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パンケーキ

Journal 18.5,2022

4時くらいにパッと目が覚めて部屋で作業を始めた。なんだかもやもやする。気持ちが落ち着かなくて時間ばかりが追いかけてくるみたい。それに今日はいつもよりもずっと身体がどんどん冷えていく。6時過ぎ、梃子が周ちゃんを起こした。「ごめんね。周ちゃん。」「大丈夫だよ。」「お腹が好きすぎて気持ちが悪いよ。パンケーキが食べたい。」「うん。じゃあ、俺が焼くよ。」最近ハマってるパンケーキ。今日はちょっとスペシャルだった。チョコレートシロップと蜂蜜を交互にかけて、パンケーキを切る手とパンケーキを食べる口は忙しく一緒に動いて、あっという間に完食。「ああ、お腹一杯。」お腹は一旦満たされたけれど不安がまだ続いてる。直ぐに部屋に戻って納品作業をした。周ちゃんは仕事へ出かけて、コーヒーを入れ直してまた仕事。不安は未だ続いてる。spotifyでいつもなら聞かない感じのアユルベーダーのラジオを流しながら作業を淡々と終わらせた。不安はやっぱり続いてる。

午後は茅ヶ崎で一本取材。うちから茅ヶ崎だなんて小旅行じゃなくて、ちょっとした旅行だ。電車で2時間半。殆どが居眠りしたり、目を閉じたりした。不安はまだ電車と一緒に移動した。昔もよくあった。不安になってしまう日。気づいたら無くなってた。不安な日は話したくない。だけど、1度目の結婚をしてから無くなったような気もする。だけど、それはそれで、また別の、私のじゃない大きな不安がやってきた。やっぱりPMSなのだろうか。それとも更年期?30代から始まる人もいるって言われてる。どちらにせよ、ホルモンバランスが原因な気はしてる。

現場で久しぶりになおきさんに会った。あまりに突然でビックリして、ビックリしすぎて不安がそのまま飛んでいった。撮影はさっと終わって、さっと帰った。帰りに少しお喋りをしてなんだかすごく楽しかった。料理家さんの取材だったからか、フミエさんとの料理本の事だとか、フミエさんって素敵だよなとか、なんだか頭の中に色々がぐるぐると回った。フミエさんとお喋りがしたい。

朝のポークカレー

Journal 11.5,2022

「卵は?」「いる〜。」カレーをもった茶碗に生卵を落とした。私の方の茶碗は黄身が割れて茶碗の下へと垂れ落ちてゆく。カレーの次の日はカレー。これは私のルール。何度か言い続けて朝にカレーを出したら、周ちゃんも「朝はカレーだね。」って言うようになった。今日は数日ぶりに裏山に散歩へでた。森の朝はやっぱり深々としてる。すぅーっと全身が吸い込まれていくみたい。ああ、気持ちがいい。

昼は黙々と仕事。時々、新しい携帯でインスタとかLINEを見た。新しい携帯の操作がまだよくわからない。音が鳴るたびに気になって見てしまう。午後は駅前に睫毛パーマをかけに行って、ママの誕生日プレゼントを買って、OKストアで買い物をして帰宅。こないだ派手に自転車で転んでから少し自転車が怖い。左足のすねには青とか紫とか黄色とかマーブル模様みたいな大きな痣がずっとある。右足はその前の週に自転車置き場で強くサドルが皮膚に食い込んで血が出てかさぶたになった傷もまだある。東京で生活していた時は自転車が大好きだったのに、この街での自転車はなんだか好きじゃない。道路はボコボコしていて走りづらいし、駐輪場がとにかく停めずらくて、絶対に誰かの自転車に身体のどこかがぶつかる。もう、なんだよ。なんだか帰りは少し落ち込んだ。東京での暮らし、こっちにきて初めて松陰神社のあの家が恋しくて少し寂しくなった。

裏山は大好きだけど、この街は好きになれるんだろうか。お気に入りの喫茶店やカフェはgoogle mapを何度見たって見つからないし、好みのパンやスィーツを買える店も無い。家だって前の方がずっとずっと住みやすかった。それに、新しすぎる感じの内装は正直好みじゃない。食材を買うのもすごく不便で、野菜は最高だけど、それ以外のものは駅前に行かないとない。歩いて7分の所にあるスーパーは買って納豆だとかお酒。肉も魚も心が踊らないものばかり。上町のオオゼキみたいに全国から集められた季節の色々な野菜や魚や肉や調味料を思い立った時に買える店が近所にある事はすごく貴重なんだって事に今更気づいた。当たり前にあった東京での生活は十分過ぎるほどに物に溢れてて、右を向いても左を向いても私の欲望は満たされてたみたい。

帰って庭の野菜に水をあげて、みっちゃんに昨年もらった蜜柑のお酒を飲んだ。飲みながら夕飯の支度をして、お風呂にはいって、請求書の整理をした。夕飯は素麺。今夜も少し遅く帰宅した周ちゃんは満面の笑みでご飯を食べてる。「今日は元気が無い。」と伝えたけど何も聞いてこなかった。少しだけ飲みすぎた。早々にベッドへ入って抱き合って寝た。ここにあるのは、裏山と採りたての野菜。あとは、愛くらい。L.Aの姉の所に住むように暮らしていた数週間の事を思い出した。あの場所もここと少し似てる。だけど、すごく楽しかった。生活を変えたい。せっかくの田舎暮らし、東京を想って生活するなんていや。

食卓

Journal 09.5,2022

朝は東京で取材が一本。2年ぶりの編集の田中さん。名前が変わった事とか、元気だった?とか色々な話をした。それから、クライアント先の担当の子が産休に入ったとの朗報も聞いた。びっくりしすぎて嬉しくて胸がドキドキした。最近いいニュースばかりを耳にしてる。L.Aのアミちゃんはお父さんが亡くなった事を新しい携帯のニュースで知ったけど、再婚をしていることも知った。もう10年くらい前、ヘレナと一緒によく写真を撮らせてもらってた下の娘がコロナが起きる少し前に病気で他界して、だから、だからというか心から良かったと思ったし嬉しかった。あと、女の子のカップルの友人が養子縁組をして結婚をするし、それに、友人が結婚を決めて、夜には成田さんから “彼女が出来ました!”との報告。「周ちゃん!成田さん彼女が出来たって!!!」ベッドで開いたLINEからの朗報を周ちゃんに伝えると目を丸くして喜んでる。「最近、周りが愛で溢れてるんだよ。すごいよ!すごくない?」「本当だね。それってよしみのが伝染してるんじゃない?」「それは申し訳ないくらいないよ。私からは何も溢れてない。」「だって、よしみだって周りの友人に彼氏が出来た時に俺と出会ったわけでしょ。」「えー。確かに、行動を起こすキッカケにはなったね。だけど、そんなめっそうもない。違うよ。」ただ言えることは、みんなはみんなの人生を今を愛してるってことだ。嬉しいとか楽しいと思う気持ちがここにあって、私の友人たちの場所にもそういう気持ちがふわふわと泳いでいるんだとひとり勝手に感じるだけで胸がじんわりとした。

先日、リリさんといつもの通りで成田さんがどれだけ素晴らしい子かっていう話をした。これはもうルーティーンみたいなもので、だけど心から互いに成田さんへの愛を話した。成田さんへの愛情がたっぷりの私達だからこそ、この朗報に乾杯したい。ハートを沢山いれて “おめでとう。” ってメッセージを返した。早く成田さんの新しい彼女とみんなで一緒にわいわいと食卓を囲みたい。食べる音や笑い声だとか引っ切り無しに美味しい時間が食卓の上で鳴り続ける夜。きっといい夜。いや、絶対に素敵な夜。もしかしたら少し飲み過ぎてしまうかもしれない。ああ、恋しいや。まだ来ない食卓が恋しい。

しそトースト

Journal 28.4,2022

四時半過ぎに起きて支度。周ちゃんんも梃子も直ぐに起きてきた。周ちゃんが朝食をさっと作ってくれた。紫蘇のトースト、一昨日の残り物のハヤシライスをお湯で薄めたスープ、それからいつものバナナジュース。スタジオに着いたのは8時。家に着いたのは20時過ぎ。今日もよく働いた。いい1日だったな。周ちゃんはGW前の仕事で色々と忙しいみたいで帰ってきてからもずっとスマホで仕事をしてた。昼のお弁当は鰻だった。

麺線

Journal 28.4,2022

梃子の病院から帰宅したのは18時前。ポストにごっそりと郵便物が入っていた。あ、パリのマユミちゃんからだ!パリにあるようなカフェの絵が描いてあるポストカードと深い緑色の封筒。タイムラグで2通まとめてきたんだ。昼に作った麺線がよっぽど美味しかったのか、周ちゃんは夜も麺がいいって言ったから夕飯は拉麺を一緒に作った。私は美味しいサーモンか美味しい鰻が食べたかったけど、どう考えても今からは買えないから想像だけして諦めた。明日は四時半起き。ベッドに入ったのは20時半頃。周ちゃんはいつも通り難しい本を読んでる。私はマユミちゃんへ手紙を読んで返信を書いた。戦争が始まって中々手紙が送れない時期が続いていたからなんだかすごく新鮮な感じがする。マユミちゃんの手紙には日々のパリでの暮らしが日付ごとに記してあった。手紙の中には数ヶ月前の私の話も書いてあって、自分のことなのに誰かの話みたい。たったの数ヶ月でお互いにまた色々が変わった。そうしてもう春は過ぎようとしてる。”日本の桜がみたい。” 4月のいつかの手紙の一文。マユミちゃんはもう何年日本に帰ってないんだろう。会いたいな。遠いいのに近い、だけど遠くにいるマユミちゃん。今年こそ会えるかな。

返信手紙に引っ越しはようやく落ち着いたけれど私の生活がまだ上手く言ってないことを書いた。上手くいってないっていうか、一人の暮らしのようには暮らせないことが少し苦しいんだと思う。どうやったって時間が足らない。梃子との時間だって減ってる。日記をゆっくりと書く時間だとか、英語の勉強も、あと作品を作る時間も。色々。瞑想とか朝の散歩も出来てない。一人の晩酌も無くなった。だけど、周ちゃんとの時間を選んだのは私だし、一緒にいる時間も惜しいくらいに過ぎていく。

