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手巻き寿司

Journal 26.11,2021

週末に大好きなNYのジュエリー作家のオーダ会を青山やってると知ったのは数日前。年に数回のオーダ会がこのタイミングだなんて何とも言えない。「見に行ってみる?」と、周ちゃん。結婚が初めての周ちゃん。2回目の私。指輪の前に立って、結婚がどんなものなのかを一緒に話が出来たらいいなって。目の前の景色を彼はどう感じるのかが知りたかった。

1回目の結婚の時は、私は恵比寿のジュエリーショップで指輪を、元夫はギターを結婚指輪の代わりに買った。その数ヶ月後にギターは家から姿を消し、1年後に二つ目の結婚指輪を買う事となった。お酒の色々や結婚を隠す元夫への怒りが爆発した時だった。新宿伊勢丹でSHIHARAの指輪を購入。結局、指輪は1週間で何処かに放置されて、私はその指輪を救済。右手に元夫の指輪を。左手に私の指輪を2つつけた。これが私達の愛の形。全て私が受容れたらいい。そう信じきっていた。

周ちゃんは薬指に色々なデザインの指輪をつけては外してを繰り返してる。学芸員という仕事だし、派手なのは避けたいとの事。黙々と選んでた。「周ちゃん、とりあえず一回ブレイクしない?」ジャイルの最上階のカフェで、私は抹茶ラテを周ちゃんはジンジャーエールを頼んだ。テラス席から見える秋の夕方の空は淡い青とサーモンピンクのグラデーションが重なって、ただのビルでさえ切なく見える。程良く賑わったテラスでは、ワインを傾けるカップルだとか、買い物帰りの女性とか、赤ちゃんを連れた女性が東京の空を見ながら気持ちよさそうにCOREDOビールを飲んでいた。
「周ちゃん、本当にいいの?」
「いいよ。だから買いに来たんじゃない。」
「周ちゃんは死なないよね?」

周ちゃんは私の変な質問にずっと笑ってた。そして、「今日の夕飯は手巻き寿司はどう?」と言った。誕生日に食べたいのは手巻き寿司がいいと聞いた事があった。彼にとって今日は特別な日なのかもな。だけど、そういうの、私は要らない。毎日が普通で、ただただ平凡で安全なだけでいい。今日が特別にならないで欲しい。もう大切なものを失うのは嫌。

「周ちゃん、お店に戻ろう。」指輪は2月半ばに出来上がる。

芋煮

Journal 18.10,2021

朝の5時からバタバタとやってたのが、もう夜。今日は流石に疲れがどんと来て、いつもの乗り過ごしも中々な酷さ。夕方、気づいたら中野のホームに停留中の車内でハッとした。ここ何処?って。水曜日は近所のみっちゃんと夕飯。それまで頑張ろう。最近、私の周りで幸せな話が多くてニヤニヤしてる。何だかじわじわと嬉しさがこみ上げてくる。

今日は寝よう。色々がぱんぱんて頭が破裂しそう。梃子の手術日も決まった。頑張るとかじゃなくって、色々やるしかないよね。

ソース焼きそば

Journal 17.10,2021

早朝に起きて仕事を片付けて、講義を受けて、また仕事を片付けて昼食を食べて、ようやく休日だ!と思って家を飛び出ると、何語だかわからない言葉で喋る若い女の子が近寄ってきた。一生懸命に話してる言葉は日本語だったみたいだけど、彼女は中国人らしく、携帯を貸して欲しいと言ってる。2時間も短パンにサンダルのパジャマみたいな服でここにいるのだそう。話が全くよくわからないけど、何も持って無くて、友人が鍵を閉めて家を出ちゃったんだそう。どうゆうシュチュエーション?と思ったけど、とにかく可愛そうだったので携帯を貸した。

乗りたいバスの時間があっという間に過ぎた。その女の子は「どうしよう?」しか言わない。この寒さの中あと何時間待つ気なんだいって、もう15分くらいここにいる私の方がイライラしてきた。「警察が直ぐそこだから、お金借りて家に帰るのはどうかなって思うんだけど?」「もしくは、今からバイト先に向かう。」「もしくはネットカフェで手当たり次第連絡をあちこちに入れてみる。」どれも不採用で、どうしようしか言わない。ずっとインスタの友人にメッセージで「ナタリーだよ!」と名前を送ったり、出ない電話をかけ続けてる。

私の休日。数時間の休日がどんどん終わっていく。一緒にただ待ち続けるべきか否か、すごく迷ったけど、携帯をどうにか返して貰う事にした。ごめんね。私ならここで待ってるだけっていうのはしないと思う。だから、立ち去る方を選んだ。その代りに、彼女とバイバイしてから、彼女がメッセージを送ってた友人らにどうして私の携帯からメッセージを送ってるのかと、今彼女が困っている事、彼女が立ちすくんでる場所の住所を送った。バスの中での数十分は仕事をしようと思ったけど、彼女のSOSを送り続ける事で終えた。

絶妙な気持ちのままバスを降りて、銭湯へ。久しぶりのサウナ!気を取り直し意気揚々とサウナへ向かったけど、サウナはぎゅうぎゅう。少し待ってから入る事にした。ドアを開けると肉の塊みたいなのが二つ、床にゴロンと虫の交尾みたいにどっからどこまでがそれで、あれなのかわからないのがあった。これ何?!黒いパンツを履いたまるで双子みたいにそっくりの筋肉質の怖そうでイキってるお婆ちゃんが二人。こ、怖い。さっと一回戦目を終えて、二回戦目。肉の塊は、別々らしくて、別々に出て行って、また別々に入ってきた。イキってる双子も出たり入ったりしてとにかく目線が怖い。肉塊の片方が私の足元でゴロンと寝そべった。嘘みたいな光景だよ。大きな肉の塊がどすんってここにある。今にも私の身体に吸着しそう。こんな休日嫌だ。

だんだんと妙な光景の理由がわかってきた。これは、サウナ陣地取りの戦だったんだね。帰ろう、お家へ帰ろう。私が出る時、若い女の子が隅で申し訳なさそうに座っていた。

受付のアイシャドウのブルーが2cmくらいある50代の女性に「スタンプ集めますか?」って言われたけど、断った。

10月9日

Journal 10.10,2021

今日は、先月デートしたトモさんと夕飯。話が盛り上がって結構飲んでしまった。トモさんは、私を面白い大人だと終始褒めてたけど、その発言に関しては面白く無かった。

彼が私の世界が広いって言うのは、私がゾンビのいる世界みたいな場所に一度でも降り立ってしまったからだと思う。それは素敵な大人とは異なってる。3度くらいの不倫の末の離婚なら、もっと瑞々しい熟女になれたかもしれないけど、そういう類のものとは全然違う。

夜の22時ちょっと前、ガラガラの世田谷線。NYの路上でライブするアリシアキースの唄を聴きながら心の中で死にたいと連呼して泣いた。次の誰かが出来るまで、又は出来ないまでなのか、この喪失感や虚無感はやってくるのかな。久しぶりのこの世の果てみたいになった。これって、もしかして執着?だけど、何だか違う気もする。

トマトスパゲッティー

Journal 24.9,2021

今日はカウンセリングの日。前回の宿題は気づいたら忘れてた。”周りや世間の価値観を基準にではなく自分が心地よい選択をする、まずは自分の日々の選択に意識すること。他人軸になってるかどうか俯瞰してみて。” 数週間前にカウンセラーさんの言った言葉。だけど、選択は得意だよ。だって写真を撮る仕事は選択のしっ放し。瞬時に良い選択をする事でご飯を食べてるようなもの。結局その宿題はやらなかった。

今回はどうしよう、何を相談しよう。私の心のケアは心理学で事足りる様になってしまった。うーん。そうだ。パートナーについて聞いてみよう。「こんにちは。よろしくお願いします。最近はとても調子がいいです。今でもトラウマはしっかりと持っています。けど、今はそことは違う新しい場所にいて、一緒にいる人も仕事も、色々が毎日とても楽しいです!それで、。今日聞きたいのは、パートナーについてです。」離婚してからガラっと人間関係が変わった。一緒にいた友人達が嫌いになったわけじゃなくて、小学校から中学校へ上がった時みたいに景色がパッと変わったみたいな感じ。以前の友人達と交代でもするかのように新しい友人達は笑顔で「Hello!! 」って声をかけてきた。そして、新しい友人は、何時間もカフェやLINEで昨日の話や腹の底の話はしない。まだ誰もわからない未来の話を会った時だけ教えてくれた。だけど、パートナーはどうなんだろう。これは私のトラウマの一つ。男性不審になったのもそう。私の過去の追憶の中から相手を探してしまうんじゃないか。カウンセラーさんに今の私が出会う人や世界の事、パートナーに対する不安について話した。

