にすごいなと思う。夜に帰宅した周ちゃんに伝えると「昨日不機嫌だったのって、それが理由??」って。「違うよ!」周ちゃんの顔がどんどん曇っていく。「え、そうなの。じゃあ何で。」「また話すよ。二人の日記にも書いたしさ。大したことじゃないよ。それよりさ、生理がきて、ようやく身体が元に戻ったんだよ?痛みだってもう無くなるし。」周ちゃんは私の身体の事よりも自分の心の方が心配みたいだった。妊娠でどれだけ女性の身体に負担がかかるのか、男性は生理を一度も体験することが出来ない、痛みっていうのは共有できないものだし、仕方のない事だとはわかっていても、少し寂しい気持ちになった。

それに、結局昨日怒った事も同じようなこと。夕飯は昼に買った近所の野菜と冷蔵庫にあるもので作った。10月の食費に驚き何だか買い物に行く気になれなかった。

夕飯
魚介のトマトスパゲッティー
白菜のオリーブオイルとバルサミコのサラダ
焼き里芋と塩
赤蕪の甘酢漬け
砂肝と葱のナンプラーバター

11月20日

Journal 20.11,2022

14時、青山。二ヶ月ぶりの美容院。今日の堀江さんは黒いシャツ。いつもは白いけど黒かった。「黒か白しか着ないんですか?」って聞くと、今日はセミナーで出張だから黒いシャツなんだそう。先月に髪を黒くしてからというもの、黒い服を着るようになった。黒い髪も黒い服もずっと敬遠してたけど、いつもと違うことがしたくなって思い立ってやってみると思いの外良かったし、黒い服も着てみると案外直ぐに馴染めた。そんな話をすると、「僕はグラスホッパーが好きでいつもグラスホッパーで買ってますよ。」と教えてくれた。店はサロンから歩いて10分くらい。ユトレヒトの直ぐそばにあるのだとか。

それから川島小鳥さんの展示に今むちゃんと行って、神田の味坊へ。席についてまず中瓶の麦酒を頼んだ。それから、板春雨のサラダとラムの串焼き。先月に3週間ヨーロッパに行ってた今むちゃんからお土産だというイタリアのリゾットのレシピを貰った。レストランで配布してるフリーペーパー。調味料を買ってきてと言ったのにな。「これ、日本語だから。」と言ってた。確かに嬉しいけど、有難うと言って受け取った。私からは近所で買った柚子と、北海道で思わず懐かしくて買ってしまった狐の巾着袋。中には飴か何かが入ってる。渡すと想像してたよりもずっと喜んでくれた。「これ、よく知ってるね!」「北海道と言えば、この狐だよ。」「嬉しいなぁ。すごいね。よく見つけたじゃん。」ほくほくの顔で喜んでる。札幌出身の今むちゃんに私も実は母の方の血が北海道なんだと驚かせたかったのに言い忘れた。

お肉は苦手だけど、北海道で道内のラムを食べてから、肉って結構いけるんだとわかった。脂身の多い魚みたいで、するすると美味しく食べれた。今日も挑戦してみたけど、やっぱり匂いが苦手で一本だけ何とか頑張って食べた。今むちゃんは今日も昨晩のお酒がまだ残っているのか体調が悪いのだとか。最近、会うたびにそんな事を言ってる気がする。馬鹿な奴って思うけど、お酒がやっぱり好きなんだろう。それから、何杯か飲んで、聞いたことがないような難しい名前の料理を頼んで、旅行の話や、旅行中にミュンヘンの友達の家で作ったパスタが美味しくて、最近料理にハマってるとか、パスタの乳化について教えてあげたり、最後は大体料理の話をしてた。全然まだまだ話し足りないけど、今むちゃんも体調悪そうだし、うちも遠いいし、遅くならないうちに帰ろうとなった。

駅から歩いて帰宅して、周ちゃんのいる風呂場へ直行。今日は乗継良く帰れた事とか他愛も無い話をした。周ちゃんとの話がどんどんずれていく。まただ。お酒が少し残っていたからか、腹が立って黙った。悪気がないのはわかってる。ただ周ちゃんは話に夢中なだけ。けど、周ちゃんの一人朗読会みたいな話は疲れる。私がどんな顔をしてるのか、どんな風にそれを聞いているのか、一切見えない。周ちゃんは一人でいる事が好きだし、一人で何でも出来る。それはそれで素晴らしいけど、人とのコミュニケーションが下手くそだ。その一章を読み切るまでの時間は案外長くて、段々と冷えていく熱々のスープみたいで寂しくなる。終わる頃を見計らい、適当に「へぇ。そうなんだ。すごいね。」と言う。正直。こんな会話はつまらない。だってそこに私がいなくてもいいような会話だから。

腹を立ててベッドへ直行。今日の日記は私の番。日記を開くと周ちゃんが昨日書いた日記の頁だった。5行位の短い日記。昨年にミュージアムで、周ちゃんが企画した展示で周ちゃんが描いたというイラストと文字を見かけた。手書きのかわいい感じの文字だった。こちらは打って変わって、書き殴ったような汚い男の人っていう感じの文字。文体もすごくダサい。日本昔話のような、もしくは古い漫画の中の主人公みたい。ビックリマークが3つも並んでたり。あまりに可笑しくて思わず笑ってしまった。今日の事やお風呂の事を少しだけ書いて寝た。

ラーメン

中華 19.11,2022

昨日見つけた中古のフィット。走行距離5万キロ、ハイブリッド。状態もとてもいい。帰宅した周ちゃんに話して直ぐに電話をかけた。朝一番で周ちゃんと電車に乗り草加駅へ。写真で見ていたよりもずっと綺麗。Hondaの担当のおじさんも「まぁそこそこ良いです。」とのこと。遠くにふんわりとマサラの匂いがした。「よしみはどう思う?」「私はいいと思う。」「うん。俺も。」一通り話を聞き購入を決めた。「周ちゃん見て。あそこ、カレー屋さんかな?」車から50mもしない通りにハラルフードの店をつけた。「あ!ほんとだ。」今朝、丁度そんな話をしていた。Hondaのユーセレクトの店舗の辺は埼玉でもパキスタン文化の色濃くあるエリア。午後にミュージアムに遊びに来るヒロさんの本にも書いてある。周ちゃんの目が子供みたいに爛々とした。