赤魚の干物

Journal 25.4,2022

目覚ましと同時くらいに起きたと思う。スッキリと目覚めた。静かにゆっくりと起き上がってみると、腰がすっとベッドから離れた。あ、大分良くなってる。恐る恐る階段を降りて支度を始める。ちょっとまだ痛いけれど、昨日よりはずっといい。窓から登り始めた陽がうっすらとピンクオレンジに廊下を染めている。今日は天気が良さそうだな。

それから30分くらいして周ちゃんが梃子と一緒に起きてたきた。「おはよう。まだ5時だよ。大丈夫?」「うん。パンと卵でいい?」「うん。ありがとう。」周ちゃんのトーストは今日もたっぷりのマーガリンが塗ってある。スクランブルエッグもいつものとおり甘くて美味しい。たっぷり塗るのはバターで、マーガリンは少しでいいんだけどなといつも思うけれど、いつも言わない。私がパリで覚えたパンの食べ方ではバターは食べるものだと教えたから。バターとマーガリンは周ちゃんの中では同じみたいだった。

「遅くなってすみません。」「いえいえ、道路混んでましたから。それに8時に着きたかったからピッタリですよ!」新宿から乗ったタクシー。メーター横にある時計を見たドライバーさんと目を見合わせて笑いあった。時計は8時00分。家を出たのは6時。前だったら考えられないような移動時間。だけど、田舎暮らしの不便にも段々と慣れてきた。世田谷の空は青々しくて綺麗。陽が強くなりそうだな。幸先がいい。とりあえず無事到着したからきっと何とかなる。午前は殆ど屋外での撮影。帽子、持って来れば良かった。クラクラしてくる。腰の事を朝に相談しておいたので、編集の本郷さんも野崎さんも気を使ってくれた。腰のことを考えて、とにかく調子に乗らないようにと途中途中で言い聞かせた。撮影は順調に進んで、さっと片付けてタクシーに乗った。特急列車にたまたま乗れてあっという間に駅に到着。予定よりも1時間早く帰ってきた。なんだか今日は面白いくらい移動がスムーズ。駅ビルで赤魚の干物とホタルイカの刺身を買ってタクシーに乗った。腰の様子は思いの外順調。どうしちゃったんだろう。帰れなくなったらどうしよう。そんな心配までしてたのに。夕飯は周ちゃんが買っておいてくれたインドなんとかっていうIPAのビールを飲んだ。本郷さんが帰り際に「よしみさん忘れ物!」とスタジオの外まで走って持ってきてくれたお土産のビールは明日の楽しみにした。本当はこっちが飲みたい気分だった。だけど周ちゃんが体調が悪いみたいで元気が無かったからそうした。「なにか嫌なことがあった?」何度か聞いたけど、お腹と頭が痛いのだそう。何でもないといい。

お好み焼き

Journal 23.4,2022

朝にSONYのデジコンが届いた。最近また日常を撮ろうと昔みたいにフィルムでとも思ったけれど、忙しい毎日の中でフィルムを現像、印刷するのも、高額になったネガフィルムをばかすか買うのは日常が撮りたい私にとっては非日常的過ぎる。どんどんと消化されていくものが日常なのに、カメラが嗜好品みたいに時々だけ手にとっては愛でる様な物になったら、大事な何かをきっと平気で見逃していくと思う。とりあえず首にぶら下げて周ちゃんと梃子を撮ってみる。使い慣れないズーム機能、「すごい、すごい。」と驚いてると周ちゃんが遠くで笑ってた。

木曜日の夜に痛めた腰がどんどん悪化していく。昨日は大分楽だったのに笑っても痛いし、座っても痛いし、なんだか腰を超えて足だとか内臓だとかも痛く感じてくる。立ってるだけでもそわそわしてくる。なんなんだろうこの感じ。午後に結婚ノートを持って近くの喫茶店に自転車で行った。まるで夏日の午後。周ちゃんは短パンにTシャツ。私も帽子を深く被って日焼けしないように大きめの薄手のシャツを羽織った。宮崎駿さんご夫婦がよく来られるという喫茶店。店内ではネゴンボ監修のカレーも食べれる。のんびりした午後みたいですごく良かった。私の腰痛を除いては。落ち着いたフリをしていたけどずっと何とも言えない痛さだけが続いた。ああ、痛い。時折走る激痛に「痛っ」と声が出る度に眉間に皺を寄せて心配する周ちゃん。「今夜は俺がお好み焼きを作るよ。」納豆とシーフードと豚肉とってバラエティーに富んだラインナップ。腰痛の為に夫が晩御飯を作ってくれる。夢見たいなシュチュエーションだった。それに、今日のお好み焼きも最高に美味しかった。周ちゃんは張り切って何枚も何枚も焼いてて、楽しそう。腰はどんどん悪化していくけど、周ちゃんが嬉しそうで良かった。

月曜は長丁場の撮影。大丈夫なんだろうか、この腰痛。東京まで電車に乗れるのか、荷物を持って歩けるのか、家中を這いつくばって歩いてるのに、大丈夫なんだろうか。不安ばっかりが募っていった。

焼き筍

Journal 22.4,2022

「愛してるから!」夕方の16時。周ちゃんが饂飩を茹でながら珍しくちょっとだけ大きな声でキッチンから叫んだ。周ちゃんの言葉に思わず笑ってしまった。周ちゃんってもしかしてもうすぐ死んじゃうのかな。よく思う。本当によく思う。しきりに思う。それって最期に言うような言葉だよね。恥ずかしくて嬉しくてどうしていいのかわからなかった。

今日は朝から診断書を病院へ取りに行ったり、皮膚科へ行ったり、銀行の名義変更。ためていた細かい用事を済ませた。駅を出たのが朝の9時過ぎ。帰宅したのは16時。途中に暑くて強い日差しにクラクラしてコーラを飲んだだけ。お腹もすっかりペコペコを通り越していた。「お昼食べてないの、こんな時間だし冷たい饂飩でもさっと食べようかな。」何も言わずに饂飩を茹で始めた周ちゃん。私は末っ子だから甘えるのは得意な方だと思う。だけど、まだ甘えてないよ、周ちゃん。今日会った色々を話した。うんうんと聞きながら饂飩を茹でる周ちゃん。「ねぇ、周ちゃん。どうしてそんなに優しくしてくれるの?」毎日ありがとう、ばっかり言ってる。きっと梃子はありがとうって言葉に意味もわからず飽き飽きしてるんじゃないかってくらい。いつもいつも。本当にありがとう、だ。だからって、「愛してるから!」だなんて返さないでほしいよ。困るよ。標本にでもしたいよ。ぺたっと時間を止めておきたい。夜の夜までずっと「愛してるから!」がリフレインした。

東京、楽しかったな。池袋なんて都会過ぎてビックリした。いつも遊ぶのは渋谷、青山ばかりだったからかな。世田谷区とか目黒区の事はよく知ってるけど思ってるより東京の色々を知らないかもしれない。帰りに駅ビルにあるロフトでジェットストリームのボールペンを買いに寄った。ジェットストリームはほぼ日の仕事をしてから使ってるお気に入りのボールペン。2016年からジェットストリーム一択。柔らかいタッチのペン先がスラスラと文字を泳がせてくれなきゃいやだ。銀行だとかホテルで丸くて太いボールペンに出会った時の私の萎え度は半端ない。あまりにがっかりして私の名前は最低最悪なぐちゃぐちゃのミノムシみたいな形となる。ロフトのペンコーナー。ジェットストリーム。探しても探してもない。あれ。おかしいな。絶対にないわけがないのに。あ!ジェットストリームコーナーが特設されてる。え!!あれだけ私言ったよね。ジェットストリームはカラーデザインを見なした方がいいって。なんとピカチュウとスヌーピーのコラボレーションペンが売ってる!!正直ピカチュウが誰なのかは知らないけれど、ものすごく可愛い。ああ、良かった。ようやく来た。しかるべき日が来たよ。ボールペンに600円。高い。だけど、買う。ピカチュウは誰だか知らないけど買う。

「なんとピカチュウのジェットストリーム!梃子みたいでかわいいよね。」「そうだね。」冷たい饂飩をすすりながら周ちゃんにペンを見せた。今日はリモートで家で作業していた周ちゃん。肌が助けた薄いTシャツに白いシャツを羽織ってる。家着にしてはかっこよ過ぎてないかな。色っぽいじゃないか。若い男には申し訳ないくらい興味がないのは周ちゃんの所為だ。中年男子の周ちゃんの色気。どうしようもない。

今日の献立
念願の焼き筍
春菊とハムのサラダ
ねぎと砂肝のナンプラー炒め
焼キャベツと黒豆の味噌
新玉ねぎのドレッシング
素麺
納豆

フレンチトースト

Journal 21.4,2022

今朝の梃子は飛び切り元気だった。可笑しいくらいに梃子は日に日に明るくなっていく。私と二人の生活に戻った時も気づいたら兎みたいにぴょんぴょん飛び跳ねていたのに、最近じゃ手の平サイズの赤ちゃんだった時みたいに世界に安心しきってる。「梃子はね、100語くらい言語がわかるんだよ。だから何でも言葉で話すようにしてるの。」周ちゃんは梃子の目を真っ直ぐ見てよく話をしてる。あの話しは嘘じゃなかったんだけど、周ちゃんは律儀にも人と話すみたいに梃子と会話してる。周ちゃんの前に座り静かにその話を聞く梃子。大体の話はわかっていそう。梃子とはもう10年以上一緒に暮らしてるけど、今の生活が気に入ってるのがわかる。周ちゃんの横で寝て、周ちゃんの膝の上に座って、周ちゃんにお気に入りのねずみや赤ちゃんの時からずっと一緒のグレーの猫の人形を毎朝、毎晩、ひつこく周ちゃんの元に持っていっては遊んでよと尻尾を振って吠える。そしてまた朝が来て、「周ちゃん、朝だよ起きて。」人間の言葉で言うならそんなフレーズで嬉しそうに吠え、周ちゃんと一緒に今日を始める。