「めっちゃええやん!スゴイ!」カウンセラーさんは言った。凄く喜んでる。なんだかとにかく凄いのだそう。私が前回から変化した事がそんなに嬉しいんだ。シンガポールにいるからなのか、歓喜の言葉の中には英語も含まれていた。「よしみさん、じゃあパートナーの話、始めるね。まず、ちょっと質問させて!よしみさんにとって愛の定義って何?」「安心、安全、平和です!暴力を振るう、家庭が安まらない、喧嘩ばかり。そうゆうのはもう嫌です。」

「じゃあさ、その安心な人ってどんな?安全な人っていうのは?平和な人は?具体的に教えて。」パタリと私の言葉は止まった。うーん。どんな人だろう。安心、安全、平和。スローガンは決まってるのに、具体的な人間像が見えて来ない。高3から10年付き合った彼の顔だけが浮かんだ。

「私はね、自分が自由でいれて、相手も自由で入れる事。けど、一緒に居ない時間でも相手を愛おしく想える。これが私の愛の定義。これは人それぞれ違うものだから。宿題ね。とにかくいっぱい考えてトップ3を決めて。誰かとデートする時、ニュートラルに自分の気持ちをしっかり観察してみる。それでまた頃合いを見て話そう。よしみさんと話して、今日めちゃくちゃ興奮したよ。有難う!」

カウンセラーさんが無邪気に喜んでる姿が嬉しかった。カウンセラーさんのお陰で私は色々を見つけられているのに、カウンセラーさんが私を見て喜んで、それを見て私が喜んでる。可笑しい光景。母が子供の頃、原っぱで喜んではしゃぐ飼い犬のジョンによく言ってた。「ジョンー。そんなにぐるぐる回るとバターになっちゃうよ〜。」って。あの日の母やジョンやバターの事を思い出した。


9月23日

Journal 23.9,2021

急の暑さなのか、なんだか重い一日。今日は家で作業。色々がまた色々とガシガシと進んでる。なのに、今日は頭も身体も重い。参ったな。

午後から鎮座ドープネスさんの映像の編集。鎮さん、本当に可愛い。編集作業をしながら、可愛いを連呼。男って可愛いよなぁ。女の可愛いは表面的に覆われたものを指すけれど、男の可愛いは内面から溢れ出るような無邪気さ。危うく恋でもしそうになるくらいに可愛い。素敵な人だったな。

久しぶりに心の中に嫌な何かが滞ってる。ここ数日、ちょっと前から少しだけ感じてた事。大切だと思っていた友人、決して悪い人じゃない。だけど、心がざわつく。その理由を探すのは嫌だったけれど、何が嫌なのか言葉に出してみようと決めた。

何がどうしてどんな時に私は苦しい気持ちになったんだろう。シーンを回想して見ると、結婚してた時の私を見ているみたいだった。

いい友人が沢山いる。一緒にいて、楽しくなる友人、仕事の話が出来る友人、励まし合える友人、いつも新しい何かを教えてくれる友人、勇気をくれる友人。年齢は関係ない。年上でも年下でも大好きな友人が沢山いる。だけど、その友人の中には不幸が上手な子もいる。不幸っていうのは大なり小なり誰にも必ず起きる出来事。よくよく考えてみれば、不幸が上手な子は、不幸な顔が群を抜いて上手い。朝でも夜でもいつだって上手い。そんな友人を見て、そんな話を聞いて、まるで結婚してた時の自分を見ているようで苦しかったんだ。

答えがわかったらすごくスッキリした。それに、ずっと連絡の来ない友人の携帯電話の番号を消すことに決めた。彼女は私の離婚を支えてくれた友人。親友だと思ってた。だけど、彼女も元夫みたいに一番大変だった時期に消えた。離婚するまで彼女は必死で私を救おうとしてくれてた。どうしたら私達夫婦が離婚しないで済むのか。私が夫の事を愛してるならって。

今読んでる心理学の本で面白い内容を見つけた。まさに今の私に作動してるのは、本に書いてある脅威システムそのものだ。幸福な体験よりも脅威な体験を察知しやすいというのは生物的に生きる為の脳が身体を守る為に備わった脅威システムとなっている。だから、嫌な現実が起きれば、きちんと脅威システムが作動する。私にこの度発動していたのは、過去のトラウマの中にいる自分を今に見つけてしまった事だ。過去の私みたいに不幸な顔をした人を現実に発見して、全身で疼いた。首の後ろがぎゅーっとつままれたみたいに、喉の奥で悲しみをこらえた時みたいに、目の前で起こる恐怖に麻痺していく自分を無視していく瞬間に起こる全身の感覚が蘇える。起きた出来事を決して誰にも言えなかった過去の私は、不幸な顔をして沢山のサインを世の中に振りまいた。そんな以前の私を現実の中で見つけてしまった。友人の顔の中に。

だから、わかった。私にはシステムの一つとして生きる為に脅威システムが増えちゃった。だから、心身の健康の為にも不幸な顔が上手な友人とは離れる決意をしよう。システムが緩和されたら、またご飯でも食べに行ったらいい。これは私の問題。健康で安全で平和な生活を送る為のこと。

晩酌セット

Journal 18.9,2021

あっという間に今週も終わり。何だか今日は頭が爆発しそうに疲れてる。ワンプレートのご飯を見ると、どうしてもバイキングとかファミレスのお子様ランチを想起しちゃう。だからあまり好きじゃない。だけど、今夜はもうとにかくお皿を選ぶのもお皿を洗うのも嫌なくらい疲れてた。大皿に作り置きのおかずを盛りながら、もう後戻りはしないよと誓った。

今週は色々な事が進んだり決まったり進みそうだったり。来月から中央大学の先生の心理学の講義を受ける事となった。明日は何とMV風の撮影。なんてこった。そんなタイミングで藤原さんの紹介で会った映像会社の方に映像用のライトを貰ったのは水曜日。そういえば月曜日に思い立って髪をバッサリと切った。ロングヘアーに伸ばしていたけど、どうしてかな。気分はそこそこいい。昨年の私が聞いたらビックリ仰天すぎる色々が、何とか手の中に収まりながら進んでる。

離婚直後も何度も、いや何百回と思ったけれど、彼を病から救えなかった自分を責め続けた。そんな気持ちも忘れて秋の心地よい風を感じる様になると、今度は、ごめんねって思うようになった。今の私なら、病の知識を持った私なら彼の症状に何とか対処できたかもしれない。じゃあ、今の私ならどう対処しただろう。そんな意味の無い事を考え、止める事を繰り返してる。

私が苦しんだ色々を彼は今どう受け止めてるのか。彼は逃げるように家から消えたけれど、それは自分が悪い事をわかってたからだ。私が信じれば信じる程に、待ってると言えば言う程に、家庭に帰れなくなったんだと思う。多分、自分の身を守る為に私を裏切るしか無かったんだろう。そりゃ、私にとっては苦しい話だけど、彼も苦しんだ選択だ。そしてお金をくれる飲み友達やお酒の欲望も手伝って、捨てる方を選んだ。楽になりたくて離婚を選んだ。彼は逃げるのが得意なんじゃなくって、ズルをしたり、誰かを裏切る事で、彼の生きる道を繋げてきた。最良の選択が誰かにとって最悪なだけ。私が出会った時も、出会って数年経った時も、何度も誰かを裏切って前へ進むのを見てきた。

「大丈夫だよ。」
何度も言った。一杯言った。背中をさすって、怯える彼を温めて、「大丈夫だよ。一緒にやり直そう」って。

結婚は死ぬまで生涯を共にするパートナーを選び、同じ戸籍を持って、夫婦として楽しく家庭を育むものだから、私達は離婚して正解だった。今の私なら、あの彼とは結婚生活を送れない。法を犯す事も、道徳的な倫理感が欠如してる事も仕方ないよとは思えない。暴力とか人を騙すとか。やっぱり駄目だと思う。人を悲しませたり、傷つけたりもよくない。そんな結婚生活は楽しく無い。仕方ないよとは思わない。