周ちゃんはすっかりヒロさんの大ファンだ。リスペクトしすぎて、その緊張が溢れちゃってる。ヒロさんの本だけじゃなく、ウェブに転がっている記事や、You Tube、ヒロさんをくまなくチェックしている周ちゃん。北海道に行った時も、ヒロさんのような生き方に憧れると高速を走りながら話していた。

来年からインドに移り住むミサちゃんからカレーリーフを受け取り二人と別れた。2時間くらいミュージアムのあちこちを丁寧にアテンドしてくれた周ちゃん。最後の最後まで、ヒロさんに子供みたいに本の色々を聞いていた。周ちゃんはそのまま仕事に戻り、私はミサちゃんのカレーリーフとヒロさんに貰ったデーツを持って帰宅した。

昨日からまた5年日記を始めた。年始にミオちゃんとの仕事で頂いたほぼ日手帳。1月末から婚約前の周ちゃんの事が書いてある。新居に引越したあたりから忙しくなったのか夏の妊娠頃まで空白。妊娠の日々の記録が少しだけ続きパタリとまた途切れた。過去の日記を読み返している時にふと思って周ちゃんに提案してみた。一緒に日記を書かない?って。最近の私達は色々と難しい。それはきっとどんなに努めてもパズルみたいにぴたりとはまれないもの。叩き壊して粉々にしてしまえば、若いときのようにぐちゃぐちゃになって一つになれたんだと思う。だけど、良くも悪くも歳をとるっていうのはそう言う事だろう。私達はお互いにそれぞれの味やそれぞれの形のままでしかもういられない。だから、日々想ってること、小さな声でもいいから、別の方向を向いてでも、何を見ているのか知れたらいいなと思う。ジャンケンで負けて私からスタートした。

ハヤシライス

夕飯, 洋食 18.11,2022

夕飯はハヤシライス、朝採れの春菊のオリーブオイルのサラダとからし菜の胡麻油とマヨの和えサラダ。採れたてが食べたくてサラダがふたつ。後は鰯のつみれの味噌汁と納豆。蕪と昆布の浅漬は出し忘れた。

結局、朝一番で大場さんには断りのメールを入れた。メールの前に大場さんからも、もう一人、テレビのカメラマンの助っ人が来ますとメールが入っていた。そのメールには関係なく断るつもりだったけれど、良かったと思った。昨日ひさびさに連絡した写真家の菱沼君。「菱沼くん、映像やってる?」と聞いたその答えは「今は福島で暮らしてます。」だった。こないだ朝井リョウさんの書籍で菱沼くんの写真が使われたとインスタか何かで見たけど、きっと今も菱沼くんらしい硬くて強い写真を撮ってるんだろう。東京に仕事に来たときは呑もうね!と約束した。

大場さんの事を周ちゃんにゆっくり相談したかったけど、昨晩はなんだか色々と忙しなく夜が終わった。多分、もう自分の中でわかってた。夜にベッドの中でも思った。何かの為にとか、誰かの為にっていうのはやめよう。それから、そうゆう言い訳も。

私は映像が好きで撮っているんじゃない、料理が好きで映像を撮ってる。だから、被写体がミュージュシャンなら本末転倒。ぜんぜん楽しくない。映像が好きなわけじゃない。こないだふみえさんにも言われた。「よしみちゃんが嫌なら映像はやらなくてよし。」って。あの時は少し心に何かが引っかかったけれど、答えは違う。映像については好きでも嫌いでもない。私が好きなのは料理。料理とか料理を作る人を見ているのが好き。大場さんには申し訳ない気持があったけど、なんだかすごく清々しい。

塩おでん

夕飯 18.11,2022

パリのまゆみちゃんからバースデーカードが届いた。女の人が裸で走ってるイラストが描いてある。なんとも海外らしい洒落たカード。このカードの理由は、いつも走ってるイメージの私らしいって。私が知ってる私は、直ぐにしゃがんだり、後ろ向きで歩いたりもすれば、大体は寄り道ばっかりだ。真っ直ぐに走れたらどんなにいいものかと誰かと比較しては少し自分のことが嫌になったり。けど、私の知らない私は走ってるのだとか。へぇ、そっかと思った。

昨晩に映像の大場さんから仕事を手伝って欲しいとLINEが入った。”技術的に不安があります。”と言うと、”僕もそうやって上がってきました。”とのこと。本当の理由はそれだけじゃない。心が動かない仕事を受けるのには抵抗がある。新しい何かを学ぶことが嫌なわけじゃなくて、私の時間が冷え切ったご飯みたいにこちこちになるのが嫌だ。感じないで仕事をする。そうゆう事も沢山やってきたけど、もういいやと思ってる。そういう時間は要らない。だけど、困っている大場さんの事は助けてあげたいと思って話を聞いた。代官山の駅前で40分くらい立ち話をした。

私は私のペースでいい。これをやっとけ、あれが得だ、世の中がそうだと言われたって、今の私がそう思わないのならば、そうじゃない。もし、未来に困ることがあれば、その時に考えたらいいと思う。失敗するのは私であって誰かじゃないのだし。それに、失敗なんて問題じゃない。離婚したらまた結婚すればいい、喧嘩したら謝って仲直りしたらいい。それでもどうにもならない時は後悔したらいい。後悔だって生きる為の大事な糧だ。