「なんか今日の梃子はすごい元気だね、どうしちゃったの?」ちょっとはにかみながら困った顔の周ちゃんが梃子と一緒に起きてきた。周ちゃんのまいったなぁ〜って顔が私は大好き。寝ている周ちゃんを起こすのは止めて欲しいけど、あの顔の周ちゃんを見るとニヤニヤしてしまうから複雑。もし取っておけるならば箱にでもしまっておきたい。そして時々開いてはニヤニヤして楽しみたい。

今日は家で仕事。あっという間に夕方になって周ちゃんが帰ってきた。そのままお互いの書斎でまた夜まで仕事。18時を過ぎた頃に周ちゃんが部屋をノックした。「ちょっとご相談で。新宿テアトルで前に話してたデザイナーの平野くん。クウネルとかやってた。出てる映画が今日最終日らしくて。」「うん。行っておいでよ。トマトスープ作ってあるから食べてから行ったら?」

最高に美味しかった。こんなに美味しいスープパスタは人生で一番かもしれないってくらいに最高だった。昨日の塩だけで煮たポトフにトマト缶を入れて少し煮た後にナンプラーで調味してオレガノを少々。ラザニアのパスタをちぎって湯でボイルしたものをトマト味のポトフ鍋に入れひと煮立ちさせてからお皿に盛る。オリーブオイルを垂らして出来上がり。「あと2杯は食べれるよ。」「ほんと美味しい!」

周ちゃんが帰宅したのは23時。雨に振られてずぶ濡れだった。「おかえり〜!」「おめでとうございます〜。」丁度その頃にヤフオクで近藤昭作さんのヤマギワの照明を落札した事をLINEで伝えていた。ずっと気になっていた照明。畳の部屋の照明をどうするかずっとずっと迷っていたけどやっと決まった。外はまだ雨が強く打つ音がしてる。数時間だったけどひとりの夜、最高だったな。人の気配がしない部屋、私が暴れようが喚こうが誰にも何にも言われない空間。麦酒を1缶だけ書斎で飲んだ。どうせ私達は別々の形の中にいるのだから、同じ屋根の下にいなくたっていい。離れたら離れたでより一層に愛しくなったりもする。そんな気分に浸れた夜だった。

塩ポトフのトマトスープ
スペアリブ
ソーセージ
春キャベツ
新玉葱
人参

トマト缶
ナンプラー
オレガノ
オリーブオイル

塩以外の調味料は最後に入れる。スペアリブと玉ねぎは1時間程煮込んで、キャベツと人参を入れて30分程、ソーセージを入れて30分。翌日にトマト缶を入れて30分、調味してひと煮立ちさせる。器にもってからオリーブオイルをかける。リーブオイルをかける。

うどん

Journal 12.4,2022

夜寝た時は良かった。朝起きた時も。6時を過ぎた頃、書斎で作業をしてると周ちゃんが「あ!」と言って起きる音がした。そのまま直ぐに外にでてバタバタとなにかを始めた。もしかして外の倉庫にしまってる引っ越しの段ボールをまとめてるのかな。私も一緒にやるって言ったのにな。昨日の件で申し訳なく感じたのか全部一人でやるって寝る前に言ってた。結構な量の段ボール。まさか一人で捨てたりしないよね。しばらく様子をうかがっていたけれど一向に家に入ってこない。慌てて服を着て1階に降りていこうとすると、周ちゃんが玄関から戻ってきた。「段ボールやってた?」「うん。捨ててきたよ。」「私もやるって言ったのに。」難しい。

朝ごはんもぎこちなく食べた。周ちゃんに話しかけても棒読みのセリフみたいな言葉だけが返ってくる。難しい。私の言葉で言うならば、もう私は怒ってないし、周ちゃんも悪く無い。問題は解決したからいいんじゃないかな。いや、それは私の問題についてなだけだ。周ちゃんにとってはそうじゃない。傷跡みたいなものが周ちゃんを踏み潰してしまってぺっちゃんこに、周ちゃんっていう色々が一枚の影のようになってしまった。私が出かける時に玄関ではいつものようにハグをした。「大好きだよ。」周ちゃんはいつもとは違う言葉を言った。私は「いってきます。」とだけ言った。別に深い意味はなかったけど、後から思い返すと同じように返しておくべきだったと後悔した。

出先でも梃子の写真を送ってくれたり、メールだとかはいつもみたいだった。帰宅して顔を見ると、またぺっちゃんこの周ちゃん。私の顔見ると思い出すのかな。だけど、私は怒ってない。周ちゃんの部屋へ行って少しだけ話してみたけど周ちゃんは未だぺっちゃんこ。何が悪いんだろう。難しい。だけど、私の見え方で話しちゃいけない。いけない。いけない。「私、どうして欲しかった?どう振る舞って欲しかった?」結局、ぎこちないままに話は終わった。

明日は周ちゃんの好きなものを作ろうと思う。傷つけてしまったのなら、もう傷つけたく無い。だけど、私の気持ちだって大事。私は私達のために変わった方がいい。

3月31日

Journal 31.3,2022

支度をしてると5時半に周ちゃんと梃子も起きて来た。今日は朝から撮影。埼玉へ引っ越して初めての撮影。前日にタクシーの予約が出来なくて周ちゃんがすごく心配してた。私も凄く不安。東京でさえ朝のラッシュ時にかかる仕事は移動に少し緊張するのに早朝の埼玉からの移動。大丈夫なんだろうか。1日通しての撮影。体力だってすごく使う。色々な不安だけが積もる。周ちゃんはキッチンに立っていつものバナナジュースと、チーズトーストを焼いてくれた。「行って来ます。」「行ってらっしゃい。」家の側のバス停まで送ってくれた周ちゃんは今日もかっこいい。

なんだか落ち着かない朝。本当はひとりで居たい。撮影の香盤の確認、どんな風に撮るか、天気やライティングのこと。周ちゃんが私の為にと色々をやってくれるのは有難いけれど、何だか余計に不安になった。勝手なのはわかってる。しばらく新しい生活が慣れるまでには時間がかかるんだろうな。この不具合に苛々したり不安になったりを繰り返しながら収まっていくんだと思う。人の温度を感じながら暮すのは丁度いいお風呂みたいで心地よいけれどひとりで築いてきた時間を手放したくない。これは私がおばあちゃんになってもずっと側に置いて一緒に生きて生きたいもの。

撮影が終わったのは18時半頃。ホテルの部屋に入って水を一口飲んだら胃がきゅうっとした。すごく疲れた。だけど、いい撮影だったな。いいチーム。いい写真が撮れるのも楽しいけど、いいチームであることがとにかく楽しいし嬉しい。wifiを繋ぐと直ぐに藤原さんからLINE電話がかかってきた。話の内容は来月の福島出張の撮影がキャンセルになったとのことだった。メールで伝えるのは申し訳ないから電話したかったとの事。仕事の話を終えて、私の新しい暮らしや、藤原さんの6月の結婚の話をして電話を切った。仕事のキャンセルは残念だったけど、電話、嬉しかったな。

ホテルの近くのプロントでホタテと菜の花の醤油バタースパゲッティーとレモンサワーを頼んだ。隣のサラリーマンは株の話をしてる。勧誘かな。帰って大浴場で汗を流してから周ちゃんに電話。少し長く話しをした。本当に身勝手。ひとりでいたいって思ったり、疲れて弱ったら彼の温もりを感じたいって電話したり。なんだか少しもやもやした。こういうのはもうきっと好きじゃない。1度目の結婚では、幸せになるっていうのは家の外壁みたいなものをもっともっと高くより高く積み重ねていくことだと信じてた。そうして家族だけの愛や、家族だけの秘密はどんどんと守られていったけれど、その高く積み上がった塀は私達を幸せにするどころか私をどんどんと結婚の中に孤立させるものとなった。もう間違えたくない。新しい結婚は新しい生き方を見つける糧にしたい。これからどんな形になるのか今はわからないけれど、そこで得た色々を周ちゃんにあげれたらいい。家族や友達、仕事仲間にだってあげたい。つい数週間前まで生活していた東京の夜。何だかアーバンだったな。

3月17日

Journal 17.3,2022

朝から西東京で撮影。急いで帰宅、素麺をさっと茹でて適当に食べて急いで役所へ。引っ越しシーズンだからか人でごった返してる。氏名変更の手続き、転出届を出して、税務署に行って納税地の変更届を出して、来月の日割りの家賃を入れて、郵便局で転居届を出して、八百屋でブロッコリーを買った。”終わったよー!” 近所に住むワタルさんにLINEした。”じゃあ、あのころで。” あのころは商店街にあるコーヒー専門の喫茶店。松陰神社には小洒落たカフェがいくつかあるけど、あまりそういう店には行かない。満場一致で待ち合わせはあのころになった。ワタルさんにはこの街を離れる前に結婚の報告を会って伝えたかったから、引っ越しの数日前ギリギリセーフで会えて本当に良かった。ワタルさんは苦そうなコーヒーを、私はカフェラテを頼んだ。「ワタルさん、ちょっと報告があって、私、結婚したの。」「えー!?早いねぇ。嬉しいよ。俺はよしみさんが結婚してくれて本当に嬉しいよ。」どうしてそんなに喜んでくれてるのかわからなかったけど、何だかそんなワタルさんを見て、私もすごく嬉しかった。

仕事の話とか、共通の友人の話、いつも教えてもらうワタルさんのライフハックの話を聞いた。あとはよく覚えてないけど色々話した。それから、私が周ちゃんと駅前でハグしてたのをサミットの帰り道に奥さんと見かけたらしくて、その話がすごく可笑しくて、声をあげて一緒に笑った。

「一人暮らしって最高じゃない?」「うん。こないだ久しぶりに塩釜に出張で行ってさ、最高だったよ。」「別に相手が嫌とか全然そんなんじゃないんだけど、一人暮らしって最高だよね。」「酒飲んでソファーで寝ても、ソファーで寝てたでしょって目で見られないで済むしね。」「一人暮らし、私大好きなんだよ。」「わかるわ〜。」喫茶店を出てスーパーまでの道のり、一人暮らしがどれだけ最高かって話をしてバイバイした。「次は埼玉でね!」