「お願いだからやめて。」何百回と言った言葉を、彼は何百回と聞いて苦しんだろう。だから、今はごめんねって思う。悪い事をしていいって話じゃなくって、彼は彼なりに大変だったと思う。9月の頭に会ったのが最後。もう一年会ってない。たまに何処かで会いそうな気もする。だけど、もう多分、私達は二度と会わない。また誰かを裏切るんだろう。それが病の所為なのか、性格の所為なのか、答えはきっと両方で、そこはきっとただ寂しく見える。また、私の様な仕方ないと思う女が現れるんだろう。

私も本当に仕方の無い女だった。そこに愛はあったけど、愛を超えた場所にはもう残ってなかったな。砂漠みたいな場所で一人ポツンと座ってたと思う。

明日は早いからもう寝よう。私の人生なんて失敗だらけだし、失敗なんてお茶の子さいさい。それよりも、楽しい撮影だといいな。

晩酌セット
買ってきたイカの寿司
胡瓜のチリソース
竹輪と胡瓜のマヨ和え
鯵の南蛮漬
白茄子の煮浸し
ビーツのマリネ
納豆
すだち日本酒サワー

パンケーキと梅ジャム

Journal 15.9,2021

昨日は千葉の大原で撮影。特急列車で東京駅から1時間。途中、10年付き合った彼が住んでいた駅を通過したけど、まるで見知らぬ駅だった。今日は映像の大場さんも一緒。途中移動の車の中で、色々とお喋りをする。いつしか勝手にお兄ちゃんの様に慕ってる大場さん。今作ってる写真集の話を熱く話してる。前の私ならきっと胸がジリジリしたと思う。「私は今逃げてるから出来ないんですよ。」ぽろっと口から出た自分の言葉に驚いた。私の言葉に「僕は作品から逃げないんです。」って大場さんが言った。それは別に嫌味でも何でも無くって、大場さんは逃げない人だから。

夏に初めたカウンセリングを受けてから、ぎゅっと掴んで離さなかった手を離せる様になった。私が病に転落したきっかけが元夫だったとしても、彼の為にと私を全力で消耗させてきた事に全く気付けなかったのは私な訳で、もう二度とそんなことはしちゃいけないと思ってる。だから、今も作品から逃げ続けてる。同じページを開いたまま季節も変わった。気合いで乗り越えたらいい。負けたくない。やってやる。口癖の様に使ってきた掛け声を全て捨てた。それに、負けたくないっていう作品になるのも嫌だ。「これが出版したら、私は訴えられるかもしれないよ。」編集の山若くんに半分冗談、半分本気で言った言葉を撤回したい。結婚生活を作品にするって云うのはそういう事じゃない。決して男への復讐となる様なものにしたくない。だから、私は私を置いてけぼりにしちゃいけないって。苦しみを口に含んだまま吠えたら、熱くて痛々しいものが出てきちゃう。落ち着いて、私の声で話したい。

帰りの車で編集長の稲田さんと色々とお喋りした。稲田さんが出身の関西の話から、関西弁の話になった。他県から東京へ来て、大概の人は方言と標準語を使い分けるのに、関西弁を敢えて使う選択をする人の自己主張の強さと言葉の持つ強さへの策略を感じるよねって、だから、僕は標準語使いますって。何とも鋭い視点だなと思う話だった。私は80%策略にハマったタイプの人間だったから関西弁にもっていかれながら、その策略に薄々気づいていた20%の自分が歓喜した。そこからテレビでやってたドーパミンの話になって、その番組があまりに面白くて写メを撮ったんだとアイフォンで写真を見せてくれる。スワイプしてテレビ画面を大きくして見せてくれたけど、部屋にテレビがある風景の写真が見たいって思った。遠目に見えたその写真は、何だかすごく良かった。

生活の節々、当たり前の至るところにその人が写るのも写真な気がしてる。写真の中身をじっくり観察したいわけじゃなくて、そこに目を向ける眼差しにその人の愛らしさの匂いみたいなものを感じる。だから、いい。写真の見方は十人十色であると思うけれど、やっぱりいい匂いのする写真が好きだなって。

今日もすごく楽しかった。お昼に食べたイワシフライもすごく美味しかった。

パンケーキと梅ジャム [チベットで体調を崩したときに永遠に食べていた食事]
小麦粉
豆乳

パルメザンチーズ
リンゴ
梅ジャム

夕飯

Journal 05.9,2021

久しぶりに普通の朝を過ごした。寝起きでぼんやりしたままテコとベッドで遊んで、瞑想をして、ヨガをして、白湯を飲んで、英語日記を書いて、添削してくれる外人の子に “Thank you.”ってメッセージを送る。テコにご飯をあげて、私の朝食の準備をする。今日は雨が降ってるからベランダの徘徊はなし。天気がいい朝はベランダを徘徊して、歯磨きをしながら、ベンチに座ってぼーっとする。ただ、ぼーっと歯を磨くだけの朝の時間。

もう9月だなんて信じられない。何だか先月からクラゲみたいな感じ。スルスルとしていて、透明。中身は臓器とか血とか重要なものしかない感じ。空いてる場所はただただ透明で透けてるという場所。そんなクラゲ状態の私が富山へ行ってさらにスケルトンになった。

一昨日、テコを引き取りに実家へ戻った時、不安から解放される場所っていう感覚が、逆に過去の色々を引き戻すようで少しそわそわした。幾つかの恐ろしい日の何かがざわざわと心に蘇っていく。ああ、あの日の夫からの電話は怖くて堪らなかったな。言葉が出なくて、「うん。」としか言えなくて、あの電話を出たのはリビングのドアの前で夏なのに身体の中を冷たい何かが走っていったなとか。全身が憶えてる詳細な記憶が鮮明に再来。だけど、数時間前には別の感覚を思い出してた。病じゃない夫との普通の生活の事。私達が普通の夫婦だった記憶。ありふれたどこにでもある様な普通の日常を夫と妻として過ごしていた日の事。駅前で待ち合わせて夕飯を食べて帰るとか、休みの日に買い物へ行くとか、近所にコーヒーを飲みに行くとか、電気屋で家電を選ぶとか、帰ったら「おかえり」って言い、朝に家を出るときは「行ってらっしゃい」って言うとか。もう私の頭は混乱しないで、端まで綺麗に整理がついてる。だから、前の様に苦しんだりはしないけれど、夫の中に何人もの誰かがいた様に、私の中にも複数の私がはっきりとした形で存在する様になった気がしてる。そして、それはあの男とは違って、綺麗にコントロールできる。だから、もう病や音楽の所為にして悪事を働く男を助ける様な女にはならない。その代わりなのか、私はスケルトンになってるように思う。東京の我が家へ帰っても思った。私、透け透けじゃんって。

明日は後藤さん家に行くから晩酌はお休み。数ヶ月かけて作ったという新居、楽しみだな。ああ、あれもこれもと、朝からスローペースで色々を片付けてあっという間に昼。納品物の色見本用のプリントをポストへ出しに行って、そのまま皮膚科へ。帰宅したら夜。あーあ、もう夜か。今日は皮膚科のお姉さんご機嫌だったな。

透け透けの私だってご機嫌だ。明日の晩酌を待望しながら夕飯をご機嫌で作る。もし、一昨日の様に暗黒時代の事を思い出しても、それは暗黒時代っていうタイトルの一つのストーリーだから、私の本棚に仕舞えばいいだけ。今の私は透け透けだから、私の中には置けない。

夕飯
富山県氷見のバナーヌという最高に美味しいイチジク
とうもろこしご飯
下仁田ネギとビーツの葉っぱ入り豚汁
ビーツのソテー
モロヘイヤのおひたし
ぬか漬け


晩酌

Journal 28.8,2021

今日は料理の撮影。予定が入った時からずっとずっと楽しみだった。憧れの料理家の先生。朝、家を出る前に先生の本を読んだ。この本、いい本だよなぁ。しみじみ。あ、先生のマスタードにはナンプラーが入ってる。今夜帰ったら、うちのマスタードにもナンプラーを入れてみよう

駅で待ち合わせをしたライターさんとタクシーに乗った。「ご自宅の料理を撮ってる感じ、よしみさんっぽい感じでって野村さんが言ってました。」編集の野村さんは体調不良で現場はお休み。すごく嬉しかった。嬉しい言葉だった。今日は二品の撮影。途中で先生を撮ったり、料理過程を撮ったり。憧れの料理家の先生の料理はやっぱりとても素敵だった。スタイリストさんのスタイリングも可愛かった。