帰宅してまゆみちゃんに返答を書いた。”なんだか今日はすごく迷ってるよ。” 今の気持ちをだらだらといつも通りに綴った。大場さんの事もだし、新しくやってみようと考えていたことも、よくよく考えてみると誰かの為ばかりで私は楽しめていない事に気付いたり。それに梃子の手術。来週に予約を入れてるけど、人生2度目の癌の手術だなんて。淡々と書いた。最近手紙を書きながら思うことがある。まゆみちゃんがこの手紙の封を開けるのは、ずっと先のいつか。今、私が悩んでいることはどうにかなってる。人生なんてそんなもんだと思うと、迷ったり悩んでる自分を少しだけ放棄出来るようになった。どうしようなんて考えは3度くらいループすれば十分。だったら夕飯の献立を考える為に料理本を眺めてる方がずっといい。

今夜は塩おでん。先日に料理家の角田さんに本当に美味しいですよと聞いた。台所で角田さんの塩の料理帖という本を開き、塩おでんの頁にやかんを置いて、大根を切るところから始めた。おでんがぐつぐつと煮えていく。今夜も冷えてきたな。あっという間に冬がやってきた。

発酵生姜の鍋

夕飯 15.11,2022

昨日食べる予定だった発酵生姜の鍋。朝にヨーグルトメーカーのスイッチを入れ忘れて、発酵出来なかった生姜は今夜の夕飯となった。長芋とシラスのグラタン、人参のラペ、マカロニサラダを作って、周ちゃんの親戚に頂いた練物を焼いた。後は周ちゃんが柚子を絞ってポン酢を作ってくれた。近所で採れた濃い味の柚子と東京で作っているキッコーゴ醤油。この組み合わせが何とも最高でシメの乾麺にまでかけて一滴残らず綺麗に食べた。

今日は先週に初めてお会いした料理家の角田さんと。編集は佐々木さん。ライターは森本さん。やっぱり料理のお仕事が好きだなと思う。料理を作る人がそれも、食卓の為に作る人が。撮影を終えて、角田さんにこないだ聞けなかった話や出されてる本の話を聞いた。出来ることならこの時間を独り占めしたいと思うくらいに聞きたいことが沢山あった。角田さんは、行政の仕事で東京の農作物を広める仕事をしている。多摩地方の農家さんのお話や、私も同じく移り住んだ武蔵野の土地で最近感じている、舌を通して知った地場野菜の美味しさや存在について。この歳になって野菜の概念がガラリと変わった。私が今まで食べてきた野菜がまるで違う食べ物なんじゃないかと感じてしまうくらいに。

料理を通して、それは別に料理を作ることだけを意味せずに、ただ人を豊かにしたい、きちんと自分の声も大切にしながら。そんな角田さんの想いは、まるで自分ごとかのように私の胸を熱くした。私がいた東京では見えなかった世界だ。今はまだ右も左もわからないけれど、ひさびさに新しい場所を歩いてるような気分。20代の時に初めて訪ねたロンドンとか、初めて訪ねたNYとか。

ダルバート

カレー 13.11,2022

ピルを飲み始めて6日目。段々と調子が落ち着いてきたものの、夕方の腹痛はやっぱり治らない。それに、なんだ昨日あたりから生理前にやってくるPMSみたい。それも過去の感じの。離婚時は最悪だったけど、そのもっと前のPMS。苛々したり、少しアンダーな気分になるやつ。そして、何故かビールとポテチを片手にNetflixを見たくなる。夕飯はラーメンか酸辣湯。これも決まってる。大体ひとりでこのコースをだらだらと続ける。

今日は何故か日曜日なのに周ちゃんがダルバートを作ってくれた。日曜日は別々に過ごしたいと口を酸っぱくして伝えてるのに、さらに体調だって悪いのに。早い夕方からだらだらとビールとNetflixは始まってるけど周ちゃんは出かけたまま帰らない。「もう、本当にカレーは作らないでいいから。」なんて言えないし。お腹も空いてるし。お腹が痛いから早くベッドに入りたいし。周ちゃんのカレーは最高に美味しいけど、想像の3倍は時間がかかる。ああ、もう厭。今食べたいのは、10分もかからず作れる熱々で優しいラーメンやスープなのに。

周ちゃんのカレーは今日も最高に美味しかったけど、最高に辛かった。

鮭茶漬

朝食 12.11,2022

昨晩はそんなに呑んでないのに、なんだか少し二日酔い。カメラマンの松村さんと、料理家の角田さん、編集の野村さんと一緒だった。一軒目で角田さんが帰宅して、二軒目では一杯だけ。野村さんは飲み過ぎたようで最後は少し辛そうだった。ちゃんと帰れたんだろうか。

二日酔いの日はやっぱり汁物だとか、しょっぱいものが欲しい。朝食は、鮭を焼いて、冷やご飯の上にのせて、玄米茶をかけてお茶漬けにした。昨晩に野村さんが話していた事と、こないだふみえさんが話していたことがリンクしてる。それが小さな小骨みたいに喉に軽く引っかかってる。私とは関係のない話だと話半分でしか聞いていなかったけれど、気になるからそこにいるのだろう。売れるって、そんなに大事なことなんだろうか。売れるものを作り、誰かの為になることはいいことだけど、誰かの事ばかり考えていたら自分は蔑ろにならないのだろうか。頑張った代わりに、地位や名誉やお金を貰えたとしても、放っておかれた自分は寂しくならないのだろうか。私は強くもないし、上手く出来ない性格だから、きっと孤独になってしまうと思う。頑張れば頑張るほどに独りになる。褒められても嬉しいのは束の間で、また寂しさを癒すためにがむしゃらに走って欲しがってしまう。