帰って夜まで仕事。今日も朝が早かったから神経がピリピリしてる。もう限界って所でお風呂に入った。湯船に浸かりながら周ちゃんに電話すると、周ちゃんも帰宅した所だった。こう会えない日々が続くのも悪くない。今日役所で貰った不動産へ提出する住民票の写しを写メで送ると「なんか、ぐっときたよ〜。」って。私の名前が熊谷になってる住民票。何度見ても誰のこと何だかさっぱりな感じ。「この人誰って感じだよね。」「あはは。」周ちゃんはちょっと嬉しそうだった。ご飯を食べてベッドへ寝転がって電話。ビデオ通話にしてみる。相変わらずのイケメン周ちゃん。今日文化庁に行った帰りに近くの喫茶店で大きなソフトクリームが乗ったコーヒーゼリーを食べたと写真を送ってくれた。喫茶店でイケメンがソフトクリームが乗ったコーヒーゼリー。もうワードを聞いてるだけで鼻血が出そう。そんな男を街角で見かけたら私どうなっちゃうんだろう。え、一体どんな風に周ちゃんはそのソフトクリームを食べたのかな。「周ちゃん、ソフトクリーム付きのコーヒーゼリーどんな風に食べたの?」「えー夜遅いけど佐藤君が持ってきたハーゲンダッツ食べようかな。」冷蔵庫からハーゲンダッツを持ってきて食べ始めた。なんで急にハーゲンダッツを食べ始めたんだろう。アイスクリームの食べ方なんて聞いてないよ。イケた男が喫茶店でソフトクリームをどんな風に愛でているのかを聞きたかっただけ。周ちゃんってやっぱり変わってる。学芸員やってるくらいだから相当に変わってると思う。キュレーターの高橋君からは歩く人類学者って言われてるくらい。だけど、そういう類の変わってるとはまた違う、何と表現したらいいのか。まぁ、美味しそうに食べてるからいいか。そんな周ちゃんを見てると私も気分が良くなるし。

明日も5時起き。もう寝よう。

3月16日

Journal 16.3,2022

朝からスタジオ撮影。疲れた。顔馴染みのメンバーだけど、疲れた。集中力が途切れるのと同時に自分の中の何かが磨耗していくのがわかる。時間より少し押して撮影が終わると編集の成田さんからの電話。恵比寿駅の前で数分立ち話をした。胃がキリキリする。一昨日くらいから忙しなさが背中に触れてくる度に痛みが増してゆく。嫌だなって思いながら話を続けた。

帰宅してソファーに倒れこむ。ああ、あっという間に今日も終わった。家具のやりとりも、家の契約のやりとりも、納品や仕事のメールも返さなきゃ。頭がぐるぐるとしている中で梃子を抱きしめとりあえず抱擁。「遅くなってゴメンね。散歩へ行こうね。」朝が早かったので今日の散歩は夕方。町内を小さく回って帰宅。夕方、成田さんと話した電話のことを所々思い返しては少し悲しくなる。メールをしようか迷ったけどやめた。

こないだ周ちゃんが寝る前にベッドで話てたことが今でも気になってる。「従兄弟の大学生が大学に行きたくないって、それで部屋に閉じこもってるみたいで。友達が嫌なんだそう。死にたいみたいなことも言ってるみたい。うちの親が色々と相談を受けてるみたいなんだけどさ、世界はもっともっと広いんだよ!って言ってあげたいんだよ。そんなに苦しむことはないよって。俺も大変な時期があったけれど、世界に出たら違かった。それを知って欲しいよ!!」真っ直ぐに私の目を見て語る周ちゃん。言ってる事はよくわかる。だけど、多分、それはもう苦しく無い人が言う言葉な気がする。

誰もが手がつけられないような苦しみってある。未来なんて事は考えられないくらいの地獄へどんどんと堕ちていく。今が苦しすぎて、痛すぎて、自分が持ってる力の全てがそれを救済するために使っているから心はずっと忙しくて、誰も知らない未来のこと、言うなら架空のファンタジーかもしれない何かを信じて大丈夫だなんて気分に浸れる余裕なんて無いくらいに苦しい。その強烈な今の痛みは本人にしかわからないし、その痛みの行く末だって誰にもわからない。人は幸せになるように出来てると信じてるけれど、そうじゃなくなる場合もある。だから、やっぱり今の話がいい。誰かの苦しみを知ることは難しいけど、ただ寄り添って信じてあげるとか、側にいて背中をさすってあげるみたいに、未来の話をするより手の温もりを衰弱していく身体を一瞬でも温めてあげた方がずっと今を幸せに出来るんじゃ無いかな。今の続きが未来なのだから。

心療内科に通ってた時に先生に言われた言葉を疲労が溜まってイライラした時なんかに時々思い出す。今日もちょっと思い出した。「心の水が枯渇してるんですよ。」過度なストレスがかさんでいくと、心の潤いがどんどん失っていく。そりゃ、それだけのストレスがかかっているのだから仕方ないことなのだそう。それで底にある岩が露わになっているようなもので、普段なら我慢できないような事もちょっとした事で何かが岩に当たる度に敏感に反応してしまう。苛々したり泣いたり怒ったり。それは別になんてことはなくて、そうゆうこと。枯渇してるだけ。

苦しいのは嫌だけど、苦しむことは悪く無いんじゃないかな。ああ、今日も果てしなく疲れた。朋子ちゃんがくれたお花が綺麗。ただとにかく綺麗。

パンケーキ

Journal 12.3,2022

今日は引っ越しの片付け。男の人がいるとこんなに楽なんだ。引っ越し、あの人は何もしないでいつもどおりの毎日を過ごしてた。いつも何回も全部ひとりで手配して荷造りして運んで。おかげで、男がいなくてもどんなに重たい家具でも運べるし、業者にまけてもらって無理言ったり、業者みたいに色々を手配して、何でも全部ひとりでやれるようになった。「これ、よく組み立てたね。これ、よく運んだね。」周ちゃんが驚く度に過去の私が喜んだ。

ありがたいな。人生で何回引っ越しをしたんだろう。両手じゃ全然足りないくらいしたけど、今日は人生で一番楽で楽しい荷造りだった。

3月10日

Journal 10.3,2022

引っ越しまで2週間。想像以上に色々がまずかった。仕事も引っ越しの準備も、なんだか引かない波みたいに押し寄せてきてばかりで既に溺れそう。どうしよう。

周ちゃんのお母さんはずっと笑ってた。15時に丸の内のアフタヌーンティーで待ち合わせ。小柄でふくよかなお母さん。私と同じ籍の人らしい。「初めまして、熊谷です。」お母さんの言葉に私も熊谷なんだけどな、と不思議な気持ちになった。お母さんってどこのお母さんも可愛いのかな。うちの母も可愛いけど、周ちゃんのお母さんも可愛い。ずっと笑ってる。お財布から周ちゃんと妹の写真が出てきてテーブルに並べ始めた。「こんなのどうしたの?母さん、恥ずかしいよ。」周ちゃんが困った顔で言った。一枚は私に見えないように隠して、一枚は「見せて見せて」とうるさい私に渡した。お母さんはにこにこ笑ってる。親になるっていいな。何だか少し羨ましかった。

お母さんは周ちゃんの子供の時や兄弟の話を始めた。事業が忙しかった時にお父さんの案で天井から紐で哺乳瓶を垂らしてお兄さんが自分でミルクを飲むように躾けた話は一番面白かった。「自分で飲みたい時に飲めるし良かったわよ。」って。なんてナイスアイデアなんだろうと関心すると、周ちゃんは「それ、今なら虐待になるからね!」と困った顔。「アメリカなんて直ぐに虐待ってなるから大変よ。」とお母さん。あっという間に一時間が経って私はカーテンを作りにウニコへ。周ちゃんとお母さんは仕事の打ち合わせで千葉へ出かけた。

「カーテンの見積はこちらです。」渡された見積書を開いてみる。え?!10万!!予算、6万くらいだったんだけどな。どうしよう。カーテンの候補は2つ。ひとつは、価格も見た目もスタンダードなカーテン。もう一つは、天然素材のリトアニアコットンのカーテン。まだらなグレーがなんとも素敵で明るい。だけど、10万。”周ちゃん。グレーの10万だって。どうしよう?” “うーん。” しばらくLINEのメッセージを交換した。帰って仕事もしたいし、電気とネットの電話もこれから来るし、明日も朝5時起きで仕事。時間と選択に迫られてイライラした。 “どうする?!” “迷うけど、気に入った方にしたいよね。” “うん!他の予算を調整しよう。オーダーしてくる!” “明るい方が素敵だったよね!!”すごくいいなって思った。素敵な方を選ぶ。そうだったな。

一つだけ前の家から持ってきたもので捨てないと決めたものがあった。「スーちゃん。ずっと丸いテーブルが欲しいって言ってたよね。好きな方を買った方がいいよ。」離婚する11ヶ月前。まだ元夫の病気もしっかり始まっていなければ、私達が夫婦だった時のこと。彼が言った言葉が好きだった。ダイニングテーブルの買い替えで、私が家計を気にしてそれなりの方のビンテージのテーブルを提案した時だった。もう何年もデンマークのビンテージの丸いテーブルが欲しかった。その3ヶ月前に行った北欧への新婚旅行でも、やっぱりデンマークの家具を揃えたいと相談していた。

あの頃の匂いがするものは皿一枚残らず捨てた。だけど、丸いテーブルは捨てない方がいい気がした。全てを否定しちゃいけないことくらいわかってる。嫌いになる方が楽なことも。だけど、全てを塗りつぶしたら私も消えて無くなる。悪いものだけじゃなくて、良いものも貰ってるのだから。彼に出会えて良かったなんて口が裂けても言えないし、あんな恐怖は二度と経験したくない。だけど、残そうと思った。