私は期待に応えようとする癖がある。仕事にとって必要な事だけど、その比重が下手くそになる事が多い。頑張ろうと力むと、自分をがっちりと折りたたみ、それを踏み台にしてより高い場所へ登ろうとしてしまう。だけど、もうそういうのはやめる事にした。それに、私の行き先も変わったから。それよりも、私らしい写真を撮ろう。もし、それで仕事が来なくなったらそれはそれ。それが世の流れって事。最近、撮影に出る前にいつも自分に言い聞かせてる。そして今朝も。だから、タクシーの中での言葉が私の背中を押してくれた様に思った。

「俺を自由にさせろや。」何十回、何百回と夫だった男が家で喚く声を聞いた。あの時、私はその光景に慣れきって、またかと呆然と見てたけれど、男を不自由にしていたのはいつも男自身だった。何も期待もしなければ、何も言わない私に向かって怒り狂っていた。

ああ、今日はとっても楽しかった。明日はワクチン2回目。もし高熱で倒れてもいい様に、沢山作り置きを作った。

晩酌セット
ごはん
レンコンの自家製マスタード和え
カツオの醤油麹漬
小松菜のナムル
めかぶ納豆
きくらげの酢漬け
トマトとアボガドの塩麹和え


[ 自家製マスタード ]
蜂蜜

ナンプラー
マスタードシード

8月26日

Journal 26.8,2021

撮影現場に着いたら生理が来た。今回の生理は音も無くやってきた。ノーPMS。それともこれは嘘生理??湖くらい私の心は静かだ。帰りに少しだけお腹が重い様な感じになったけれど、心身共にフラット。

今日は編集は瞳ちゃんで、ヘアメイクは近所のみっちゃん。帰りは渋谷駅から家の側の交差点までみっちゃんとタクシーで帰った。気持ちがいい撮影だったな。いっぱい笑っていっぱい撮った。帰りに食べたミスドも美味しかった。山に囲まれた場所での撮影、陽に焼けたくないと日焼け止めを塗ったくって、緑を通り抜ける風がとても気持ちよくて、はしゃいで撮った。

最近は撮影は毎日やらない様にしてる。一日働いたら、一日休む。そうするとすっごく調子がいいから。昔みたいに、週5、6日と朝から何本も撮影して、いつしかお金が沢山入るゲームみたいにな感覚になってしまう私よりも、一つ一つに感想文を書けるくらいの出来事にしたいって思ってる。だから、人に何て言われようが、見られようが、私はお仕事ゴリゴリのフォトグラファーにならないでいい。だから、もうそんなに働かない。

けど、明日に限っては例外。今日撮影だけど、明日も撮影を入れた。いつかご一緒してみたいと思ってた料理家の先生の撮影。すごく楽しみ。そしてちょっとドキドキしてる。だけど、私が緊張すると何もいい事が無いから、忘れて寝る事にしよう。

Journal 26.8,2021

昨日買ったやちむんで丼にした。


ご飯
胡瓜の酢豚風
ぬか漬け
シシトウの梅味噌和え
ゴーヤチャンプル
しらすとしめじの梅じ
そ和え

フレンチトースト

Journal 26.8,2021

昨晩に面白いなぁと思いながら寝た。朝起きてもやっぱり面白いなぁって思った。企画でやってるマッチング。とある男が「お姉さんは、寂しそう。」と、話の途中に送ってきた。私はその時に鼻歌を歌いながら、ご機嫌で風呂に浸かろうとしていた時だった。彼の名前はひつみ。それは本名かと尋ねると、「秘密なの。」と返答。33歳。幡ヶ谷在住。映像制作。自分の性格を自然体と言っていたけれど、名前を隠すような行動は自然じゃ無いから「不自然だね。」と返信した。

人って面白い。離婚っていう情報を元に寂しそうな女を見つけて、寂しいねを共有したそうなひつみと名乗る男。人は人である以上、脳の中に二人の人間を移植するなんて倫理に反した事をしない限り、一生誰かの気持ちを真に理解することが出来ない。だから付き合ったり、結婚したりと、くっつく契約をするのかもしれないけど、バツイチでシングルライフ真っ只中の私は今、とっても楽しい。それに、過去に起きた離婚のトラウマと私の現実世界のそれは別次元で、別問題だ。これから来る明日にだって寂しさは今の所想像出来ない。あるのは過去にだけ。

少し前に、姉がいつもの様に「私は必ず幸せになる。お金持ちになるように毎朝アファメーションしてる。」と、スピリチュアルな話をしていた時、「姉がハッピーでいてくれることが私は一番だけど、私はそうゆうのは。」って言うと、姉は少し拗ねて「よしみは直ぐに科学的な証拠みたいなものを言うよね。」って私を馬鹿にした。宇宙人も神様も占いも何かも、人の創造する物が実際に手に捉えられない形で存在してもいいと思ってるけれど、そういった類の思考で生きようとは思わない。時々食べるケーキくらいの嗜好品でいい。サンタクロースぐらいの夢でもいい。それより、ある日に不自然な男が「あなたは寂しそうだ。」と声をかけてくる現実を覗く方がよっぽど世界へ近づけた気がする。

目の前にある出来事が自分の目を通して見ている事を忘れると世界は簡単に歪んでいく。ひつみっていう不自然な男の様に。だけど、それさえ忘れなければ、どこまでも穏やかだ。結婚生活が幸せだと信じ切っていた頃の私に離婚した友人らが「よしみちゃん。離婚して寂しいとか無いよ。とても今が楽しいよ。」と言う言葉に、彼女達の虚勢を感じてるようで一人勝手に虚しい気持ちになった。だけど、私も彼女達と同じ場所から世界を見て初めてわかった。虚しいのは夫がいても感じてしまう寂しい私の心そのものだった。世界が優しくなるのは世界を寂しくしているのは私。寂しさが住み着くのは状況じゃ無い。その人の中に在る。

夜、撮影が終わって、そのまま撮影先のお宅で食事をご馳走となった。食卓って本当にいい。二人家族の夫婦の暮らしは生活を楽しんでいる感じが部屋中の至るところにあって、壁でも棚でも二人で何年も紡いできた人生が編み込まれたような家だった。やっぱり人が人と暮らすって事が私はとても好きだなぁって。帰宅したのは23時前。ワインを飲んだり、じゃばら酒を呑んだり、初めてお会いした夫婦とのお喋りは尽きなかった。人は人が好きな生き物。私とあなたはどんなに近づいてもわからないものだから、人を大切にしようと試みたい。家族は助け合うものだと信じてきたけれど、勿論そうだとも思うけれど、それだけじゃ無い。大切にする物だよなぁって全身でじんわりと感じた。人っていい生き物。

ワインと晩酌

Journal 22.8,2021

朝から色々と作業や仕事。すっかり週末まで溜め込んでしまった。けど、結構いいと思ってる。これもカウンセリングのお陰であり、しっかりと効果が出ているって事。私が私をコントロールし過ぎてしまう事を制御するっていう取り組み。15時を過ぎる頃には色々が終わった。あー疲れた。夕方に藤原さんが来るからワインを買いに行こう。

藤原さんはグラフィックデザイナー。埼玉の安置所に石井ちゃんにお別れを言いに行った時に出会って仲良くなった。今年の春の話。それから、こないだは一緒に仕事をして、最近は私の新しい仕事の相談もしてる。歳も近いし、優しくて賢いところが好き。そして、仕事への姿勢が好き。今日は色々な話をしたけど、中でも仏教の話で盛り上がった。私はめっきり脳と心に夢中な日々を送ってるけれど、マインドフルネスと仏教はとても近い場所にある。私の興味も藤原さん興味も全開だった。あっという間に開けたワインの代わりにホット麦茶を啜りながら、しばらく仏教の話は続いた。

それから、共通の知人。村上美術のゆうや君の話しになって、彼が天才だって話でまた盛りあがった。友人を褒め称えるって楽しい。今頃、何も知らないゆうや君はただただ日曜日の夜を家族で過ごしているんだろう。

楽しい夜だったな。今夜の月は明るい。満月なのかな。すごく綺麗だった。

晩酌セット
トマトと蛸とへべすの塩麹和え
山椒の塩漬け
素揚げした茄子にかかんのよだれ鷄のタレをかけて
お土産のSMLのXO醬
ロゼ

晩酌

Journal 21.8,2021

今日は久しぶりに外食。近所でシミルさんとランチをした。そして、お茶をして帰宅。色々な話を永遠にダラダラと話してた。何かの話で、「背が低い男性は怒りっぽい人が多い傾向にあるらしいよ。小型犬もそうでしょ。」ってシミルさんが言った。私が昨日考えていた事と同じような話だ。動物倫理学の話と神戸の事件、そして元夫の動物虐待の事を簡単に話した。シミルさんとは何でも気兼ねなく話せる。