それに反してとゆうか、あっけらかんと話す角田さんのお喋りがとても面白かった。「売れるってさ、特別なことをするんじゃなくて、日々の積み重ねというか、小さな事だったりするんだよね。」誰もが知っているような企業で売れるという仕組みを仕掛けた事のある角田さん。その時の話をしていた。アーティストの坂口恭平さんの本にあった、売れるっていうのはスムーズなこと。水の流れのように広まっていくこと。っていう文章を思い出した。がむしゃらに何かを、欲望の飢えを潤すように何かを得ることではなくて、必然的にそうなっていくのだとか。角田さんは料理家だけど、とても不思議な魅力の人だなと思った。話を聞いていてなんだかすごくわくわくした。私は、やっぱり売りたいものじゃなくていい。家に来た友人に食事をご馳走するように、明日生きる分の血や肉になるくらいの幸せを渡せたらいい。その友人が温かくなって、また別の友人を幸せにしてくれたら尚嬉しい。

昼前から周ちゃんと梃子とドライブした。北欧ビンテージの家具を見に行って、メッツァビレッジに寄って、帰りに回転寿司を食べた。とにかく車で走った1日だった。少しずつ少しずつ運転も慣れてきた。遠くへ行ける車は楽しい。

夕飯

夕飯 10.11,2022

午前にパルコカードを作って、アルパカのセーターを買った。それから世界堂でレフ用のスチレンボードとペーパーを買い新大久保へ。料理家のふみえさんとネパール料理屋のアーガンで待ち合わせ。アーガンはミサちゃんに教えて貰ったお店。ふみえさんは髪をバッサリとショートに切ってなんだかとてもすっきりしてた。この半年でどんどん髪が短くなっていくふみえさん。それでなくても軽快で心地がいい人なのに、どんどん軽くなっていく気がした。

ふみえさんからハーブティと、氷見のHOUSEHOLDのふたりから預かってるというお土産と昨年に撮影したカタログを受け取った。私は今朝、無人販売所で買った原木なめこを渡した。今度の撮影の話から、最近のお互いのこと、色々な話をした。人の悩みを面白いなんて言ったら失礼だけど、私からは絞っても出てこないような、ふみえさんの悩みはふみえさんらしくて興味深かった。けど、実際にふみえさんは困ってるし、そんな自分の癖が嫌だと感じてるし、変わりたいとも望んでる。それに反して、私が持っていないそれは、いつも羨ましく魅力的なふみえさんの要素の一つだ。ふみえさんのようになれたらどれだけ強く生きられるのだろうと時々思うくらいに。

人って不思議な生き物だ。もう今のままでも十分に満たされている筈なのに、自分には無いものを望んだりする。新宿に三越伊勢丹に行くと欲しいもので頭がいっぱいになる。地下の食品から、コスメ、洋服と、お金が幾らあっても足らない。だって冬だからクリームが必要だし、だって仕事用に汚れてもいいよう黒いけどお洒落なコートが欲しいし、。明日の私を満たしてあげる為に必要そうなものは数えきれないくらいある気がしてしまう。どうしてこんなに止めどなく欲望が湧いてくるものかと、時々うんざりもするけど、湯船に使った時だとか、スープでお腹が温かくなった時とか、陽だまりにいる時なんかに気づく。今は十分に満たされてるって。ふみえさんには申し訳ないけど、ふみえさんは今のままで十分過ぎる程に素敵だし、変わらなくてもその魅力はこれからも絶えず拡がってゆくものだと思った。

帰りに銭湯に寄って、久しぶりにサウナに入った。帰り道に携帯を開くと周ちゃんからLINE。”足を挫いたから病院へ行きます。”それ以上もそれ以下も書いてない。帰宅したのは1時間以上経ってから。左足が包帯ぐるぐる巻になって帰ってきた。「何で連絡してくれなかったの?交通事故にでも遭ったのかと思ったよ。」と言うと、「俺だって大変だったし、そんなに怒らないでよ。傷ついてるんだよ。」と、真剣な面持ち。目は冷たくて硬ってた。周ちゃんは痛みに弱い。そして、それを飲み込むまで少し時間がかかる。そして、それは星の光のようで、私の所にやってくるまでにはタイムラグがある。寂しかったり、少し苛ついたりもどかしかったりもするけど、それが、私達だ。私が選んだ、誰かと生きるとゆうこと。私に出来る事は速く連絡するように促したって変わらない彼の声を、ただそっと信じて待つだけ。私達はただ法的契約を交わしただけで、私には彼を変えてもいいなんて尊厳は持てない。持ちたくない。

夕飯
原木椎茸のオーブン焼き
赤蕪と小松菜の蒸したもの
塩豚
長芋と豚の醤油麹バター焼
ほうれん草のおひたし
納豆
ご飯
原木なめこの味噌汁

夕飯

夕飯 09.11,2022


昨晩飲んだピルの副作用が酷くて午前はリビングでうめいてた。午後は薬が馴染んだのか体調はすっかり戻った。夕方に久しぶりに俳優のゆうちゃんからLINE。ゆうちゃんは前の家から5分くらいの所に住んでいる。最後に会ったのはうちでたらふくビールを飲んだ時。一時期タクシーを乗る度に画面の中にいるゆうちゃんを見かけていたから、そんなに久しぶりな気はしていなかったけれど、確かに、もう1年は会ってない。引っ越したことを伝えるととても驚いてた。結婚したことは言ってない。

夕飯
昨日の鍋の残りで茸のクリームスープ
キャベツのペペロンチーノ
柿と洋梨とモッツアレラのサラダ
ブロッコリーとしらすのオイル蒸し
ニラ玉
納豆

茸鍋

和食, 夕飯 08.11,2022

「今夜は皆既月食見ながら夕飯を食べよう!」朝に周ちゃんと約束をした。夕飯、何がいいかな。秋の味覚を堪能できるようなご飯を1日中考えていたけど、中々決まらない。夕方の病院が混んで、結局帰ったのは18時過ぎ。せっかくゆっくり夕飯を作ろうと思ったのに、皆既月食始まっちゃう。