カーテンが届くのは25日。

シーフードグラタン

Journal 09.3,2022

編集のミオちゃんにメール。”19日、後藤さんが来るのだけどミオちゃんも来ない?” 引越しが再来週に決まった事も報告した。”怖くない?誰にも会えなくなって疎外されないといいんだけど。” “うん。結構怖いよ。” “シティーガールだもんね。” ミオちゃんこそ生粋のシティーガールだ。私はまだ千葉を挟んでるけど、ミオチャンは生まれも育ちも亀戸。私が東京の学校に行き始めた時に錦糸町や立石に住んでる友達によく冗談を言われた。「よしみはどこの山から来てるの?」って。本当は怖いよ。”すっごい田舎なんだよ。本当に大丈夫かな。もしダメだったら東京にマンション借りようと思ってる。”誰しもが「慣れるよ!大丈夫だよ!」と、かけてくれる言葉により一層と不安が積もっていく中で、ミオチャンの言葉になんだかとてもほっとした。

今夜はグラタン。先週末に器の和田さんで買ったスリップウェアのグラタン皿をおろした。火の通りが丁度良い塩梅の深さ。いつもちょっとだけ焼き加減が気になってたグラタン。お皿ってすごい。味が変わるんだな。可愛し、美味しくなるなんて、何だか得した気分。

ホワイトソース
バター80g
小麦粉 80g
牛乳 800g 温める

フライパンにバターを溶かして、小麦粉を入れてヘラで水分がなくなるまで混ぜる。牛乳を少しずつ、少しずつ、入れてはホイッパーでよくかき混ぜる。少しずつ少しずつ。なめらかなソースになるまで。

3月6日

Journal 06.3,2022

家の採寸に行った。所沢の駅を降りると遠くに山が見える。どこかの地方に来たみたい。頬を抜けてく冷たい風に少しドキドキした。小学校を上がってからずっと東京生活。学校も遊びも恋をするのも東京。東京生活が長すぎるようにも感じていたし、東京からいい加減でた方がいい気もしてた。だけど、この街を本当に好きになれるのかな。

不動産屋さんの車で新しい家まで向かう。田舎だな。駅を離れると小さい商店だとか美容院、後は家ばかり。この道を私はどんな想いで歩くんだろう。不安が募る。もう後ずさりは出来ないんだな。新しい生活は楽しみだけど、それが素敵かどうかも検討がまだつかない。何だか心がどこに行ったらいいのか迷ってるみたい。

周ちゃんは自転車で東所沢の家へ帰宅して、私は電車で世田谷へ帰った。来週にリビングのライトとカーテンを見に行こうと約束をした。後、周ちゃんのお母さんに初めて会う。

チューリップ

Journal 24.2,2022

昨日の夕方、三茶で魚屋に寄ったついでにチューリップを2本買って帰った。「こないだ古物市で買った花瓶、難しいんだよね。」「たしかに難しそうだね。あの花瓶自体がチューリップみたいだもんね。」周ちゃんが言った。一昨日に白のチューリップを3本買って活けてみたけど何だか変。う〜ん。あと2本くらい加えたら可愛くなるかな。夜見た時は何だかしっくりこなかったけど、朝になったらいい感じだった。うん。素敵。

今日は所沢へ内見に行く。せっかく所沢まで行くのだし、色々物件見たいねって話ていたけど条件に合う物件がひとつしか無かった。週末に何か見つかるかな。たぶん。所沢に向かう電車で周ちゃんが呑気に「多摩湖でも見に行こうよ。」と言った。行かないって思った。たぶん朝に私がGoogle Mapでたまたま多摩湖を見て大騒ぎしたからだろう。風も強いし、さくっと家を見定めて帰宅したい。私達の条件は段々と固まってきたから話は早い。正確には私の条件。周ちゃん曰く生活を大切にしてみたいからよしみの意向に添いたいのだそう。私の条件、ただの我儘じゃないかな。一軒家、広いキッチン、庭、朝陽の入るベッドルーム、それぞれが南向きの書斎、ウォシュレット、光の入るバスルーム、外見が可愛、駐車場付、自然が近くにある、最寄り駅は大きな駅。そしてペット可。そんな物件どこに?だけど、私の言い分は割と正当だと思う点もある。だってせっかく引っ越すのに好きじゃない場所でなんて暮らしたくない。それに、周ちゃんは大好きだけど、あなたとなら何処でも生きていけるみたいな女にはもうなりたくない。私の好きを私の人生から失いたくない。

内見した家の近くにはヨーロッパのどこかみたいな風景の多摩湖がある。ここは昭和の時代に軽井沢みたいな避暑地にしようとしたのだとか。不動産の方が案内してくれた車の中でも聞いた。「高級住宅街だった名残がこの辺りにはあります。」住宅街のちょっと入ったところ。外観、白くて可愛。吹き抜け良し。リビング広い。システムキッチン良し。風呂暗くて悲しい。部屋は全部明るい。二階の角部屋は最高に可愛。内窓と出窓がバッチシ。昭和モダンな雰囲気が最高に好み。不動産に戻って見積書を頂いて店を出た。遅い朝ごはんからもう5時間は経ってる。さっきからずっと周ちゃんとお腹空いたねって目で話してる。不動産を出て、斜め向かいにあった餃子の王将に駆け込んだ。私は餃子ライスとビールを、周ちゃんはあんかけラーメンと餃子のセットを頼んだ。「とりあえず食べよう!」周ちゃんが言った。お皿の中を綺麗に完食して店を出て不動産で申込書を書いて帰宅した。全部があっという間だった。

結局話し合いは殆どしてない。私なんてビールを意気よい良く呑んじゃってレモンサワーまで頼んだからほろ酔い。そう、キュレーター仲間の高橋くん家も近かった。余りに偶然でちょっと怖いくらい。周ちゃんはそんな偶然も嬉しかったんだろうな。明日から月曜日だから今日はそれぞれの家に帰る事にした。帰宅してご飯にキムチをのせたものと朝の残りのほうれん草の味噌汁を温めて食べてお風呂に入って直ぐに寝ベッドへ。周ちゃんも疲れて早くに寝たのだそう。婚約から結婚、そして引っ越し。とにかく忙しかった。何だかほっとしてる。

行きの電車、あっという間に周ちゃんの肩で寝落ちしてた。気持ちよかった。すごく気持ちよかった。ただ触れてるだけで全身や色々がそこに上手に落ちていくのがわかった。段々とだけど私は梃子みたいに周ちゃんになついてきてる。一度失った背中がある。もうそんなものは私には必要ないと思ったけど同じ様にまた温もりを感じてる。もう二度と失いたくないと恐れちゃいけないんだ、またいつか失くなる日が来るのだから大切にしなきゃと毎日毎日ひつこく言い聞かせよう。大切にしたい。すごく。

塩辛

Journal 22.2,2022

独身最後の日、いつもと同じように晩酌をした。今日は朝から渋谷のオーレで富山で昨年末に行ったシェフインレジデンスの打ち合わせ。料理家のフミエさんと編集の山若君。この三人での会話が本当に好き。ずっとケタケタ笑ってるフミエさんと、ボケてばっかりの山若くんに、突っ込んでばっかりの私。あっという間に時間ばかりが経ってしまう。話し合いはさくっと決まって、9月にZINEの北陸行商をしよう、そして温泉巡りをしようとなった。想像するだけでワクワクする。山の中にある混浴に入る為に買うトレッキング用のブーツ、水着、とノートに書いた。それから青山に移動して中華料理店のふーみんで久しぶりにデザイナーの中西君とランチしながらお喋りしたり、夕方にパリで瞳ちゃんとワインを飲んだり、中々いい日だった。空もずっと青くて夜まで気持ちがいい。

帰って家探しのことで周ちゃんとちょっと喧嘩っぽくなった。こんな感じで明日籍を入れるってどうなだろう。けど、私が家への拘りが強いのが原因なのはわかってる。周ちゃんは何だか疲れてる感じだった。1時間くらい家の話をだらだらとし、電話を切った。5分後にやっぱり顔を見て話そうとテレビ電話で掛け直した。「怒ってるよね。」「怒ってないよ。」家の話はやめて、別の色々な話をした。話の流れで私の悩みについても話した。ずっとずっと昔から纏わりついて離れてくれない問題。

「大好きな人、例えば周ちゃんとか、ふみえさんとか、身近にいる人、。本当に大好きで、大好きで、自分との境がバランス崩しちゃって、好きが自分を飛び越えちゃって、時々、、私をコントロール出来なくなるの。それで、傷つけたり我儘を言ったり、自分だかなんだかが混同しちゃって。だから、すごく練習してるんだけど。ゴメンね。」周ちゃんが何て想うかなんて考えずに打ち明けた。私の問題は対象への愛が過ぎると、普段なら優しく出来るような事も、想いやれるような事もぐちゃぐちゃになってしまう。周ちゃんはただでさえ彫りが深くて吸い込まれそうに茶色い瞳をきらきらさせていた。「いや、本当によしみを愛しているよ。初めから思っていたけど、伝えてるけど、よしみのそうゆう所が好きなんだよ。そうやっていつも色々を考えてる。」想像つかないような回答だった。人を困らせてしまう最悪な私の問題について話したのに、何だかすごく嬉しそうな周ちゃんに複雑な気分しかない。私は深刻に悩んでいるし、それがきっと原因のひとつになって離れた友人もいる。今話したのは、私が困ってる生きづらさの話だったのに。

私の悩みは解決はしていないけど、何だかあっという間に救われた。今だけかもしれないけど、この先、悲観的にならないで私を救えそうな気がした。時間は深夜の1時前、3時間くらい話たのかな。今日もよく話した。家の事は一旦保留となったけど、楽しかった。もう寝よう。

温野菜

Journal 19.2,2022

今日は朝一で周ちゃんと三茶の病院へ行く約束をしてる。3時半に目が覚めて、色々な事を考えた。新しい家の事、結婚の事、子供の事。気づいたら7時も終わる頃。急いで支度をしていたら周ちゃんが家にやってきた。昨晩は気分悪く電話を切った。周ちゃんは何も悪くないし、心配してくれてたのに、とにかくうんざりだった。家が決まらなかったのは別に誰も悪くないし、お互いの所為だと言えばそれぞれが悪かった。周ちゃんを責めないし、私自身も責めたくない。だけど、気持ちは伝えたいと思って、家の事も、子供の事も、今の気持ちを伝えたら、ただ電話をしてきた。何も言わずに、ただたわいも無い話だけを。わかる。それが優しさなのはわかった。だけど、全然嬉しく思えなかった。