今読み進めながら勉強してるコンパッションの本、今日はセルフコンパッション式の日記を書くというエクササイズだった。セルフコンパッション式というのは、3つの要点がある。1つにマインドフルネス。これは瞑想と同じ、「今、ここ」に意識して書く。2つ目に自分の問題と世界の共通点を記す事。これは問題が誰しもに起こりうる事だと視野を広げ共通認識、問題の解放を意味してるんだと思う。3つ目は、慈悲。客観的に自分を慰める言葉を丁寧な言葉で書く。

今日から一週間のエクササイズ。再来週にはきっと何か新しい事を感じてる筈。カウンセリングのエクササイズもそうだけど、脳のトレーニングは身体のトレーニングと全く同じ。毎日の積み重ねで確実に体力がついていく。

シミルさんとも話してたけれど、「新しい事がしたい。」よねって。土とか風の時代っていう表現はそんなに好きでは無いけれど、今までは根をしっかりと張りぐっと食いしばってとにかく守る事で必死だったのに、今はどれだけ力を抜いて、手放せなかったものをどれだけ捨てられるか、例えば、「写真の仕事は大好きだけれど、他にもやりたい事があって。」そんなことも、お茶をしながら話せるくらいに、軽い世界になった。

晩酌セット
胡瓜の糠漬け
サーモンと熟れたトマトの塩麹和え
ズッキーニと胡瓜とネギのソテー
めかぶ納豆
胡瓜坦々飯

8月20日

Journal 20.8,2021

今日やっと動物倫理学の本を読み終えた。意気揚々と読み始めて、途中、少し涙を流したりしながら進んだものの、宗教と動物っていうテーマの所に数日時間がかかって、今日こそ無理だと決めた。そして、さっとワープ。気持ちよく着地出来る所を見つけて読み始め、読み終えた。宗教の所はキリスト教と仏教に照らし合わせて解釈を行なっていく所だけど、キリスト教も仏教もさほど理解が無いからちんぷんかんぷんだったんだと思う。だから、そもそも読まなくて良かった。

最後の方でおかしな事が書いてあった。「動物に優しい人は人にも優しい。その逆も然りで、人に優しい人は動物にも優しい。」散々、何百頁に渡って真面目な話をしてきた所で最後にこんな言葉を見て拍子抜けした。そこに極端な事例として、神戸連続児童殺傷事件の容疑者が動物虐待していた事が記されていた。けど、。幾つか私の知ってる経験を思い返したらその通りかも。私の知っている男がよくテコにしていた事は間違いなく虐待だった。テコが吠えると大声で「煩い!」と叫び、思いっきりに床に踵を落としてガタンともの凄い音を立ててテコを怖がらせた。テコはその突然の衝撃に尻尾を股の間に挟んでサッと後ずさりする。お酒が入り暴れた延長で叩いたり吹っ飛ばした事よりもずっと違和感のある光景だった。けれどいつしか日常にそれは溶けていった。

「ぶっ殺すぞ。」男の大声と共に思いっきりに放たれた拳は私の顔の直前でピタリと止まる事を私は覚えた。頭を叩かれることがあっても、首を締められる事はあっても、顔は絶対に殴らない。彼がそうするには理由があった。テコと同じ。「どうしてお酒をまた呑んだの?」「どうして嘘をつくの?」と、私が彼に吠えたから。動物でも人間でも、自分を守る為に相手を黙らせる術として強烈な方法で威嚇する。これが彼の理由と行動。そして、それは8年間、家の中だけ。私とテコにしかやらなかった。身体よりも胸が痛い事の方がずっと多い日々が続くと、いつしかその痛みは痣が出来るよりずっと早くに消えた。

「彼と私が一緒にいなくなったら、彼は大変になるね。」と言った人がいたけど、現実は違う。彼はそんなに馬鹿じゃない。それに、あの病はそんなにシンプルでもない。もし咎められる日が来るとしたら、お金の事とか、彼の苦手とする所なんじゃないかなって思う。彼が心を許した人だけが知れる彼の本心は絶対に世界には見せない。

神戸の事件の詳細をどうしてか無性に知りたくなってネットで調べた。こういう気持ちって何て表現したらいいんだろう。全くわからないけれど、私が見てきた異様な光景と少しだけ近い場所にある気がした。

脳科学者の人の話で、自分は気づいているのに、あの人は気づかなくて、不快な思いをする事ってありますよね?動物に例えるなら紫外線。人間は見えないんですよね。けど、蝶は見えるんです。脳の感覚機能は現実に起こってる事を全て見せてくれているわけじゃないんです。ほんの一部に過ぎないんですよって話だった。前と今は同じ世界なのに、気づけば真っ白で美しかった筈の壁がポロポロとペンキが剥がれ落ちてくるみたいに、何かがどんどんと見えてくる。それは彼の事だけじゃなくて、色々。そして、その先を見たいっていう欲求も少しずつ膨らんでいく。

ゴーヤの天ぷら

Journal 18.8,2021

あそこのラーメン屋さん行ったな。あそこの、。だけど、誰と行ったんだろう。あ、。けど、本当にそうかな。隣にいた誰かが全く思い出せない。そんな事がここ数日続いた。今日も。けど、どう考えても元夫しかいない。私の記憶が彼を透明に塗り潰している感じがした。存在は感じてるのに見えない。

私が私の記憶を消そうとしてるみたい。多分、ここ数日また夢に出てきてるからかな。とにかく、一刻も早くこの世から消えて欲しい。恐怖だけじゃなくて、それ以外の全て8年間の全て要らない。何一つとして彼に関わることは要らない。本当に要らない。今日も病院で間違えて記載しそうになった。未だに過去のアイデンティティ、彼の苗字になった私や、私達の新しい戸籍となった住所の記憶が、当たり前のように現れる。綺麗にコーティングされたチョコレートから溶けたバニラが出てくるみたいに堂々と。

母が「ゴーヤを天ぷらにして。」って、何度も電話してくるから強制的に今夜はゴーヤの天ぷらとなった。なるほどねって唸りながら食べる。今日も安心で安全で平和な1日だった。それに、乳がん検診も子宮内エコーも検査結果は良好。最近、生理の周期が遅れてたし、胸の脇の鈍痛が気になってた。まさかって。先生に昨年6kg急激に痩せて生理が止まった事、それから大きなストレスがかかった事も話すと「それですね。胸も子宮も今日みた限りだと大丈夫ですよ。」って。不安っていうのは、一瞬にしておさらば出来る。

ゴーヤの天ぷら
ゴーヤ
地粉

北海道のお土産の昆布塩

8月16日

Journal 16.8,2021

今日は料理家さんのアトリエで撮影だった。長時間の撮影は久しぶり。何度もお邪魔してるこのアトリエも、先生もとても大好き。1日中雨が降っていた暗い部屋の中で、キッチンだけが煌々と光ってる。先生やアシスタントさんが機敏に動く様をスポットライトがずっと照らしてる。いつも思う。何度も見たこの光景、本当に好き。すごく綺麗。

帰り道、お腹は平和だったけれど、全力でクタクタだった。機材がずしりと重い。だけど、何故だか気分がいい。不思議な感覚だな。前の私なら夜までかかる撮影がストレスだった。ソワソワと落ち着きがなくなって、時には苛々したりして、押し迫る時間に全身が圧迫された。帰宅後の家事が痺れを切らしてる事も分かっていたし、鳴り止まない電話があったならば、撮影が終わると共に飛んで帰った。だけど、それが今日は無い。心は朝と同じくらいピンピンしてるし、撮影も最後の時まで、ただただ楽しかった。編集さんとの帰り道、このままお喋り続けたいなって思ったくらい。何だろうこの感覚。

夕飯は残り物のおかずを食べた。写真は撮るのを忘れた。お風呂で汗を流して、ビールを呑んで、ご機嫌でベッドに潜る。テコがベッドの上で楽しそうに飛び跳ねてる。明日は寝坊しよう!この感覚、最高。