椎茸の焼売を作って蒸し器で蒸して、魚介のパスタに柿とバルサミコを使ったパスタに茸のスープ?・・。なんとなく考えていた献立はやめて、1時間くらいで出来そうなものに変更。一つ目のコンロに茸鍋の準備をして、二つ目に砂肝と青葱たっぷりのコンフィーを、もう一つのコンロで銀杏をフライパンで炒った。あとは昨日作った蕪の煮物、納豆、ご飯を準備した。

「ただいま〜。」周ちゃんが帰ったのは19時過ぎ。「始まってるよ!」急いでベランダに上がって空を見上げる。「すごいね。」「うん。すごい。地球と月と太陽が一直線にこれから重なるんだよ。」毎年、何年ぶりだとかいう夜空を見上げてる気がする。昨年もスーパームーンと皆既月食が同時に起こる夜があった。夜中に目が覚めた時、カーテンから溢れてくる光に驚いてベランダに出ると、見たことがないような明るい夜だった。離婚から半年くらい経った、まだ心が痛くて仕方なかったころのこと。夜はタクシーの音がする度に元夫なんじゃないかと真夜中と記憶がシンクロして胸の鼓動が止まらなかったけれど、月が明るくて、隅々まで白く光って見える世界にほっとした。

姉から新車を買ったよとLINE。2023年モデルのワーゲンの写真が送られてきた。車には赤くて大きなリボンがついてる。自分への誕生日プレゼントらしい。先月の交通事故では結局車は大破しちゃったけど、身体に問題はないし、新しい車の事を結果オーライと言ってた。なんだか流産から不正出血が続いていて、気持ちが少し晴れなかったりもするけど、そんなに心配することはないのかもしれない。病院からは生理をリセットするというピルが処方された。妊娠でつくづく思ったけれど、女であることは本当に大変だ。子供は私と周ちゃんのことなのに、女の体を持っているだけで、さまざまな身体的困難を強いられる。

ケーキ

Journal, 朝食 06.11,2022


遅く起きてきた周ちゃんに「紅茶のむ?」って聞いたら、「ねぇ。これ見て。」携帯の画面にあるグーグルカレンダーを指した。”何もしない日” って書いてある。書いたのは私。食べるも寝るも別、と加えてある。周ちゃんはやっぱり結婚がしたかったんだと思う。初めての結婚である周ちゃんに、私に構わないでとか、別々でいたいとか、そんな事を望む私の方が我儘だ。きっとお揃いのパジャマを着て、熱々のパンケーキの上を溶けるバターをカフェオレと一緒に流し込みながら朝を迎え、昼はぶらぶら買い物したり食事したりと手を繋いでデートをして、夜は部屋で映画なんかを見たいんだと思う。「今、紅茶を淹れてたから、いるかなと思って。」「うん。じゃあ、いる。」周ちゃんが一昨日に買ってきてくれたケーキを紅茶と一緒に食べた。

昨日は松陰神社に住んでた時に通っていた梃子の病院へ行った。セカンドオピニオンの為。前の家の直ぐそばにあるカンノンコーヒーで珈琲とスコーンとチョコクッキーを買い、角の寿司屋でお稲荷さんを、インド人の肉屋でサモサを買った。そしてThisという雑貨屋をぐるりと見て、下北沢の発酵デパートメントへ向かった。よく買っていた五味醤油さんの甲州味噌と醤油と変わったバルサミコ酢を買った。まるで半年前の生活みたい。

運転はずっと私。初めて東京まで運転したけど思っていたより怖くなかった。それに、道も街も、知っている場所を通るのはなんだか嬉しかった。「あ、あのローソンの上に二十歳くらいに好きだった子が住んでたよ。」環七の信号を止まった時に丁度そんな場所だった。「ここを曲がるとミッチャン家。」「そこを曲がるとこないだうちに遊びに来てくれた子の家だよ。」世田谷、大好きな街。私だけすっぽりとどこかへいなくなってしまったけれど、ここは今も変わらない。

今日はキッチンの大掃除をして、昨日の夕方に買った葉牡丹を鉢に植え替えた。なんだか昨日の世田谷はすごく楽しかった。だけど、私の家はここ。ここを離れる時は淋しいと思うくらいに素敵な場所にできたらいい。

里芋のグラタン

洋食 04.11,2022


午前はパルコの有吾さんと。午後はざおーと仕事。有吾さんに最後に会ったのは、二年前の夏。待ちの時間があって、公園通りのエクシオールカフェでお茶をした。そして、その時に夫が帰って来ないことを相談した。「多分、帰りずらいんじゃないかな。旅行でも誘ってみたらどうだろう。」一ヶ月以上帰ってこない夫に、アドバイスの通りメールしてみると、しばらくしてから「旅行でも行きませんか?」と思いだしたようにメールが戻ってきた。相談していた姉やアカリちゃんにその事を話すと、「何を今更!」って、二人とも口裏合わせたように怒っていたけど、私の心はとっくにどうにかなっていたから、夫に声をかけられるだけで十分だった。そして、夫の横に座っても前のように笑う事ができない私がいることも知っていたからメールは返さなかった。正確に言うと、返すことが出来なかった。

今更になって思い出したけど、あの日が有吾さんと会った最後ではなくて、その一週間後くらいに有吾さんの知り合いと一緒にパルコのビアガーで飲んだのが最後。その時に会った美容師の男の子が帰り際に痩せすぎだからもっと太った方がいいよと西武の前を歩きながら言った。今から7kg痩せてた頃のこと。ストレスで一気に体重が落ちてしまって確か44kgくらいだった。持ってる服の殆どはぶかぶかで、夫や毎日だけじゃなくて、もう何もかもが世界がずれていた。あの夜に1Fにあるeatripの花屋で買った植物は数ヶ月で枯れた。何を買ったのか覚えてない。