「パンを持ってきたよ。朝ごはん食べた?」出発まで後10分なのに、何を言ってるんだろう。ちょっとイライラした。世田谷線に乗って三茶へ向かう。仕事の話をした。少し気持ちが楽になる。お互いに違う島の話をするっていい。それだけで離れられる気がした。周ちゃんが嫌いな訳じゃなくて、周ちゃんに甘えている自分が気持ち悪い。病院を出てモスバーガーでランチをしようとなった。「正直、私は子供が欲しいかよくわかってない。」「うん。俺も子供がいる生活もいいし、いない生活もいいなと思ってる。兄弟に子供がいるから、もう母も満足しているだろうし。だけど、子供を作っておけば良かったみたいな話も聞くから、後悔しないようにしないと。」私が嫌いな話をした。よく子供を持たなかった人が後になって後悔するからという話。それって本当にそうなんだろうか?ってよく思う。「周ちゃん、その話をよくする人いるけど、それって私嫌い。だってさ、子供がいない分、楽しい事いっぱいしてるでしょ。結局、どっちを選ぼうが楽しい筈だし、どっちを選んだって後悔するかもしれない。要は今が楽しければ、過去を後悔なんてしないよね。私は全く後悔してないよ。子供を若いうちに産んでおけば良かったなんて全く思わない。だって、子供がいたら出来ないことを今まで楽しんできたし。」

私はまだイライラしてる。午後はフミエさんの味噌作りに行った。フミエさんや瞳ちゃんに会ってすごく落ち着いた。それに、フミエさんの料理がやっぱり好きだなと思った。今日は味噌作りだけど、料理家というフミエさんが大好き。私とは正反対の星に住んでる。ただ、なんだか元気になれる。フミエさんは周ちゃんに豆をあげてた。氷見で会った時に2人はキッチンで豆の話で盛り上がっていた。心配はしてなかったけど、こんなにすんなりとフミエさんと仲良しになるなんてと驚いた。

家路に着いて、新しい椅子が届くから周ちゃんは留守番を、私はサミットへ行った。今夜は無水鍋で温野菜と豚キムチ、あとは豆腐とアボガドの醤油麹のせ、納豆とめかぶ、釜揚げしらすと大根おろし、ご飯。簡単に作れるものにした。周ちゃんはいつも野菜を切ってくれる。残りの調理を私がする。その間にそれぞれがお風呂に入る。これがルーティン。席についてワインをぐいっと飲んで聞いた。「私って我儘だよね。周ちゃんの過去の彼女で最低な我儘ってなに?」周ちゃんの過去の最低我儘話は、それは我儘ではなくて、心の病だと思った。本人は病だとは言わなかったし、それが何処まで愛だと思うかって難しいよねって話してたけれど、「それは、多分病だよ。」ってハッキリと言った。もうワインも何杯も呑んでいたから、言った。私もそうだけど、病院へ行って知った事。「周りの人、家族とか、恋人とか、そういう人が手に負えないってなったら病だと思われます。今日は旦那さんの事で困って病院へ来られたんですよね。」心療内科で精神保健福祉士の方に元夫の相談をしていた時に言われた。周ちゃんが彼女と別れた理由は我儘だったそう。その我儘は何を言ってるのかも不明で、真面目に対峙しようとしたけど、どんどんとエスカレートしていったのだとか。元夫がおかしいのは気づいていたけど、普通の時もあったし、友達だっているし、病気じゃ無い。ただちょっと調子が悪いだけ。だけど、違かった。私の我慢が彼の病を病じゃなくしていた。病気ってある日突然なるものじゃ無い。普通の人がなる。病気でも友達だっているし、仕事も出来たりもする。結構簡単に心の病は転がってるらしかった。普通に歩いて、普通に何かを食べて、普通にその辺に座ってる。別にそんなに特別な事じゃ無いんだってわかった。

昔の彼女の我儘話から、恋愛がいつも歪んでしまう私の友人の話、周ちゃんが過去に職場で上司の女性に振り回されて大変だった話、どうしてか人を傷つけてしまう女の話になった。話しているうちに、話を聞いているうちに、なんだかすごく周ちゃんが可哀想に思えてきた。どうして周ちゃんはいつも優しいんだろうって思っていたし、周ちゃんが嫌な顔をしているのを見たことがない。顔から表情が消えるのは何度か見たことがあるけれど、今朝もそう。それ以外はいつも優しい。いつも優しい。何だかな、何やってんだろう。私がイライラするから、今日も周ちゃんは優しかったんだ。帰りに先日仕事で腰をやっちゃったんだと話してた。キッチンで腰を抑えてるのを見て気づいた。今日ずっと痛かったんだ。

この人は我慢をする人だ。私が告白された時に「あなたには幸せになって貰いたいって思ったんだ。」って話をしていて、一体、この人は何言ってんだろう?って思ったけれど、わかった。周ちゃんは幸せになりたいんだ。

私に出会う前に別れた婚約者の話を聞いたことがあった。何だか淋しそうに見えた。きちんと愛し合っていたんだろうと感じたけど、周ちゃんは彼女の悪口なんて一つも言ってないけど、それは平等そうじゃなかった。私には私が抱える問題があるように、周ちゃんにも私の知れない問題を抱えてる。だけど、隣にいるのならば、我慢しないでと言ってもしちゃうんだろうけれど、我慢しなくてもいいのかもしれないって少しでも気づいて貰えたらいいなって思う。

周ちゃんが優しいのと、我慢してるのを感じるって事を伝えた。堂々と話すのは可哀想かなと思ったけれど、私が思っただけだからと軽く話した。周ちゃんは皿を洗いながら何も言わずに聞いてた。「周ちゃん、毎週日曜日は私の悪口を一つ言う日にしよう。人の悪口を言ってはいけないとか、笑顔でいなさいとか、人には優しくとかあるけど、そうじゃない時があっても良くて、嫌な顔したり、嫌な事を言ってもいいんだよ。」周ちゃんは考えてる。「えー!うーん。確かに。しないかな。」「人には良いところも悪いところもあるし、周ちゃんが気分が悪かろうが、嫌な顔をしようが、それと周ちゃんの良さはイコールしないよ。まずは、人の悪いところを探す練習をしよう。やり過ぎたら、ストップかけるから。」「えー。」

いつも笑っていないで欲しい。そんな事したら、いつか何かが切れちゃうと思う。怒ったり、苛々したり、八つ当たりしたりしていい。毎度は困るけれど、適度にやって貰わないと隣にいる私もきっとおかしくなる。晴れてばかりの毎日は心が枯れてしまう。

拉麺

Journal 06.2,2022

昨日は鉄輪温泉に泊まった。昔ながらの湯治場の雰囲気が色濃く残る町並み。宿泊した柳屋も元々は湯治場だった場所をリノベーションして作った宿。宿について直ぐにお風呂につかった。静かなお風呂は一番風呂だった。水面に西陽がキラキラと反射してる。湯と光の中に溶けてゆく身体。このままどんどん身体を委ねたらどうなるんだろう。気持ち良すぎてちょっと怖くなった。

部屋に帰って寝ていた周ちゃんとSEXをした。確か今朝もした。仲居さんが朝食の支度で部屋に入ってきて慌てて寝てるフリをした。付き合って3ヶ月。20代の恋人達のようにしてるSEX。何だか少しくすぐったい感じもする。これはいつまで続くんだろうか。当たり前のようにきっと失くなっていくのだろうけど、それはいつなんだろう。一回めの結婚は元夫がわたしに嘘をつき始めるまでセックスレスにはならなかったけれど、回数が減っていく度に何だか女がどんどん剥がれていく様な気持ちになった。身体が性欲を強く欲しているわけではないのに焦りや不安を感じて、挨拶みたいにする軽いキスやハグだけがどうにか女であることを日常に繋ぎ止めてくれていた気がする。

朝食を食べ、少し街を散策した後に、日本で三泉に入ると言う火口にある塚原温泉へ車で向かった。強い温泉は長く入ると効能が強くて疲れると聞いたことがある。この塚原温泉も長く入らないようにと注意書きがしてあった。周ちゃんに聞いたところ、酸性が強いのでピーリング効果があって、産毛が溶けるのだとか。雪がちらついてる中、火口を見に山を登った。「あの煙の下にマグマがあるんだよ。」周ちゃんが言った。綺麗な石が落ちていて二つ拾うと周ちゃんも一つ拾った。周ちゃんは同じ事をする癖がある。私がやると周ちゃんもする。その逆はあまり無い。

火口から降りてお風呂のある場所へと戻った。掘っ建て小屋の中にある家族風呂。大きな窓からは鬱蒼とした山が見える。薄い雲が速いスピードで通り過ぎて、大きな窓から強い日差しが出たり入ったりしてる。風呂場の中にある影と窓から入る光が交わろうとしない。いい影だし、いい光。洋服を脱いで、アクセサリーを外してお風呂へ入った。2人入ると丁度いいサイズの木のお風呂。強い酸性で顔がピリピリしてる。ああ、写真が撮りたいな。周ちゃんとお喋りしながら何度も思った。この旅で何度も思った。今、撮ったらいい感じの写真が撮れそう。何度もカメラを取りに行こうかと考えたけど、結局、脱衣所のカメラを手にしたのはお風呂から出てから。やっぱり撮れなかった。

本当のところ、ずっとじれったい。撮りたいのに上手く撮れない。ああ、今って思うけれど、どうやってカメラを周ちゃんに向けていいのかわからなくなる。「今撮ってもいい?」たまに声をかけて撮ったりもするけど、声をかけると緊張して写真なんてどうでもよくなってしまう。フィルム代だってバカにならないし、心がどんどん沈んで撮るのをやめたくなったりもするけど、やめない。こうやって撮れないを繰り返していくうちに、きっと撮れる日が来るから。