夕飯

Journal 14.8,2021

午前11時。今日も30分のカウンセリング。外はずっと雨が降ってる。涼しくて気持ちがいい日。始まって直ぐにカウンセラーさんが言った。

「前のような無力感、後悔、悔しい感情、前回が10として、今はどれくらいに感じますか?」

質問を聞いて少し驚いた。前回のカウンセリングから2週間。たったの2週間で私の感情が大きく変わっていた。2週間前に苦しんでいた何かが今は無い。

「今は違う感覚です。そういう表現では無いかもしれません。」

アドバイスと共に心理学の本でコンパッションを学ぶようになった事も大きくあった。その事も伝えると、カウンセラーさんはとても驚き、喜んでいた。

「今の事を例えるなら、水の深さがわかったら怖くなくなった。そんな感じです。」

今でも十分に哀しみは全身に浸透してる。皮膚の全てに張り付いてるみたいに、もうここからは居なくならないんだろうなぁとも思う。だけど、水の深さがわかったら泳ぐのが怖くなくなった。足元に広がる見えなかった不安や恐怖がなくなると、例え皮膚に纏わりつく哀しみがあったとしても、この身体は十分に健康であり、私は思いっきりに腕を伸ばして泳げる事がわかった。「なんだ、私、すいすいと泳げるじゃん。」その、すいすいが、伸ばした腕に当たる水が、私がどうゆう形だったのかを気づかせてくれる。内側から破壊された色々があっても、クッキーの型取りみたいにポンって。そうこうしているうちに、毎日が温かい何かで満ちていた。

思い出のあるジュエリーを全て処分したら、私からはアクセサリーが殆ど消えた。大好きだったゴールドのジュエリー。思い出が沢山詰まった大切なジュエリー。本当はゴールドが好きだけど、この1年で何となく買ったシルバーのジュエリーが幾つかあった。先日に母からゴールドのネックレスが送られてきた。ペンダントヘッドには、母が昔から大事にしていた向日葵の絵柄のコインをあげるからと連絡が来た。洗面所で歯を磨く度に、クローゼットの前で洋服を着替える度に、鏡の中の私の首にかかったゴールドのネックレスが見える。失った何かがまた戻ってきたみたいに感じる。それは元夫ではなく、私自身の何か。

あの男は、悪い人だから返って来なくていい。私の中の気持ちが少しずつ輪郭をなしてきた。「返って来て。」叶うことの無い願いはいつしか消えていった。

夜の19時、編集の成田さんと、リリさんがやってきた。今日はリリさんの就職祝いを兼ねたご飯会。成田さんはお花を、私はスパークリングを準備。ご飯も色々と準備した。

他愛もない話から、真面目な話や恋の話、今日も沢山話した。二人との会話は尽きないし、心地がいい。安心してずっと一緒にいたくなる。12時を過ぎた頃、リリさんが発作を起こした様に泣き出して、あっという間に終電も終わった。何か言おうかなと思ったけれど、やめた。泣きたい時はいっぱい泣いた方がいい。そこにはきっと答えなんてものは無くて、哀しいから泣いてるだけ。それで十分だと思う。ああ、今夜も楽しくて飲みすぎた。肌寒い夜。とても気持ちがいい夜。

夕飯
春巻き二種、ツナと紫蘇ジェノベーゼ、エビと禰宜
茄子のナンプラー揚げ浸し
よだれ鶏
新生姜と味噌
鶏出汁の炊き込みごはん
胡瓜とニラの塩麹漬
ニラの大蒜醤油漬
山椒の塩漬
鰹節の甘めに炊いたふりかけ
お土産の蔵王チーズ

ワイン沢山

8月11日

Journal 11.8,2021

今日は料理家の先生のアトリエで撮影だった。天気予報の晴れマークは真っ赤に燃えてた。息をするのも苦しいくらいに暑い日。4連載分の撮影を一気に終わらせる。時間よりも3時間も早く撮影は終わった。

今日も先生は調理器具の話を嬉しそうに話してた。料理も料理道具も大好きだって事がいつも溢れてる。私はこの先生の事が本当に大好き。母よりはずっと若いけれど、私よりはずっと年上の女性。この撮影が終わってしまうのが寂しいくらい。家に帰ってからもADのシミルさんと今日も先生素敵だったねってメッセージした。

写真の仕事は楽しい。前は嫌に思う事も時々あったけど、今は嫌な事一つだって無い。現場で会う人も、仕事も、全部が楽しい。今日も本当に楽しかった。ありがとうございました。お疲れさまでした。

ワイン

Journal 07.8,2021

今日は何もしない日。今週のカウンセリングはやらないで、来週に予約する事にした。それまでに、何もしない日がどう楽しめたのか、カウンセラーさんと話すのが楽しみ。色々とある問題について苦しい時が大半だけど、知らない事を知るきっかけになってるし、本を開いて納得して閉じたら忘れるような事も体感したお陰で熟知してくように思う。

東京のどこかの本屋で見た遠いい国の美しい山。実際に行ったら、高山病は酷いし、乾燥で肌はカサカサで、合わない食べ物にお腹は下すし最悪だった。急性胃腸炎か何かで高熱が出て、水分しか取れない日が続いたある日、不意に窓から見たあの美しい山が当たり前の様に目の前にある。薄い空気の中で見たあの山は東京で写真で見るそれとは全く違かった。多分、私達の想像は頭の中に収まってる程度のもので、現実というのはそんなもんじゃない。美しい事も恐ろしい事も、想像を遥かに超えた場所にあった。別に私は本の中だけで満足な筈だったけれど、自ら飛行機へ乗って僻地へ旅立つ事を選んだのは私自身だ。きっと、あの全ても同じ様な事かもしれないなって思った。とりあえず、生きてる。これがいつもと変わらない答え。

今日も寂しいけど、楽しい。この街に引っ越した話をすると、美味しいワインを売ってるイタリアン食材店の話を友人達から幾度となく聞いた。一人でボトルを買うのもなぁと思ってるうちに数ヶ月。何もしない日は、胸がときめく事をする日でもある。ぷらぷらと近所を散歩して、ワインを一本買って帰った。キンキンに冷えたのを店員さんが出してくれた。蜂蜜風味のワインだそう。ワインもそうだけど、一番にときめいたのはガラス栓。夏っぽくて素敵。ときめき一杯で三時のおやつにワインを飲んだ。

夕飯

Journal 07.8,2021

ワクチン、ドキドキしてたけど、ちょっと夕方に頭痛が始まったくらいで大丈夫だった。自分が酷かったからと心配してくれた友人が冷えピタをくれたけど使わずに済んだ。

何だか今日は一日中お腹が空く。こんな日はご飯と味噌汁のスタンダードご飯が気分。マグロをバジルと青唐のジェノベーゼで和えて、錦糸卵と一緒に丼にした。絶対に美味しいやつだ。

マグロをひと口。美味しい〜。口の中一杯に広がるバジルと後からやってくる青唐のピリッとする爽快感をスローモーションで堪能。幸せだな。美味しいって本当に幸せ。それに、作りたてのおかずが並んでるっていうのも最高に幸せ。

夕飯
マグロのバジルと青唐辛子ソース和え
錦糸卵に、ご飯
小松菜の味噌汁
人参しりしり
パプリカのカレーピクルス
胡瓜としらすの和え物

8月1日

Journal 02.8,2021

午前はデスクワークをして、午後は友人の紹介で料理関係のデザイン会社の方に会って写真を見てもらった。夕方は三茶で藤原さんと打ち合わせとお喋り。ゆうや君も誘ったけど来なかった。「多分、あの人、武術行ってるんだろうね。」って、二人して笑った。

仕事の話をちょっと相談して、藤原さんの彼氏の話を聞いた。「彼とどれくらいなの?」「どこで出会ったの?」こないだ私も一緒に仕事をした阿部さんの紹介なんだそう。安倍さんの行きつけの珈琲屋さんの男の子。そんな話って現実にあるのか。何て素敵な話なんだろう。

「私、昔は突撃タイプだったんですけど、彼とは本当、少しずつだったんですよ。」

少しずつ?!どうやって手を繋ぐの?とか、どうやって男女の関係になるの?とか、何でもかんでも子供みたいに疑問を投げかけた。最近、頭の隅で考えてた不安や疑問。もう、恋は出来ないんじゃないかって。夜中に電車に飛び乗って会いに行くとか、戻ってこないメールに一喜一憂するとか、今日が明日が何であろうと好きが一番の恋愛至上主義だった過去の私は胸のトキメキを何よりも最優先にして生きてた。32歳で元夫と出会ったのが最後。あれから長い間、恋はお休みしてると思ってたけど、何だか本当にそうなのかなぁという気持ちもあった。だって、「今から会いに行きたい!」って深夜にメールがあっても、今の私なら断る。だって寝たいもの。それに、朝から晩まで電話やLINEが鳴っても、いちいち喜ばない。そっと通知オフにすると思う。

20代の後半で10年お付き合いした方との家を出てから、パッと恋をして別れてを何度か繰り返して、とても健やかな恋愛体験を謳歌した。長い恋愛も短いそれも、情熱的でとにかく翻弄されてしまうあの体験が私の中では恋の黄金時代かの様に勘違いしてるのは、新しい場所への不安な気もした。いつだって、新しい明日は怖い。中学校に上がる時のドキドキ感と不安感の不安な方だと思う。きっと。

だから、藤原さんの徐々に近づいていったという恋愛。私もちょっとやってみたくなった。確実に完全に、若い頃の私とは見てくれだけじゃなくって、中身もすっかりと変わった。だから、今の私に合った恋愛の仕方があってもおかしく無い。

ポテトフライ

Journal 30.7,2021

昨日、パリのマユミちゃんから手紙が来てた。ポストを開けると、真っ赤な封筒。あの瞬間が堪らない。嬉しくって部屋に帰るまでに何度も封筒を見る。ああ早く読みたい!