午後の現場に向かう前に、隙間の時間でオペラシティーでやってる川内倫子さんの写真展に寄った。川内さんの写真が特別好きなわけじゃなかったけど、大規模の写真展というのが引っかかって寄ってみることにした。こうしてミュージアムだとかアートにきちんと触れる、学ぼうとする姿勢を持ち始めたのは周ちゃんのお陰だと思う。感じに行くというより勉強しにいく場所になった気がする。バックパッカーをやめてから、ずっと家の中、食卓、より内側へよりマクロな世界へと興味を持ってきたけれど、周ちゃんと結婚してから、ぱっと外の世界に惹かれるようになった。北海道へのアイヌリサーチもそう。家から出て、大きいものが見たい。川内さんの写真は生きるとか生命とか、そういう事を見てる写真みたいで、今の私の気分そのもので見ていて気持ちが良かった。アイヌリサーチで試しに借りた中判カメラ。ハッセルブラッドを売ってから久しぶりの中版だったけれど、思っている以上に手応えがあったカメラ。やっぱり買おうかな。どうしよう。山登り用にワタルさんが欲しいと言ってたカメラ。私は何用だろう。世界用かな。

今夜は里芋のグラタン。
伝説の家政婦 志麻さんのレシピ


鶏もも肉 1枚
里芋 小さいのを10個くらい
長ネギ
豆乳 500ml
麺つゆ 大さじ2
ピザ用チーズ


具材を炒めてから、豆乳で芋に火が通るまで煮込んでからチーズをかけて焼く。

ほうれん草のおひたし

Journal 03.11,2022

今日は祝日。昨晩帰りが遅かったので朝はゆっくりと起きた。昨日はレストランで、帰りの電車で、お風呂の中で周ちゃんと沢山の話をした。まるで数週間の色々を取り戻すみたいに互いに互いの傷を癒やし合った。

私はいつからか必死になっていた。穏やかな湖畔でぽちゃぽちゃと水遊びをしてるつもりが、鋭利な言葉で周ちゃんを傷つけることを覚えていた。理由は沢山あるけど、こんな自分は嫌い。私には私の苦しみがあったけど、周ちゃんの心の声を聞いてから、やっぱり虚しかった。どんな理由があるにせよ、人を傷つけることは辛い。

昨晩に周ちゃんに新しい歳の抱負を聞かれたけど、みっつめは言わなかった。ひとつめ、車の運転が上手になること。ふたつめ、穏やかな心でいること。みっつめ、大切な人を傷つけないこと。口に出したら私への約束の効力がなくなってしまいそうで言いたくなかった。

一昨日に出した大学の心理学科の履修科目生の願書。人生二度目の大学生。授業は来月と再来月。楽しみだな。この1年はきっと新しい1年になる。結婚を機に色々がガラリと変わったけど、今年はもっと変わりたい。前のように色々はもう要らないし、急いだり焦ったりも必要ない。遠くへ行きたいとか、多くを望みたいとも思わない。今持っているものを十分に大切にしたい。私が出来ることを丁寧にしくしくとやりたい。


ワタナベマキさんのお浸し
カボス
ほうれん草
麺つゆ

お浸しにカボスを薄くスライスして液に浸し冷やす。

モモ

Journal 01.11,2022

明日は誕生日。離婚した時、これから、誕生日は一人でいようと決めた。私は私を大切にしよう。誰かに幸せにしてもらうのではなく、私のために自分で買ったケーキのローソクには自ら火を灯し、自ら消したい。幸せは与えて貰うものじゃない。あれだけ固く誓った筈なのに、夜は周ちゃんとご飯を食べることになった。一人でいたい、とは言えなかった。それに、やっぱり周ちゃんといたかった。なんだかそれは情けないような、嬉しくもあるような。

昨年の明後日に周ちゃんに出会った。まさかその人の子供を妊娠するなんて思わなかったし、その人の姓を名乗るとも全く想像してなかった。人生って可笑しいくらいに、自由気まま。身勝手すぎる。もっと落ちついてくれないものか。松陰神社駅から歩いて30秒の56平米の一人には広すぎるマンションで、テントを3つくらい立てられるようなベランダで悠々自適に今日も過ごしているはずだった。予定では、時々デートしてセックスしてバイバイするくらいの丁度いい距離感の男と付き合っていて、その人の未来なんて私には関係ない。勿論、明日の誕生日だって一人で過ごすつもりだった。

あの部屋が大好きだったのに、どうしてこんな田舎に引っ越してしまったのか、時々、ふと考えることがある。今日の帰り道だってそう。バスに揺られながら、私は一体何やってんだろうと思った。田舎暮らしは夢だったけど、本当にこれで良かったのかわからない。田舎での暮らしは想像以上に素敵ではあったけど、想像もしていないような不便さや大変さもあった。知らなかった世界を体験出来て、楽しい想いも十分にして、何を今更とも思うけれど、冷静にぼんやりと窓の外の景色が変わっていくのを見ながら思う。今、私は本当に幸せなんだろうか。離婚の時もだけど、結婚もそう。なんだかそんなに頑張ってない。もちろん、上手くいくようにと小さく努めた事は山程あるけど、もう決まってるレシピのようだった。そうしないと美味しくならないような。だけど、今日は美味しくない。周ちゃんとの生活がなんだかやっぱり上手くいってない。

新宿のギャップでクリスマスらしいパジャマを買って、周ちゃんに似合いそうなチェックのパジャマも一緒に買った。昼に久しぶりに瞳ちゃんと表参道でランチして、少し落ち着いた気がする。