別府空港に着いたのは18時半過ぎ。カボスの絵が描いてある缶チューハイを飲んでる人を何人か見かけて無性に飲みたくなる。「周ちゃん、カボスサワー飲んでもいい?」「もちろん。」ベンチに座ってカボスサワーをグビグビと飲んだ。すっかりひとりでご機嫌にお喋りしてる私がいる。私が笑うと、周ちゃんが笑った。周ちゃんはお酒が苦手だから飲んでない。だけど一緒になって陽気になってる。今日、2軒目の掛け流しの旅館の風呂が水風呂で私が子供みたいに拗ねて、そして貝みたいに閉じた。初めは優しく声を掛けてくれていたけれど、その後、周ちゃんも静かに運転をしていた。やっぱり周ちゃんは同じ事をする癖があるみたい。

チーズトースト

パン, Journal 28.1,2022

「チーズのみ、マヨチーズ、バターチーズ、どれにする?」「バターチーズ!」周ちゃんはバターが好き。それはやっぱり北海道生まれな気もしてる。朝食は私が作って、周ちゃんはバナナジュースを作る。それから洗い物は周ちゃん。なんとなくそんなルールがいつもになってきた。急いで朝食を済ませて支度をする。今日は近所の友達に聞いたブライズチェックの日。三茶にある不妊治療専門の病院へ向かった。正直、本当に子供が欲しいのか未だわからない。家族が欲しいっていう憧れはあるし、産んでみたいとも思ってる。病院は一番の予約だったけれど、沢山の人がひっきりなしに出入りしてた。年齢も様々。男の人も数人見かけた。

看護師さんの話を聞いて、先生との面談。「年齢的に時間がありません。急ぎましょう。」よく聞いていた話だった。最近、生理の調子がちょっとおかしい事と、少し遅れてる話をした。「このまま妊娠してたらいいですね!一週間来なかったら妊娠してるかもしれません。」先生がにこりと笑った。優しい先生だな。不思議な気持ちがする。私、本当に妊娠してたらどうなるんだろう?

お昼はシバカリーワラでカレーを食べ、歩いて帰宅した。今日は穏やかで気持ちがいい。「周ちゃん、先生がさ、一週間生理こなかったら妊娠してるかもしれませんねって言ってたんだけど、何だかすごく不思議じゃない?先生でもわからないんだって思ったよ。」周ちゃんはちょっと嬉しそうな顔をしてた。子供が欲しいんだろうな。いや、正確には子供が欲しかったのかもな。私にプロポーズした時に、私は年齢的にも子供は産めないかもしれないからもっと若い人にした方がいいよみたいな話をした。そしたら、子供はどちらでもいいって言ってた。出会って短い間だけど、子供に話しかけたり、遊んだりしているのを見かけたことがある。街で目が合えば、にこりと微笑んだりしてる。

私はどうなのかな。離婚してから急に子供に興味を持ち始めたけれど、私の生活に子供が入ってきたらどうなっちゃうんだろうか。帰り道に色々と話したけれど、結局実際やってみないとわからない。案外楽しいかもしれないし、よく耳にするように大変かもしれない。考えたって仕方ないよねって。

帰宅してお互いに仕事をする予定だったけれど、ソファーで周ちゃんの首元にもたれかかったまま寝てしまった。1時間半くらい寝てた。周ちゃんはその格好のまま仕事をしてたらしい。周ちゃんって人がどんどん好きになるけど、私がどんどん我儘になっていきそうで怖い。

味噌汁とごま油

Journal 25.1,2022

10月にパリのマユミちゃんに書いた手紙が戻ってきた。一通目は10月10日、病院から梃子の癌宣告を受けた日で “酷く落ち込んでるけど負けないみたいな事が書いてあった。二通目は10月21日、梃子の手術の事についてと、最近自分の周りで恋の朗報が多くあってすごく嬉しい。私には何も無いけどね!と書いてあった。書いていた時の気持ちをよく覚えてる。あの頃の私はまだ多分怖かった。前向きな言葉の裏側には未だトラウマの影が潜んでる。とっくに日常が戻っていたと自覚していたけど、またあの人が世界を壊すんじゃないかとビクビクしていたのかもしれない。

手紙を記した10日後くらい、周ちゃんに出会った。そして来月に結婚する。本当に世界はわからない。2021年の10月の私がありありとここにあるけれど、全く違う今を当たり前の様に生きてる今もここにある。身体はきちんと今日迄を吸ったり吐いたりして一枚の皮で繋がっているけど、心はあちこちに破片の様に散らばって交わろうとしない。すごく変。だけど、静か。

夜、周ちゃんに電話した。まとまりの無い話を沢山した様に思う。仕事の話も少しだけした。とにかくワガママに話した。トラウマを過去にしたのは紛れもなく周ちゃんのお陰だ。たまたま遭ったとしても、タイプだったからだとしても、彼の魅力に惹かれたとしても、意味があるのか無いのか、運命なんてものはよくわからないけれど、明るく生きる為にすごく必要な人だったと思う。

「俺も一人で生きるって思ってたからなぁ。半年前、まさかこんな事になるなんて想像もしてなかったよ。仕事して、週末はフィールドワークしてって。一人で生きていけたから。」

仕事の後に、編集の柳瀬さんにさくらももこさんの本を借りた。タイトルはやきそば うえだ。表紙は焼きそばのイラスト。食べたい。周ちゃんはお好み焼きが得意らしい。焼きそばも上手そうだな。

麺線

Journal 13.1,2022

朝の9時30分。世田谷通り沿いの動物病院へテコと走る。2分遅れて到着。病院はいつもより混んでる。少し待たされ採血。そしてさらに30分、先生に呼ばれて診察室へ入った。「テコちゃん、完治です。」先生の笑顔、初めて見たよ。良かった。本当に良かった。直ぐに周ちゃん、母、姉に連絡して、たまたまラインしてた兄にも報告。”癌、完治したよ!”

帰って急いで納品を済ませる。冷蔵庫には何も無い。う〜ん。あ、素麺と卵がある。麺線にしよう。昨年、台湾人の友人ハルさんに教えて貰った麺線。胡麻油で生姜を炒めて、その油で目玉焼を焼き、茹でた麺を炒める。生姜の香りが移った胡麻油が最高に美味しい。ペロッと平らげてしまう。

美味しかったな。

キムチチゲ

Journal 08.1,2022

4月の頭に引っ越す事に決めた。不動産への解約通知の退去理由の箇所に “結婚” と書いた。この部屋を見に来てくれた人に伝えてくれるといいな。結婚を理由に退去することを寿退去と言うらしく縁起が良いのだそう。そして、その部屋に住んだ人もまた婚期が早まるのだとか。独身の友人にうちに住まないかとLINEをしてみたけど、ひとりでこの家に住むのは難しいって。確かに。ベランダが広すぎるかもね。家賃も優しくない。ひとりでこの空間を持て余してしまったら、それは虚しさになる。今となっては大好きな部屋だけど、とにかく私も怖かった。いきなり家族が崩壊したからって、簡単にその場所を捨てられない。8年かけて大事に大事に築いてきたものがあの家にはあった。家中のあちこち、キッチンにもリビングにも首都高が遠くに見えるベランダにだってしっかりとあった。それに、夏の終わりから体調を崩してカメラを持つことも大変になっていたし、そもそもコロナで仕事も殆ど失くなった。私があの家を出なくてもいい理由は十分に揃っていた。こんな自分がテコを育てて、これから本当にここで生きていけるのか。半分ゾンビみたいになってる自分が16万っていう家賃をどう払っていったらいいのか全く検討もつかなかった。ただ、ここで幸せを望むしかなかったんだと思う。

周ちゃんと電話でこれからの色々を決めた。子供はわからないけど、とりあえずブライダルチェックを受ける予約をした。今、私達に共通して言える事は、とにかく新しいそれが楽しい。その先の事はたぶん殆ど考えてない。不妊治療の助成金を調べる事だって楽しい。それに、不妊治療だと申請するだけでブライダルチェック がタダで受けられるのだと言う。世の中知らない事がまだまだ沢山ある。結婚の色々、アメリカでは当たり前のように行われてるプリマリタルカウンセリングについてもお互いに本を読んで勉強して感想会なんてしてる。これは大学院の時によくゼミでやったんだよねって、周ちゃんが楽しそうに話してた。司会進行は周ちゃんで本の時系列に沿って、個人的な意見と一般的な意見を一緒に考えてみる。こんな体験は初めて。元夫の時は結婚をする時にお金の事も、未来の事も、子供の事も、何も話さなかった。何となく同棲をしている時から色々が決まっていって、気づいたら私がひとりで全てをやってた。きっと彼はつまらなかったろう。私がどんどんひとりで色々をやってしまう事が不甲斐なかっただろう。いつも私に甘えてばかりいるのはそんな理由だったのかもしれない。私が一つでも不安を投げ出したら拾ってくれたのかな。今となってはもうわからない。

2回目の結婚。知ってることも沢山あるけど、初めてのことも沢山ある。その初めては、とにかく楽しいって感じていること。こないだ皆んなでキムチを漬けたのだけどそういう楽しさに似てる。同じ場所で一緒に作ってる感じ。

1月1日

Journal 01.1,2022

午前に実家から帰って色々と作業を終わらせる。結局、年賀状は未だ大晦日に途中でやめたままに家を出る。隣駅の友人宅でおせちを食べる約束をしてる。だらだらとおせちと一緒にビールを飲んだ。帰りは今むと途中まで一緒。「本当に良かったね。おめでとう。」別れ際に今むが言った。

周ちゃんとの結婚の事を今日初めて近所の子達に伝えた。昨年、私が大変だった時に、たわいも無い何でも無いような時間を一緒に過ごしてくれた友人。今むは「何してる?」結婚していないし、彼女もいないし、昼でも夜でも気軽に誘える友達のひとりだった。一番最後に会ったのは、鎌倉に海を見に行った時だったかな。私達は海友達でもある。お互いに夏でも冬でもひとりで海に行ってしまうくらいに海が好き。私の報告を聞いて、みんな驚いてた。だけど喜んでた。近所の友人に過去の色々を話してない。誰も特に聞いてこないし、話したくなかったから話さなかった。離婚が決まってからの1年。すごく世話になったと思う。日常を沢山くれた友達。ありがとう。寂しいね。そんな話をして帰宅した。今むは来月にみどり荘で展示をするのだそう。もしかしたら、東京で会うのはそれが最後になるかもしれない。