手紙には、パリでの生活が毎日が楽しい。この街の人が好きだって書いてあった。パリの人と日本の人は全然違う。よくそういう話を教えてくれる。私は日本が好きだからここに住んでるけれど、まゆみちゃんのお陰でパリの人がどんどん好きになっていく。会社の役員は男女平等にいるとか、道で転んだらあっという間に若い人もおじいちゃんも助けてに来てくれるとか。同じ時間を同じ人間が生きてるのに、世界っていう場所は本当に面白いなぁって思う。

私達文通の面白いことの一つに、書き言葉に限り、同じ名前で呼び合ってる。よくチャットでふざけるのだけど、それが気づけば名前になった。だから、いつも一人称で会話してるような感じ。「ちゃみへ。ちゃみ、元気?ちゃみより」こんな具合に同じ名前の人間がパリと東京で会話してる。離婚した時に思った事の一つに、名前が変わる事からのアイデンティティの崩壊があった。そして、この世に名前があることを呪った。みんな同じ名前でいいじゃん。みんな鈴木か木村でいいじゃん。何なら、下の名前すら要らない。もう誰なんだか検討つかない私に付けられた宙ぶらりんとなった名前。だからというか、一人称は一緒に包容されてるようで、そして相手への愛着がまるで自分の事のようにも聞こえて嬉しくなる。まるで家族になったみたいに。だから、そもそも何かを分断する名前なんて大して必要じゃ無い気がしてる。

今日はやたらと「私は今日は仕事で、」とか、「最近、ぼくは忙しくって」とか、「私は一人で頑張ってきたから、」とか、要件をさっと言えば良いのに、枕詞にアテンションを付けてくるメッセージが多かった。 “私って人は頑張ってるんだよ!”って、私に主張されてもなぁと、面倒な気分になる。私に言ったらお菓子の一つでも出てくると思っているのかな。

個性ってもう産まれちゃった時点で有ると思う。だから、敢えて自分はこうなの!って訴えて来なくても、みんな違うし、みんな頑張っているし、みんな大変だし、あなたも大変だろうけど、私も大変。いつも仕事の話を枕詞に付けてくる子に限って、ひつこく競争したく無いって言う。すごく自分を守りたいんだろうなって思う。

だからさ、やっぱりみんな同じ名前になればいいのに。そしたら、あの面倒な枕詞メッセージはこの世から消えるだろうし、彼らの不安も失くなるんじゃないかな。みんな同じって思えば、怒りも不安も最小限。それよりも、楽しい話をしようよ。

7月23日

Journal 23.7,2021

夕方、長野のカナちゃんからダンボール一杯の野菜が届いた。嬉しい。嬉しくて、ちょっと泣いた。嬉しい。昨日もだけど、何だか誰かの優しさに生かされてるって感じる。嬉しい、ありがとう。

早々にベッドに入ると、うとうとしてた。パッと目が覚める。完全に夢の中でフラッシュバッグした。心臓がバクバクして、あの日なのかいつなのか今日だけど時空の狭間みたいになる。携帯の着信が鳴った。どうしよう。慌てて、携帯を開いても着信履歴がない。もしかして。助けなきゃ。

慌てて姉に電話した。ヤバイ。お願いだから出て。頭がパニックになって携帯を上手に操作できない。次の行動にうつりたいのにアプリがどこにあるのか全くわからない。落ち着こう。キッチンに行って水を飲もう。

“グーグルで着信音鳴るけど、履歴がない。” を調べる。うん、携帯の誤作動だよね。次にフラッシュバッグと一瞬、パニックになったのは、昨日までの22日までの緊張感が理由だろう。怖いことは一つもない。全部、一人劇場だよ。姉から電話が鳴った。「どうした?」話をすると、笑ってた。大丈夫。何も怖い事はないよって。「それに、私もニコが死んだ時は誰も居ない家で誰かに大声で叫んでてさ、今思うと完全にありゃ病院行きだね。確実に。」二人でキャーキャー言って笑った。ただ、感情が哀しみや恐怖にコントロールされてるだけ。それだけだよねって。

私、いまだに自分が犠牲になってでも、あの男を助けようとする思考が残ってる。電話が鳴った瞬間「何とかしなきゃ。」と、咄嗟に思った。なんて事だろう。22日は昨日に終わった、一年前の22日も終わった。もう、大丈夫。心臓をバクバクさせる理由なんて、怖い事だって現実には一つも無い。

翌朝、姉からLINE. 英語で書いてあった。訳すと、来年の今日はもう昨日みたいな日は来ない。あなたに違う生活がある事を私はわかってるから。って。

朝食

Journal 18.7,2021

今日は何となく朝からお米の気分。炊きたての米に、糠漬けとメカブと酢煮卵に赤紫蘇の塩漬け。冷蔵庫に入ってる色々を並べる。昼は久しぶりの外食。

7月11日

Journal 11.7,2021

朝起きると、お酒も昨晩の余韻も残ってた。身体は二日酔いでグッタリと重いけれど、楽しい時間を思い出すと浮き立ってしまうような感じも半分。今日は写真家の広瀬さんと蓮井さんの展示を見に行く約束をしていた。明大前の駅前で待ち合わせ。昨年に広瀬さんは難病を患った。その時に私は心を患ってた。あの一年はお互いに連絡は全く取って無かったと思う。今の場所に引っ越して、身体も心もすっかりと元気になった頃に連絡を取り合う様になった。「元気そうじゃん。」「元気そうですね!」出会って直ぐに同じ様な言葉を掛け合ったと思う。

元気そうだけど、全然違う雰囲気だった。同じだけど違う。きっと私もそうなんじゃないかなって思った。とりあえず、お互いに帰還。生きてここにいる。

色々とお喋りして展示を見に行って、そこで蓮井さんも交えてお喋り。蓮井さんは彗星の如くイギリスから帰国し、若くして一線で活躍された写真家。海外で得た経験が良くも悪くも自分の人生を左右したみたいな話をしてた。私の師匠の様な静かな雰囲気を勝手に想像してたけど、全く違かった。後に広瀬さんに伝えた言葉で言えば、良質なイカれてる素敵な人。とても魅力的な人だった。動きはクラゲみたいでまたそれも魅力の一つに見えた。

それに、全く想像していなかった苦い何かのことも知った。もの凄く苦労したり、もの凄く悔しくて堪らない何か。

私も写真を始めてから、そこそこ嫌な経験はあった。バカにされたり、嫌な事を言われたり。だけど、帰って冷たい缶ビールを思いっきりに喉を流したらスッキリする程度のもの。元夫の病が強くなり始めた時に、人生で初めて身体の奥からふつふつと怒りが沸騰していくのを感じながら写真を撮った。もの凄い怒りだったと思う。こんな人生を生きている自分が悔しくて情けなくて死にたいと思う自分に怒りで爆発しそうだった。とにかくとにかく当てもなく色々な人に写真を見せて、息をつく間も無く働く事に専念した。家でじっとしてアレを怯える恐怖よりも進めない恐怖の方が怖かった。本当に死にたいと思ったから。

前の様な、昨年の鬱の様な、死にたいはもう無いけれど、私は安全で平和な生活を手にしたけども、今も寂しさは拭えない。どうして今の今だって寂しくなってなきゃいけないのかわからないし、悔しい。誰より信じてた家族に家族を目の前で紙を破るみたいにビリビリと、思い出も信頼も愛も長い間かけて丁寧に積み上げた色々を全てをビリビリと簡単に粉々にする男の様を私の記憶は手放してくれない。