幸せって一体なんなんだろう。周ちゃんとはずっと一緒にいたい。だけど、私が十分に今幸せかと言ったら、そうじゃない。思い通りにいかないのが人生だとか言うけど、じゃあ、人生は苦しむ為にあるんだろうか。ベッドに入ってから周ちゃんと話をした。ここ最近のこと、なんだか上手くいってないこと。小さいことは沢山あるけど、きっと妊娠から始まった。周ちゃんは怒ることも、怒られることも苦手。人の怒りに弱い。そして、それを避ける。私は気持ちが溢れてくるのを止められない。わかってるのに止められないし、それが私の生きる衝動にもなったりする。優しい気持ちも悲しい気持ちも、周ちゃんが世界で一番恐れてる、怒りという感情も全部綺麗に吐き出してしまう。

「その、妊娠の時のいつのことを言うんだろう。治したいと思うから具体的に教えてくれないかな。」「周ちゃん、何日の何時何秒みたいな話は無理だよ。感情の話なんだから。私が伝えたいのは、根本的な心の話。行動はその先にあるもの。私の目的は怒ることじゃないし、怒りたくて怒ってるわけでもない。だけど、周ちゃんが怒りが苦手だからと周ちゃんの感情から逃れることは、私からも避ける事を意味するんだよ。」

私達は突然に出会って突然に結婚した。歩んできた人生が全く異なる二人が生活を始めて、上手くいかない方が普通だと思う。価値観は別に合わせなくていいし、それぞれが持っているものを否定したり、強要したりする必要もない。このままでいい。合わないままでいい。だけど、今、私達が一緒にここにいるなら、向き合わないと苦しくなる。塩辛い味噌汁を、「大丈夫だよ、美味しいよ。」と言うくらいなら別にいいけど、とても悲しいのに大丈夫とか、とても苦しいのに気にしないでとか、とても怒ってるのに笑顔でいるとか、そんな事しないでいい。嬉しかったり、優しい気持ちになったりするのと同様、感情は私達の身体と同じ、大切なもの。

どれくらいかわからないけど、しばらくベッドで話した。じゃあ、別々に暮らそう。そんな話は出なかった。自分の努力が間違ってたとか、俺のエゴだったんだとか、周ちゃんから放たれる言葉は悲しみを帯びていたけど、私が苦しかった事を伝えた現実にショックだったんだろう。だけど、そうじゃないよと何度も伝えた。私達は互いに新しい生活の為にそれぞれが出来る事を努めたけど、価値観が合わなかった事も決して悪いことではなくて、問題は今苦しい感情がここにあること。それを解決する為に、過去を悪く言ったり、自分を責める必要なんてない。幸せになる為にやってきたことで、失敗だってある。そんな事よりも、今、気持ちが互いに苦しい事を、今までとは違うやり方で変えていく必要がある。私達は別々の身体を持った生き物なのだから、家族だからといって無理矢理一つにならなくていい。このまま別々であることを楽しみたい。そして、ちゃんと笑っていたい。直ぐに色々を変えるのは難しいけど、生活を少し変えてみようと約束した。

夕飯はモモ。周ちゃんが作った。私の苦手な肉たっぷりのシュウマイみたいなモモで、味の濃いミントのアチャールをたっぷり乗せて3つだけ食べた。

10月31日

Journal 31.10,2022

北海道から帰ってから、バタバタと撮影が続いてる。今日は編集の柿本さんと。柿本さん、本当に好きだな。RiCEの時もそうだけど、一緒に仕事をしていて楽しいと胸がほくほくとしてくる。話してる事がすぅーっと美味しいジュースみたいに自然に馴染んで、どうかしたらもっとほしいと思うくらいに身体の中へと入ってくる。勿論、それは、編集のキャリアがあるからなんだろうけど、それだけじゃない。人柄だったり、他愛もない小さなお喋り一つにしても楽しい。歳は私よりもずっと年上。高校生の娘がいるのだとか。来年に留学するみたいで、その話をしている柿本さんはすっごく可愛かった。私も早くに娘を産んで、こんな風に仕事場で娘の話をしてみたかったなんて羨ましくも思ったりもした。

最近少し疲れてる。周ちゃんとは上手くいってるようないってないような。一緒にいると疲れる。好きとかきらいとかは関係ない、ただ生活がうまく回ってない。

10月23日

Journal 23.10,2022

朝から頭が3つあるみたいに忙しかった。仕事、月末の請求書の作成、来週の撮影の機材の準備、旅に持っていく機材の手配、モニターのキャリブレーション、機材の掃除、返信していないメール、週末にやろうと溜めていた色々。うんざりする。それに併せて連日の撮影でほどよく疲労も溜まっていたし、周ちゃんとは忙しくて話す時間を作ってない。色々を早朝から同時進行で進めてみるも、時間ばかりが過ぎてゆく。夕飯は近所に住んでるキュレーターの高橋くん家でご飯の約束をしてるのに。

周ちゃんに高橋くん家に持っていくお土産を駅前で買ってねと頼み、後から自転車で向かった。頭がすっぽり抜けて何処かへ行ってしまいそう。まだ、あれもこれも終わってない。

周ちゃんと高橋くんはキュレーションのなんたらをまるで科学みたいな言葉を使って話していた。洒落たキッチンで泡まみれになった手でそれを事細かく論ずる高橋くんと、高橋くんに頼まれてニンニクを切りながら、さらに解いていこうとする周ちゃん。キッチンではなく、実験室に見えた。流し場にあるパスタはすっかり茹で上がってる。こうゆう場面に出会うと、私達は違う場所で生きてきたんだなと改めて実感するし、周ちゃんがずっと遠いい人かのようにも感じる。

誰だったかに、学芸員と何処で出会うの?と聞かれた事があったけど、確かに本屋で同じ本を手にすることもなければ、私がハンカチを落とすような街を学芸員が歩くことはきっとない。きっと彼等は、ミュージアムや、アートに纏わる場所で静かに鑑賞してる。勝手な想像だけれど。周ちゃんに限っては、全く異なる土地で生きてきたし、趣味も遊びも違う。ただ、生き方みたいな、大きく言って根本的なところだけが似てる。