夜は周ちゃんと電話。二日ぶりの周ちゃん。ちょっと時間があくだけで新鮮な気持ちになる。ああ、この人が周ちゃんだってまじまじと画面に映る周ちゃんを見てしまう。今日はベガスへ行くのだそう。明日はL.Aで私の姉と会う。

12月31日

Journal 31.12,2021

仕事、大掃除、年賀状。朝から息をつく暇なく家を走り回ってる。ガトーショコラが食べたい。ずっしりしたやつをアメリカンコーヒーと。近所の神社に今年の御守を返しに行って、来年の御守を買った。来年は勝と書かれた御守にした。ゲッターズ飯田さんの占いで私は来年は欲しい物全部を取りにいく年なんだそう。えー!そんなに要らないよ。一つで十分〜って思ったけど、遠慮は不運、禁物!みたいな事も書いてあったので、ではでは勝ち戦を楽しもうと、勝にした。だけど、何に勝つのだろうか。どんな勝利にせよ、圧勝して、敗者にお見事!と言われる様な誰もが清々しい気持ちになる勝利を納めたい。誰も不幸にならない勝利がいい。

年賀状に夢中になっていたら出発の時間。慌ててコートを羽織ってテコを鞄に入れて駅まで走る。電車は目の前で去って行った。千葉に着いたのは18時。母が改札まで迎えに来てくれた。あれから一切連絡しなかったから、ちょっとだけ久しぶりの母。周ちゃんとの結婚は反対!って怒ってたけど、どうやらこの2週間くらいで大分落ち着いたらしい。気分の上がり下がりが極端に早いのは母譲りかもしれない。母はケロッとしてた。蟹を食べて、麦酒を飲んで、おせちを食べて。最高な大晦日。父はいつも通り何も聞いてこない。ひたすら飲んでる。「ママとパパは会うのいつでも大丈夫だから。」「わかった。」やっぱりもう母の中では済んだ事らしい。とりあえず良かった。

食後にケーキを食べてお茶を飲んで布団に入った。カウントダウンはしない。お腹が一杯で眠いから。わざわざ頑張って起きていなくても、目が覚めたら勝手に新年がやってきてくれるもの。そんな楽な事はない。有り難くお布団の中で眠りについた。申し分ないくらいの最高な大晦日。

寝る前に布団の中で手帳を開いてみる。この1年の毎日がぎっしりと詰まっていた。春くらいまでは、日々、今日は何とか乗り越えられた、とか。今日はトラウマがきつい、とか。詳細に日々が記されてる。初めは300%苦しかったけど、ちょっとずつ、ほんとにちょっとずつ、その割合が変化してる。大丈夫。とか、無理をしない。きっと大丈夫な日が来る。と、祈りみたいな言葉も手帳のあちこちに転がっていた。嫌な事や離れたい人についてもよく書かれていて、過去の私みたいな考えや生き方をする友人と距離をとるように努めてる様だった。それは、相手がどうではなくて、写し鏡の様に見えるみたいで、とにかく苦しんでいた。果てしなく長かった1年をあっという間に読み切る。さぁ、今年は終わりだ。寝よう。

来年はしたい事が沢山ある。ようやく走れるようになっていつでもどこまでも行けそうなくらいピンピンに心身共に元気。まず、心理学を大学とかで勉強してみたい。それに、写真集も出したい。好きな先生の料理本の写真も撮りたい。映像もどんどん撮りたいし、昨年ちょこっとやってみた映像監督だとか、フォトディレクションも堂々とやってみたい。周ちゃんにそっくりな男の子を産んでみたいし、免許を取って白のジムニーをブイブイ乗り回したい。新居は今よりもずっと素敵な家じゃなきゃ嫌だし、横浜小宝の蒸し器を買ってマーラーカオを作りたいし、料理家の有元さんの揚げ物用のお鍋で揚げ物上手にもなりたい。日記も毎日ちゃんと続けたいし、書くような仕事もやってみたい。そして、お尻もキュッと可愛い感じに上げたい。夢を見るのは自由で楽しい!どんどん楽しんで行こう。

今年は沢山の人にお世話になった。家族だけじゃない、友人も仕事仲間も先輩も。有難い。有難う。新年はどんどんお礼をしていこうと思う。私に出来るお礼ってなんだろう。クッキーでも焼いて会う度に配る事かな。新年の抱負は勝ち戦とお礼にしよう!

チーズバナナバターパンケーキ

Journal 30.12,2021

朝食はパンケーキ。バタバタと食事をして、仕事。あっという間に昼が過ぎて出かける時間。今日は後藤さんと後藤さんの彼のマサくんと忘年会。忘年会の前に後藤さん家の近所にある銭湯に今年最後のサウナに入りに行った。年末は1年を振り返ってゆっくりと過ごしたかったけど、全然そんな時間が無い。錦糸町の街を歩きながら何だか頬を通る風に思い出した。ああ、昨年の今頃はすごく怖かったな。離婚届を出したのは12月4日。もう元夫はいないのに、だからもう酷い事も起きない筈なのに、毎日の何処かがひんやりとし続けた日々。あの背筋が凍る感じや、胸のざわつき。久しぶりに思い出した。私はきっとこれからまた色々を忘れる。何だか周ちゃんに沢山の我儘を言ってしまいそうな気がした。この生活がやってくるまでは本当に長い道のりだったけれど、今が始まったらあたり一面は今一色になる。忘れない方がいい。これから新しい日々がどんどん温かい場所になっても、周ちゃんへの感謝を忘れないようにしよう。

それに、結婚はするけど、他人のままにしておきたい。一つになりたいじゃなくて、側にいてくれたら嬉しい。そんな関係でいたい。上手くいくか分からないけれど、私は今のままで彼とは交わりたく無い。もう誰かを傷つけることも傷つけられることも、同じ鍋の中でごった混ぜになって不味い何かになる必要なんてない気がしてる。大切にしたい。だから、別々でいい。

後藤さんの家に着いたのは17時過ぎ。後藤さんは色々とご飯を作って待っててくれた。私はキムチと焼プリンを作って、後は蒲鉾を持って行った。乾杯はビール。目を見合わせて笑った。かける言葉が多すぎるから、お互いに笑うしか無かったんだと思う。エベレスト登頂から帰還した有志みたいに生きてる今に歓喜。そんな感じだった。生きてて良かった。本当に良かった。私達は生きてる。あんなに酷い事があっても、今は笑ってる。

マサくんはお父さんが交通事故に遭って今日は来れなくなったけど、オンラインで参加。何だか面白い感じの忘年会。後藤さんが1時間並んで買ってくれたというマグロとキムチの和え物は絶品だった。ワインも2本目。結構飲んでる。後藤さんは顔が真っ赤でマサくんに飲み過ぎだって笑われてた。幸せだな。本当に幸せ。ああ酔っ払ったな。

帰ってお風呂を出たところで周ちゃんと電話した。周ちゃんは今日からまたロードトリップが始まるんだそう。後藤さんにデニムを4本貰ったことや、プリンを焼いたこと、新年会は4人でしたいとか、はしゃいで話してたと思う。今日、後藤さんと過ごせて良かった。明日で今年が終わる。長い長い1年がようやく終わる。何だか今日は言葉が出て来ない。どんな気持ちがするのかも上手にわからない。ただ、嬉しい。

ラーメン

Journal 26.12,2021

朝から代々木上原のカフェでヤスコチャンとプロダクトのスチールとムービーの撮影。終わって直ぐに浅草橋で編集成田さんと撮影。そしてお茶をしながら恋の話を散々して帰宅。成田さんにモテ期到来中。というわけで周ちゃんのトレンディなキスの仕方について伝授した。既に時間は20時を過ぎてる。仕事が日に日に溜まっていって繰越が繰越を呼んでる。まずい。だけど今日も楽しかったな。周ちゃんからデンバーに向かうと連絡が入った。

ホタテとねぎのドリア

Journal 25.12,2021

思いの外今日は二日酔いじゃなかった。23時半を過ぎる頃、もうすぐワインを飲みきりそうな所でハッとしてやめたのがきっと良かった。今日は昼くらいまでベッドにへばりついていようと決めてる。午後過ぎからまた仕事。だから、それまでは200%私の時間だ。何だか最近予定が詰まって良くない。楽しいのはいい事だけど、もっと暇でないと困る。最近、歩く速度が早い。人に当たる回数も増えたような。ちょっと時間の見直しが必要かな。暇を増やさなきゃ。忙しさは大事なものを見失ってしまうから危ない危ない。

今朝は周ちゃんとは電話はしなかった。代わりに夜のマンハッタンを歩いてる映像が送られてきた。周ちゃんの兄ちゃんはマンハッタンに住んでて、何か事業をしているらしい。奥さんは国連の何かで働いてると聞いた。どんな生活なんだろうか。周ちゃんと兄ちゃんは似てるらしいけど、兄ちゃんの写真をLINEで見た時に余りにイケメンで目が飛び出ちゃうかと思った。周ちゃんをトレンディーにした感じの兄ちゃん。私の携帯にしっかりと写真を保存してる。今夜は3人でディナーへ行くと言ってた。いいな。NYでトレンディーな兄ちゃんとディナー。私もむちゃくちゃお洒落してくっついて行きたい。想像するだけで鼻血が出そう。

今日は周ちゃんからは連絡が無い。何だかちょっとだけ寂しい。おかしなもので、一人が楽しくて大満喫しているのに、ふと寂しくなったりもする。24時間のうち3時間くらいかな。ふと思い出す。生身の周ちゃんに会えるのは来年の先の事。今日は氷見で撮影したフィルムの現像が上がってきた。その中に数カット周ちゃんが写ってた。コンタクトシートをデスクに貼ってみる。気分が上がるな。兄ちゃんのファンだけど、周ちゃんの方が100倍好き。昨日、LINEで周ちゃんが “会えなくて切ないね。” みたいな事を言ってて、切ないっていつの時代の感情だよ!って思ったけれど、今夜は晩酌していないからかな。私にも切なさがやってきたかもしれない。

帰ってきてとは思わない。私が行きたい。