今朝、展示に行く前に心のどこかで考えてた。私はもう写真は無理かもしれない。だけど、蓮井さんのいつかの悔しさを知ったら、ぱっと晴れた。もう終わった事なのに安全なのに、今でも疲れ切ってしまう日が当たり前の様にやって来て、悔しさや怒りもしっかりと込み上げてくる。捏ねたパンをずしりと重くて厄介な生地を全力で的中させてやりたい。

帰りがけに、「今度3人で飲みましょう」ってなった。今日は展示に行って本当に良かった。すごく素敵な人だった。もっともっと話がしてみたい。

トウモロコシご飯

Journal 11.7,2021

一昨日に編集のリリさんからメッセージが入った。話があるから会いたいとの事。先月あたりからお互いに日程が合わなくて会えなかった。内容はきっと彼の事だろう。

「トウモロコシをカレーっぽく炒めるのと、トウモロコシご飯どっちがいい?」
ビールはもう2本目くらいだったと思う、16時から飲み始めて、そろそろ夕方を過ぎようとしてる頃に聞いた。「私、トウモロコシご飯が大好きなんです!」にこにこと満面の笑みのリリさん。米を炊く準備をし、昼にカツオをたたきにして、冷やしていたものを薬味と一緒に皿に並べる。捌いておいたイカをワタとニンニク醤油と一緒に焼いて、冷蔵庫で冷やしておいたトムヤム風サラダを出して、昨日の豚汁を温めた。リリさんの声に耳を傾けながら、時々、相槌を打ちながら話しを聞く。料理はどんどん出来上がっていく。りりさんは、始めはさめざめと泣いていたけど、気づけば肩を揺らして思いきりに泣いていた。「いっぱい泣いて。泣いていいよ。」ティッシュの箱をテーブルに置いた。

リリさんはよく泣く。感情を表現するのがすごく上手。彼女は弱い自分が嫌だって悪く言うけど、私は彼女のそういう所が好き。今日も好きだなぁと思って見てた。人前で泣けるって気持ちがいいよ。

色々な恋や愛がある。その人に似合ったって言ったら変かもしれないけど、ある日に突然にそれは初めからわかってたみたいにやってくる。それは、辛かったり嬉しかったり苦しかったりの色々が一つの場所にぎゅっと混在しててどうしようも無い。相手の子は、私もそう思うけど、たぶん心の病を持ってる。愛や恋が病に絡んでいく。解けなくなる前に、絡もうとしてた何かを自分で上手に彼女は解いたんだって思った。上手な失恋だった。ずっと今もティッシュで溢れる涙を拭きながら泣き続けてる。

病とか外見とか仕事とか思想とか宗教とかファッションとかカルチャーとか、その人を成立させている何かというのは沢山あって、だけど恋に落ちる場所はその中のどこかじゃない。もっともっと深い場所にある何かな気がしてる。もしかしたら目を閉じて、隣に座っているだけでもそうなるのかもしれないとも思う。目で見えない物に全身が触発されてゆくから。私が最後に恋をしたのは9年前。一瞬で恋に落ちた。理由は一つもわからない。終わった理由もわかってるけどわからない。

泣き止んだリリさんと色々な話をした。結婚観とか犬の話とか、編集の成田さんの話とか。彼の恋愛について勝手に私達なりの意見を述べ始める。そして、どれだけ私達が彼の事を好きかっていう話で盛り上がった。二人でいると時々出る話題。私はこの話題が結構気に入ってる。今日はきっと校了でヒーヒー言ってるだろうから、応援メールを送ろうとなった。数十分後、成田さんから連投でメールが入ってる。内容はラブばかり。リリさんが電話をかけると、校了は木曜日に終えて、数ヶ月ぶりに羽を伸ばしてるとの事。今は電車の中だと言ってるけれど「ラブでしかない!」を連呼し続けてる。次に出る言葉は、「愛」その次は「ラブ」。そして「ラブでしかない!」相当に酔っ払ってる。楽しそう。本当にこの人もこの人も好きだ。

22時を過ぎてリリさんが帰った。お風呂に湯が沸くと同時にインターホンの画面がパッとついて成田さんが立っている。隣には笑顔のリリさん。二人の終電までお喋りは続く。朝が早かったから少し眠くなったのでソファーに移動して二人の話を聞いてた。なんていい夜なんだろう。ほんとに、ラブでしかないと思う。

7月3日

Journal 03.7,2021

昨晩、久しぶりに姉と電話。1週間ぶりくらいかな。お腹が抉られるかと思うくらい笑った。

「あのね、またスピリチュアルな話しちゃうけどさ、わかってるんだよ。ぜーんぶこれから上手くいくから。」
「出たー!斎藤一人と細木数子で、斎藤数子!!」

「こないださ、知り合いの方があなたに必要だからって急にビジネスカードをデザインしてきてくれて、ビックリしたよ。お金払うよって言ったら、あなたには頑張って欲しいから要らないって言うの。信じられる?だからさ、大丈夫。これから私たちどんどん良くなるから大丈夫。いつも言うけど、私には見えてるんだよ。」
「それ、斉藤数子な話じゃん!」


「ヨシミさ、昨年の今頃、彼の誕生日の時、大変だったよね。今を見てみなよ。」
「うん。昨年の今頃だね。春からの数ヶ月であっという間に彼は彼じゃなくなった。地獄だった。」

「病気だったね。」
「うん。病気。」
「うん。本当に病気だったよね。」
「病気。」

同じ言葉だけをお互いに何度か繰り返した。あの日々の出来事を、あの苦しみや恐怖を、病気って言葉以上にはもう話したく無かった。

自分で自分の身体をぎゅぅっと締め付けてゆく感じがする。何となく、また、あの戻ってこれない錯覚になる。後頭部が疼く。明日の朝、髪の毛がごそっと抜ける気がした。多分そうなる。恐怖じゃなくて、出来はじめのヘルペスが口の周りでピリピリと疼くみたいに確信のある前兆だった。

AM5:00、ぱっと目が覚めた。髪の毛は未だくっついてる。どうやら、私の神経は結構完璧に正常に戻ったみたい。あるのはやっぱりトラウマか。一昨日に撮った映像の編集を始める。楽しい。あっという間に昼になって外出する時間。あれだけ毛嫌いしてた映像。撮るの怖い、とすら思っていた映像。この半年で驚くほどに私にフィットした。自分の事って本当によくわからない。

夜は久しぶりに映画を見た。”そんな彼なら捨てちゃえば” 。作家の鈴木涼美さんがラジオで面白いと言ってたのを思い出して見ることにした。男と女、カップル、既婚者、様々な恋愛が交差する物語。あちこちの箱をひっくり返した様にコロコロと変わるシーンに、笑ったり泣いたりした。次々と幸せになっていく男女。何だか寂しくなる。私にはもうあの時間は来ないのかな。あんなに信じてたのに無くなっちゃうんだもんな。映画の中のカップル達への祝福と虚しい気持ちが混ざる。

それにしても英語がよく聞こえた。先月からまた英語の勉強を始めた。姉と英語で話す様にして、毎日、英語日記を添削して貰ってる。たった数週間の成果。すごい。全然、前に進んでないと感じてしまう日々に最近はもう私は亀でいいよと諦めてる。亀の一歩もステップ出来ない日はデスクの一番上の引き出しを開けて、テープで止めてある黄色の付箋を見る。ドラえもんなんて出てこないし、そういうのもう信じない。”ゆっくり、じっくり、確実に。” 半年前に書いたぺらっとした紙切れが何百回と私を救った。数週間でこんなに英語が聞こえるようになるなんて、自分が思っているよりもずっと私は進んでるのかもしれないな。

斎藤数子の言う通りかも。きっといい事がある。大丈夫。どんどんいい事がやってくる。きっと今は登山中。とにかく信じて登るしかきっと道はないんだ。抜けなかった髪をポニーテールに結わいて、登ろう。


6月30日

Journal 30.6,2021

朝からちょっとまた二日酔い。そして、何だかちょっとむしゃくしゃしてる。作品を終えてスッキリしていい筈なのに、急に寂しさがやってきた。何だろうこれ。すごく寂しくて虚しい。何もする気が起こらないし、色々が厭。特に昨日は少し駄目だった。何とか済ませる事だけ済ませて、ベッドで20時くらいから悶えた。本を読むのも億劫。辛うじて出来ることは携帯をオンにしたりオフしたり、その繰り返し。何かを見たいわけじゃ無いけど、ただそれだけをしてた。私の最悪はどんどんライトバージョンな最悪になってきてるし、今までの色々に比べたらこんなのヘッチャラなんだけど、どうにもこうにもペチャンコに潰れたタイヤみたいな感じ。