周ちゃんがトイレに言ってる間に「実は喧嘩してるんだよ〜」と、こそっと高橋くんに言った。そこから、結婚ってなんだろうね、みたいな話になったけど、疲れ切ってる私にはただ、もう脱ぎたいとしか思えなかった。

ウェットスーツみたいに重くなったものを脱ぎ捨て、すっぽんぽんで抱き合いたい。今は結婚の意味なんかどうでもいい。

枝豆

夕飯 22.10,2022


久しぶりに編集の柳瀬さんとお仕事。「よしみさん、日記見てますよ〜。実は前に私の事を書いてあって、キャプチャーしたんです。」女性の方から時々言われる。実はこっそりと見てるんですよって。そう言われる度に少し浮足だってしまう。仕事用のHPに日記を掲載するなんて馬鹿だなとも思うけれど、以前のついつい体裁を整えてカッコつけてしまう私があまり好きじゃなかったし、もういいやとどこかが吹っ切れて、家の食卓写真と一緒に日記を書くようになった。どうせ服の下はみんな裸なんだしと。

一人目の旦那さんの事を書いていた時はファンだという女性から忠告を受けることがあったり、見たくもない感じのメッセージが来る事もあった。私自信わかってる。私は普通に偏ってる。みんなと同じように普通であり偏りもある。いつも笑ってるような人なんかにはなれないし、口から意地悪が勝手に出てくる日もあれば、自分勝手に当たり構わずジェラシーを蒔き散らす事もある。こんな自分は嫌だって思うくらいに、気持ちが悪い感情がどうにもならなくても書く。それに、ずっと離れてるりょーこちゃんが「よしみちゃんの日記、いつも見ているよ。元気そうだね。」と、連絡をくれる度に安心して、また書こうとなる。朝でも夜でも、私の隣に座り、そっと話を聞いてくれているみたいで。完全に妄想なんだけど、なんだか一人じゃない気がしてまた書く。

今日の現場は穏やかだったな。人って面白いなと思う。誰と一緒にいるかで見える世界が変わる。柳瀬さんの現場はコジコジワールド。ずっと笑顔でニコニコ笑ってる柳瀬さんを見ていると、こっちまでニコニコしてしまうし、ユルイ空気感がじんわりと現場を温めてく。私の知ってる限り、だいたいのおじさんはメロメロになる。それを見るのも結構すき。そうして、日本橋の街を歩きながら写真を撮り、柳瀬さんの新しい恋の話を聞いたりして、新宿で会期中の写真家の中野さんの展示へ向かった。

ギャラリーに入ると、写真家の広瀬さんの名前が記帳されていた。「広瀬さん、今どこですか?」「もう、電車だよ。」「すごい運命的なニアミスじゃないですか!」直ぐに電話を鳴らしたけど、声しか会えなかった。なんだかんだと30代前半から仲良くして貰ってる広瀬さん。今は子育てで忙しいみたいで、作家活動は少しお休みしているみたい。だけど、今が楽しいって言ってた。中々子供が出来なかったけど、ある時に急に出来たのだそう。「俺の年齢だと1%の確率だよ!」としきりに言ってた。あの時は全く妊娠の事を知らなかったから右から左だったけれど、今なら隅々まで溢す事なくしっかりと話せる。2周くらい周りギャラリーを出ると、シティーボーイです。って顔に書いて有りそうな感じの男の子が座ってた。「え?中野さん??」「ああ、お久しぶりです。」「嘘でしょ。全然違うじゃん!」中野さんは元自転車のなにかの選手だったけど、写真家になった。8☓10という大きな箱みたいなカメラを背負って秘境の温泉を撮る写真がとても力強くて、この人はただもんじゃない。と直ぐに好きになって、友達になった。何年か前のアートブックフェアでのこと。「だから、家の中の写真なんだ。じゃあ、この裸かは彼女ってこと?」「ちゃんと彼女に出していいか聞きました。」「偉いね。」中野さんは写真を撮る為に会社をやめてタクシーの運転手になったけど、コロナでしばらく会わなかったこの3年、恋に堕ち、同棲を始めた人生初の彼女と一緒にいる時間が惜しくて写真を撮るのをやめた。「絵なら、遠くに行かなくてもいいし。いつでも書けるし。あと、絵は自分の物に出来るから。だから欲しい物があっても、買わなくても満足するんです。色々と閉じ込めておけるというか。」なんだか、やっぱり中野さんが大好きだなと思う。最近、有名な美術館に作品が収蔵されたのに、今は恋がしたいから、写真はやめた。そして、彼女はスタイリストのアシスタントなのだとか。超ど真面目の中野さんがシティーボーイの成をしていた理由がようやくわかった。

人生ってそういうものでいい。恋だとか愛が一番でいい。広瀬さんも立派な写真家で、中野さんもだけど、ふたりして、写真の中でぐつぐつといい感じに煮込まれていたけど、潔く火を消した。

「なんていうか、すごく安心するんです。」携帯カバーの中に彼女と撮ったチェキの写真を見せてくれた。昨年の大晦日に過ごしたどこかの旅先での写真。中野さんにとって写真は見たことが無いものを撮る行為だったそうで、だけど絵は違うって。私は逆で、見たことが無い景色よりも、写真になにかを希望してるというか、祈りみたいなものを、きっと込めてる。普遍的なもので在ればあるほどに、重なった背景に胸が熱くなる。

面白かったな。すごく。それに、柳瀬さんの恋の話もだけど、なんだかいい日だった。兄から送られてきた黒豆の立派な枝豆を茹でて、枝豆だけを見て食べた。世界は愛や恋に包まれていたけど、周ちゃんとは昨日から喧嘩してる。好きになればなるほどに、相手に求める事が増える。自分の思い通りにしたいわけじゃないけど、より近づきたいと思えば思う程に、上手くいかなくなる。

ほくほくの枝豆。豆がとても大きかった。